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【謎の死? 深まる疑惑】 大昔、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画で見たことがあるのですが、原作は読んだことがなかったので読んでみることにしました。 どうも、映画の方の話の筋も忘れてしまっていたので丁度良かったかもしれません。 物語は、庶民的なキャロラインがマンダレー屋敷の当主であるマキシムに見そめられて急遽結婚したことから始まります。 どうも、マキシムの妻レベッカは海難事故に遭って亡くなったようで、以来、マキシムは激しく落ち込んでいた様子です。 モンテカルロにも一人でやってきたところ、飾り気のないキャロラインと出会い、まるでレベッカのことを忘れたがるようにして求婚したのでした。 キャロラインにとってみれば夢のような話です。 両親を亡くし、生活にも困って、富豪夫人のコンパニオン(話し相手)という気が滅入るような仕事をしてお金を稼がなければならなかったところ、有名なマンダレー屋敷の当主から結婚を申し込まれるなんて。 マキシムは優しいのですが、でも、亡くなったレベッカのことも、マンダレー屋敷の詳しいことも話してはくれません。 きっと、嫌なことを思い出してしまうからだろうと、キャロラインも無理に聞こうとはしませんでした。 イタリアでの新婚旅行を終えて、いよいよマンダレー屋敷にやって来ました。 広壮な屋敷は大勢の使用人達によって整えられていました。 女中頭のダンヴァーズ夫人はちょっと恐い人。 どうやらレベッカのことを崇拝していたようで、まるでキャロラインは邪魔者扱いです。 いえ、表面的には慇懃なんですが、冷遇するのです。 レベッカのことは不幸な事故程度にしか思っていなかったキャロラインなのですが、どうも何かあったのではないかという雰囲気が色濃く漂い始めます。 レベッカは、大変美しく何でも良くできる優れた女性だったともっぱらの評判であり、キャロラインはそんなレベッカに気後れし、嫉妬もし、自分を卑下してしまいます。 でも、そんなレベッカの甥だという、どうも素行が良く無さそうな男性がダンヴァーズ夫人を密かに訪ねてきたりもして、どうも様子がおかしいのです。 レベッカは、入り江にあるボートハウスに家具まで持ち込み、時々そこで寝泊まりもしていたようなのですが、何故そんなところで? ボートハウス付近で出会った少し頭の弱い男性は、どうもレベッカに脅されたことがあったようで、レベッカをひどく怖がっているようです。 本作は、何も知らないキャロライン(それは読者も同じです)の視点から、マンダレー屋敷で過去に何があったのかを少しずつ知っていくという構成になっています。 サスペンスを盛り上げるやり方ですよね。 上巻の終わりは、地元の人たちにせっつかれたマキシムが、マンダレー屋敷で仮装舞踏会を開くシーンが描かれます。 キャロラインも誰かに仮装しなければならないのですが、胡散臭いダンヴァーズ夫人は、屋敷に飾られている肖像画の女性に扮してはどうか?と勧めるのです。 あんまりそんな話には乗らない方が良さそうなのに……と読者は読むわけですよね。 でも、素直なキャロラインはすっかりその気になってしまい、誰にも秘密にしてその衣装を注文し、仮装舞踏会を成功させようと張り切ってしまうのです。 仮装舞踏会の当日、ようやく扮装を終えて出てきたキャロラインの姿を見たマキシムは、顔面蒼白になり、「何でも良いから別の服に着替えて来い!」と命ずるのでした。 あぁ、やっぱり。 その仮装がどういう意味を持つのかは上巻では明らかにされませんが、おそらくレベッカに関する仮装なのでしょう。 レベッカに一体何があったというのでしょうか? そんな謎が深まるお話は下巻に続くのです。読了時間メーター□□□ 普通(1~2日あれば読める) >> 続きを読む
2020/02/17 by ef177
【これはヒロインの成長物語でもある】 下巻に入り、レベッカの招待が遂に暴かれ、その死因も明らかになります。 遂に、マキシムは、ヒロインに事の真相を告白する決意をするのですね。 真相を知ったヒロインは、それまでの幼く頼りなかった女性から、一夜にしてマキシムを守る母親のような強さを発揮し、マキシムと共に苦難に立ち向かおうとする芯の強い女性へと変貌していくのです。 ここが、この作品の一つの魅力になっているのではないでしょうか。 上巻、特に物語の始まりから中盤にかけては、少女少女したヒロイン像が描かれ、まるで白馬の王子様のようなマキシムとドラマティックな恋に堕ち、有名なマンダレー屋敷の女主人に収まるという玉の輿物語、少女の夢のようなお話として展開するわけですが、それが後半から徐々に不穏な雰囲気が満ちてきて、ヒロインのキャラクターも一変してしまうというところにこそ、『レベッカ』という作品の大きな魅力があるように感じました。 読者は、ヒロインと共にハラハラし、何とかこの窮地を逃れることはできないだろうかと手に汗を握ることになります。 特に、最後の絶体絶命とも思えるピンチに追いやられたマキシムを、何としてでも守り抜こうとするヒロインの姿に感情移入するのではないでしょうか。 ヒロインは、物語の途中で、隠然たる力を示していたダンヴァーズ夫人に追い詰められ、崖から飛び降りなさいと唆され、すんでのところで飛び降りそうになる場面が描かれます。 このシーンはなかなか印象的なのですが、物語の終盤、追い詰められたマキシムを見て、ヒロインは、まるであの時の崖から飛び降りそうになった自分と同じだと思い、何とかマキシムを助けようと必死になる心情描写はなかなかに読ませるところではないでしょうか。 