こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


CookThomasH

著者情報
著者名:CookThomasH
生年~没年:1947~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      緋色の記憶
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 何かの本でクックの「記憶シリーズ」のことを読んでいた。読んでみようと本屋で4冊買ってきたのだが、読むなら順があるだろうと思い、最近やっと読み始めた。気持ちが予想以上に入り込んで、あっという間に終わってしまった。
        面白くて止められなかったからで、ミステリは暇があるときに楽しむだけのもの、という偏見はさらに改めなくてはいけないと思った。

        文庫の奥付を繰って初版日で並べみると、この「緋色の記憶」が1998年3月だから最初のものになる。

        知らないと笑われるくらいファンの多い作者らしく、こういうところに紹介するのはいまさらの感もあるようだ。
        あとがきを読み解説を見ると、これなら時間の浪費にはならないと決まった。そして、読後はいつもの感想ながら、いくら読んでも次々に面白い本を書いてくれる人があって幸せ、だった。

        原題の通り、ニューイングランドのチャタム校を巡って起きた事件である。
        8月、海辺の小さな村に停まったバスから緋色の襟から襟足を輝かせた女性が最後にゆっくりと降りてきた。
        当時チャタム校の生徒であったヘンリーは教会の階段で本を読みながらそれを見ていた。それがミス・チャニングであった。

        海辺の片田舎の町にふさわしくない美貌の女性に出会ったこの時のヘンリーの印象は、後になって「時よ止まれ」と思わせるくらいに輝いて見えた。

        父は校長で、 彼女を黒池と呼ばれる沼のほとりのコテージに住まわせ、美術の教師にする。
        父親と世界を旅し自由な気風を身に付た彼女の授業は、男子校であり厳格な校風のチャタム校ではまず好奇心で迎えられる。

        学校には戦争で足が不自由になり木の杖をついている、レランド・リードという教師がいた。
        彼女は次第に彼に惹かれていく。彼は、黒沼に沿って回っていった先に妻と子供が住む家を持っていて、
        彼女は時々そこにボートを出しているリードの姿をみる事ができた。

        リードは彼女と二人でいつか海岸から船出して自由な世界へ出て行きたいという夢をもってしまった。

        15歳の夏から始まるこの死と別れの話は後年帰省して法律事務所を開いた老いたヘンリーの記憶が呼び起こす物語である。
        過去の出来事は、現在の風景の中から現実のように思い出され立ち現れてくる。
        そして記憶の底にうずもれていた真実に突き当たるのである。
        ひとつの風景からちょっとした出来事から、過去の細かな出来事が蘇えってくる。クックの作風は時間を過去に引き戻しながら、最後には思いもよらない結論を導き出す。すでに人々の中では終わったはずのものたちの、奥に隠された真実が心を打つ。
        長い回想の中で生き生きと登場した人々が、今はヘンリーとともに老ていたり、亡くなってしまったり、すでに影でしかないということも時間の深い闇の底を覗くようである。
        >> 続きを読む

        2014/10/31 by 空耳よ

      • コメント 4件
    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      死の記憶
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! Tukiwami

      • トマス・H・クックの「死の記憶」は、名人芸を見るかのように、まったくうまい。

        主人公は建築士のスティーヴ・ファリス。彼の一人称で物語は進められていく。
        冒頭は、スティーヴが9歳の時の回想だ。
        父親が母と姉と兄を射殺し、そのまま失踪した日のことを彼が思い出すところから、この物語は始まっていく。

        それから35年経って、スティーヴは一人の女性の出現とともに真相を探る旅を開始する。

        なぜ父は家族を殺したのか? 謎はそれだけだが、これがスリリングなのは、家族を殺した後、父が何もせず、2時間家の中で何かを待っていたという、もう一つの謎があるからだ。

        父が待っていたのは、その日遊びに行って帰りが遅くなった自分なのではないかと、冒頭、主人公は思うんですね。
        自分を殺すために父は待っていたのではないかと。

        では、なぜ自分をも殺そうとしたのか?
        何も思い当たることがないので、彼には皆目わからない。
        その謎が重く静かに流れているから、ラストで明らかになる事件の解明が、強く印象に残り続けるのだ。

        シンプルな謎を構成一つで複雑なドラマにしてしまうのが、著者・トマス・H・クックの芸の見事さだが、この本もそうした彼の特徴が十二分に発揮された作品だと思いますね。

        >> 続きを読む

        2019/04/22 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      ローラ・フェイとの最後の会話
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 新作売上の為の講演で
        セントルイスを訪れた、歴史学者ルーク。

        しかし、会場には意外な人物が待っていた。
        その名はローラ・フェイ・ギルロイ。

        20年前、遠い故郷でルークの家族に
        起きた悲劇のきっかけとなった女性だった。

        ルークは疑念を抱きつつも
        彼女とホテルのラウンジで話すことにする・・・

        だが、次第に交わされた会話は
        ルークの過去を徐々に揺さぶり、驚くべき真相を明らかにする。

        クックの個人的ベストは『夏草の記憶』なんですが
        あの作品とは
        また別の意味で過去と対峙する主人公を描いています。

        今回は、ぼぼ、二人舞台としても成立してしまう程の
        シンプルさでありながら
        過去が明らかになるにつれ、自分の精神的な地盤というか背骨が、崩れていく。
        ある種のパラダイム・シフトを主人公と共に体験できます。

