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TurowScott

著者情報
著者名:TurowScott
生年~没年:1949~

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      有罪答弁
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 今回読了したスコット・トゥローの「有罪答弁」は、「推定無罪」「立証責任」に続く第3作目の作品。

        主人公のマック・マロイは、刑事あがりの弁護士。
        有力者の引きで大手の法律事務所に勤務することが出来たが、毎年年収がカットされ、今やすっかり窓際族だ。

        そんな彼が上司に呼び出され、ある仕事を言いつけられる。
        同僚のやり手の弁護士ロバートが、行方不明なので探してくれというのだ。

        どうやらロバートは、航空機事故の和解金から560万ドルを引き出して失踪してしまったらしい。
        マックが調査を続けていくと、彼の知らない事務所内の複雑な人間関係と犯罪が次々と見えてくるのだった-------。

        読み終えて思うのは、この作品は極めてハイブロウなピカレスク・ロマンで、主人公マックのキャラクターが実に魅力的だということだ。
        殺人、陰謀、横領、大手法律事務所の力のポリシーなど、面白くて興味深い。

        とにかく、560万ドルとともに同僚の弁護士が失踪するという設定が、実に新鮮でストーリー展開も、さすがスコット・トゥローらしく実に巧みだ。

        そして、主人公マックの前に広がる、果てしない虚無の念に圧倒されてしまう。
        もうこの作品は、サスペンス小説と言うより、サスペンスフルな文学だと言えると思う。

        >> 続きを読む

        2018/04/20 by dreamer

      • コメント 2件
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      推定無罪
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 弁護士や検事などの法律の専門家を主人公にして、法廷における論理と証明を主眼にして、丁々発止のやりとりをする"法廷物ミステリー"が大好きで、ジョン・グリシャム、E.S.ガードナー、ヘンリー・デンカーなど、好きな作家の作品を耽読していますが、今回読了したスコット・トゥローの「推定無罪」は、それらの"法廷物ミステリー"の中での最高峰だと確信している作品で、1987年度の英国推理作家協会シルヴァー・タガー賞受賞の傑作なのです。

        被告人をめぐって、検察側と弁護側が有罪か無罪かを立証し合う。12人の陪審員は、頭を白紙にした状態でこれを見守り、最後に評決を下す。

        アメリカの裁判とはこのようなものだと、数多くの法廷物の映画なども観た経験から、漠然とこのように考えていました。しかし、この「推定無罪」を読み終えて、実はそうではなく、"被告人は無罪と推定される"という事がわかったのです。

        陪審員は頭の中が白紙の状態であってはならない。被告が疑う余地なく無罪であると考えなくてはならない。無実であると信じ込んでいる陪審員に向かって、検察側が合理的な有罪立証を行ない、全てを引っくり返すべく務める----。これが基本理念だという事です。

        この作品「推定無罪」は、"推定無罪"というこの原則からアメリカにおける裁判の状況を説き起こしていきます。更に、罪状認否手続き、陪審員の選択手順なども分かりやすく説明してくれます。

        この作品の作者のスコット・トゥローは、元シカゴ地区連邦裁判所の検事補で、この作品の執筆当時は弁護士。この経歴から、この小説はシカゴをモデルにした事がうかがえますが、主人公はアメリカ中西部の架空の土地キンドル郡の首席検事補サビッチ。

        地方検事の椅子をめぐる選挙戦が行なわれているさなか、美貌の女性検事補が自宅で、それも全裸の絞殺死体となって発見されるというショッキングな事件が発生します。

        この物語の語り手は、被害者と同じ検事局に所属するサビッチで、対立候補に勝つために上司から捜査の指揮をとることを命令されるのが発端で、捜査は当初、怨恨か変質者の犯行の線で進められますが、それにしては不可解な状況が多かったのです。

        そこで最初から洗い直そうとした矢先、こともあろうにサビッチ自身が殺害容疑者として起訴されてしまったのです。現場で発見されたグラスからサビッチ自身の指紋が検出されたのです。そして、サビッチには人に言えない、"ある秘密"があったのです----。

        この小説が抜群に面白いのは、まず犯人探しの"捜査小説"で始まるのですが、後半は一転して"裁判小説"になるという構成です。そして、物語の進展につれて、真実が二転三転するという、サスペンスとフーダニット(犯人探し)の興味でグイグイと引っ張っていき、主人公のサビッチの複雑な性格の掘り下げも効いていて、エキサイティングでハラハラさせながらも感動的な"法廷ミステリー"に仕上がっている点なのです。

        とにかく、この後半の法廷場面での次々とたたみかけていく展開は、作者の筆力の凄さを感じさせます。

        特に裁判が進行すればするほど、"検察内部の腐敗や権力闘争"が明るみに出てくるという描写は圧巻で、アメリカの裁判を描いた小説が、権力にも物怖じせず、果敢に正義と真実を求めて挑んでいくという姿勢にはあらためて驚かされます。ここらあたりは、民主主義というものが、ある意味、成熟しているアメリカならではだなと思い知らされます。

        地方検事の座を争う上司と元同僚、そして、様々なタイプの警察官などを配して、地方都市の抱える矛盾、それはとりもなおさず、現代のアメリカの抱える病巣でもあるのですが、そのようなものを背景に、作者は巧みな物語を紡いでいくのです。

        更にこの作品が際立っているのは、殺害された女性検事補の肖像が彫り深く描かれている点で、例え"尻軽女"と言われようとも主人公のサビッチが、彼女に対して引きずり続ける感情を、物語の底に甘く配しているからなのです。

        グラスを手に泣き出すこのサビッチという男に、ふと共感を覚えるのは、このようなダメな部分を私もまた持っているからで、この"ギリギリの感傷"が、通常のありきたりの安手の小説と一線を画しているところだろうと思うのです。

        つまり、この作品は"社会派法廷ミステリー"という装いをこらしてはいますが、この作品の核は、そういう"個人的なものの中"にあるのだと思います。

        以上のような点に感心しながら読んでいくと、最後でまたも驚かされることになります。証拠品のグラスは何故、なかなか登場しなかったのか? ----。それは、漠然と裁判独自の煩雑な手続きのせいかなと思ったのですが、なんと----、つまり壮大な裁判小説であること自体が、ミステリーとしての仕掛けを巧みにカムフラージュしていたのです。
        >> 続きを読む

        2016/11/10 by dreamer

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