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QueenEllery.

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このランキングは1日1回更新されます。
      Xの悲劇
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • レーン四部作の第1作目、ようやく読了。
        読書ログでの皆さんのレビューを読んでいつかは読んでみたいと思っていてようやく手に取りました。
        今まで読んでいたミステリ―が軽いものが多かったので慣れないせいなのか、新訳だからきっと読みやすいのでしょうが、それでも結構な時間がかかってしまいました。
        登場人物の名前を覚えるまで何度も行きつ戻りつしつつ、中盤頃からようやく覚えて読むスピードがアップ。
        ドルリー・レーン氏の状況から見極める、解決への糸口を見つけていくのは圧巻です。
        3つの犯罪も実に計算されているな、と感じました。

        自分でも推理してみるのですが、盲点だらけで足元にも及ばなかったです(笑)
        なぜ【X】の悲劇なのか、最後の最後で腑に落ちました。
        これに続くYの悲劇、Zの悲劇もこのような感じなのでしょうか。

        それにしても、なぜか私の頭に浮かんでくるドルリー・レーン像はテレビドラマのポアロに近いちょっと小太りの男性なのです。
        何度も小説内で、レーンの体型や風貌についての説明が出てきて、引き締まって若々しい60歳のはずなのに、どうしてもポアロ像が消えない(;^_^A
        >> 続きを読む

        2019/08/11 by taiaka45

      • コメント 3件
    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      Yの悲劇
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね! dreamer Tukiwami
      • 【ミステリの古典超名作は再読に耐えられるか?】
         本書は、海外ミステリの古典であり、かつ超名作と評価されている作品です。
         バーナビー・ロス名義(これがエラリー・クィーンの別名ペンネームであることはご承知のとおり)で書かれた4つの作品(『X』、『Y』、『Z』の各悲劇と『レーン最後の事件』)の中でも最も評価が高い作品であるばかりではなく、これまでに書かれたミステリの中でもトップクラスの名作との評価は揺るがない作品でしょう。

         私も中学生の頃この作品を読み、他の同時期に読んだミステリの中には結構忘れてしまった作品も多い中で、さすがにこの作品だけは犯人もトリックもはっきりと記憶している作品でした。
         この度、本当に久し振りに再読してみたわけですが、内容を忘れてしまっている作品であればいざ知らず、犯人もトリックもはっきり記憶している作品だと、いかに名作と言えどもミステリは再読に馴染まない、再読してもあまり面白くないのではないかと危惧しつつ読み直してみました。

         結論から言えば、全くの杞憂に終わりました。
         犯人もトリックも分かっていても、やはり面白く読むことができました。
         それだけではなく、犯人等が分かって読んでいるだけに、初読時には気付かなかった(というか無意識に読み飛ばしていた)伏線にも気が付き、結構気を遣って書いているんだなあということが分かったり、あるいは、記憶は確かだと思っていたのに実は正確ではなかったという点もあったりで、結構新鮮に読めたんですね。

         それではどんな作品なのかをご紹介しましょう。
         事件の舞台となるのは、世間から『Mad hatter』(気ちがいハッター)と揶揄されているハッター一族の屋敷です。
         発端は、当主であるヨーク・ハッターと思われる者の自殺死体が発見されたことでした。
         毒をあおって海に転落したようで、死体はひどく損傷していたのですが、検死の結果、ヨークに間違いないだろうということになりました。
         何故自殺したのか、その理由ははっきりしないのですけれど。

         ハッター一族は大富豪なのですが、その一族には忌まわしい血が流れていました。
         作中、はっきりとは書かれていないのですが、一族のカルテには『ワッセルマン反応』という項目が記載されていることが書かれていますので、おそらく梅毒という設定なのでしょう。
         とにかく、ハッター家の多くの者は、暴君であったり、異常に短気であったり、粗暴であったり、残酷であったりと、奇矯な行動が目立ち、到底まともではないのです。
         なので、世間からはアリスに登場する帽子屋をもじって『Mad hatter』(気ちがいハッター)と呼ばれていたのですね。

