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越前敏弥

著者情報
著者名:越前敏弥
えちぜんとしや
エチゼントシヤ
生年~没年:1961~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      ダ・ヴィンチ・コード
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね!
      •  興味はあったんですが先に読みたい本がいっぱいあって
        なかなか食指が伸びないでいました。
        たまに違う毛色の本を読みたくなったので
        今更ですが読んでみました。

         結果、単純に面白かったです。
        読んだから何かを得るという類の本ではなく、
        完全にエンターテイメント作品ですね。
        西洋の歴史、特にキリスト教や
        美術に対する造詣が深い方が書いたのであろうことは分かりますが、
        あくまでも娯楽作です。

         謎解きは誰しも心くすぐられるもの。
        下巻も楽しく読みたいと思います。
        >> 続きを読む

        2015/02/01 by kengo

      • コメント 1件
    • 他2人がレビュー登録、 17人が本棚登録しています
      解錠師
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!
      • 【ドキドキします】
         主人公は幼少時のとある出来事から一切話すことができなくなってしまった少年。
         ひょんなことから鍵に興味を持ち、独力で鍵を開ける技術を身につけてしまいます。
         その後数奇な運命に翻弄され、プロの解錠師としてのトレーニングを施され、犯罪社会へと転落していきます。

         こういうテーマですから、鍵開けの場面はふんだんに出てきますが、これがなかなかドキドキさせられます。
         鍵を開けるのって(特に男子は)結構好きなんじゃないかな~。
         主人公はちょっと醒めたところもあって、犯罪に手を染めることを躊躇しながらも深みにはまっていきます。

         そして主人公のもう一つの特技が絵を描くこと。
         絵を通じてとある女性を深く愛するようになりますが、この女性を守るためにも犯罪の片棒担ぎから手を引けなくなっていきます。

         物語の構成は、行きつ戻りつしながら進みますが、だからと言って読みにくいということもありません。
         ハラハラドキドキの面白さは保障できます。
         なかなかのお勧め作品です。
        >> 続きを読む

        2021/06/15 by ef177

    • 他2人がレビュー登録、 9人が本棚登録しています
      ローマ帽子の秘密
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 【クイーン国名シリーズを読み直す!】
         というわけで、もう何度も読んでいるクイーンの名作、国名シリーズをまたまた読み直してみようという試みです。
         当然のことながら、クイーンのデビュー作でもある本作から取り掛かることにしました。
         これまで読んでいなかった翻訳(角川文庫版)を選んでみましたよ。

         私は、もう何度もこの作品を読んでいるのですが、何と情けないことに、今回読み直してみても犯人が誰だったかすっかり忘れてしまっていたのです。
         また、本作には犯行のトリックというものはないので、その記憶に頼るということもできません。
         本作は、純粋にロジックだけから犯人を絞り込めるかという点がテーマのミステリなんです。

         それではまず作品の内容からご紹介しましょう。
         ちなみに、国名シリーズは、有名な『読者への挑戦』が挿入されているシリーズです(『シャム双生児』を除く)。
         つまり、『読者への挑戦』のページの前までに、真相を解明するために必要な全ての手がかりを読者に提供しているので犯人を当ててみなさいというクイーンからの挑戦状なんですね。
         このレビューでも、『読者への挑戦』の前に書かれていることにしか触れないようにしますので、決してネタバレにはなっていないはずです。

         今回の事件の被害者は、モンティ・フィールドという悪徳弁護士です。
         彼は恐喝に手を染めており、多くの人から高額の金銭を強請り取っていたのです。
         モンティが殺されたのはローマ劇場の舞台の途中ででした。
         モンティは、後ろの方の席に座っていたのですが、その隣や前の席は人気の芝居だと言うのに全て空席になっていたのです。

         二幕目が始まってしばらくした頃、モンティの前を通って通路に出ようとした客がいたのですが、その際、モンティが床に倒れたので異変があったことに気付き、劇場に配置されていた警察官に異常を伝え、モンティの死が発覚したのでした。
         劇場は大騒ぎになりますが、警察官がいち早く出入り口を封鎖し、応援警察官を要請したため、誰も劇場の外に出ることはできませんでした。

         モンティは、一般にはあまり知られていない毒物を飲まされて殺されたことが後に確認されます。
         一点、不審な点としては、モンティは夜会服を着ていたのですが、当然かぶっていたはずのシルクハットがどこにも見当たらないのです。

         その後の捜査により、モンティは一幕目が終わった後の休憩時間に売店に立ち寄っており、売店で売っていないジンジャエールを買って来て欲しいと店員に頼んだことが判明します。
         店員は、劇場の外でジンジャエールを買って来て、二幕目が始まって間もなくの頃にモンティの座席に届けていました(座席から飲みかけのジンジャエールの瓶が発見されています)。
         その際、モンティは膝の上にシルクハットを置いていたことを店員がはっきり記憶していました。

         また、劇場の従業員の供述により、二幕目が始まって以降、劇場を出入りした者は誰もいなかったことも確認されました。
         モンティは二幕目の始め辺りまでは生きていたのですから、その後何者かによって毒を飲まされたことになります(モンティは非常に酒臭かったので、おそらく酒に毒を混ぜて飲ませたのではないかと考えられました)。
         ということは、モンティの死体が発見されて劇場が封鎖された際に、犯人はまだ劇場の中にいたはずです。

         警察は、劇場にいたすべての観客の住所、氏名を控え、身体検査をした上で帰宅を許したのですが、不審な者は誰もいませんでした。
         もちろん、劇場関係者についても同様です。
         シルクハットを二つ持っている者もいなければ、平服なのにシルクハットをかぶっているというようなおかしな格好をしている者もいませんでした。

         エラリーは、モンティは恐喝していた誰かと取引をするために劇場に来たと考えます。
         そして、見当たらないモンティのシルクハットは、それを残しておいたのでは犯人が誰か分かってしまうからか、あるいはシルクハットの中に重要な物が隠されており、それを取り出す時間や方法が無かったために、帽子ごと持ち去られたものと推理します。
         しかし、その後劇場内を綿密に捜索してもモンティのシルクハットはどこにも無いのです。

