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IrvingJohn

著者情報
著者名:IrvingJohn
IrvingJohn
IrvingJohn
生年~没年:1942~

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このランキングは1日1回更新されます。
      ガープの世界
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
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      •  つい先日、特別なことが起きない小説がすきだと言ったが、
         「あれは嘘だ」
        アハハハハ、これが言いたかったんです。だれも覚えていないでしょうが。
         (注:久しぶりの酒気帯び筆記のため、あらすじの有無は保証できかねます)

         元々、私にとっての西洋文学は、チャールズ・ディケンズから始まった。太宰治や志賀直哉、森鴎外の『高瀬舟』(むずかし過ぎた)で祖国を捨てることを決め、岩波文庫や新潮文庫に広がる舶来の世界に飛び込んだ。そして、ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を夢中で読んだ。これが大きかったですね。しかし、たちまち強制送還をくらい、漱石の小説で心を慰めました。
         と、こんな月並な懐古談に耽ったのは、この本の著者ジョン・アーヴィングが、筋金入りのディケンズ信奉者だからである。そもそも、20世紀に隆盛をきわめた小説の特徴として、「大きな物語」に拘らず、できるかぎり精巧に「時間」や「空間」を組み換えたり、入れ換えたりして、人間の生活や意識の深奥部に迫ることが挙げられる。そうです、時おり名前は聞くけれど、敷居が高いプルーストやジョイスの世界ですね。とりわけジェイムズ・ジョイスのことを、「オナニー本の作者」
        とアーヴィングは指弾しています。まあ、そういう側面は大いにある。そして彼自身は物語の復権を目指し、その野心のためディケンズをお手本にした。これが上手く行ったんですよ。4作目の『ガープの世界』を上梓したのち、アーヴィングは現代アメリカ文学の旗手となりました。正直いって、抜群に面白いです。とにかく引き込まれる。たまには空から槍が降るのも悪くない。
         結びに代えて、ストーリーで壊れているところを少しだけ。
         主人公の出生からぶっ飛んでるんだ。母親が植物人間になった老兵と事に及んでT・S・ガープは生まれてくる(母親は子供だけ欲しかった)。これほど素っ頓狂な出生ってあります? しかも、そのせいかしら、ガープは情事に興味津々。レスリングとセックスと文学、この三つがガープの青春。学生時代の恋人(大学教員で文学専門)と結婚するが、夫婦生活は芳しくない。夫婦スワッピングもするし、ガープの妻は教え子と不倫もする。二人がイチャつく車にガープの車が突っ込んで、間男が去勢状態になるなど滅茶苦茶だ。
         性の乱れや暴力、暗殺、子どもの病気といった不幸が目白押しなのでご注意を。
         (映画『ガープの世界』は、ロビン・ウィリアムズ主演です)
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        2015/04/05 by 素頓狂

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      サーカスの息子
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
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      • 足掛け3年でようやく読み終えた。人種、国籍、宗教、混沌のインドを舞台に、帰属を持てない人達の物語。ジョン・アーヴィングは好きで何冊か読んでいるけど、他とは違う感じ。読み終わった後の今でも、続いている感じがする。
        自分は何者なのか?を、考えさせられた。

        たぶん「Rockのひと」なんだろうな。と言うか、そうありたい。
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        2017/10/19 by まさあき

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      オウエンのために祈りを
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      •  潰れた声を持つ一人の少年を、ぼくは終生忘れられないと思うが、それは別にその声のせいではないし、彼がぼくの知る一番小さな人間だったからでもない。母の死に彼が関与していたからですらない。ぼくが神を信じる理由が彼にあるからなのだ。彼オウエン・ミーニーがいたから、ぼくはいまもキリスト教徒なのだ。

