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永瀬隼介

著者情報
著者名:永瀬隼介
ながせしゅんすけ
ナガセシュンスケ
生年~没年:1960~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      カミカゼ
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
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      • 昭和二十年五月十四日、アメリカの航空母艦エンタープライズに挑んだ特攻隊の一人、陣内武一。
        話の舞台は戦時中と現代とを行き来しますが、戦争中の話――後輩への想いや仲間との固い信頼にも、現代での話――フリーター・慎太に出会ってからの数日にも、その濃さ深さに心揺さぶられました。
        戦争を知らない世代ですが、こういう本を通じて当時に思いを馳せることが無意味ではないように思います。
        >> 続きを読む

        2016/06/12 by とりきなこ

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      帝の毒薬 = Mikado no Dokuyaku
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 太平洋戦争が終結するまで満州で細菌兵器の研究をしていた倉田部隊は、極秘裏に中国人やロシア人などの捕虜たちに人体実験を繰り返していた。終戦後の昭和23年1月、帝國銀行椎名町支店に1人の男が現れて「近所で集団赤痢が発生した。その家の者がこ の銀行に来ていることがわかったので」と予防薬を全行員に渡した。それを飲んだ16人 中、12人が絶命、4人が 意識不明になった大量殺人事件に日本中が驚愕した。占領下の混沌たる東京で発生し、世界中に衝撃を与えた帝銀事件の真相とは?

        実在していた731部隊の闇と、実際に起きた帝銀事件を、フィクションを巧みに絡ませつつ描いた冒険活劇。
        史実の取り上げ方について賛否両論あるようだが、僕は、エンタテインメントという性格が小説のひとつの評価基準であると認めているので、面白く一気に読んでしまった本作は評価は高い。

        混沌とした昭和を羽生誠一という若者を通して、活き活きと、読者を飽きさせることなく物語を展開させている著者の力量は推して知るべしである。
        奥田英朗の名著『オリンピックの身代金』を彷彿とさせる。
        帝銀事件へのある種著者の憶測は、未だにほんとうの解決をみない大事件を、それなりのかたちで咀嚼してしまった、当時日本への提言であろう。
        権力闘争、暗闘。そんなつまらない事柄のために、人間はいくども殺し、殺される。時代により、場所により生命に軽重があるということを強く感じた。
        人間が野蛮でなかった時代が有史上あったか?
        理性や正義感というような曖昧な紳士協定は、破った者が勝ちなのだ。
        「生きてさえいれば見っけもん」ではない。生きているからこそ艱難辛苦が待っている。それが人間の業というようなものだ。
        最後まで羽生誠一の脳裏には、ガス室で青酸ガスで苦しみながらも幼いわが子をなんとか生きながらえさせようとした母親の神々しさがあった。それを神々しいと感じることができたからこそ、まともな頭で狂った世の中を生きられた。
        諦めのなかではあり、自暴自棄だが、とりあえず生きることができた。そんな彼だからこそ、助けてくれる者がいた。
        「ここまで」という線を自分の中に持っていられるか。
        「ここ」を越えたら自分が自分でなくなるという線を。
        そんなことをも考えさせられた。

        誰が何と言おうと、面白いものは面白い。
        エンタメ作品として一級品。
        ボリュームから、ためらうことなかれ。
        >> 続きを読む

        2014/08/02 by 課長代理

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      閃光
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 3憶円事件の絡めた、ミステリー小説。
        作者はたぶんだけど、3憶円事件をかなり調べて自分なりに犯人を予想していると思われる。
        警察に対して、物を申しているので、ある意味問題作かな。
        >> 続きを読む

        2011/06/14 by higamasa

      • コメント 3件
    • 4人が本棚登録しています
      疑惑の真相 「昭和」8大事件を追う
      カテゴリー:日本史
      3.0
      いいね!
      • 昭和最大の華麗なる完全犯罪「三億円事件」が生んだ忌まわしき悲劇。
        私利私欲を貪り尽くした為政者たちの横暴。
        そして、最先端の医療技術のもとになされた戦慄の行為。
        立ちはだかる時間の壁と、どす黒い謎に肉迫する執念の取材。
        “昭和”に封印された八つの事件の真相が新証言によって今明かされる。衝撃のノンフィクション、時代の要請に応え装いも新たに文庫化。

        二〇〇四年三月、新潮文庫より祝康成名義にて刊行された『真相はこれだ!「昭和」八大事件を撃つ』を再構成して、角川書店から文庫で出版された、著者のルーツともいえるノンフィクション集です。