         さて、このハッター一族、当主が自殺しただけでは済まず、今度は自殺したヨークの孫に当たるまだ幼い少年のジャッキーが誤って毒を飲むという事件が起きます。
         ヨークの娘のバーバラは、盲聾唖という三重苦を抱えている女性なのですが、母親のエミリーはバーバラを溺愛しており、健康のためということで、毎日決まった時間に必ず卵酒を飲ませていました。
         ジャッキーはとんでもない悪ガキなのですが、バーバラが飲む卵酒と知りながら、それを盗み飲みしたところ、卵酒には猛毒のストリキニーネが仕込まれていたため、ジャッキーは中毒を起こして倒れてしまいます(一命は取り留めるのですが)。
         何者かがバーバラの殺害を企てた?
         確かに、バーバラはその障害のために一族から疎まれていたことは事実でした。

         そして、第二の事件が発生します。
         バーバラは、母親のエミリーと同じ寝室で、ベッドを並べて寝ていたのですが、ある夜、何者かが二人の寝室に侵入し、エミリーの頭部をマンドリンで殴打するという事件が起きたのです。
         エミリーは殴られたショックで心臓麻痺を起こして死んでしまいます。
         しかし、何故、マンドリンなどという凶器を使ったのでしょう?
         寝室には果物好きなバーバラのためにいつも果物が用意されていたのですが、その中の梨の一つだけから毒物が検出されました。
         エミリーは、果物はあまり好きではなく、特に梨が嫌いで絶対に食べないということは一族の者みんなが知っていることでした。
         ということは、犯人はバーバラを殺害しようとして梨に毒物を仕込んだのだけれど、それをエミリーに見とがめられたためとっさに持っていたマンドリンでエミリーを殴り、その結果エミリーは死んでしまったということなのでしょうか?
         しかし、それにしても何でマンドリンなんて用意して毒を仕込みに行ったのでしょう?

         警察は上記のような推理から、犯人のターゲットはバーバラなのだから、バーバラに対して殺意を持っている者が犯人だという線で捜査を進めるのですが行き詰まってしまいます。
        探偵役のドルリー・レーンは、耳が聞こえない引退したシェークスピア俳優なのですが、彼はもちろん真相にたどり着きます。
         しかし、これがとんでもない真相で、レーンもただ犯人を指摘して警察に検挙させれば済むという話ではないと考え、悩みに悩んでしまうんですね。
         結局、レーンは、ある出来事を機にこの事件から一切手を引くと宣言し、真相を説明しないままハッター家から去って行ってしまうのです。

         もちろん、その後、レーンによって真相が語られるのですが、これは……。
         実は、ラストの本当にラストの部分は、どうやら私は勘違いして記憶していたようです。
         このラスト、はっきりと説明されずに終わるため、どう解釈するかはもしかしたら読者によって見解を異にするかもしれません。
         私は、レーンが……ここは書けないなぁ。

         実は、このレーン4部作は、個々の事件ごとにそれなりの結末が用意されているのですが、シリーズ全体の結末として『レーン最後の事件』が書かれているという構成になっているんですね。
         そのシリーズ全体の構成もかなりショッキングなものなのですが、でも、実は既に『Y』でも……。
         おっと、もうこれ以上は書けません。

         いずれにしても本作はミステリ史上に残る超名作であることは間違いなく、海外ミステリを読んでみたいけれど何を読めば良いのか分からないと迷っている方がいたら、本作は絶対に外せない作品です(本作を読むなら、『X』から順を追って『最後の事件』まで読み通すことをお勧めします)。
         また、既に読んだという方も、本作は十分再読に耐えるミステリであると思いますので、機会を見て読み直してみるのも面白いと思います。