         この作品が出版されたのは1989年。ぼくがアーヴィングに熱中しはじめた頃には既にペーパーバックが書店に並んでいたのですが、いかんせん、英語の苦手なぼくは手が出せず、いかに面白いかをとくとくと語る友人に、浮かぬ顔で相槌を打つしかありませんでした。
         新潮社が、「ジョン・アーヴィング・コレクション」と銘打って、それまで未訳だった「オウエンのために祈りを」、「ピギー・スニードを救う話」、「サーカスの息子」、「未亡人の1年」の4冊を次々に刊行したのが1999年8月から2000年6月のことです。アーヴィングの新訳に飢えていたぼくは、すべて初版で購入、むさぼるように読んだものです。
         結論的にいえば、「あの川のほとりで」のレビューでも書いたとおり、「サーカスの息子」以降の作品には、ぼくはいまひとつ満足できませんでした。それだけに、この「オウエン」は、アーヴィングの作家歴におけるひとつの頂点として、ぼくの印象に強く刻まれています。

         ところが。
         15年ぶりに読んでみて、びっくりです。
         あんなに感動したこの小説のあれこれを、こんなにもきれいに忘れていたとは! 
         なんと、主人公オウエン・ミーニーの親友であり、この小説の語り手たるジョン・ホールライトの家庭環境は、「ひとりの体で」の語り手ウィリアム・アボットのそれと全く同じなのです。若くて美しい母親、正体不明の実父、フレンドリーな義父。義父が学校の教師であり、地域の素人劇団の演出家であることも、その演劇で母親がプロンプターを務めていることも。「ひとりの体で」を読んだ時に、その類比をチラリとも頭に浮かべなかったのは、不覚というほかありません。
         また、この小説が、語り手の現在(トロント在住の文学科教師)と、オウエンとともに過ごした少年時代とを行きつ戻りつしながら語られていく形をとっていることは覚えていたのですが、少年時代の物語がかなり複雑な時系列をなしていることは意外でした。このあいだ、「直線的な時系列での語り」がアーヴィングの特徴だなんて書いてしまったことを、ちょっと後悔しています。

         とはいえ、15年ぶりに読んだこの小説は、やっぱり泣けました。
         卒業生総代に選ばれていながら、校長との確執で退学になり、軍隊に入ることを志願して去っていくオウエン。

        「あいつはどこ?」ぼくが訊ねると、彼女はピックアップのヘッドライトが照らしだす先を指さした。椅子とベンチの列がずらりと並ぶその向こうに仮設ステージがあった。グレイヴズエンド学院校旗が飾られ、来賓と演説者のための椅子があちこちに置かれている。ステージの中央に演壇があり、そこにオウエン・ミーニーの姿があった。彼は何百もの人のいない椅子を見下ろしていた──ピックアップのヘッドライトがややまぶしそうだったが。卒業生総代のスピーチ原稿を見るためには光が必要だった。彼はそれを読んでいたのだ。
        「誰にも聞かれたくないのよ──ただスピーチをしたいだけなの」へスターが説明した。
         彼がヘスターとぼくのいるピックアップの運転席に入ってきたとき、ぼくは言った。
        「ぼくも聞きたかったな。ぼくたちに読んでくれない?」
        「終わったんだ」オウエン・ミーニーは言った。「もうすぎたことだ」

         細かいことは忘れてしまっても、読み返すに足りる素晴らしい小説であることさえ覚えておけばいい、ということにいたしましょう。
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        2014/09/28 by 弁護士K

      • コメント 4件
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      オウエンのために祈りを
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 「無神論者のほうが聖書を書いた連中よりも作家としてすぐれているからといって、彼らがかならずしも正しいということにはならない!」彼は不機嫌に言った。「テレビに出ている、あの妙ちきりんな福音伝道師を見るがいい。彼らはマジックを使って信じ込ませようとしている! だけど、本当の奇跡は眼に見えるものではない。目で見ることなしに信じなくてはいけないものなんだ。たとえ説教師が大ばか野郎だとしても、それは神が存在しないという証拠にはならないんだ!」
        「そのとおりだが、『大ばか野郎』という言葉は授業中には使わないようにしたいね、オウエン」メリル牧師はたしなめた。

         翻訳では、オウエンの特徴的な「潰れた声」がゴチック体で表現されています(原書では大文字表記だそうです)。一つ一つが刺激的かつ示唆的なその言葉は、ジョンの心に、そしてぼくたち読者の心に深く刻み込まれます。

