こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


DeLilloDon

著者情報
著者名:DeLilloDon
生年~没年:1936~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      ホワイト・ノイズ
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      •  最初に読んだ「コズモポリス」の印象がいまひとつで、2冊目を読むかどうか迷っていたのですが、読んでみてよかった!
         
         お互い何度目かの再婚で、夫の連れ子2人、妻の連れ子1人、2人の間の子ども1人の6人家族。夫は大学で「ヒトラー学」を教えながら、大学には内緒でドイツ語の個人教授を受けています(ヒトラーが専門なのにドイツ語ができないことは内緒なのです)。長男のハインリッヒはやたら生意気で、父親が何を話しかけてもまともには答えません。今、雨が降ってるかどうかを問う父親に、彼はこう答えます。

        「今なんてものがあるのかな? 『今』が来て、その言葉を言ったとたん過ぎてしまう。もしパパの言う『今』が、ぼくが言ったとたん『あの時』になったら、ぼくはどうして今雨が降っているなんて言えるの?」
        「おまえは過去も現在も未来もないって言ったよ」
        「ぼくたちの動詞にだけはあるよ。そこだけにしかないけどね」
        「雨は名詞だよ。ここに雨はあるのか。ここ、正確にこの場所に、おまえが質問に答えるのと決めて二分以内のあいだにだよ?」
        「もしパパが明らかに動いている自動車に乗っていながら、正確にこの場所について話したいのなら、ぼくはこの議論には問題ありと思うよ」

         こんな家庭の日常が綴られていく第1章に続き、第2章では、ナイオディンDという薬物を積んだタンクローリーが交通事故で爆発炎上し、物語が動き始めます。
         
         それは空媒毒物事故による黒く渦巻く雲で、七機の陸軍ヘリコプターの明るい光線で照らし出されていた。ヘリコプターは風に運ばれていくものをずっと視界にとらえて負っていた。どの車のなかも、頭が動き、運転者たちはクラクションを鳴らしてほかの車に注意を促し、窓から出した顔には、異国の驚異すべきものを見た表情が浮かんでいた。
         巨大な黒い塊は、夜のとばりを螺旋状の翼をもった生きものたちに守られ、北欧伝説の死の船のように動いていた。わたしたちはどう反応すればいいのか分からなかった。それは見るのも恐ろしく、ひどく近く、ひどく低いところにあって、クロダイトや、ベンジンや、フェノールや、ハイドロカーボンや、あるいは間違いなく毒物を包含しているものだった。

         わたしの乏しいレビュー能力ではこの小説の面白さの千分の一も万分の一も伝えられませんし、わたし自身、理解できたかどうかあやふやな部分もずいぶん残っているのですが、この作家が現代アメリカ文学を代表する1人であることは納得できました。
         つぎは「リブラ〜時の秤」を読んでみようと思っています。
        >> 続きを読む

        2013/08/17 by 弁護士K

      • コメント 5件
    • 3人が本棚登録しています
      コズモポリス
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      •  予想外の円高で破綻の危機に瀕している若き投資家の一日。カバーには「現代文学最大の巨匠が放つ極上のサスペンス」と謳われていますが、う〜ん、これサスペンスなのかな。何だかよくわらかない不安定な状態で物語が進むという意味ではそうなんでしょうが、その不安定な状態の不安定さがよく分からなさすぎて、いまひとつ作品世界に入り込めませんでした。マネーゲーム的なビジネスに対するぼくの嫌悪感(偏見?)も、あまり楽しめなかった理由の一つかもしれません。
         最近、読んでいたパワーズや村上春樹とはいろんな意味で対照的で、ちょっと村上龍の小説を思い出しました。

         それにしても、主人公が、妻と2人で入ったビストロで、「水銀中毒の魚の刺身」を注文して日本酒を呑む場面にはビックリした。

         ドン・デリーロは、読んでみたい作家リストのかなり上位を占めていたのですが、最初に読む本としてはあまり適当ではなかったかもしれません。2冊目を読むのは、しばらく後回しになりそう。

         
        >> 続きを読む

        2013/06/16 by 弁護士K

      • コメント 5件
    • 1人が本棚登録しています
      墜ちてゆく男
      カテゴリー:小説、物語
      いいね!
      • 「彼」「彼女」で始まる段落、最初それぞれ誰だか分らなかった。犯人側の、ホントに少しのエピソードが、短いのに次第に強烈さを増して挟まってくる。認知が出て道に迷う高齢者の箇所が巧い。読み終わって、思わずまた最初の部分読み返した。※解説を先に読んで失敗。ビル・ロートンが誰なのか、と、私が読了直後、前に戻りたくなった構成がネタばれされてる。 >> 続きを読む

        2015/03/28 by 紫指導官

      • コメント 3件
    • 3人が本棚登録しています
      リブラ時の秤
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      •  ケネディ暗殺については、いろいろなノンフィクションが図書館に並んでいて、多種多様な「真相」が主張されています。ぼくがいちばん印象深く読んだのは、ジョンソン大統領の顧問弁護士バー・マクラレンの「ケネディを殺した副大統領」でした。

