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WieselEliezer

著者情報
著者名:WieselEliezer
生年~没年:1928~

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      夜・夜明け・昼
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 第一部のレビューは別に書いたので、ここには第二部の『夜明け』について。

        とても重い作品だったが、心に残る作品だった。

        『夜明け』はヴィーゼルの自伝的三部作の第二部で、第一部の『夜』はホロコーストの過酷な体験が描かれ、主人公はそこで家族をすべて失いながら、自分は生き残る。
        この第二部では、生き残ったまだ少年の主人公が、当時はまだ独立しておらずイギリスの統治下にあったイスラエルの地に渡り、独立運動に身を投じている。

        イギリスからの独立のため、ユダヤ人の過激な独立運動組織は、武装闘争を繰り広げていた。
        その中で、ある時、仲間の一人が捕まり、死刑を宣告される。
        組織はイギリスに対抗するために、イギリスの軍人を一人誘拐して人質にし、もし仲間が死刑執行されれば人質を殺害すると宣言する。
        しかし、イギリス政府は、脅かしには屈しないと述べて、死刑を執行する。

        主人公は、組織から、その人質の殺害を命じられる。

        主人公は、人を一人殺すということに、思い悩む。
        もうすでに死んでいるはずの自分の父や母や友人たちの姿が幻となって現れて、本当に人を殺すのかと尋ねてくる。
        僕を裁くのか?とそれらの亡霊に問うと、裁きはしない、しかしお前は私たちの総和だ、お前がすることは、私たちもすることになるのだ、ということを語る。

        主人公は、仲間たちとしばらく雑談し、その中でホロコーストの過酷な体験なども話す。

        自分が今から殺す人質が、もし憎めるような人物で、かつてのナチスのような人々で、憎むことができるならば引き金も引けると思い、決められた時刻よりも前もってその部屋に行く。

        そのイギリスの軍人は、いたって優しそうで立派な人物で、主人公の年齢を聞くと、心の底から憐みをもって見つめて、自分の息子が同じ年齢だといった話をした。

        しかし、時間が来たので、主人公はその軍人を射殺する。

        ホロコーストでも神が死んだと思い、自分が死んだと感じていた主人公は、今度は全く立場を変えて、逆の立場で、神を殺し、そして自分も死んだと感じていた。

        あまりにも重いテーマだが、なんといえばいいのだろう、イスラエルのあまりにも過酷な運命と言えばいいのだろうか、業といえばいいのだろうか、とても考えさせられる、すごい作品だった。

        引き続き、第三部も読んでみたいと思う。


        (追記)

        『昼』は、ヴィーゼルの『夜』と『夜明け』に続く、三部作の三部目である。

        一部では、ナチスの強制収容所における主人公の過酷な体験が描かれ、二部では、独立前のイスラエルのレジスタンスに身を投じ、個人的には好感を持っているイギリス軍の将校を命令で銃殺しなければならない様子が描かれていた。

        この第三部では、それらとはうってかわって、アメリカのニューヨークで、新聞記者として、平和に暮らしている主人公の様子が描かれる。
        周囲が驚くほどの美しい若い恋人もいる。
        親友もいる。

        しかし、突然、主人公は交通事故に遭い、瀕死の重傷を負う。

        搬送された先の病院の医師は非常に誠実で優秀な医者で、恋人や親友の励ましもあり、奇跡的に主人公は命が助かる。

        しかし、わりと容態が回復し、まだベッドで身動きができないものの、落ち着いて話せる状態になった時に、その医師が、どうしてあなたは生きようとしないんですか?と主人公に尋ねる。
        普通は、医師の自分は患者と二人で手術室で死と闘う、しかし、あなたは意識を失っているとはいえ、全くそうではなかった、むしろ…、と。

        主人公は、その医師には、適当にごまかして答えるが、さまざまな思い出を思い出す。

        アウシュヴィッツの収容所で、あのようなひどい体験をした後は、自分はどこかで死んでしまっていて、もう生きたいという気持ちもどこかで失せていて、神はとっくに死んでいるし、この世に何の信頼も希望も持てないのだということを。
        自分だけでなく、そこで死んでしまった家族や友人たち、あるいは生き残っても自分のように全く信仰を失ってしまった知り合いのこと。
        そして、収容所を出てから、たまたま出会ったある女性が、その人も十二歳の時に収容所に入れられて、そこでナチスの将校を相手に慰安婦とされていたことを聞いたこと。
        などを思い出す。