        「弟子たちが愚かだというのは本当だ。みんなイエスがいったことをちっとも理解しないし、へまばっかり繰り返している。自分が信じたいと思っているほど神を信じることもできないし、イエスを裏切りさえする。重要なのは、神は、ぼくたちが頭がいいからとか善良だからという理由で愛するのではないということなんだ。ぼくたちは愚かだし、悪いこともするけれど、それでも神はぼくらを愛する。イエスはこれから起きることを、あのアホンダラの弟子たちにすでに語っていた。『人の子は人々の手にわたされ、彼らに殺されるだろう……』覚えているかい? 『マルコによる福音書』にあっただろう?」
        「そのとおりだが、『アホンダラの弟子たち』という言葉は授業中に使わないようにしよう、オウエン」メリル師は言った。

         福音書に描かれたイエスは、自らに対する迫害を預言し、その預言にしたがって受難の死を遂げます。この物語も、オウエンによる預言成就の物語であり、いわば、弟子ジョン・ホールライトによる福音書といえます。

         もちろん、聖書を知らなければ愉しめない、などという小説ではまったくありません。
         ジョンの実父は誰なのか、いつどのようにしてジョンの前に姿を顕すのか。ジョンはオウエンの受難にいかなる役割を果たすのか、そして二人で繰り返し練習したスラム・ダンクは預言成就にどう関わっているのか。
         なんて、「ひとりの体で」のレビューと全く同じパターンですが、そういういかにもアーヴィングらしい魅力は、キリスト教や聖書に関する知識がなくても十分に味わえます。特に、エンディングに向かって、オウエンの予知夢の状況が整い始めるあたり、アーヴィングが書き得た最高のクライマックスではないでしょうか。

         しかし、トロントで教師になったジョンは、自分の生徒たちについて、こうぼやいています。「彼女たちが見逃すのはいつだって描写なんだ。重要ではないと思っているんだよ。彼女たちが求めるのは会話と筋だけさ。だけど描写の中には非常にたくさんのものがこめられている」。
         ぼくたちも、筋や会話の面白さだけに夢中になって、「描写」を見逃すことがないように気をつけましょう。
         例えば、ジョンの祖母に仕える二人のメイド。

        「オウエンは、自分の声を変えようとするのは正しいことじゃないと思ってるんだ」ぼくは言った。
         エセルは、二人分の大皿と野菜のボウルと、ぼくたちの夕食の皿と銀器全部という、とてつもない分量の食器を重そうにかかえてテーブルから離れていこうとしていたが、そこに根が生えたように動かなくなった。祖母はジャーメインが矢のように近づいてくるのを察知して、片手で水のグラスを、もう片手でワイングラスを摑んだ。「いったいなぜ正しくないなんて思うんだい?」祖母は訊ねる。ジャーメインが意味もなくコショウ挽きを持ち去り、塩入れを残していった。

         アーヴィングの作品は、こういったみごとな描写で支えられています。ソースの最後の一滴まで、バゲットでしっかり拭って味わいたい。そんなことを思わせる、とても美味しい小説です。
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        2014/09/28 by 弁護士K

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      あの川のほとりで
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      •  その年若い、とてもまだ十五歳以上にはなっていなさそうなカナダ人は、ためらっている時間が長すぎた。凍りついたような一瞬、川の湾曲した部分の上手にある淵に浮かんだ丸太の上で、少年の足は動きを止めていた。少年が伸ばした手を誰も摑む暇がないうちに、彼の体は滑り落ちて完全に水に没してしまった。

         アーヴィングは、その第12長篇「あの川のほとりで」をこのように語り始めます。

         この作家は、第4長篇の「ガープの世界」から第7長篇の「オウエンのために祈り」が全盛期で、この間の4作はすべて5+、その後のものは3、せいぜい4というのがぼくの評価です。だから、ここしばらくは、新しい作品が出てもすぐに読みたいというほどの気持ちはなくなっていました。この「あの川のほとりで」も、読みたい本リストに入ってはいたのですが、優先順位はそれほど高くなく、つい先日読んでみたというわけです。
         