        扱われている八つの事件とは、
        一、府中三億円事件
        二、成田空港争議
        三、和田医師による心臓移植疑惑
        四、美智子皇后の失声症の背景
        五、潜水艦なだしお東京湾衝突事件
        六、美空ひばり紅白落選の裏側
        七、丸山ワクチンを巡る許認可の真相
        八、猪木対モハメド・アリ戦実現に至る経緯
        です。
        いずれも、丹念な取材と、生存者への綿密なインタビューをもとに、
        「昭和日本」が生んだ疑惑の裏側に鋭く迫る、息を呑むノンフィクションです。

        特に平成日本の現在に至るまで、その事件の影を落としているのは、和田寿郎医師による独断心臓移植疑惑と、癌治療に効果が見込まれる丸山ワクチンの許認可に関する疑惑劇、いずれも医療に関する疑惑でしょう。
        日本初の医療手術式の快挙を前に、踏み越えてはいけない一線を踏み越えたと思われる優秀な心臓外科医。
        僕が、当時の関連書籍をあたり、調べたわけではないので一方的な見方になってしまうのですが、本書を読む限り和田寿郎医師はブラックに近いグレーです。
        日本初の心臓移植手術式成功という快挙の影に埋もれてしまった二人の青年の命と、彼らの親族の狂わされた人生。
        昨年の理研・小保方騒動ではないですが、成果を求めるがあまり、正誤の分け目を意識的に変えてしまう者たちの怖ろしさを、丁寧に描写しています。
        そして、今なお禁忌とされている故、国内心臓移植手術式の例が他国と比較して圧倒的に少ないという事実。
        この事実が、当時の、この事件の真相を何よりも雄弁に物語っているものと思いました。

        また、癌治療に効果が見込まれるとされた「丸山ワクチン」の許認可に関する記事にも驚きました。
        「丸山ワクチン」の効能については、僕としても少し疑問符がつくところでしたので、今後、よく調べたいと思いました。
        それ以上に、ひとつの薬の許認可の利権に群がる政・官・民の魑魅魍魎に怒りと、諦めを同時に感じました。
        ひとつの抗癌剤開発が成功すると、その発売元の製薬会社はビルが一棟建つくらいの利益がでるそうです。
        その為には現場の医師たちに臨床試験に使ってもらわねばならず、製薬会社の医師に対する過剰接待、また許認可権をもつ厚生役人は天下りポストの確保と引き換えに認可を降ろす。
        そこには、およそ医療の根幹と言うべき人間の生命の重要性など後回しにし、己の欲望のみを優先した人の姿をした鬼どもが透けて見えます。

        恐るべきことは本書を読むまで、僕がこの二つの事件について、まったく無知だったということでした。
        「昭和」を振り返る報道番組や、雑誌記事など、これほど氾濫しているのにも関わらず、日の目を見ない同様多種の事件・疑惑は相当な数であるのでしょう。
        それが、時を越えて、クローズアップされることをよしとしない方々がいる限り、情報の操作は終わらないのでしょう。
        知らなかった、知ろうとしなかった自分も悪いのです。
        しかし自省も込めて、起きている事件・報道されているニュースを、客観的に判断し自分の頭でその裏を考察できるように準備しておかないといけないと痛切に感じました。
        この国の報道や政治は、すでに信用できるものではありませんね。
        >> 続きを読む

        2015/01/05 by 課長代理

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      踊る天使
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 突如、新宿歌舞伎町で雑居ビルが炎上。
        風俗嬢の恋人をうしなった男が、難を逃れた彼女の同僚らと真相を探り始めると、連続放火事件の疑いが濃厚に。
        さらに背後からは、バブル絶頂期に起きた忌まわしき殺人事件が浮かび上がる。
        現代の闇を抉る渾身の長篇ミステリー。

        永瀬隼介さんのおハコ、過去に実際に起きた事件を下敷きに、オリジナルのフィクションを肉付けして仕上げられた作品です。
        新宿・歌舞伎町で起きた、雑居ビル火災は今なお記憶になまなましい大参事でしたが、本作中で著者がまるで実際に現場にいたかのような臨場感たっぷりの描写が続きます。
        暴力的な炎と煙に包まれた風俗店内の混乱は、読んでいてほんとうに息苦しくなるほど。