         「リブラ」も、暗殺の実行犯とされるリー・オズワルドを中心とした作品である以上、どうしてもそういった興味で読み進めることになります。しかし、この作品は、新たな「真相」の仮説を提起しようというものではありません。厚木基地勤務当時の軍法会議、ソ連への亡命、キューバ公平委員会への参加など、おそらく精密な調査に基づく伝記的事実に従って描かれているのでしょう。しかし、暗殺に至る過程で彼が関わる人物たちは、実在の人物とデリーロの創作した人物が入り乱れているようで、誰が誰の糸を引いているのか、最終的な意志決定を行っているのが誰なのか、さっぱり分かりません。
         むしろ、そういった様々な登場人物が企む錯綜した陰謀の結節点として、オズワルドの人生を浮かび上がらせるというのが、この作品の仕掛けのようです。
         
         現代社会の複雑さ、奇怪さを小説に結実させるデリーロの腕力は見事なもので、これほどスケールの大きな作家はなかなかいないでしょう。しかし、そのリアリティを支えているのは、登場人物の丁寧な造型でもあります。
         神は細部にやどりたまう。

         判事さん、この件については簡単なはいといいえだけで真実を申し述べることはできません。話を聞いていただかなきゃなりません。リーはいじめられっ子でしてね。びりびりに破れたシャツと鼻血は日常茶飯事でした。聞いて下さいな。あたしはリー・ハーヴェイ・オズワルドの生涯について何冊か本を書くつもりです。…これには裏の裏があるんですよ。判事さん、切手集めをしたり、台所で1人でチェスの練習をしたりしてたリーが、ロシアに潜入するために送られたんです。

         この小説でいえば、オズワルドの母親マーガリートが非常に印象的です。女手一つでオズワルドを育てた彼女の口から語られることにより、わたしたちは「ケネディ暗殺の実行犯」として歴史に刻まれているオズワルドを、東西対立厳しいあの時代に、歴史の犠牲になった一個人として、ありありと実感することができます。

         あたしはこの悲しみに暮れた大地の上にこうして立って、死者たちの墓石、ゆるやかに起伏する霊園、丘の上の礼拝堂、それに風にかしいでいるヒマラヤ杉の木立を眺め、そしてお弔いが儀式という性質と道具立てで遺族を慰めることになっているのは知っている。でもあたしは慰められはしない。
         
        >> 続きを読む

        2013/09/03 by 弁護士K

      • コメント 6件
    • 1人が本棚登録しています
      マオ2
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      •  主人公は、J.D.サリンジャーを思わせる隠遁作家ビル・グレイ、ビルの熱狂的なファンでビルの居所を突き止め押しかけ秘書におさまったスコット、統一教会への入信と家族による奪還を経て2人のもとに転がり込んできたカレン、そして作家の肖像写真をテーマとする女性カメラマンのブリタ。素顔や実名といった一切のプライバシーを読者から遮断してきたビルが、ブリタの被写体となることにしたのは何故か、23年にもわたって書き続けているビルの未発表作の公表にスコットが反対するのは何故か、ビルの隠れ家を舞台とした4人の会話にひきこまれます。しかし、後半は様相が一転、ベイルートでテロリストの人質となっている詩人を救出するため、ビルは、スコットにもカレンにも行方を告げないまま旅立ち、ニューヨークからロンドンへ、さらにキプロスへと物語は動きます。

        「このところ僕は、小説家とテロリストはゼロサム・ゲームをやってるんじゃないかって気がするんだ」
        「面白いですな。そりゃまたどういうわけで?」
        「テロリストが肥え太れば、小説家は痩せ細るってこと。やつらが大衆の意識に影響を与えれば与えるほど、感性や思想の形成者としてのわれわれ小説家の影響力は低下する。やつらが具現化している危険性は、とりもなおさず僕たち小説家自身がもはや危険な存在じゃなくなったことの証なんだ」
        「つまり、恐怖をはっきりと目の当たりにすればするほど、芸術から受ける衝撃は減るってことですかね」
        「そういうことが推し測れるという限りにおいて、両者の関係は密接に絡み合っていると思うんだ」

         物語の直接的な背景になっているのは、最末期のレバノン内戦ですが、テレビのニュースを通じて、第二次天安門事件、アヤトラ・ホメイニ師の葬儀といった1989年の世界史的な出来事が重ねられます。
         そして、幾度かにわたって現代社会の象徴のように描かれるツインタワーのイメージからは、どうしても2001年の9.11の予兆を感じざるを得ません。

        ……東京で彼女は美術雑誌に複製されたある絵画を見た。パネルにはめこまれた「摩天楼Ⅱ」というタイトルのカンバスには、彼女がちょうど自分のアパートの窓から眺める角度で、しかも自分と同じ疎ましい気分で世界貿易センターが描かれていた。まさしくそれは、彼女におなじみの高層ビルだった。窓もなく屹立し、視野に入る空間を埋め尽くす二本の黒いラテックスの石版がそこにあった。

         デリーロが1997年に発表した「アンダー・ワールド」のカバーはツインタワーの写真ですし、2007年に発表した「墜ちていく男」はそのものずばり9.11をテーマにした小説のようです。読むのがとても楽しみです。
        >> 続きを読む

        2013/09/12 by 弁護士K

      • コメント 8件
    • 1人が本棚登録しています

【DeLilloDon】 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本

アナログ