        ラストの甘さが少々受け付けなかったので
        星を1つ落としましたが。

        “過去”を扱わせるとやっぱりこの人は上手いです。
        >> 続きを読む

        2013/06/15 by きみやす

      • コメント 2件
    • 2人が本棚登録しています
      夏草の記憶
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      •  普段ミステリーを読んでいても作中で繰り広げられる登場人物の恋愛関係には感情移入することは無い。この小説は今までの小説のなかで初めて感情移入したものである。

         一言で言えば青春の残酷さ。恐らくこれと同じリアルな体験をしている人は多いだろう。大人になってからの恋愛にピュアさがなくなるとは思わないが、ピュアさだけで成り立つものでは無い。それに対して青春時代の恋愛はピュアさだけで成り立つ。それだけに一方の愛の破れによるダメージの大きさは一方の愛の成就による幸せの大きさを上回る。

         
        >> 続きを読む

        2016/05/03 by anjyo

      • コメント 1件
    • 3人が本棚登録しています
      緋色の迷宮
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!

      • トマス・H・クックの「緋色の迷宮」は、15歳の息子がベビーシッターに行った夜に、8歳の少女が失踪し、その嫌疑が息子にかけられるというところから始まる物語だ。

        クックの小説がいつもそうであるように、この「緋色の迷宮」もシンプルといっていい。
        それでも、ぐいぐい読ませるのは、いつものように人物造形を始めとして、構成が秀逸だからだ。

        父親の視点をずらさず、彼の中に膨れ上がる疑いを、克明に描いていくから、サスペンスもまた盛り上がる。
        もし自分の家庭にこんなことが起きたらと考えるだけで、どんどん引き込まれていく。

        ミステリの読み方ではないような気もするが、しかしそういうふうに感情移入させるのは、クックの筆致が素晴らしいからだろう。
        シンプルであればあるほど、こちらの妄想があちこちに飛ぶ余裕を与えられるので、どんどん引き込まれていくのだ。

        何も話さない息子と、妻との口論。幸せだと思っていた家庭はあっけなく崩壊していく。
        そこに、事業で失敗した父と、負け犬の人生を送ってきた兄、事故で亡くなった母と、夭折した妹。

        そういう過去の風景が絡み合う。だから、やるせなく、切ない。
        他人事とは思えない小説だ。いや、そう思わせる小説だ。

        >> 続きを読む

        2019/04/24 by dreamer

      • コメント 1件
    • 1人が本棚登録しています
      石のささやき
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 警察の取調室。〝おまえ〟は、ある事件を振り返る。
        トルストイと重ね合わせ、ほのめかされる「四つの死」。
        そして語り始められる、悲劇的な川の源。

        ニューイングランドの田舎町を舞台に、起こった悲劇。
        息子を失った〝わたし〟の姉は、その「事故」を信じなかった。
        やがて姉の怒りは、夫に向けられ、小さな町を揺るがし始めた-------。

        〝おまえ〟と呼び掛ける語り手が綴る現在と、〝わたし〟の回想で語られる過去の事件。

        事件の全容が見えないまま、進んでいく物語は、二人の語り手が何ともいえないタイミングで入れ替わり、朧げなイメージを保ったまま、終盤まで突入していく。

        このじれったさが限界に達したところで、事件の全貌は、突然正体を現し、さらに衝撃の真相が追い討ちをかける。
        これまでも何度となく酔わされた、トマス・H・クック一流の手法が、今回も用いられている。

        だが、この作品に限っては、それも少々難解に過ぎた印象だ。
        そのじらしのさじ加減が、どうにもこの作品では微妙な気がしてならない。

        姉が息子を失った「事件」と、それにまつわる疑惑。
        〝わたし〟の娘まで巻き込み、古代の殺人と「石のささやく」声に耳を傾ける姉。

        やや盛り込みすぎの内容にも思える途中までの展開と、終盤、一気に明らかになる事件の全貌とのバランスがどうもいまいちの印象だ。

        読み終えた時、「ああ、それなのか」と、ちょっと肩透かしな部分を感じてしまった、というのも正直なところだ。

        もちろん、その部分を置いても、十分に楽しめる作品で、著者のクオリティにしては、どうなのかな、というレベルでの話。

        あくまで個人的な感想としては、著者の過去の傑作群と比べると、やや落ちる、という読後感でしたね。

        >> 続きを読む

        2021/04/04 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      沼地の記憶
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!

      • トマス・H・クックの「沼地の記憶」がとても面白い。

        この小説は、若き日の愚かな罪に対するひとりの男の悔恨の物語だ。

        回想と裁判の記録から浮かび上がってくるのは、高校教師として教え子たちに接した主人公の若き日々で、殺人犯の息子とレッテルを貼られた少年の中に才能を見い出し、彼へ肩入れをした思い出だった。

        しかし、それは思わぬ形で悲劇を招いてしまう。

        ミステリというより、文学の領域にあると言われる著者のトマス・H・クックだが、ミステリの技法への精通は、依然、大きな持ち味になっていると思う。

        この作品では、人は犯した罪を抱えて生きねばならないという悲痛なテーマを、切れ味鋭い犯罪小説の小説作法で料理してみせてくれる。

        過ぎ行く時の無情観漂う、登場人物たちのその後の記述が、やるせなく切ない。

        >> 続きを読む

        2019/03/17 by dreamer

    • 2人が本棚登録しています

【CookThomasH】 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本