        突然の轟音にふり返った嶋村多恵は、目を疑います。
        つい今しがた出て来たばかりの風俗ビルが紅蓮の炎にまかれている…。
        呆然としながら多恵は、ビルを出る直前に聞いた、奇妙な音に思いを巡らします。
        それは、確かに最上階のオーナールームから聞こえた、人間が床にたたきつけられるような、そんな大きく鈍い衝撃音でした。
        また、ともに将来を夢見ていた交際相手の女性が働いているビルが火災だと聞いて、駆け付けたぼったくりバーの店長・鹿島英次も、多恵同様に、巻き上がる炎と、次々と運ばれてくる焼死体の山の前に為す術もなく、現場に立ち入らせまいとする警察官に押しとどめられながら、女性の名前を叫び続けることしかできないのでした。
        通い詰めていた風俗店の焼失で、入れあげていた風俗嬢が亡くなってしまった元銀行員・稲葉太一は、すでに鎮火し、焼け跡が痛ましい現場を訪れます。
        そこで出会う3人・多恵、英次、太一。
        多恵の「この火事は、失火じゃない。放火かもしれない」という推測から、3人はそれぞれの思いを抱きつつ、事件の真相を暴くことを決意するのでした。
        他方、赤羽消防署に籍を置く消防士・遊佐京平は、ある火災をきっかけに“火消しのプロ”とまで言われ、上層部にその火災現場での消化活動・人命救助の実力を高く評価されていた職を離れようとしていました。
        その火災とは、最近、赤羽管轄内で起きた雑居ビル火災。
        焼死体の口は、両の端を耳まで裂かれて転がっていました。
        遊佐の脳裏に浮かび上がってくる16年前の陰惨な記憶…。
        遊佐はその場で射精し、脚から崩れ落ちます。
        そして、再び歌舞伎町の火災。
        特異な死体から、遊佐は、事件を起こした犯人が誰なのか、何のためなのかを知ります。
        運命のように3人と知り合った遊佐は、ともに“つぎの犠牲者”の居場所を突き止め、己にまとわりつく過去と決別することを決意します。

        登場人物たちの出会い方や、事件のキーになる人物の登場の仕方などが、少し乱暴で残念でしたが、歌舞伎町の裏事情や、火災現場の臨場感などは、さすが実力派で濃密に読ませてくれます。
        16年前の過去の事件を絡める物語の展開も、ダラダラと弛んだところがあって、このエピソードはほんとうに必要なのかと、少々疑問に感じました。
        また、登場人物たち(とくに主要3名)の造形が浅いです。
        誰にでも思いつきそうなデコボコトリオで、ひねりや深みがまるでない。
        終盤の事件の唐突な結末も納得できず。
        残念ながら、永瀬さんの作品のなかでは、下の部類に入ります。
        ときどきやらかしてくれる方の作品です。
        それでも、最後まで一気に読んでしまいましたが…。
        >> 続きを読む

        2015/02/03 by 課長代理

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      サイレント・ボーダー
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 渋谷で自警団「シティ・ガード」を率いる十八歳の三枝航。
        離婚した妻のもとから、家庭内暴力を振るう中学生の息子を引き取った敏腕記者の仙元。
        互いにトラウマを抱える二人の人生が交錯し、やがて航のカリスマ性の裏に潜む、悍ましい狂気が暴き出されていく。
        多くの事件・犯罪を取材してきた著者渾身のデビュー小説。

        『閃光』『帝の毒薬』など数多くの作品を発表されている、永瀬隼介さんの二〇〇〇年上梓のデビュー作です。
        文庫版で読み、五四〇頁を超える大作ですが、ボリュームを感じさせず、文字通り一気に読み終えました。

        何人もの登場人物の一人称で構成されるこの物語の、その中でも主たる者はふたり。
        正義を標榜する街のボランティア青年団のリーダーの三枝航少年と、
        別れた妻のもとから家庭内暴力に目覚めた息子を引き取るルポライター仙元。

        仙元は、ある大学教授の性的なスキャンダルを取材していました。
        傍らには専属スタッフ南田。
        いくらか線が細く、その割に上昇志向ばかり強い南田を、仙元はいい助手替わりに使っていました。
        どぎつい取材先へも独特の嗅覚と、どんなネタでもモノにする辣腕ぶりで、今回のこの取材も困難を極めましたがどうやら一段落ついたところに、別れた妻から電話が入ります。
        高校受験を控えた息子の常軌を逸した家庭内暴力。
        入院した元妻に代わって息子を引き取る仙元でしたが、それから地獄の日々が始まります。
        もちろん手にしたスクープは手放さざるを得ず、仙元は息子との修羅の対話の生活に入ります。
        荒れ狂う若さに、毎日が地獄。
        仙元はなりふり構わず心療内科医に助けを求め、様々な努力を積み重ね、息子の間に暖かな感情を取り戻したとき、息子は謂われない凶刃に倒れるのでした。
        一方、棚から牡丹餅のようにスクープを手にした南田は、渋谷センター街を自警団よろしく取り締まるグループへの取材を敢行します。
        天狗になってしまっている南田には、幼い頃に両親を亡くし、正義に目覚めたという三枝という少年の本性を見破ることはできませんでした。
        三枝の並外れたカリスマ性に引き寄せられる若者たち、熱狂する市民、煽情するマスコミ。
        三枝は、「新しい悪の駆逐」を目指し、南田を利用します。
        社会に隠れた悪を抹殺するためには、人殺しを厭ってはいられないという凶暴論理の前にひとり、またひとりと犠牲者は増えてゆきます。
        南田を通じてついに交叉した仙元と三枝。
        仙元が己の過去に向き合い、戦慄を覚えた時、自身の中の狂気が覚醒するのを自覚します。
        仙元と三枝、ふたつの狂気は正義や復讐といった人間的な動機ではなく、それぞれの破壊衝動のみによって、強くぶつかり合うのでした。