        だが、主人公は、恋人との月日も思い出す。
        その恋人が、主人公の体験や思いを聞いてくれたこと。
        なんとか、生の側に引き戻そうと一生懸命努力してきたこと。
        一時期別れたが、またある時に寄りを戻したこと。

        主人公の親友は画家なので、俺が肖像画を仕上げるまで死ぬなと言って、事故直後から毎日見舞いにやって来ては、肖像画を描いてくれていた。
        その親友が、

        「神はおそらくは死んだんだろう。しかし、人間には友情がある。」

        と言うのは、なんとなく、ほろりとされた。

        また、「人間に苦悩が満ちていて、それを運命が何の人間に強いているというならば、人間が自分の意志で、たとえ一時間でも苦悩を止めて過ごすことができたら、それこそが人生や運命への勝利だ。」

        ということをその親友が言うシーンがあり、とても考えさせられた。

        結局、主人公は、事故から命が助かったが、心が本当に生の方に傾いたのかは、よくはわからないまま物語は終る。

        しかし、その恋人や、親友や、医師たちを通して、癒そう、癒そうとする力が、実は、神と呼ばれるものなのではないか、とも思う。

        もっとも、人生はそんなに簡単なものではなくて、この恋人自身も、主人公と別れていた間に金持ちと結婚して、その結婚が失敗して離婚し、主人公と寄りを戻してからもしばらくアルコール依存のようになっていた。

        結局、人は、大なり小なり、何か問題を抱えたり、苦しみを抱えたりしているのかもしれないし、そうであればこそ、お互いに支え合ったり、必要とし合うことで生きていくのだろう。

        主人公の心の傷が癒えることはないのかもしれないが、たとえ少しの時間の間でも、苦悩を止めて、人生を心から喜んだり楽しんだりする時間が、事故の怪我から治った後に、おそらくはかつてよりは増えるのではないか、増えて欲しい、と思った。

        三部作を通して、重いが、考えさせられる、読んでよかったと思わさせる、作品だった。
        >> 続きを読む

        2013/08/06 by atsushi

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      夜
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 著者の実際の体験を元にした本。
        当時十五歳だった主人公は、1944年、ユダヤ人だったためにナチスによって強制収容所に入れられる。
        母や姉たちは入口のところで別れたきりそれっきりとなった。
        父とは、言語を絶する苦しみをともに耐えながら、なんとか生き延び続けるが、ドイツが負けて収容所が解放される直前、父は死んでいく。

        ホロコーストに関する本は、フランクルの『夜と霧』など、他の本も読んだことがあったし、いくつかの映画も見たことがあったが、この本は、あらためて形容できない深い呻きや傷について考えざるを得なかった。
        あまりにも重い出来事であるが、それゆえに、忘れないためにも、この本は多くの人が読むべきだと思った。

        それにしても、これほどのことがありながら、なお「神」はいると考えることができるのだろうか。
        もちろん、論理的にはいろんなことが言えるのだろうけれど、深く考え込まざるを得ない。
        この本の中でも、ナチスがやって来る前は信仰深かった主人公は、大きくそのことに懐疑を持たざるを得なかったことと、多くの大人たちが信仰を失い、心にひびが入って、間もなく力尽きて死んでいった様子が描かれている。
        一方で、単純な宗教や信仰を超えた、何か形容できない、心に強く残る、その時の人の感謝の表情や、勇気についても描かれていて、著者の信仰や神への態度は、決して単純ではないが、何か通常の宗教とは違う、別の思索や体験に導かれているようである。
        そのことをよく理解するためにも、この本は、三部作のうちの最初の第一部だそうなので、第二部の『夜明け』や第三部の『昼』も読んでみたいと思った。

        つい最近、日本の政治家の発言が、諸外国から、特にユダヤ人団体から強く抗議されることがあった。
        その政治家本人はそのようなつもりはなかったと釈明し、すぐに発言を撤回したが、たぶん、問題の根底にあるのは、どの程度深く歴史を受けとめているかということなのかもしれない。
        もし、戦間期や第二次大戦の頃の歴史、特にユダヤ人の受難について深い認識を持っていれば、決して口から出てこない言葉だったかもしれない。
        私たちが過去に対してなすことができることは、せめても忘れず、想起し、その出来事を無駄にしないことであれば、浅く生きるのではなく、深く生きるためにも、『夜と霧』ともども、この『夜』も、今後とも読み継がれるべき本だと思う。
        >> 続きを読む

        2013/08/02 by atsushi

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