         本作の焦点は、誰がモンティを殺したのかの一点に絞られます。
         そして、その推理のためには、無くなったシルクハットをどう考えるかがポイントになります(そのことは、『読者への挑戦』の前に、クイーン警視及びエラリーによって何度も言及されています)。

         さて、私は、前回本作を読んだ時にこの謎が解けたのです。
         ですから、犯人を指摘することもできました。
         今回、その辺りの事はすっかり忘れていたのですが、まあ、一度解けた謎なので大丈夫だろうと高をくくって気軽に読み始めました。
         ところが……あれ? 分かんないよ。

         そうなんです。
         『読者への挑戦』まで読んでも今回はシルクハットの行方も、犯人もまったく分からないのです。
         こりゃまずい……。
         何故分からないんだ!と焦ってしまいましたよ。

         そこで『やる気スイッチ』を入れて、真剣に考え始めたのです。
         そうしたところ……あ!
         きっとこういうことだとようやく気が付きました。
         そして、確認のために前の方のページをめくって読み直してみると……間違いない!
         完全に忘れていたので一から考え直す結果になってしまいましたが、何とか結論に到達することができました。

         さて、この推理は当たっているか?
         ……OKでした。
         いや~、危なかった~。

         というわけで、本作は(結論を忘れていれば)何度も楽しめる作品ですよ。
         ロジカルな推理はまさにクイーンの真骨頂です。
         極めてフェアなミステリであると高く評価できます。
         まあ、そこが面白味がないと批判される点でもあるのですが、私としてはこれだけクリアに推理してみせるのは非常に立派で、どこに文句があるんだ!と言いたいです。

         なお、微妙な点について巻末解説で触れていますので、巻末解説は先に読まないようにしましょう(一応、この先ネタバレ的な注意書きはあります)。
         そこで触れている点は、実は訳の問題なんですね。
         これまでの翻訳はどれも十分満足な翻訳になっていなかったという指摘なんです。
         うむ、確かに本書の翻訳の方がフェアだと言えます。
         巻末解説は、だから本書の翻訳は良いよ~と自画自賛しているわけですな。
         まあ、ただ、ここに気付くかどうかは、なかなか難しいかもしれませんよ(ここに気付いたということは謎は解けたということでしょう)。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
        >> 続きを読む

        2021/11/02 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      インフェルノ
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね! Ryosuke
      • ラングドン教授がほんとに素敵だと思う。笑

        宗教の内容が本格的で頭使うから疲れるけど面白いから好き!
        下巻も早く読まなきゃ!
        >> 続きを読む

        2014/05/23 by morisuke

      • コメント 3件
    • 他1人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      Xの悲劇
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • レーン四部作の第1作目、ようやく読了。
        読書ログでの皆さんのレビューを読んでいつかは読んでみたいと思っていてようやく手に取りました。
        今まで読んでいたミステリ―が軽いものが多かったので慣れないせいなのか、新訳だからきっと読みやすいのでしょうが、それでも結構な時間がかかってしまいました。
        登場人物の名前を覚えるまで何度も行きつ戻りつしつつ、中盤頃からようやく覚えて読むスピードがアップ。
        ドルリー・レーン氏の状況から見極める、解決への糸口を見つけていくのは圧巻です。
        3つの犯罪も実に計算されているな、と感じました。

        自分でも推理してみるのですが、盲点だらけで足元にも及ばなかったです(笑)
        なぜ【X】の悲劇なのか、最後の最後で腑に落ちました。
        これに続くYの悲劇、Zの悲劇もこのような感じなのでしょうか。

        それにしても、なぜか私の頭に浮かんでくるドルリー・レーン像はテレビドラマのポアロに近いちょっと小太りの男性なのです。
        何度も小説内で、レーンの体型や風貌についての説明が出てきて、引き締まって若々しい60歳のはずなのに、どうしてもポアロ像が消えない(;^_^A
        >> 続きを読む

        2019/08/11 by taiaka45

      • コメント 3件
    • 他1人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      Yの悲劇
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね! dreamer Tukiwami
      • 【ミステリの古典超名作は再読に耐えられるか?】
         本書は、海外ミステリの古典であり、かつ超名作と評価されている作品です。
         バーナビー・ロス名義(これがエラリー・クィーンの別名ペンネームであることはご承知のとおり)で書かれた4つの作品(『X』、『Y』、『Z』の各悲劇と『レーン最後の事件』)の中でも最も評価が高い作品であるばかりではなく、これまでに書かれたミステリの中でもトップクラスの名作との評価は揺るがない作品でしょう。

         私も中学生の頃この作品を読み、他の同時期に読んだミステリの中には結構忘れてしまった作品も多い中で、さすがにこの作品だけは犯人もトリックもはっきりと記憶している作品でした。
         この度、本当に久し振りに再読してみたわけですが、内容を忘れてしまっている作品であればいざ知らず、犯人もトリックもはっきり記憶している作品だと、いかに名作と言えどもミステリは再読に馴染まない、再読してもあまり面白くないのではないかと危惧しつつ読み直してみました。

         結論から言えば、全くの杞憂に終わりました。
         犯人もトリックも分かっていても、やはり面白く読むことができました。
         それだけではなく、犯人等が分かって読んでいるだけに、初読時には気付かなかった(というか無意識に読み飛ばしていた)伏線にも気が付き、結構気を遣って書いているんだなあということが分かったり、あるいは、記憶は確かだと思っていたのに実は正確ではなかったという点もあったりで、結構新鮮に読めたんですね。

         それではどんな作品なのかをご紹介しましょう。
         事件の舞台となるのは、世間から『Mad hatter』(気ちがいハッター)と揶揄されているハッター一族の屋敷です。
         発端は、当主であるヨーク・ハッターと思われる者の自殺死体が発見されたことでした。
         毒をあおって海に転落したようで、死体はひどく損傷していたのですが、検死の結果、ヨークに間違いないだろうということになりました。
         何故自殺したのか、その理由ははっきりしないのですけれど。

         ハッター一族は大富豪なのですが、その一族には忌まわしい血が流れていました。
         作中、はっきりとは書かれていないのですが、一族のカルテには『ワッセルマン反応』という項目が記載されていることが書かれていますので、おそらく梅毒という設定なのでしょう。
         とにかく、ハッター家の多くの者は、暴君であったり、異常に短気であったり、粗暴であったり、残酷であったりと、奇矯な行動が目立ち、到底まともではないのです。
         なので、世間からはアリスに登場する帽子屋をもじって『Mad hatter』(気ちがいハッター)と呼ばれていたのですね。

