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ドイツのギムナジウム(中高一貫校)を舞台に、寮生活を送る五人の五年生(十五歳前後)の生徒たちを中心として、クリスマスまでの数日間が描かれます。五人の生徒たちには、正義漢の優等生、腕白な食いしん坊、やや理屈っぽい参謀タイプ、書名の"飛ぶ教室"の劇作を担当している作家志望の文学愛好家、女性的な外見の気弱な少年といった、それぞれわかりやすい属性が与えられており、彼らの友情やそれぞれに抱える悩みが本作のポイントとなります。そして、この五人のほかに彼らが慕う人物として、舎監を兼任する一教師である"正義さん"ことヨハン・ベーク先生と、学校付近にある、かつて列車として使われていた車両に住む謎の多い"禁煙さん"という二人の大人が存在し、彼ら尊敬するにふさわしい大人たちに見守られて少年たちが学園生活を送っていることも人物配置上の大きな特色です。登場人物の年齢がやや高いことや、女性がほぼ登場しないことを除けば、世界名作劇場の原作にでも選ばれそうな内容であり、正統派児童文学作品として読んで差し支えなさそうです。また、本書における訳の特徴かもしれませんが、あからさまに子供向けの文体とはなっていないため、大人でも違和感なく読み通すことができます。なお、書名の"飛ぶ教室"は、前述のとおり少年たちがクリスマスに演じる劇作品のタイトルであり、教室自体がさまざまな場所に移動して課外授業を行うというSFと呼ぶべき内容ですが、基本的に作品内の道具として扱われるだけで、作品のテーマを託すような特殊な要素を含んでいるようには見受けられませんでした。通読後の主な所感として、他校生徒との抗争における暴力やいじめのような行為も扱ってはいるものの、思春期の難しい年ごろの少年たちを主人公に据えているわりには葛藤が少なく、"正義さん"、"禁煙さん"といった大人たちが理想的すぎるうえ、彼らに対する子どもたちの反応があまりにも素直なため、かえって違和感があります。執筆当時のドイツはナチスの支配下にあったとされており、そのことは作品に直接的な影響はありませんが、優等生的な作品内容に落ち着いた一因だろうかなど、邪推しないでもありませんでした。補足として、まえがきとあとがきでは作者自身が登場して本文を挟む構成となっており、あとがきではささやかなサプライズが用意されています。 >> 続きを読む
2020/09/02 by ikawaArise
本書のまえがきを読むと著者の人生と正義に関する読者への痛切なメッセージがあり、何かただならないものを感じる人も少なくないと思います。それはこの本が書かれた時代を反映しています。それは、著者の母国ドイツでナチスが台頭し、世界中が人類史上最悪の戦争に向かっていた時代です。著者はナチスに迫害されながらもドイツに留まり続け、次世代を担う子供たちの為に、メッセージを送り続けていたのです。元気の良い男子寄宿学生たちが繰り広げる物語。読み終わって感じたのは、懐かしさでした。昔の子供達ってこんな感じだったよなとしみじみ感じました。様々な背景を持った少年たちが一緒に喜んだり悲しんだり、時にケンカもあったりで、ちっともじっとしていない。生命力にあふれた少年たちの物語は、クリスマス集会での「飛ぶ教室」という題の劇の上演に向けて集束してゆく。彼らは、様々な経験をし、また人生の師とも呼べるような大人たちとの出会い等を通して人として成長してゆく。物語のエンディングはクリスマスにふさわしい素晴らしいもので、図らずも少しほろりとしてしまいました。 >> 続きを読む
2017/12/28 by くにやん
列車の中でお金を盗まれてしまったエーミールが、仲間を見つけ、その仲間たちと協力して、どろぼうを捕まえるお話。このお話に登場する子どもたちはみんな自立してる。自分の義務を理解しているし、自分の行動には責任を持つし、だからこそ、自分自身に誇りを持っている。こんなにかっこよく真っ直ぐに、私はもう生きていないので、読んでる間中ちょっと後ろめたかった。それから、久々に爽やかなお話を読んだなと思ったし、こんな風に生きていける世界はやっぱりいいなとも思った。世の中に悪い大人がいても、子どもたちは真っ直ぐに育つことができる、近くに良い大人さえ居れば。 >> 続きを読む
2018/12/24 by はろ太
2周目。高校生の少年5人が繰り広げる青春ストーリー。実業学校とのハラハラする決闘、センスのいいギャグ、ワクワクするクリスマスの雰囲気。読んでいて私の心は本の中の彼らのように輝いた。彼らは高校生。高校生にしては(あるいはそれが本来の高校生か)立派な大人のようにしっかりしていて、それでいて子供のようにあどけない。このギャップがけなげでたまらない。先生は生徒を大切にし、生徒は先生を尊敬する。たとえ生徒が愛おしくて頭を撫でたくても我慢したり、先生が大好きでも抱きついたりしなかったりする両者の立場のわきまえがまたしっかりしているなあと感心する。初読の時とはまた違う気づきを持って読めた。このギムナジウムの雰囲気は、女や年齢が離れている者には味わえないものがあるんだと思っている。男同士の学生でしか味わえない何かが。 >> 続きを読む
2015/06/07 by Nanna
【KastnerErich】(KastnerErich) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)
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