        読了時間メーター
        ■■■     普通(1~2日あれば読める)
        >> 続きを読む

        2019/06/16 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      レーン最後の事件
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 【ミステリ史上に残る衝撃の結末】
         『X』、『Y』、『Z』の三悲劇に続く、名探偵ドルリー・レーンものの最後の作品です。
         三悲劇のレビューでも書いてきましたが、レーン・シリーズは必ず順番通りに読まなければなりません。
         このレビューもネタバレは回避しますが、まだ三悲劇を読んでいないという方は、決して本作に手を出してはいけませんよ。

         ドルリー・レーンは、引退した名シェークスピア俳優なのですが、耳が全く聞こえません。
         そのために引退を余儀なくされたのですが、引退後、読唇術を完璧にマスターしており、電話には出られないものの、日常生活は苦も無くこなしています。
         本作でのレーンは既に90歳を超え、健康も損ねていますが、莫大な資産をもとに、ハムレット荘と呼ばれる邸宅で悠々自適の生活を送っているという設定です。

         最後の事件は、既に警察官を引退して私立探偵事務所を開いているサム元警視のもとに奇妙な依頼が舞い込むところから始まります。
         青と緑に染めたけったいな顎鬚を生やし、青いサングラスをかけ、何枚も服を着こんでいる男性が、一通のマニラ封筒を持参し、その封筒を厳重に保管して欲しいと頼んできたのです。
         封筒の中身は明かせないけれど、毎月20日に電話をするので、その場合には何事も起きていないと判断し、保管を継続して欲しいと。
         万一、毎月20日の電話が無かった場合には、レーン立ち合いの下にその封筒を開けて
        中に入っているものを見て欲しいと言うのです。
         封筒の中に入っているものは、100万ドルの値打ちがあるものにつながるヒントが書かれているのだと。

         こんな奇妙な依頼は断ろうかとも思ったサムですが、レーンの名前を出されたことから引き受けてしまいます。
         しかし、この依頼者、絶対変装している。
         しかも、何というおかしな変装なのだ?

         その後、あるバス会社の運転手から、友人のドノヒューが行方不明になったので探して欲しいという依頼が舞い込みます。
         ドノヒューは、元警察官で、サムも知っている男でした。
         彼は、警察官を退職し、現在は稀覯本を保管、展示しているブリタニック博物館の守衛をしているのです。

         ブリタニック博物館は現在改装中で、一般客の見学はできないのですが、問題の日は教職員の団体が見学を申し込んだため、特例として見学が許されたというのです。
         バスの運転手は、教職員の団体を博物館まで連れて行き、そこで友人のドノヒューと立ち話をし、その日の夜、一緒にボクシングの試合を見に行く約束をしました。
         ところが、しばらく後、ドノヒューは突然博物館から走って出ていき、その後行方不明になったというのです。
         連絡が取れなくなってからまだそれほど時間が経っているわけでもないので、警察に届けるのもどうかと思い、サムに頼みに来たと言います。
         かつての警察官仲間の事件ですので、サムも引き受けないわけにはいきません。

         サムは、娘のペーシェンスと共に、さっそく博物館に出かけますが、やはりドノヒューは出勤しておらず、連絡は取れないといいます。
         その際、改修中の博物館の、展示ケースのガラスが破られていることに気付きます。
         何か事件でも?
         と尋ねますが、ただの事故だというのです。
         改修工事中に作業員がガラスを割ってしまったらしいということなのですが、ケースの中のものは無くなっていないので問題ないと。

         その後、例の封筒を預けて来た男からの連絡が途絶えます。
         サムは、男との約束どおり、レーンに連絡し、その立ち合いの下、封筒を開けてみました。
         封筒の中にはさらにもう一つの封筒が入っており、その封筒の中には、上方にレターヘッドが入った便せんに『3HS wM』とだけ書かれていたのです。
         なんだ、これは?

         その後、レーンも捜査に加わり、博物館の割れた展示ケースの中に入っていた稀覯本が一冊すり替えられていることが判明します。
         それもおかしな話で、もともと入っていた初版本がなくなり、その代わりに第二版が入れられていたのです。
         そして、第二版は現存していないと考えられていた本なので、実は初版本よりも価値が高い本だというのです。
         何故、より価値の高い本とすり替えたりしたのでしょう?