         さて、このハッター一族、当主が自殺しただけでは済まず、今度は自殺したヨークの孫に当たるまだ幼い少年のジャッキーが誤って毒を飲むという事件が起きます。
         ヨークの娘のバーバラは、盲聾唖という三重苦を抱えている女性なのですが、母親のエミリーはバーバラを溺愛しており、健康のためということで、毎日決まった時間に必ず卵酒を飲ませていました。
         ジャッキーはとんでもない悪ガキなのですが、バーバラが飲む卵酒と知りながら、それを盗み飲みしたところ、卵酒には猛毒のストリキニーネが仕込まれていたため、ジャッキーは中毒を起こして倒れてしまいます(一命は取り留めるのですが)。
         何者かがバーバラの殺害を企てた?
         確かに、バーバラはその障害のために一族から疎まれていたことは事実でした。

         そして、第二の事件が発生します。
         バーバラは、母親のエミリーと同じ寝室で、ベッドを並べて寝ていたのですが、ある夜、何者かが二人の寝室に侵入し、エミリーの頭部をマンドリンで殴打するという事件が起きたのです。
         エミリーは殴られたショックで心臓麻痺を起こして死んでしまいます。
         しかし、何故、マンドリンなどという凶器を使ったのでしょう?
         寝室には果物好きなバーバラのためにいつも果物が用意されていたのですが、その中の梨の一つだけから毒物が検出されました。
         エミリーは、果物はあまり好きではなく、特に梨が嫌いで絶対に食べないということは一族の者みんなが知っていることでした。
         ということは、犯人はバーバラを殺害しようとして梨に毒物を仕込んだのだけれど、それをエミリーに見とがめられたためとっさに持っていたマンドリンでエミリーを殴り、その結果エミリーは死んでしまったということなのでしょうか?
         しかし、それにしても何でマンドリンなんて用意して毒を仕込みに行ったのでしょう?

         警察は上記のような推理から、犯人のターゲットはバーバラなのだから、バーバラに対して殺意を持っている者が犯人だという線で捜査を進めるのですが行き詰まってしまいます。
        探偵役のドルリー・レーンは、耳が聞こえない引退したシェークスピア俳優なのですが、彼はもちろん真相にたどり着きます。
         しかし、これがとんでもない真相で、レーンもただ犯人を指摘して警察に検挙させれば済むという話ではないと考え、悩みに悩んでしまうんですね。
         結局、レーンは、ある出来事を機にこの事件から一切手を引くと宣言し、真相を説明しないままハッター家から去って行ってしまうのです。

         もちろん、その後、レーンによって真相が語られるのですが、これは……。
         実は、ラストの本当にラストの部分は、どうやら私は勘違いして記憶していたようです。
         このラスト、はっきりと説明されずに終わるため、どう解釈するかはもしかしたら読者によって見解を異にするかもしれません。
         私は、レーンが……ここは書けないなぁ。

         実は、このレーン4部作は、個々の事件ごとにそれなりの結末が用意されているのですが、シリーズ全体の結末として『レーン最後の事件』が書かれているという構成になっているんですね。
         そのシリーズ全体の構成もかなりショッキングなものなのですが、でも、実は既に『Y』でも……。
         おっと、もうこれ以上は書けません。

         いずれにしても本作はミステリ史上に残る超名作であることは間違いなく、海外ミステリを読んでみたいけれど何を読めば良いのか分からないと迷っている方がいたら、本作は絶対に外せない作品です(本作を読むなら、『X』から順を追って『最後の事件』まで読み通すことをお勧めします)。
         また、既に読んだという方も、本作は十分再読に耐えるミステリであると思いますので、機会を見て読み直してみるのも面白いと思います。


        読了時間メーター
        ■■■     普通(1~2日あれば読める)
        >> 続きを読む

        2019/06/16 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      レーン最後の事件
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 【ミステリ史上に残る衝撃の結末】
         『X』、『Y』、『Z』の三悲劇に続く、名探偵ドルリー・レーンものの最後の作品です。
         三悲劇のレビューでも書いてきましたが、レーン・シリーズは必ず順番通りに読まなければなりません。
         このレビューもネタバレは回避しますが、まだ三悲劇を読んでいないという方は、決して本作に手を出してはいけませんよ。

         ドルリー・レーンは、引退した名シェークスピア俳優なのですが、耳が全く聞こえません。
         そのために引退を余儀なくされたのですが、引退後、読唇術を完璧にマスターしており、電話には出られないものの、日常生活は苦も無くこなしています。
         本作でのレーンは既に90歳を超え、健康も損ねていますが、莫大な資産をもとに、ハムレット荘と呼ばれる邸宅で悠々自適の生活を送っているという設定です。

         最後の事件は、既に警察官を引退して私立探偵事務所を開いているサム元警視のもとに奇妙な依頼が舞い込むところから始まります。
         青と緑に染めたけったいな顎鬚を生やし、青いサングラスをかけ、何枚も服を着こんでいる男性が、一通のマニラ封筒を持参し、その封筒を厳重に保管して欲しいと頼んできたのです。
         封筒の中身は明かせないけれど、毎月20日に電話をするので、その場合には何事も起きていないと判断し、保管を継続して欲しいと。
         万一、毎月20日の電話が無かった場合には、レーン立ち合いの下にその封筒を開けて
        中に入っているものを見て欲しいと言うのです。
         封筒の中に入っているものは、100万ドルの値打ちがあるものにつながるヒントが書かれているのだと。

         こんな奇妙な依頼は断ろうかとも思ったサムですが、レーンの名前を出されたことから引き受けてしまいます。
         しかし、この依頼者、絶対変装している。
         しかも、何というおかしな変装なのだ?

