こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


Christopher Priest

著者情報
著者名:Christopher Priest
生年~没年:1943~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      逆転世界
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      •  何とも奇妙なSFです。
         ここは、宇宙のとある領域にある星です。そこにある列車のようにレールに乗った都市が舞台です。
         その都市は7層からなる大都市で、大勢の人達が住んでいます。
         レールに乗っていることから分かるように、この都市は移動し続けなければなりません。
         毎年、36.5マイルずつ、北へ北へと移動し続けます。
         予めそんなレールなど敷かれているわけはないので、どんどんレールを作り続けていくのですが、その距離をかせげないと大変なことになってしまうのです。

         過去、その都市が過ぎ去った後には、それまで移動してきた分だけのレールがあるので、それをはがして都市の先に移設します。
         一般人が都市の外に出ることは厳禁なのです。ただ、レールを敷く作業員だけを除いては。
         都市の住民は、一生を都市の中で過ごして死んでいきます。都市の外に出ることはとても恐ろしいことなのです。
         そして、都市がひたすら北を目指すのは、南は危険だからです。

         主人公は、成人してレール施設員となります。
         日々、都市の後ろに残されたレールをはがしては都市の前に新しいレールを敷く仕事です。
         ある事情から、彼は、都市を離れて南に向かうことになります。
         ええ、危険な南へ。
         そこで彼が体験したことと言えば、それは……

         彼は二人の女性と一緒に南へ旅することになるのですが、南に近づくほどに、段々女性が太っていく……というか、平べったく伸びていくのですよ。これが南の危険なのですね。

         双曲線って覚えていますか?
         数学で、グラフを描きましたよね。
         太陽が、まるで双曲線のように歪んでいくのが南の世界なんです。重力異常が起きているのでしょうか?
         だから、都市はどんどん北へと逃げなければならなかったのですね。
         でも彼自身も、南にあまりに近づきすぎてしまったため大変なことになります。

         初読の時、一体どんな世界なんだっていう、ものすごいインパクトを受けた作品でした。 古い作品なのですが、いつまで経ってもその印象は残り続けています。
         私が読んだのは「サンリオSF文庫」でした。今はこの文庫自体なくなっちゃっていますが、今は創元SF文庫から出ているようです(ぱちぱち)。
         すごく不思議な感覚を味わえるとっても面白い作品です。
         えっとね、敢えて書かなかったけれど、もうひとつ「でんぐりがえし」があるのですよ。オチっていう奴ですね。唖然としました。その点はご自身でお楽しみください。
        >> 続きを読む

        2019/03/12 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      双生児
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 【極めて複雑かつ錯綜し、緻密で巧妙な歴史改変SF】
         主人公は、ジェイコブ(ジャック)・ルーカス・ソウヤーと、ジョゼフ(ジョー)・ルーカス・ソウヤーという一卵性双生児の兄弟です。
         二人とも、イニシャルがJLと、同じになってしまうのですね。
         舞台となるのは第二次世界大戦の英独戦争です。

         歴史作家のスチュワート・グラットン(!)は、第二次大戦中の記録に現れるソウヤー空軍大尉に関心を抱き、遺族会機関誌等々にソウヤー空軍大尉に関する情報提供を求める旨の広告を打ちます。
         あるサイン会の日、会場を訪れたアンジェラ・チッパートン(旧姓ソウヤー)(!!)は、「あなたが探しているのはもしかしたら私の父ではないかと思うのです」と言い、父親が書き残したという回顧録の写しを提供するのでした。
         回顧録を読んだスチュワートは、その自筆原本を見たいと考え、アンジェラが残した住所を尋ねるのですが、どう探してもアンジェラとは巡り会うことができないのでした。

         その後、様々な資料に基づき、ソウヤー兄弟の人生が語られていくのですが……。
         二人は大学でボート部に所属し、二人乗りボートのペアを組んでいました。
         二人は、来るベルリン・オリンピックの英国代表に選ばれ、自分たちのワゴン車にボートを積んでベルリンに赴きます。
         ジャックは、母国の栄誉のためにもオリンピックで良い成績を残すことこそ全てと考えているのに対して、ジョーは、ベルリン・オリンピックはナチスが国威発揚のために開催するもので、そんなものに協力などしたくないと考えています。
         この辺りから、徐々に二人の気持ちが離れて行くのでした。
         二人は、ドイツ出身の母の知人であるユダヤ人一家の家に寄宿しながら出場日を迎え、見事銅メダルを獲得します。

         ジャックは、当初の予定通り閉会式までベルリンにとどまるつもりでいたのに、ジョーは、直ちに英国に帰ると言い張るのでした。
         はっきりした理由も語らないジョーでしたが、やむなく二人は帰途につきます。
         その車中、ジョーが寄宿していた一家の娘であるビルギットを車内にかくまっていることが判明します。
         一家はナチスのユダヤ人迫害が苛烈になっていることに耐えられず、全員でドイツを脱出することを考えていたのですが、一家揃って出国するのはあまりにも目立つということで、後に合流する計画で、娘のビルギットをジョーに託していたのですね。

         実は、この計画はジョーらの両親も承知していることで、ジョーはナチスに協力することになるベルリン・オリンピックなどに参加する気はなかったのですが、ビルギットを救い出すためだけにベルリンに来たということが分かります。