         そしてさらに奇妙なことには、盗まれたはずの初版本が博物館に送り返されてきたのです。
         しかも革装の表紙の一部が切り裂かれており、その修理代も添えられて。
         表紙の内側を覗くと、何かが隠されていた痕跡がありました。
         初版本を盗んだ者は、表紙の内側に隠された紙のようなものが欲しくて盗んだのではないか?

         その後、遂に殺人事件が発生します。
         ある小屋ごと爆破されてしまうのです。
         その小屋には、おそらく、初版本の表紙内側から抜き取られた紙が隠されていたと思われるのですが……。
         死体も損傷がひどく、誰なのかは分かりません。
         そして、死体には銃創が発見されましたので、銃撃された後、小屋ごと爆破されたものと考えられます。

         この過程で、ハムネット・セドラーというブリタニック博物館の新任館長と、エールズ博士という謎の人物の身元についての疑惑が持ち上がります。
         どうもこの2人は似ているんです。
         あるいは一人二役なのか?

         爆破された小屋は、エールズ博士が仮住まいとして利用していたもので、小屋の中から例の青と緑に染めたおかしな付け髭や青いサングラスが発見されていましたので、サムに奇妙な依頼をしてきた男はエールズ博士だと思われます。
         とすると、小屋で発見されたのはエールズ博士ということなのでしょうか?
         セドラー館長も行方不明になっていましたが、後に発見されます。
         そして、ある事実を語るのですが……。

         しかし、ただ一人、ペイシェンスだけはある事に気がついてしまうのです。
         それは……。

         こういったミステリなのですが、とにかくラストの衝撃がものすごく、最初に読んだ時には呆然とさせられました。
         私は、最初にこのラストを読んだ時、しばらく固まりましたよ。
         それと共に、深い感慨を感じたのです。

         今回は何度目かの再読でしたが、結構忘れており、初読と変わらない感覚で楽しむことができました。
         サムが預かった封筒に書かれていた暗号のようなものの謎もすっかり忘れていたのですが、どういうわけか今回はすぐにその意味に気がつきました。

         この作品、稀覯本にまつわるミステリになっており、作者の一人(エラリー・クイーンは、アルフレッド・ダネイとマンフレッド・リーの合作ペンネームであることはご存知のとおり)であるダネイもミステリ稀覯本のコレクターでしたので、その知識も使ってのミステリになっています。
         ですから、暗号に書かれていることの意味は分かったにせよ、それがどういう意味を持つものなのかはちょっと一般人には分かりにくいなぁ(まあそれは作中で解説されますし、問題ないんですけれどね)。

         こうしてレーン・シリーズを再度読み通してみると、クイーンはこの4部作を最初からその全体を構想して書き始めたと感じられます。
         そもそも、こういう決着をつけることを当初から意識して『X』から世に送り出したのでしょう。
         ですから、シリーズ中最も低調な『Z』もペイシェンスなどというキャラを突然持ち出し、その一人称で書いたのでしょう。
         なお、本作は通常通り三人称で書かれており、『Z』で見られたペイシェンス問題は緩和されています(それほど鼻につきません)。

         レーン・シリーズはミステリの黄金時代に書かれた傑作群であり、特に『X』と『Y』は、ミステリ好きなら外せない名作です(というか、レーン・シリーズ自体通読すべきでしょう)。
         本作を、純粋にミステリとして評価するならば、なかなか凝った構成にしていて評価はできるものの、クイーンらしい緻密な推理というにはやや欠ける点がないとは言えません。
         クイーンの一流作品に比べてしまうと、やはりやや劣る点は見受けられます。
         しかし、それを補って余りあるシリーズ全体の構成、本作の衝撃度という点から必読の作品であるという評価は揺らがないと思います。