         その後、あるバス会社の運転手から、友人のドノヒューが行方不明になったので探して欲しいという依頼が舞い込みます。
         ドノヒューは、元警察官で、サムも知っている男でした。
         彼は、警察官を退職し、現在は稀覯本を保管、展示しているブリタニック博物館の守衛をしているのです。

         ブリタニック博物館は現在改装中で、一般客の見学はできないのですが、問題の日は教職員の団体が見学を申し込んだため、特例として見学が許されたというのです。
         バスの運転手は、教職員の団体を博物館まで連れて行き、そこで友人のドノヒューと立ち話をし、その日の夜、一緒にボクシングの試合を見に行く約束をしました。
         ところが、しばらく後、ドノヒューは突然博物館から走って出ていき、その後行方不明になったというのです。
         連絡が取れなくなってからまだそれほど時間が経っているわけでもないので、警察に届けるのもどうかと思い、サムに頼みに来たと言います。
         かつての警察官仲間の事件ですので、サムも引き受けないわけにはいきません。

         サムは、娘のペーシェンスと共に、さっそく博物館に出かけますが、やはりドノヒューは出勤しておらず、連絡は取れないといいます。
         その際、改修中の博物館の、展示ケースのガラスが破られていることに気付きます。
         何か事件でも?
         と尋ねますが、ただの事故だというのです。
         改修工事中に作業員がガラスを割ってしまったらしいということなのですが、ケースの中のものは無くなっていないので問題ないと。

         その後、例の封筒を預けて来た男からの連絡が途絶えます。
         サムは、男との約束どおり、レーンに連絡し、その立ち合いの下、封筒を開けてみました。
         封筒の中にはさらにもう一つの封筒が入っており、その封筒の中には、上方にレターヘッドが入った便せんに『3HS wM』とだけ書かれていたのです。
         なんだ、これは?

         その後、レーンも捜査に加わり、博物館の割れた展示ケースの中に入っていた稀覯本が一冊すり替えられていることが判明します。
         それもおかしな話で、もともと入っていた初版本がなくなり、その代わりに第二版が入れられていたのです。
         そして、第二版は現存していないと考えられていた本なので、実は初版本よりも価値が高い本だというのです。
         何故、より価値の高い本とすり替えたりしたのでしょう?

         そしてさらに奇妙なことには、盗まれたはずの初版本が博物館に送り返されてきたのです。
         しかも革装の表紙の一部が切り裂かれており、その修理代も添えられて。
         表紙の内側を覗くと、何かが隠されていた痕跡がありました。
         初版本を盗んだ者は、表紙の内側に隠された紙のようなものが欲しくて盗んだのではないか?

         その後、遂に殺人事件が発生します。
         ある小屋ごと爆破されてしまうのです。
         その小屋には、おそらく、初版本の表紙内側から抜き取られた紙が隠されていたと思われるのですが……。
         死体も損傷がひどく、誰なのかは分かりません。
         そして、死体には銃創が発見されましたので、銃撃された後、小屋ごと爆破されたものと考えられます。

         この過程で、ハムネット・セドラーというブリタニック博物館の新任館長と、エールズ博士という謎の人物の身元についての疑惑が持ち上がります。
         どうもこの2人は似ているんです。
         あるいは一人二役なのか?

         爆破された小屋は、エールズ博士が仮住まいとして利用していたもので、小屋の中から例の青と緑に染めたおかしな付け髭や青いサングラスが発見されていましたので、サムに奇妙な依頼をしてきた男はエールズ博士だと思われます。
         とすると、小屋で発見されたのはエールズ博士ということなのでしょうか?
         セドラー館長も行方不明になっていましたが、後に発見されます。
         そして、ある事実を語るのですが……。

         しかし、ただ一人、ペイシェンスだけはある事に気がついてしまうのです。
         それは……。

         こういったミステリなのですが、とにかくラストの衝撃がものすごく、最初に読んだ時には呆然とさせられました。
         私は、最初にこのラストを読んだ時、しばらく固まりましたよ。
         それと共に、深い感慨を感じたのです。

         今回は何度目かの再読でしたが、結構忘れており、初読と変わらない感覚で楽しむことができました。
         サムが預かった封筒に書かれていた暗号のようなものの謎もすっかり忘れていたのですが、どういうわけか今回はすぐにその意味に気がつきました。

         この作品、稀覯本にまつわるミステリになっており、作者の一人(エラリー・クイーンは、アルフレッド・ダネイとマンフレッド・リーの合作ペンネームであることはご存知のとおり)であるダネイもミステリ稀覯本のコレクターでしたので、その知識も使ってのミステリになっています。
         ですから、暗号に書かれていることの意味は分かったにせよ、それがどういう意味を持つものなのかはちょっと一般人には分かりにくいなぁ(まあそれは作中で解説されますし、問題ないんですけれどね)。

         こうしてレーン・シリーズを再度読み通してみると、クイーンはこの4部作を最初からその全体を構想して書き始めたと感じられます。
         そもそも、こういう決着をつけることを当初から意識して『X』から世に送り出したのでしょう。
         ですから、シリーズ中最も低調な『Z』もペイシェンスなどというキャラを突然持ち出し、その一人称で書いたのでしょう。
         なお、本作は通常通り三人称で書かれており、『Z』で見られたペイシェンス問題は緩和されています(それほど鼻につきません)。

         レーン・シリーズはミステリの黄金時代に書かれた傑作群であり、特に『X』と『Y』は、ミステリ好きなら外せない名作です(というか、レーン・シリーズ自体通読すべきでしょう)。
         本作を、純粋にミステリとして評価するならば、なかなか凝った構成にしていて評価はできるものの、クイーンらしい緻密な推理というにはやや欠ける点がないとは言えません。
         クイーンの一流作品に比べてしまうと、やはりやや劣る点は見受けられます。
         しかし、それを補って余りあるシリーズ全体の構成、本作の衝撃度という点から必読の作品であるという評価は揺らがないと思います。

         何度も書きますが、このシリーズ、ミステリ好きならマストで読むべき作品であり、また、必ず『X』から順番に読んでください。
         まだ未読であるという幸せなあなた、あなたはこれからこの名作を手付かずで楽しめる大変ラッキーなポジションにあります。
         どうか、虚心坦懐に、『X』から読み始めてください。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
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        2019/06/18 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      天使と悪魔
      カテゴリー:小説、物語
      3.6
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      • ダン・ブラウンの"ラングドンシリーズ"の1作目の作品「天使と悪魔」(上・中・下巻)を読了。