         実は、ジャックもジョーも、美しいビルギットに恋をしていたのですが、ジャックにしてみれば自分だけがのけ者にされていたかのようであり、深く傷ついたのでした。
         その後、兄弟はボートのペアも解消してしまい、ジャックはボートと共に関心を持っていた航空機の操縦の道に進み、軍隊に志願します。
         ジョーは、ビルギットと結婚し、良心的兵役拒否者として正規登録して赤十字の救急車の運転手となります。

         ここで二人の兄弟の人生は決定的に別れていくのですが、二人が一卵性双生児であり、イニシャルまで同じだったことから混乱が生じます。
         後にチャーチルは、空軍大尉であるソウヤーに目を留めることになるのですが、その記録は混乱しており、良心的兵役拒否者としての登録記録(それはジョーの記録なのですが)が混在していたため、「良心的兵役拒否者なのに空軍大尉とはどういうことだ? 調査して欲しい。」とのチャーチルの発言が記録に残り、それが歴史作家のスチュワート・グラットンの興味を引いたというわけなのでした。

         こう書いてくると、何だか歴史大河小説のように思えますよね。
         ところがどっこい、作者はクリストファー・プリーストです。
         そう簡単に済むわけがありません。

         その後、ジャックに関する記録、ジョーに関する記録が交互に語られるのですが……読み進める内に何かおかしいと気づくことでしょう。
         二人の話がことごとく食い違うのです。
         また、ジャックの話に出てくる歴史は史実通りなのですが、ジョーの話に出てくる歴史はどこかおかしいということにも気づくでしょう。
         読者は、おそらく、もう語り手を信頼することができなくなっているはずです。
         これは一体どういうことなのだ?
         パートによっては、ジャックとジョーがまるで入れ替わってしまったかのような記述すら見られます。

         そうなんです、この作品では、ジャックが過ごしている歴史と、ジョーが過ごしている歴史が別の歴史を辿ってしまっているのです。
         しかも、ジョーの歴史は史実から改変されている!
         それはまるで、元々は仲が良く、一緒にボートのペアを組んでいた兄弟が、ある時から徐々に離れていき、最後には全く別の人生を歩み出したことと同じように、二人が歩いている歴史が別のものになってしまっているというSFに私は読めました。

         だから、二人が語るビルギットとの関係も異なるものになっているのです。
         確かに、ビルギットはジョーと結婚しました。
         しかし、ジョーは赤十字の仕事に追われ、なかなか家に帰ってこられなくなります。
         ビルギットはユダヤ人ではありますが、英国側から見ればドイツ人でもあり、「あの女、スパイではないのか?大体夫は腰抜けの兵役拒否者だぞ」と見られ、強制収容の危機に直面します。
         ビルギットとしては、どこにいるか分からないジョーを頼りにすることもできず、空軍基地にいたジャックに助けを求めてしまうのです。
         ジャックも、一度はビルギットのことを諦めてはいたものの、想いは持ち続けていました。
         
         ジャックの語るところによれば、二人は自然に結ばれたというのです。
         ところが、その後、ジョーがロンドン爆撃の際に死亡してしまい(いや、ジョーの話では確かに爆撃で負傷したけれど死んでいないというのですが……)、それが二人のやましさをあおり立てることになってしまい、結局二人は結ばれることができず、ビルギットは別の男性と結婚し、子供を産んだという話になっています。
         ただ……その子供の面影にはソウヤー兄弟の面影があり、ジャックは、これは自分の子供だと確信したというのですね。

         でも、このことに関するジョーの話は全く異なります。
         それがどういう話なのかは本編をお読みください。
         そして、それによって、冒頭に出てきた歴史作家のスチュワートと、父親の回顧録を持ち込んだというアンジェラがどういう人物なのかが驚きと共に分かるという仕掛けになっています。

         さらに複雑さに輪をかけるのは、ジョーが負傷して記憶に混乱が生じたと書かれていることです。
         記憶混乱の結果、ジョーは現実としか思えないような鮮明な夢を繰り返し見ることになります。
         ある出来事を体験しているのですが、しばらくすると目が醒め、「あれは夢だったんだ」と気づくのですが、再び眠りに堕ちるとまた同じようなシーンがくりかえされるものの、今度は別の展開を辿り……それも夢だったと気がつくという、まるで、何度も同じ人生がリセットされて繰り返されるような混乱に陥るのです。
         それを読者も同じように読まされることになるため……。
         そして、その様な混乱した夢と現実に出てくる歴史は、史実とは異なっているわけで、それはどの分岐点で違う歴史に行ってしまったのか?という謎にもなります。

         いや、とにかく複雑巧妙な筋立て、構成になっています。
         注意せずに漫然と読んでしまうとただの歴史大河ロマンみたいに感じるだけで、ただストーリーが混乱している小説と思い込んでしまい、この仕掛けに気がつかないかも(そんなことはないか)。
         こういう仕掛けがある作品ですので、せめて第二次世界大戦の英独戦争の簡単な史実はおさらいしてから読んだ方が良いかも知れません。
         それを知らないと、作中で史実が改変されているということに気づかないまま余計混乱してしまうことになるでしょう。

         いや、とんでもない作品だ。
        >> 続きを読む

        2019/05/27 by ef177

    • 1人が本棚登録しています

【Christopher Priest】 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