         何度も書きますが、このシリーズ、ミステリ好きならマストで読むべき作品であり、また、必ず『X』から順番に読んでください。
         まだ未読であるという幸せなあなた、あなたはこれからこの名作を手付かずで楽しめる大変ラッキーなポジションにあります。
         どうか、虚心坦懐に、『X』から読み始めてください。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
        >> 続きを読む

        2019/06/18 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      ローマ帽子の秘密
      カテゴリー:小説、物語
      いいね!
      •  シリーズものでは何が一番?と言われたら即、クィーンの国名シリーズと答えます。
        十年ぶりかの新訳で再読。私が最初読んだ時は、~の謎、というタイトルでした。

         一番何が好き、と聞かれると『ギリシャ棺の謎』になるのでしょうが、それは、完全無欠でスーパー探偵であるエラリー・クィーンが、途中「推理を間違える」からです。

         ローマ帽子がエラリー・クィーンの「国名シリーズ」第一作目です。書かれたのが1929年。100年近く前なのに古びないクィーンもの。これからも読み継がれていくと思います。

         結構、最初はタイトルと内容が一致していて(だんだんタイトルにつく国名は関係なくなります)ローマ劇場で舞台上映中に起きる殺人。目撃者がいそうでいない、もどかしさ。

        最初は、エラリーよりも、父、クィーン警視が活躍します。
        相変わらず登場人物多いけれど、人物整理がものすごく上手いミステリです。
        >> 続きを読む

        2018/06/07 by 夕暮れ

      • コメント 2件
    • 3人が本棚登録しています
      Zの悲劇
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 【ドルリイ・レーンものの中では最も低調な作品。その原因は?】
         名探偵ドルリイ・レーンが登場する作品は、『X』、『Y』、『Z』の三悲劇に加えて『最後の事件』の全部で4作あります。
         その中で最も出来が悪いのが『Zの悲劇』ではないかと思うのですが、おそらくこの評価には多くの方も異論が無いのではないかと思います。

         本作は、典型的なフーダニットもので、悪辣な2人の兄弟のもとに、次々と「秘密をバラされたくなければ金を払え」という恐喝の手紙と共に、切断されたらしき箱の一部が送りつけられ、兄弟はいずれもこの恐喝に屈して金を用意するものの、結局殺されてしまうという事件の謎を追います。

         本作は、レーンものの最初の事件である『Xの悲劇』から11年後という設定になっており、ブルーノ検事はニューヨーク州の知事になっており、サム警部は警察官を退職して私立探偵事務所を開いています。
         レーンは相変わらずシェイクスピア荘で生活しているのですが、老いには勝てず、すっかり病のためにやつれてしまっています。
         こんな面々の中で(特に前半で)探偵役をつとめるのがサムの娘であるペイシェンスということになります。

         第一の殺人事件は、その恐喝の手紙の送り主として名前が書かれているドウが刑務所から出所したばかりだったということもあり、ドウが犯人に間違いないと思われます。
         しかし、ペイシェンスは、『右利き、左利きの推理』を展開し、ドウは犯人ではないと主張し、サムもこれに同調するのです。
         とはいえ、ドウが犯人ではないことを立証できる証拠は皆無であることから、結局ドウは殺人罪で起訴されてしまうのでした。

         ペイシェンスとサムは、レーンに助けを求め、レーンもペイシェンスの推理を是認して諦め切っているドウの弁護士を説得し、無罪主張をさせるのですが陪審員の判断は、有罪、無期懲役というものでした。

         その後、ドウが脱獄し、その間に第二の殺人が起きてしまうのです。
         こうなるとドウが二つの殺人を犯したという疑いがますます強まり、しかもドウは第二の殺人現場から被害者の拳銃を持ち去っていたこともあり、容疑は決定的になってしまいます。