        早朝、マサチューセッツにあるロバート・ラングドンの家にかかってきた1本の電話。
        それはスイスのジュネーヴにあるセルン(欧州原子核研究所)の所長・マクシミリアン・コーラーからの電話だった。

        ラングドンは、現在45歳のハーヴァード大学宗教図像学解釈学の教授。
        早朝の不躾な電話に腹を立てて切ってしまったラングドンに、コーラーは、人間の死体の写真をファックスで送ってきたのです。

        その死体の背中には、なんと「イルミナティ」の刻印があったのです。
        「イルミナティ」というのは、ガリレオ・ガリレイも所属していたという、世界で最も古い、しかし、もう既に現存していないはずの科学者たちの秘密結社。

        しかもその紋章は、見事にアンビグラム化されていました。
        自分の目を疑いながらも、ラングドンは、コーラーからの迎えの飛行機に乗り、早速ジュネーヴへ。
        殺されたのは、現代における最も優秀な科学者の一人、レオナルド・ヴェトラ。

        そして、彼が義理の娘・ヴィットリアと共に開発した「反物質粒子」のサンプルが、研究室から盗み出されていたことが分かる。
        それはまさに、次期教皇を選ぼうとしていたヴァチカンに仕掛けられることに。
        爆破予告があったことを知ったヴィットリアとラングドンは、発作で倒れたコーラーの代わりにヴァチカンへと急ぎます。

        科学の最先端技術、科学とキリスト教の対立の歴史、秘密結社。そして図像学。
        逆さまにしても、同じように読むことができるというアンビグラム化された紋章が、実際に本に載っているというのもいいですね。

        現代のコンピュータを駆使しても、この完全対象形を作り上げることが出来ないでいるというのは正直どうかと思いましたが、しかし、それにしても、この紋章の完璧な対象性は非常に美しく、紋章そのものが力を持っているようにも感じられましたね。

        そして、科学とキリスト教の対立という、少々重いテーマの物語なのですが、ミステリとしての謎解きと見立て殺人、内通者と裏切り、そして、ハリウッド映画的なアクションとサスペンスが見事に融合しており、蓋を開けてみればとても読みやすい作品でした。

        モチーフがこれだけ沢山詰め込まれていることを思えば、この読みやすさは特筆すべきことなのではないでしょうか。
        欲を言えば、主人公のラングドンや暗殺者ハサシンが、もう少し魅力的だったら、というところなのですが。

        序盤で語られた、レオナルド・ヴェトラの提唱する科学と宗教の両立は、非常に興味深かったですし、ビッグバンを再現する実験は、ぜひ見てみたくなってしまいます。

        わずか1グラムでも、広島に投下された原爆と同じだけのエネルギーを持つという反物質の説明も、物理学にあまり興味がない人間にも非常に分かりやすく書かれています。

        セルンなど、実在している施設が舞台になっているというのも驚きです。
        そして、ヴァチカン市国内の描写、サン・ピエトロ大聖堂はもちろん、スイス衛兵隊や図書館の描写もまた、とても興味深かったですね。

        まるで、ローマ市内の名所旧跡を早足で観光したような感覚。
        この歴史の重みを持つ舞台設定が、またリアリティを生み出しているのでしょうね。

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        2021/04/01 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 27人が本棚登録しています
      パズル・パレス
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 【絶対に解けない暗号】

         本作の舞台となるのは、アメリカのNSA(国家安全保障局)という組織です。
         この組織は、テロや犯罪対策のために世界中の様々な通信を勝手に傍受し、特にその通信中の暗号を解読しているという設定です。
         NSAは超超高性能のとんでもないコンピューターを密かに持っており、このコンピューターに解析させれば、どのような暗号でもものの数分で解読してしまうとされています。

         ところが、とあるとき、NSAは「絶対に解けない暗号」を開発したとのメッセージを受けます。
         開発者は、この解読不可能な暗号をネット上にアップロードしているのですが、それは当の解読不可能な暗号で暗号化されているコードでした。
         これを使えるようにするためにはパス・コードが必用なのです。

         開発者は、世界中を相手にして、この解読不可能な暗号を競売にかけます。
         仮にこのような暗号が実際に使われることになれば、NSAの超コンピューターをもってしても解読できない暗号がまたたくまに世界に蔓延することになり、NSAは存続の危機に陥ります。

         この事態を察知したNSA副長官は、まずはその暗号化されている解読不能暗号の暗号を、超コンピューターに解析させますが、これがいつまで経っても解析できない。
         つまり、開発者が言うとおり、その暗号は解読できないのです。
         事態を重く見たNSAは調査に乗り出すのですが、悪いことにその開発者に接触する前に開発者が心臓マヒで死亡してしまいます。開発者はどこかにキー・コードを隠しているハズ。

         ということで、目立たないように民間人(主人公の女性の婚約者です)を派遣するのですが……。
         他方で、その解読不可能な暗号を何とかしようとの努力もしているのですが、徐々にNSAの職員が異変に気付きはじめます。
         このような事実を知っているのはほんの副長官の他、優秀な暗号解読者である主人公の女性1名のみ。いたずらに事実を広めたくないので何とか事態の沈静化を図ろうとするのですが……。
         といった粗筋です。

         ダン・ブラウンらしい小気味よい展開で物語は進みます。
         章立てが非常に短く、いくつかの場面が同時並行的に進んでいきますので、緊迫感も盛り上がります。
         さて、この解読不能な暗号の行く末は?
         続きは、下巻のレビューで!
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        2021/06/11 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 9人が本棚登録しています
      パズル・パレス
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 【割り切って楽しむが吉】
         本作は、ダン・ブラウンのデビュー作ですが、結論から先に書くと、総合的に楽しんで読めました。

         ただ、確かに例えば『ダ・ヴィンチ・コード』などと比較すると、やや荒いかなと感じる部分はありましたし、やや偶然が重なりすぎる展開や、そもそもの設定自体にもいくつか気になる点がありました。

         まず、そもそも超超高性能のコンピュータがあれば、どんな暗号も数分で解読できるという設定自体どうかなぁと思わざるを得ませんでした。
         その仕組みは、パスワードを力業、総当たりで試して見つけると説明されていましたが、そういう方法では解読できない暗号のタイプもあるでしょうにと思いました。

