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小林英樹

著者情報
著者名:小林英樹
こばやしひでき
コバヤシヒデキ
生年~没年:1947~

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      フェルメールの仮面 = The Mask of Vermeer
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね! Tsukiusagi
      • 「表現とは何なのか、創造とは何なのか」
        「フェルメールの仮面」は絵画の贋作問題をテーマにした小説です。

        フェルメールを知っていますか?おそらく日本で最も愛されている画家の一人です。
        オランダのデルフトという町で生まれ、短い一生を終えたにも関わらず
        数少ない彼の作品は今も光輝き人々を魅了しています。
        盗難や贋作問題にもさらされ、ミステリアスな影を纏った画家でもあり、
        小説の題材として取り上げられることも多いです。

        作者の小林英樹氏は絵画の専門家で、知識、見識、研究の成果を余すところなく盛り込み、
        芸術家の心理、絵画の手法、絵の鑑識眼すべてに言及しており、丁寧で緻密です。
        巻末では「驚きの事実」が語られるのですが、果たしてそれは真実なのでしょうか?

        美術もののミステリーとしてはかなりレベルが高く、「ダヴィンチ・コード」以上の問題作なのではないかと感じました。
        本作の謎とは絵画の中の謎を読むのではなくて、絵画そのものの謎解きだからです。

        【ストーリー】
        シャセリオの元、パリで古典技法を習得した折原祐一郎。
        高い技術を持ちながら、絵画教室を手伝い「小樽デルフト風の会」の中心となり小樽の町で暮らす日々を送っている。
        彼の元に海外から絵画の修復のため早速パリへ飛んで欲しいという依頼が入る。
        この誘いに疑問を持ちながらも画家として自分の枠を超越するチャンスにも思われ、
        繭と柚子という二人の女性への想いも絡み心は揺れ動く。

        ナポレオン統治下のパリの物語が並行して語られる。
        ダヴィッドの工房で修行の身のアンリ・ルブロン。
        模写に勤しむ日々を過ごしながら画家としての成功を夢見ていたが…。

        フェルメールに魅了され、その模写を通して繋がったふたりの画家、祐一郎とアンリ
        彼らをつなぐのは「レースを編む女」「真珠の耳飾りの少女」そして「デルフトの眺望」。

        名も無き画家への誘惑は、天才への挑戦、世界への夢、永遠への憧れ……。
        それをどうやって止められるというのだろう?


        絵画の知識があるほうが、よりこの小説を楽しめることは間違いないですが、
        物語としても見事で、二人の女性に惹かれる主人公や、
        明暗別れるアンリとフランソワというふたりの画家の対比、
        現代と18世紀末~19世紀初頭のフランスをシンクロさせながらの展開など
        どこまでが事実でどこからがフィクションかわからなくなるような
        リアリティとスリリングさを兼ね備えています。
        ミステリーとしても面白く、人物の意外な相関性があり、きちんと伏線が用意されています。

        専門的で難しいと思われるかもしれませんが、常に別の立場、キャラクターを対比させることで
        複雑な説明もシンプルに伝わるようになっています。

        やがて物語は「フルートを持つ女」と「赤い帽子の女」の贋作疑惑へと踏み込んでいくのですが、
        隆、フランソワという友が二人に対峙した存在として立ちはだかります。

        欲と野心に揺れ動く姿は時代は違えども芸術家全ての共通でしょう。

        「フェルメールの仮面を被り、フェルメールに成り済ます自分の姿を思い浮かべ、
        泥まみれのような日々から歴史上の存在に舞い上がれる快感を想像している。」

        贋作を描く画家の気持ちをここまで深く考えたことがありませんでした。

        フランソワは言い切ります。
        自分が絵を描くのは、偉大な作家への「挑戦」であり
        それを「超越」することが、「今を生きる者の使命」だと。
        「自分の全てをかけて戦います」
        この決意が芸術家として生きる者の生き様なのだと。

        ……芸術ってある意味、罪ですね…。


        実は本ミステリーの焦点は、ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵のフェルメール作品3作のうち
        「赤い帽子の女」と「フルートを持つ女」の2作の贋作疑惑についてなのです。


        アンリの友フランソワの口を借りて「赤い帽子の女」「フルートを持つ女」がなぜフェルメールの作品ではありえないのか、が語られます。
        当然ながら、この部分の説得力は半端ではないです。
        とてもフィクションとは思えなくなりました。


        模写は忠実な複製であり、贋作は偽物である。
        しかし「贋作には責任はない」「権威ある者の評価」が問題なのだと小林氏は指摘します。

        「人は権威や権力に弱いし、人の目は意外に節穴である」

        要するに、権威づけがあれば人は納得してしまう訳で、
        「オルセー美術館や世界中の大美術館に行けば、劣悪な贋作が真作として展示されている。
        アメリカの大美術館はとくにひどい」

        そりゃ大変です。

        そしてさらに爆弾発言が!!
        これが真実ならば、本当に衝撃の事実です。
        でも、確かに…そういわれると…あの展示の仕方、ないわ…。
        これは、とっても怖いことです。 (・・;)))


        最後になりましたが、この表紙ステキでしょう?
        本物のフェルメールみたいじゃないですか!
        イラストレーターの伊藤章剛さんの「フェルメール風」。
        贋作ではありません。あしからず(^^)
        >> 続きを読む

        2015/03/23 by 月うさぎ

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