         ドウは再び逮捕され、第二の殺人事件でも起訴され、今度は死刑判決を受けてしまうのです。
         レーンは、ドウはいずれの殺人事件の犯人でもないと主張するのですが、やはり証拠があるわけではなく、また、真犯人も絞り切れずにいるのです。
         ドウの死刑執行の日は一日、一日と迫ってきます。
         ドウはこのまま死刑を執行されてしまうのか?という緊張感溢れる展開になっています。

         さて、このような作品なのですが、どこが問題であまり高くは評価できないのでしょうか?
         私がそう考える原因はいくつかあるように思えます。

         第一に、ペイシェンスを探偵役に持ってきてしまったことが問題だと思うのです。
         最終的にはレーンの推理によって決着がつけられるのですが、作品の半分位まではレーンはほとんど登場せず、もっぱらペイシェンスが捜査、推理を担当するのです。
         しかも、このペイシェンスが魅力に乏しい。
         この時代の活発な現代女性を描いているのでしょうけれど、私には鼻持ちならない高慢ちきな生意気女としか見えませんでした。
         こんなキャラが前面に出て、しかも本作は彼女の一人称で語られるので、レーンが登場した後もペイシェンス色が強く残り続け、彼女を気に入ることができない読者にとっては本作全体が何となくイヤ~な感じに思えてしまうのです。
         なんともレーンの影が薄すぎるのです。

         まあ、ペイシェンスを探偵役に持って来ざるを得なかったのは、次作への布石としてやむを得ないところもあるのですが、それにしてもペイシェンスのキャラは私には魅力が感じられなかったのです。

         第二に、レーンが是認するペイシェンスの推理も含め、本作の推理は全般に脆弱であると思います。
         ちょっと書いた『右利き、左利きの推理』だって、「本当にそうなの?」、「いつもいつもそうなるとは限らないのではないか?」という素朴な疑問がぬぐい切れないのです。
         また、第二の殺人に関し、恐喝の手紙と共に送り付けられた箱の一部を誰が送ったのかという点についても、レーンは、一応こういうことだろうという説明はするものの、それは余りにも都合が良過ぎるもので、しかもそう考える根拠は何も示されず、単なる思い付きにとどまってしまっているのです(その検証もされません。言いっぱなし)。
         さらに、真犯人を名指しする推理も、消去法には一応基づいてはいるものの、クイーンの他の作品のような論理必然性、説得力に乏しく、まったくクイーンらしからぬ杜撰な推理と思えてならなかったのです。

         第三に、本作にはトリックらしいトリックがありません。
         殺人自体、何の工夫もない単純なものなのです。
         『X』では満員電車内の殺人(しかも犯人はその電車内にいるはずなのに分からない)やダイイング・メッセージという仕掛けがありました。
        『Y』では(詳しくは書けませんが)何故マンドリンなどというおかしな物が凶器に使われたのかという大きな謎がありました。
         ところが本作にはそういう謎がまったくないのです。
         かろうじてあるとすれば犯人の意外性ということなのかもしれませんが、今の読者にはこの程度は意外とも何とも感じないと思います。

         他にもあまり高く評価できない原因はあると思うのですが、私には特にこの三点が致命的とも思われ、クイーン作品としては残念な出来と評せざるを得ないのです。
         いや、これが他のミステリ作家の作品なら、迫る死刑執行、スパイもどきの調査、銃撃戦などのサスペンスも織り込んだ及第作程度には評価できるのですが、あくまでもクイーンの作品ですからねえ。
         クイーン作品としては、本来の水準に達していないと厳しく評価せざるを得ません。

         というわけで、色々残念な点がある作品ではありますが、『最後の事件』を読むためには本作は絶対に読了しておかなければならないのです。
         その理由は、『最後の事件』を読了されれば納得していただけると思いますよ。


        読了時間メーター
        ■■■     普通(1~2日あれば読める)
        >> 続きを読む

        2019/06/17 by ef177

    • 2人が本棚登録しています
      Yの悲劇
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 【ミステリの古典超名作は再読に耐えられるか?】
         本書は、海外ミステリの古典であり、かつ超名作と評価されている作品です。
         バーナビー・ロス名義(これがエラリー・クィーンの別名ペンネームであることはご承知のとおり)で書かれた4つの作品(『X』、『Y』、『Z』の各悲劇と『レーン最後の事件』)の中でも最も評価が高い作品であるばかりではなく、これまでに書かれたミステリの中でもトップクラスの名作との評価は揺るがない作品でしょう。