         また、仮にその点は不問に付すとしても、解読不能の暗号を開発したというメッセージをあまりに安易に信用しすぎるのではないかという疑問もあります。
         それはNSA自体そうですが、世界中でこの解読不可能暗号を競売で競り落とそうと考えている企業側にしてもそうです。
         NSAはひどいもので、何のチェックもせずに(時間的制約が合ったとは言え)、自分のところのセキュリティを外してまで超超高性能コンピュータにその得体の知れない暗号プログラムを入れるなんていうことまでしてしまいますが、普通やらないんじゃないかなぁ……

         その他にも、読んでいて気になった点はいくつかあるのですが、こう言った点は、「そういう設定なのだ」と割り切って作品を楽しむことにした方が吉です。
         細かいことを気にしなければ、十分に楽しめる作品に仕上がっていると思いますし、エンタメ作品として評価できると思います。
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        2021/06/12 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      ロスト・シンボル
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!
      • フリーメイソンについて興味をもちましたね。
        映画は前2作をみたけどシリーズ原作は初読。
        ちょっと読み始めたら読みやすいのでどんどん読める。
        ただ、内容が薄い気がする。
        古来からの"知"をめぐる知的冒険...のはずなんだけど冒険のキーワードに必要なアクション的部分がいまひとつだろう。
        映画化しても刺青のビジュアルや水責めシーンなどパッとしない感じを想像。
        この内容を上下巻2冊に分けているのもあるけれど全体的にもそう思う。
        そういえば、洋モノってなんで上下巻2冊に分かれてんのかな?

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        2018/07/18 by motti

    • 8人が本棚登録しています
      オランダ靴の秘密
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 【クイーンの国名シリーズ中、人気の高い作品の再読です】
         クイーンの国名シリーズは、私が中学生の頃に全作を読んでいるのですが、内容については結構忘れています。
         この『オランダ靴の秘密』についても同様で、なかなか巧妙な作品だったという印象は残っていたものの、犯人も推理も忘却の彼方でした。
         まあ、それは一面喜ばしいことでもあります。
         だって、この作品をもう一度楽しめるのですから。
         というわけで、大変久し振りに本作を再読してみました。

         事件は、大富豪であるアビゲール・ドーンという老婦人が経営するオランダ記念病院で発生します。
         ドーン夫人は糖尿病を患っていたのですが、手違いでインシュリン注射を射ち忘れたため、めまいを起こして階段から転落してしまい、胆嚢破裂を起こしてしまったのです。
         直ちにオランダ記念病院で緊急手術が行われることになりました。
         ドーン夫人は昏睡状態にあり、間もなく始まる手術に備えて手術室手前にある控室で待機していました。

         手術が始まり、執刀医のジャニー医師が運ばれてきたドーン夫人を見て驚愕します。
         ドーン夫人は針金で首を絞められて絞殺されていたのです。

         手術前、控室にいたドーン夫人にはプライス看護婦が付き添っていました。
         控室に運ばれる前のドーン夫人が生存していたことは確認されていますので、控室内で殺されたとしか考えられません。
         プライス看護婦の話によれば、自分が付き添っていた時にジャニー医師が様子を見に控室にやって来たことがあり、ジャニー医師の指示で、自分は控室に隣接している消毒室に行って医師が手を洗うための消毒液を用意したことがあり、その時だけ席を外していたということです。

         ジャニー医師は足が不自由でびっこを引いて歩くという特徴があるのですが、ジャニー医師が手術前に控室にやって来たことについては、控室の手前にある麻酔室にいた病院職員が目撃していましたし、控室でドーン夫人に覆い被さるようにして様子を見ている後ろ姿を、たまたま控室にやって来たインターンにも目撃されていました。
         プライス看護婦も他の目撃者もジャニー医師だったと証言しますが、但し、白衣を着て帽子を被りマスクをしていたので完全に顔を見ているというわけではありません。
         ジャニー医師が控室を出た後、プライス看護婦は付き添いを再開しましたが、ドーン夫人の近くに寄ってその様子を確認するなどはしていないので死んでいるとは思わなかったというのです。

         これはジャニー医師が犯人ではないかと当然のように疑いがかかりました。
         ジャニー医師は、ドーン夫人に寵愛されており、遺産相続人にも指定されていましたので殺害の動機も十分にあります。

         しかしジャニー医師は犯行を強く否定しますし、犯行があったと考えられる時間には来客があり、自室で来客と会っていたとも主張します。
         確かに来客があったことは他の職員も確認していました。
         じゃあ、その来客は誰だったのか?というと、この点についてはジャニー医師は供述を拒否するのです。

         その後の捜査により、何者かが脱ぎ捨てたと思われる白衣、マスク、帽子、白色ズボン、白色ズック靴が病院内の電話ボックスから発見されました。
         これらの衣服はオランダ記念病院で使用している共用のものでした。
         どうやら何者かがジャニー医師に化けて犯行に及んだのではないかとも思われます。
         奇妙なことに、白色ズボンは腿の辺りにあげがされており、白色ズックの靴紐の片方がちぎれていて絆創膏で補修されていました。
         また、両方の靴の舌革(紐の下にある革の部分)がめくれてつま先の方に押し込まれている状態でした。

         エラリーは、いつもの通りの論理的な推理によりある程度の犯人像を絞り込むことに成功するのですが、犯人を一人に絞り込むまでには至っていませんでした。
        解決の糸口がつかめずにいたところ、第二の殺人が発生します。
         殺されたのは何とジャニー医師その人でした。
         ジャニー医師が自分の個室で机に向かって執筆をしている最中に背後から襲われたと思われます。
         犯行の手口も第一の事件と同じで、背後から頭部を鈍器で殴打されて気を失わせた後、針金で首を絞められていたのです。

         犯人は何故同じ手口で殺害したのでしょうか?
         殺害方法を変えれば別の犯人ではないかとの疑いが当然起きても不思議ではないのに。
         もちろん、第一の殺人と第二の殺人の犯人は別であり、第二の殺人の犯人は同一犯と見せかけるために同じ手口で犯行に及んだのかもしれません。
         さてエラリーの推理は?

