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SymonsJulian

著者情報
著者名:SymonsJulian
SymonsJulian
SymonsJulian
生年~没年:1912~1994
      ブラッディ・マーダー 探偵小説から犯罪小説への歴史
      カテゴリー:文学史、文学思想史
      4.0
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      • 【ポオ(あるいはそれ以前)から現代ミステリ作家まで】
         本書は、時代ごとに代表的なミステリ作家、ミステリ作品を選んで解説を加え、現代までのミステリの流れを通覧するミステリ評論です。
         ただし、作者は、主要な作品を網羅的に解説する評論ではなく、あくまでも自分の趣味に沿って書いたものだと断っていますが。

         大きな流れとしては、まず、ミステリの始祖といわれるポオから書き起こされるわけですが、ただし、ポオ以前にもミステリ的な作品はあったとし、それらの作品にも言及しています。
         その後、1920年代のミステリ第一次黄金期を迎え、この時代ではクリスティやセイヤーズが中心となります。
         さらにその後の1930年代の第二次黄金時代が到来し、クイーン、カーらが主要な作家として踊り出ます。
         そして、その後、いかにもアメリカ的なハードボイルドが生み出され、ハメット、チャンドラー、ロス・マクドナルドの御三家が登場します。
         その後はいわゆる『犯罪小説』というジャンルが主流となりミステリは現代に至るという分析がなされています。

         この分析には異論はなく、まさにその通りだろうと思います。
         もちろん、これは主要な、幹の部分の流れですので、そこからいくつもの支流が流れ出すわけですが。
         
         さて、ここで一つ問題となるのは、探偵小説(推理小説)と犯罪小説の比較という問題です。
         どちらがどういう特色を持っているのかという分析が、両者をは対比する形で論じられます。
         ここで着目したいのは、『ノックスの十戒』や『ヴァン・ダインの20則』に代表されるように、探偵小説(推理小説)には作者が守らなければならないとされる決まり事が存在したということです。
         それは、あくまでもフェアな作品を追求した結果であり、知的読み物であることをその本質とした探偵小説(推理小説)にとっての生命線でもあったわけですね。

         このような決まりごとがあったからこそ、探偵小説(推理小説)は洗練され、確固たる一つのスタイルを確立することができ、黄金期を迎えたというのは紛れもない事実です。
         ただし、あまりにも厳密な決まり事であったため、それが作者にとっての足かせになったという面も見逃すことはできません。
         作家たちは、そのような決まり事の中だけで新しい作品を生み出すことに限界を感じ、あるいはそのような決まり事に制約されない、より自由なスタイルのミステリを模索していったという流れが生まれてくるのも必然だったのかもしれません。

         また、ミステリというのは大変幅が広く、どこまでをミステリのジャンルに含めうるかも一つの問題になります。
         著者は、かなり広く間口を取って論じているようで、サスペンス作品も一つのスタイルとして守備範囲に入れています。
         警察小説が含まれることは言わずもがなでしょうか。

         著者の作品批評を読むと、「自分の趣味で書いた」というだけあってそういう部分が見えてくるところも結構あります。
         総じて妥当、適切な論評だと思うのですが、ハードボイルドがお好きなのでしょうか?
         ハードボイルドには高めの評価が多いように感じます。
         他方で、お眼鏡にかなわなかった作品に対しては、相当辛辣な論評も加えています。
         例えば、トマス・ハリスの『羊たちの沈黙』に対しては、「きわめて不愉快な作品」と切り捨てていますが、私はそうはまったく思わないのですけれどね。
         この辺は趣味の違いというところでしょうか。

         おおむね現在の作家までが通覧されていますが、これから先の代表的なジャンルごとの将来性のような予測も書かれており、なかなか興味深いものがあります。
         それによると、探偵小説は×、スパイ小説は△、冒険小説は〇、警察小説も〇、犯罪小説は△という将来性だそうです。
         スパイ小説と冒険小説についてはそうかなぁ?と思いますし、私的には犯罪小説が今後の主流になっていくように思っているのですがどうでしょうか?

         いずれにしても、大変質の高いミステリ評論を楽しむことができる一冊だと思います。


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        2020/08/03 by ef177

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