さて、本作を映画化したヒッチコックの作品ですが、巻末解説によると、原作を変更している部分があるということです(私は全く覚えていないのですが)。 それは、当時のハリウッドの倫理観も影響しており、原作のままの筋書きでは許容されたなかったのではないかということです。 また、原作のラストシーンは、何故そんなことになってしまったのかははっきりとは書かれておらず、物語も唐突に幕を下ろしてしまうのですが、映画の方ではそこにもう一つドラマティックな演出を盛り込んでいるようです。 ただ、巻末解説者は、そういった変更により、私が先に書いた、ヒロインが成長していくという『レベッカ』が持つ重要なモチーフが弱められてしまったとやや批判的に書いています。 いずれにせよ、本作はなかなかよくできた作品ではないかと思いました。 今度は、ヒッチコックの映画も見直してみたいという気持ちになりましたよ。読了時間メーター□□□ 普通(1~2日あれば読める) >> 続きを読む
2020/02/18 by ef177
【圧倒的な恐怖感】 これは、もうヒッチコックの映画の方で有名ですよね。その原作。 私は、リアル・タイムでは見ることができなかった年代ですが、ヒッチコック大好きです。 著者のダフネ・デュモーリアは、「レベッカ」なども著している作家さん(これもヒッチコックによって映画化されていますね)。 どうしても映画の「鳥」の方が圧倒的にインパクトが強くて、なかなか原作を読まない一冊になっているかもしれません。 ここでも、ヒッチコックの線でご紹介です。 主演のティッピ・ヘドレン(メラニー役)は、ヒッチコックお好みの女優さんだったらしいです。 出だしは、メラニーは都会的な小生意気な女性として描かれています。 鳥屋さんに入るのですよね。そこで、プレゼント用のつがいのラブ・バードを探していた男性、ミッチ(映画ではロッド・テイラー)と出会います。 この時点では、鳥は愛でるべき対象として描かれています。 田舎のミッチの家を訪ねるメラニーなのですが、そこで初めての鳥の襲撃に遭います。 カモメが彼女をつつくんです。 さあ、そこからどんどん鳥たちの襲撃が始まっていきます。 鳥たちの襲撃によってガソリンスタンドが炎上するシーンは記憶に残ります。 電話ボックスに逃げ込んでも、そこに鳥たちが体当たりしてきます。 また、びっしりと電線にとまっている鴉たちのなんと恐ろしいこと。 襲撃の「動」も怖いのですが、襲撃を予期させる「静」の鳥たちがなんとも不気味です。 ミッチの母親は、この街にやってきたあなたがこの厄災の元凶なのだと詰め寄ります。 この頃のメラニーは、最初の小生意気な雰囲気ではなく、傷を負いながらも子供達を守る女性として描かれる様になります。 町中鳥たちが包囲し、襲っているような状況になります。 メラニーは、ミッチ一家と一緒に家に立てこもるのですが、鳥たちは容赦なくドアを突き破り、暖炉から侵入しようとします。 何百種類、何千羽の鳥たちが人間を襲います。 動物が人間を襲うというテーマの作品は数々ありますが、その傑作ではないでしょうか。 このままでは危ない! ここから脱出する! そっと、そっと。 静かに車のエンジンをかけるミッチ。 周りはびっしりと鳥たちに囲まれています。 少しでも刺激したら襲われてしまう! 何と緊張感があふれるシーンでしょうか。 雲の切れ間から流れ落ちる光りがびっしり蝟集した鳥たちを照らします。 「これも持って行って良い?」と、プレゼントのつがいのラブ・バードが入った鳥かごを持ってくる子供。 「いいよ。さあ行こう。」 >> 続きを読む
2019/02/02 by ef177
デュ・モーリア作のもうひとつの「レベッカ」とも呼ばれる作品。今回も状況の描写が素晴らしく、登場人物と同じ場で物語を見ているような気持ちにさせる。両親を亡くし、従兄アンブローズによって育てられるわたし。アンブローズはイタリアで結婚し急逝する。アンブローズからの便りに、ただならぬものを感じるわたしは、彼の妻であるレイチェルを憎む。そんな折、レイチェルがわたしの暮らす屋敷にやって来る。「レベッカ」と同じくイギリスの上流家庭と言える裕福な家族の物語。タイトルともなっているレイチェルは、魅力溢れる女性だが、それだけではないように思わせる謎を秘めている。そういうところも「レベッカ」に似ている。設定は似ているが、「レベッカ」の方が個性の強い登場人物が多いように感じる。本書のわたしは若い男性。このわたし、フィリップが何とも言えない。レイチェルを毛嫌いしていたのに、会ってすぐに心酔してしまう心変わりの早さ、身勝手で我儘、衝動的というか軽率に思うまま行動してしまう思慮の浅い男。ここまで愚かな人物だと、読みながらイライラとして楽しい。意外とも言えるラストが唐突にやってくる。「レベッカ」のときと同じように突然終わってしまう物語に茫然とする。まさに糸がプツンと切れるように終わる。レイチェルは結局、悪女だったのか聖女だったのか。答えがはっきりと書かれていない。こういった終わり方は好き嫌いの別れるところだと思う。わたしは「レベッカ」のときと同じく、想像を膨らませ、読み終わるとじんわり余韻を感じられるところが良かった。まだまだ他の作品も読んでみたくなる。 >> 続きを読む
2015/12/11 by jhm
【Du MaurierDaphne】 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)
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