         この作品は、パズラー、本格ものとして十分な作品に仕上がっており、エラリーの推理には隙間も無理もない緻密なものだと評価できるでしょう。
         本格ミステリのお手本のような作品と言って良いのではないでしょうか。
         なるほど、国名シリーズの中でも人気が高いのも肯けます。
         国名シリーズの名物である『読者への挑戦』も挿入されているばかりか、その前に、クイーン警視とエラリーが事件について検討する『間奏曲』という章も挟み込まれており、なんと、この章には読者がメモをするための余白まで設けられています。
         作者クイーンの自信の程がうかがえるではありませんか。

         また、本作ではクイーン家の少年執事であるジューナの様子も生き生きと描写されており、これがまた可愛らしいんですよ。
         まえがきは、いつものようにJ.J.マックが書いていますが、それによると本作が発表されたのは、クイーン警視が警察を退職し、エラリーやジューナ、さらにはエラリーの妻子と共にニューヨークを去って一家でイタリアに移住した後のことだとされています。
         あれ? エラリーって結婚して子供をもうけていたんでしたっけ?


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
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        2021/03/17 by ef177

    • 3人が本棚登録しています
      Zの悲劇
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 【ドルリイ・レーンものの中では最も低調な作品。その原因は?】
         名探偵ドルリイ・レーンが登場する作品は、『X』、『Y』、『Z』の三悲劇に加えて『最後の事件』の全部で4作あります。
         その中で最も出来が悪いのが『Zの悲劇』ではないかと思うのですが、おそらくこの評価には多くの方も異論が無いのではないかと思います。

         本作は、典型的なフーダニットもので、悪辣な2人の兄弟のもとに、次々と「秘密をバラされたくなければ金を払え」という恐喝の手紙と共に、切断されたらしき箱の一部が送りつけられ、兄弟はいずれもこの恐喝に屈して金を用意するものの、結局殺されてしまうという事件の謎を追います。

         本作は、レーンものの最初の事件である『Xの悲劇』から11年後という設定になっており、ブルーノ検事はニューヨーク州の知事になっており、サム警部は警察官を退職して私立探偵事務所を開いています。
         レーンは相変わらずシェイクスピア荘で生活しているのですが、老いには勝てず、すっかり病のためにやつれてしまっています。
         こんな面々の中で(特に前半で)探偵役をつとめるのがサムの娘であるペイシェンスということになります。

         第一の殺人事件は、その恐喝の手紙の送り主として名前が書かれているドウが刑務所から出所したばかりだったということもあり、ドウが犯人に間違いないと思われます。
         しかし、ペイシェンスは、『右利き、左利きの推理』を展開し、ドウは犯人ではないと主張し、サムもこれに同調するのです。
         とはいえ、ドウが犯人ではないことを立証できる証拠は皆無であることから、結局ドウは殺人罪で起訴されてしまうのでした。

         ペイシェンスとサムは、レーンに助けを求め、レーンもペイシェンスの推理を是認して諦め切っているドウの弁護士を説得し、無罪主張をさせるのですが陪審員の判断は、有罪、無期懲役というものでした。

         その後、ドウが脱獄し、その間に第二の殺人が起きてしまうのです。
         こうなるとドウが二つの殺人を犯したという疑いがますます強まり、しかもドウは第二の殺人現場から被害者の拳銃を持ち去っていたこともあり、容疑は決定的になってしまいます。

         ドウは再び逮捕され、第二の殺人事件でも起訴され、今度は死刑判決を受けてしまうのです。
         レーンは、ドウはいずれの殺人事件の犯人でもないと主張するのですが、やはり証拠があるわけではなく、また、真犯人も絞り切れずにいるのです。
         ドウの死刑執行の日は一日、一日と迫ってきます。
         ドウはこのまま死刑を執行されてしまうのか?という緊張感溢れる展開になっています。

         さて、このような作品なのですが、どこが問題であまり高くは評価できないのでしょうか?
         私がそう考える原因はいくつかあるように思えます。

         第一に、ペイシェンスを探偵役に持ってきてしまったことが問題だと思うのです。
         最終的にはレーンの推理によって決着がつけられるのですが、作品の半分位まではレーンはほとんど登場せず、もっぱらペイシェンスが捜査、推理を担当するのです。
         しかも、このペイシェンスが魅力に乏しい。
         この時代の活発な現代女性を描いているのでしょうけれど、私には鼻持ちならない高慢ちきな生意気女としか見えませんでした。
         こんなキャラが前面に出て、しかも本作は彼女の一人称で語られるので、レーンが登場した後もペイシェンス色が強く残り続け、彼女を気に入ることができない読者にとっては本作全体が何となくイヤ~な感じに思えてしまうのです。
         なんともレーンの影が薄すぎるのです。

         まあ、ペイシェンスを探偵役に持って来ざるを得なかったのは、次作への布石としてやむを得ないところもあるのですが、それにしてもペイシェンスのキャラは私には魅力が感じられなかったのです。

         第二に、レーンが是認するペイシェンスの推理も含め、本作の推理は全般に脆弱であると思います。
         ちょっと書いた『右利き、左利きの推理』だって、「本当にそうなの?」、「いつもいつもそうなるとは限らないのではないか?」という素朴な疑問がぬぐい切れないのです。
         また、第二の殺人に関し、恐喝の手紙と共に送り付けられた箱の一部を誰が送ったのかという点についても、レーンは、一応こういうことだろうという説明はするものの、それは余りにも都合が良過ぎるもので、しかもそう考える根拠は何も示されず、単なる思い付きにとどまってしまっているのです(その検証もされません。言いっぱなし)。
         さらに、真犯人を名指しする推理も、消去法には一応基づいてはいるものの、クイーンの他の作品のような論理必然性、説得力に乏しく、まったくクイーンらしからぬ杜撰な推理と思えてならなかったのです。

         第三に、本作にはトリックらしいトリックがありません。
         殺人自体、何の工夫もない単純なものなのです。
         『X』では満員電車内の殺人(しかも犯人はその電車内にいるはずなのに分からない)やダイイング・メッセージという仕掛けがありました。
        『Y』では(詳しくは書けませんが)何故マンドリンなどというおかしな物が凶器に使われたのかという大きな謎がありました。
         ところが本作にはそういう謎がまったくないのです。
         かろうじてあるとすれば犯人の意外性ということなのかもしれませんが、今の読者にはこの程度は意外とも何とも感じないと思います。