         私も中学生の頃この作品を読み、他の同時期に読んだミステリの中には結構忘れてしまった作品も多い中で、さすがにこの作品だけは犯人もトリックもはっきりと記憶している作品でした。
         この度、本当に久し振りに再読してみたわけですが、内容を忘れてしまっている作品であればいざ知らず、犯人もトリックもはっきり記憶している作品だと、いかに名作と言えどもミステリは再読に馴染まない、再読してもあまり面白くないのではないかと危惧しつつ読み直してみました。

         結論から言えば、全くの杞憂に終わりました。
         犯人もトリックも分かっていても、やはり面白く読むことができました。
         それだけではなく、犯人等が分かって読んでいるだけに、初読時には気付かなかった(というか無意識に読み飛ばしていた)伏線にも気が付き、結構気を遣って書いているんだなあということが分かったり、あるいは、記憶は確かだと思っていたのに実は正確ではなかったという点もあったりで、結構新鮮に読めたんですね。

         それではどんな作品なのかをご紹介しましょう。
         事件の舞台となるのは、世間から『Mad hatter』(気ちがいハッター)と揶揄されているハッター一族の屋敷です。
         発端は、当主であるヨーク・ハッターと思われる者の自殺死体が発見されたことでした。
         毒をあおって海に転落したようで、死体はひどく損傷していたのですが、検死の結果、ヨークに間違いないだろうということになりました。
         何故自殺したのか、その理由ははっきりしないのですけれど。

         ハッター一族は大富豪なのですが、その一族には忌まわしい血が流れていました。
         作中、はっきりとは書かれていないのですが、一族のカルテには『ワッセルマン反応』という項目が記載されていることが書かれていますので、おそらく梅毒という設定なのでしょう。
         とにかく、ハッター家の多くの者は、暴君であったり、異常に短気であったり、粗暴であったり、残酷であったりと、奇矯な行動が目立ち、到底まともではないのです。
         なので、世間からはアリスに登場する帽子屋をもじって『Mad hatter』(気ちがいハッター)と呼ばれていたのですね。

         さて、このハッター一族、当主が自殺しただけでは済まず、今度は自殺したヨークの孫に当たるまだ幼い少年のジャッキーが誤って毒を飲むという事件が起きます。
         ヨークの娘のバーバラは、盲聾唖という三重苦を抱えている女性なのですが、母親のエミリーはバーバラを溺愛しており、健康のためということで、毎日決まった時間に必ず卵酒を飲ませていました。
         ジャッキーはとんでもない悪ガキなのですが、バーバラが飲む卵酒と知りながら、それを盗み飲みしたところ、卵酒には猛毒のストリキニーネが仕込まれていたため、ジャッキーは中毒を起こして倒れてしまいます(一命は取り留めるのですが)。
         何者かがバーバラの殺害を企てた?
         確かに、バーバラはその障害のために一族から疎まれていたことは事実でした。

         そして、第二の事件が発生します。
         バーバラは、母親のエミリーと同じ寝室で、ベッドを並べて寝ていたのですが、ある夜、何者かが二人の寝室に侵入し、エミリーの頭部をマンドリンで殴打するという事件が起きたのです。
         エミリーは殴られたショックで心臓麻痺を起こして死んでしまいます。
         しかし、何故、マンドリンなどという凶器を使ったのでしょう?
         寝室には果物好きなバーバラのためにいつも果物が用意されていたのですが、その中の梨の一つだけから毒物が検出されました。
         エミリーは、果物はあまり好きではなく、特に梨が嫌いで絶対に食べないということは一族の者みんなが知っていることでした。
         ということは、犯人はバーバラを殺害しようとして梨に毒物を仕込んだのだけれど、それをエミリーに見とがめられたためとっさに持っていたマンドリンでエミリーを殴り、その結果エミリーは死んでしまったということなのでしょうか?
         しかし、それにしても何でマンドリンなんて用意して毒を仕込みに行ったのでしょう?

