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「終末のプロメテウス」(上・下巻)は、原油を分解する微生物の暴走を描いたバイオ・サスペンス。とにかく、読み始めたら止まらない面白さを備えた、ハリウッド映画風エンターテインメントになっている。超大型タンカーが、サンフランシスコ湾で座礁し、大量の原油が流出した。タンカーの持ち主であるオイルスター社は、原油を分解する微生物プロメテウスを散布して、原油による被害を減らそうとするが、この微生物が、車のガソリンを経由して、アメリカ全土に広がり、全ての石油製品を次々に分解していく。果たして、プロメテウスを止めることは出来るのか?-------。ボールペン、眼鏡のフレーム、CDなど、我々の身の回りにある石油製品がどれほど多いか、この本を読んで改めて実感させられた。これらが全て溶けてしまったらと思うと、ぞっとさせられる。物語の前半では、多くの登場人物の視点を切り替えながら、微生物が広がっていく様子を描いていくが、後半になって物語は、予想とは異なる意外な展開を示すのだ。微生物との戦いが描かれるのではなく、石油文明崩壊後のニューメキシコにおける、独裁による覇権獲得を目指す軍司令官と、人工衛星を使った、太陽エネルギーの利用を目指す科学者集団との対決が、メインストーリーになっていくのだ。この展開を見る限り、この本はいわゆる、バイオ・サスペンスではなくて、極限状況におけるサバイバルものと呼んだ方が適切なのかもしれない。SLを使って人工衛星を運んだり、乏しい材料で熱気球を上げたりといった、ローテクによるサバイバルは、この本の中でも特に読み応えのある場面だ。また、各章の題名が、主に1960年代や1970年代のロックから取られたものであり、しかも、オルタモントでの新たなロックコンサートをクライマックスに持ってきたことから、1960年代的コミューンの建設が、この本の狙いの一つであることがわかる。つまり、石油資源に頼らない、新しいテクノロジーによる、理想主義的共同体の形成が、この本の主要なテーマなのだと思う。バイオ・サスペンス風の味付けや、めまぐるしい場面転換とともに進む物語を楽しみながら、効率的な太陽エネルギーの利用について考えを巡らすことも、この本を読む面白さの一つと言えるだろう。 >> 続きを読む
2020/11/05 by dreamer
【BeasonDoug】 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)
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