         しかし、面白いですね、これは。ひさしぶりに。
         出世作である「ガープ」は、作家自身の創作歴を、主人公ガープの作家としての人生に重ねた、いわばフィクショナルな自伝でしたが、この作品の主人公ダニエル・バチャガルボ(ペンネームはダニー・エンジェル)は、第4長篇「ケネディー・ファーザーズ」で名をなし、第6長篇「バンゴアの東」は映画化されアカデミー賞脚本賞を受賞するという、「ガープ」以降のアーヴィングの軌跡を辿ります。アイオワ大学での師匠であるカート・ヴォネガットも実名で登場、主人公にアドバイスを送ったりします。
         はじめて読む人にも十分愉しめると思いますが、アーヴィングのファンであれば、ああ、このシーンは「サイダーハウス・ルール」で、ここは「未亡人の1年」で憶えがある、このシチュエーションは「また会う日まで」とそっくりだ…などと思わずニンマリすること請け合いです。
         
        >> 続きを読む

        2014/08/18 by 弁護士K

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      あの川のほとりで
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      •  一幕目で壁にかけられた拳銃は終幕には発射されねばならない、というチェーホフの言葉(正確かどうか自信がありません)を知ったのは、ポール・オースターの小説だったように記憶していますが、現代文学でその作法を最もよく実践しているのはアーヴィングではないかと思います。
         この小説では、まず直径8インチの鋳鉄フライパン。
         ダニエルの家に壁に掛けられたそのフライパンには、父であるドナルドが、家に侵入してきた熊をこれで殴って撃退したという家庭内の伝説がありました。カナダ人の少年が川に流された夜、ドナルドの部屋から聞こえてきた物音に目覚めたダニエルは、このフライパンを手に父の部屋を覗き込み、そこでこの日もう一つの「事故」が起きてしまいます。それによって、ダニエルと父親の46年間にわたる逃避行が始まり、この夜が父子のツィステッド・リヴァー最後の夜(この作品の原題は「Last Night in Twisted River」)となるのです。

         アーヴィングの小説には珍しく、時系列が直線的でなかったり、登場人物が多すぎてその関係が複雑だったり、という分かりにくさはあるのですが、作家自身が小説のいちばんの醍醐味であるという「次に何が起こるか」という楽しみに満ち溢れていることは間違いありません。その物語には、1975年のサイゴン陥落、2001年の同時多発テロといった現代史も巧に織り込まれています。
         
         物語の終着点を決めて、そこから前へと遡っていくというダニー・エンジェルの小説作法は、アーヴィング本人のそれだそうです。
         小説の最終盤、逃避行を終えた主人公は、ペンネームを捨て、本名であるダニエル・バチャガルボとして作家生活を再スタートさせようと考えます。そのバチャガルボの第1長篇となるべき物語を終着点から前へと遡り、最初の1行を発見したところで、この「あの川のほとりで」という小説の幕は閉じます。

        「その年若い、とてもまだ十五歳以上にはなっていなさそうなカナダ人は、ためらっている時間が長すぎた」
         ああそうだ──さあまたやるぞ──始めるんだ! と作家は思った。
         あまりにもたくさんの大切なものを失ったが、ダニーは物語というものがどれほどすばらしいか知っていた──とにかく押しとどめることができないものであることを。自分の人生の大冒険がまさに始まろうとしているのを彼は感じていた──彼の父親もきっと同じように感じていたに違いない、ツィステッド・リヴァー最後の夜の、あのつらい切迫した状況のなかで。

         さてさて、こんな集大成みたいなものを書いてしまったアーヴィング、第13長篇「ひとりの体で」はいったいどうなっているのだろう、と興味津々なのですが、思いがけないロビン・ウィリアムズの訃報に接し、「ガープの世界」の再読を始めてしまったKでありました。
        >> 続きを読む

        2014/08/18 by 弁護士K

      • コメント 3件
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      熊を放つ
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • アーヴィング体験の最初はこれだったか、「ガープの世界」だったか、今ではよく覚えていない。

        この小説のことを考えてみたら、アーヴィングはどこかにずっと止まった人物を書く人ではないことにあらためて気づいた。

        >> 続きを読む

        2015/04/21 by soulfull

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