         警察は上記のような推理から、犯人のターゲットはバーバラなのだから、バーバラに対して殺意を持っている者が犯人だという線で捜査を進めるのですが行き詰まってしまいます。
        探偵役のドルリー・レーンは、耳が聞こえない引退したシェークスピア俳優なのですが、彼はもちろん真相にたどり着きます。
         しかし、これがとんでもない真相で、レーンもただ犯人を指摘して警察に検挙させれば済むという話ではないと考え、悩みに悩んでしまうんですね。
         結局、レーンは、ある出来事を機にこの事件から一切手を引くと宣言し、真相を説明しないままハッター家から去って行ってしまうのです。

         もちろん、その後、レーンによって真相が語られるのですが、これは……。
         実は、ラストの本当にラストの部分は、どうやら私は勘違いして記憶していたようです。
         このラスト、はっきりと説明されずに終わるため、どう解釈するかはもしかしたら読者によって見解を異にするかもしれません。
         私は、レーンが……ここは書けないなぁ。

         実は、このレーン4部作は、個々の事件ごとにそれなりの結末が用意されているのですが、シリーズ全体の結末として『レーン最後の事件』が書かれているという構成になっているんですね。
         そのシリーズ全体の構成もかなりショッキングなものなのですが、でも、実は既に『Y』でも……。
         おっと、もうこれ以上は書けません。

         いずれにしても本作はミステリ史上に残る超名作であることは間違いなく、海外ミステリを読んでみたいけれど何を読めば良いのか分からないと迷っている方がいたら、本作は絶対に外せない作品です(本作を読むなら、『X』から順を追って『最後の事件』まで読み通すことをお勧めします)。
         また、既に読んだという方も、本作は十分再読に耐えるミステリであると思いますので、機会を見て読み直してみるのも面白いと思います。


        読了時間メーター
        ■■■     普通(1~2日あれば読める)
        >> 続きを読む

        2019/02/21 by ef177

    • 1人が本棚登録しています
      フランス白粉の謎
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • クイーン国名シリーズ第二作。
        百貨店が舞台の殺人事件だが、現場に残されている手がかりを元にエラリー・クイーンが推理していく非常にオーソドックスな探偵小説。
        現場の手がかりを盲目的に信じるあたりが、麻耶雄嵩「隻眼の少女」を読んだ後だと、少し物足りなさが残る。
        ただラスト50ページの解決シーンは圧巻で、これができる本格ミステリ作家はそう多くはない。
        クイーン父子の会話は、法月父子の会話と雰囲気がそっくりで、法月のクイーンに対する愛情の深さに感心させられる。
        >> 続きを読む

        2019/06/06 by tygkun

    • 2人が本棚登録しています
      オランダ靴の謎
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 今さらクイーンの国名シリーズを読み進めるのは我ながらいかがなものかと思うが、未読なので仕方がない。
        病院が舞台の本格ミステリだが、謎の難易度はそれほど高くない。
        きちんと推理する真面目な読者なら、犯人を見抜けた人もいるのではないだろうか(ちなみに僕は本格ミステリで犯人を当てようと思ったことがほとんどない)。
        この作品は森博嗣「冷たい密室と博士たち」に影響を与えていると思われる。
        クイーンの初期作品については、数学のような様式美と評されることが多いのだが、僕は詰将棋に似てると感じている。
        可能性を徐々に狭めているところが、余詰を残さない詰将棋の感覚と似ているのだ。
        本作では「ローマ帽子の謎」の動機部分でもあった差別的要素が垣間見られたのが気になった。
        >> 続きを読む

        2019/05/17 by tygkun

    • 2人が本棚登録しています

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