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ThomasRoss

著者情報
著者名:ThomasRoss
ThomasRoss
ThomasRoss
生年~没年:1926~1995

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      女刑事の死
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • この「女刑事の死」は、読ませる作家ロス・トーマスのアメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞受賞の上質なサスペンス小説の傑作だ。

        ワシントンの上院委員会顧問のベン・ディルには、10歳違いの妹がいる。早くに両親を亡くした彼女は、ベンの手で育てられ、故郷の中西部の町で刑事になった。

        彼女はよく兄のベンに手紙を書いてよこします。町の噂、下品なゴシップ、どうってことないスキャンダル等々-------。故郷を出て行ったものたちは、故郷の便りをもらうべきだというのが彼女の持論であり、手紙は自分についてというより町の記録ともいうべきものだった。

        彼女は故郷を愛していたらしい。だが、そんな彼女が28歳の誕生日に死んだ。プラスチック爆弾によって車ごと。ディルは、10年ぶりに故郷に帰るが、そこで見た妹の生活ぶりは、彼が全く知らない女のものだった-------。

        それにしても、読み終えた後の、この深い余韻はどうだろう。心の一番柔らかいところを、素手で握られたかのような痛みすらあるのです。

        作者のロス・トーマスは、兄妹間の愛情からセンチメンタリズムを、帰郷という行為からノスタルジーを極力、間引くのです。それによって読んでいる私は、身の上話の"卑小な罠"に陥ることなく、より"普遍的な感情の高み"に昇ることができるのだ。

        刑事の給料ではとうてい賄えない家の購入。手紙でも知らせてこなかった上司の警部との婚約。兄を受取人にした莫大な死亡保険。もうひとつの隠れ家-------。

        知らなかった妹の"素顔"は、物理的にも精神的にも妹の不在を突き付けて、ディルを宙づりにするが、彼が目にする町には昔のままの看板や通りや建物があり、馴染んだ店に行けば料理も給仕人も変わらない。

        建物の歴史や店の由来、料理のメニュー、ぽんこつ新聞記者や老獪な老給仕人とのやりとりなど、一見ストーリーとは無関係に思えるエピソードの数々が、ここでは妹の不在という感傷をうめる実在として確かな手応えを残すという、このロス・トーマスの見事としかいいようのない語り口のうまさ。

        そして、最後の2ページには、何度読んでも目頭が熱くなるのを禁じ得ない。
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        2017/09/03 by dreamer

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