         他にもあまり高く評価できない原因はあると思うのですが、私には特にこの三点が致命的とも思われ、クイーン作品としては残念な出来と評せざるを得ないのです。
         いや、これが他のミステリ作家の作品なら、迫る死刑執行、スパイもどきの調査、銃撃戦などのサスペンスも織り込んだ及第作程度には評価できるのですが、あくまでもクイーンの作品ですからねえ。
         クイーン作品としては、本来の水準に達していないと厳しく評価せざるを得ません。

         というわけで、色々残念な点がある作品ではありますが、『最後の事件』を読むためには本作は絶対に読了しておかなければならないのです。
         その理由は、『最後の事件』を読了されれば納得していただけると思いますよ。


        読了時間メーター
        ■■■     普通(1~2日あれば読める)
        >> 続きを読む

        2019/06/17 by ef177

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      天使と悪魔
      カテゴリー:小説、物語
      3.6
      いいね! mizukiyuno
      • 宗教と科学の対立。
        秘密結社「イルミナティ」による枢機卿誘拐と殺人。
        宗教象徴学教授ラングドンが謎を解き明かすために奔走する。

        暗号として登場する建築物はすべて実在するものということで、 事実と創作の境界が曖昧だ。 解説にもあるように本書を携えてイタリア観光をするのも楽しそう。

        特定の宗教に帰依せずに生活しているせいか、本書の世界観はあまりピンとこない部分が多かった。信仰のためにそこまで己や他者を犠牲にする必要があるのか。

        サスペンスとしては面白い。秘密結社による陰謀というのは読んでいてワクワクする。
        >> 続きを読む

        2014/12/20 by seimiya

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    • 22人が本棚登録しています
      ダ・ヴィンチ・コード
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! Ryosuke shoko44n
      • ルーブル美術館での殺人事件、残されていた謎のメッセージからどんどん展開していく大ヒットした小説。

        キリスト教や絵画に関して学術的な内容も多く、その真偽のほどはわかりませんが、ミステリー小説としてエンターテインメント性抜群です。すらすら一気に読めます。何度も読み返したい印象的な名作というより、万人が面白く読める本という印象です。

        個人的には、導入部分の引き込み方は最高。
        最後の方の展開は付いていけなくなりました。

        映画も観ましたが、色々省略しすぎてイマイチです。
        映画だけ観た人は何のこっちゃ…となりそうです。

        読み終わった後、ルーブル美術館に行きたくなりました。
        これからフランス旅行のご予定がある方でこの本を未読の方は読んでみると良いかもしれません。
        >> 続きを読む

        2012/10/06 by ただひこ

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      デセプション・ポイント
      カテゴリー:小説、物語
      3.5
      いいね!
      • 大統領選挙とNASAがテーマのサスペンス。
        二人の女性主人公がそれぞれの場所で、大きな欺瞞の渦に巻き込まれまがら解決していく。

        ダン・ブラウン作品の中では現代的ではあるが、化学と自然のように、一見対照的な2つが重なって織りなされるトリックは彼のほとんどの作品に共通する。
        彼の作品は、楽しみながら知識を吸収できたり、新たに興味を持てたりするので、そういった意味でもとてもいい作家だと思う。
        今回は、かなり大掛かりなしかけだったので、途中ファンタジーちっくに感じてしまったけど。

        NROやNASA、デルタフォース、歴代アメリカ大統領の歴史なども改めて調べてみるきっかけになった。
        >> 続きを読む

        2017/11/15 by REM

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      天使と悪魔
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 映画を観る前に 再読してみました。

        うーん、やはり面白い!

        映画を 観た後 再読してみました。

        やっぱり こっちが 面白い!

        映画には描ききれなかったドラマがあります。

        ダ・ヴィンチ・コードもそうですが
        訳者さんが素晴らしい!と思います。オススメ。
        >> 続きを読む

        2015/06/24 by nekoya

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      ダ・ヴィンチ・コード
      カテゴリー:小説、物語
      3.2
      いいね!
      •  最後まで十分に面白かったです。
        謎解きのスピードが落ちることなく、
        駆け抜けるようにストーリーが展開します。
        まぁ単調といえば単調なのですが、
        西洋人好みの どんでん返しもありますし
        ハッピーエンドですし、
        娯楽小説としてはオススメできます。

         映画も見てみたいですが、
        きっとあまり面白くないんでしょうねぇ。
        このボリュームの内容を3時間程度でまとめるのは
        無理そうですから。
        でも、きっと見ちゃうだろうなぁ。
        >> 続きを読む

        2015/02/01 by kengo

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      デセプション・ポイント
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • ずいぶん前の本だな〜(^◇^;)
        久しぶりに再読しました。

        ハリウッド映画にしやすそうな感じ。
        ホワイトハウスの駆け引きとNASAの陰謀と
        科学者の証明と吊り橋効果のラブアクション。笑

        暇つぶし読書には悪くないけど
        ラングドンシリーズの深みはないです。
        同じ筆者なら 天使と悪魔 を買うべし。と思う。
        >> 続きを読む

        2016/11/16 by nekoya

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      ダ・ヴィンチ・コード
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • ハードカバー版を読んでお気に入りの本だったので、
        物語に出てくる美術品や参考資料の写真も一緒に見ながら
        楽しみたくて愛蔵版も購入。

        テンプル教会、ウェストミンスター寺院、ロスリン礼拝堂などの写真や、
        サン・シュルピス教会は、天井から祭壇の燭台、オベリスク、
        物語の中では「ローズライン」とゆう、空想の設定として最後のキーとなった
        日時計などの写真もいっぱい見られるので、それぞれの視点でまた更に
        どこの軸から広げて楽しむか、いろんな楽しみのできる大切な1冊。

        価格はちょっと高いけれど、参考資料の写真を見ながら
        よりこの本の世界を楽しめるので大満足です。
        >> 続きを読む

        2013/10/15 by 山本あや

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【越前敏弥】(エチゼントシヤ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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