        著者はもともとフリーランスのライターでしたから、仙元や仙元をとりまく環境・仕事に関しては当然造詣は深く、リアリティの塊のようです。
        週刊誌の内部事情、取材の仕方、マスコミのあり様など、著者の考え方も織り交ぜながら、迫力十分に読者に迫ります。

        少年犯罪や、シリアルキラー研究の分野にも物語の裾野を広げ、読者を飽きさせることはありません。
        まったくジェットコースターのように物語は進み、ページを手繰る指を止められませんでした。

        永瀬さんの著作は数多く読んできたつもりで、本作がデビュー作ということは知っていましたが、何の気なしに読むのが後になっていました。
        デビュー作にはその作家のすべてが詰まっているとは、よく言ったものです。
        著者渾身のエンターテインメントに、将来を嘱望した編集者の方々は多かったのではないでしょうか。
        そして十四年。
        現在では押しも押されもせぬ人気作家さんです。
        >> 続きを読む

        2014/11/20 by 課長代理

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      誓いの夏から
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 少年は少女に何があってもおまえを守ってやると告白した。
        しかし、凄惨な殺人事件に巻き込まれた彼女を守ってやることができなかった。
        19年後、二人は再会する。
        ストーリーテリングの才が骨太の物語に結実した、著者の最高傑作。


        時々、衝撃的に面白い小説に出会うことがあります。
        「だから読書はやめられない」と思える、至福の瞬間です。
        本作は2007年に光文社から出版された、永瀬さんの書き下ろしです。
        いや~朝、通勤電車から読み始めて、仕事そっちのけで(リストラ大丈夫か)文字通り一気読みでした。


        物語は2部構成。
        第1部の舞台は、バブル景気に沸く1988年の東京・足立区。
        区内有数の進学校の高校三年生・十川慧一(そがわけいいち)は、弱小剣道部の主将。
        照り付ける日差しの下、今日も男女部員を引き連れ、所轄警察署へ出稽古に向かいます。
        「今日は何度、斬り殺されるのだろう」
        稽古とはいえ、悲壮な覚悟を持って立ち向かうのは、剣道の鬼・鷲見巡査。
        大学時代・タイトルを総なめにしてきた鷲見から面一本とれたらバージンを捧げる、女子剣道部主将の広田杏子は、十川にそう約束しました。
        鷲見だって人間だ、なにかの拍子に間違って一本くらいは取れるかもしれない…十川の淡い期待空しく、今日も道場の床にたたき臥せられます。
        その簡単に他人を受け入れない冷静な性格と美貌が故に、周囲から「アイスドール」とあだ名される杏子は、母子家庭で経済的に恵まれていませんでした。
        その夜、杏子は恋人・十川と別れたあと、アルバイト先である家庭教師宅で陰惨な殺人事件に遭遇します。
        現場から五千万もの大金が奪われた一家三人惨殺事件、唯一の生存者・杏子は、なぜ殺されなかったのか。
        警察の捜査の目は、経済的困窮で進学も危ぶまれていた杏子へと向けられます。
        十川の自宅にも捜査員が聞き込みにあらわれる中、十川は杏子を心底、信じてあげることができませんでした。
        何を差し置いても、一生をかけて守り抜くと誓った女性だったのに。
        杏子の容疑が晴れたと、わざわざ知らせてくれた捜査員の電話へ呟きます「遅すぎましたよ」。
        その夏、十川はまたひとつ誓いを立てます。
        もう、二度と泣かない、と。

        第2部は、忌まわしい事件から19年の年月が経過した現在。
        59歳で退官間近の刑事・吾妻健作が主人公です。
        非番にも関わらず、携帯電話で呼び出しを受けた吾妻は、同期の出世頭の捜査一課長から直々に、隅田川に上がった中国人男性の変死体の捜査を命じられます。
        特命は、コンビを組むことになる相棒、警視庁捜査一課の若手ホープ・十川慧一の監視でした。
        吾妻の記憶の中では、忘れ去られてしまった迷宮入りの一家惨殺事件。
        19年前、捜査の一線に立っていた吾妻は、目の前の青年が事件関係者であった事実に衝撃を受けます。
        そして、その少年の憔悴ぶりが気がかりで、ガールフレンドの嫌疑が晴れたことを知らせてあげた、当時の自分の姿がまぶたの裏にはっきりと浮かび上がってくるのでした。


        よく永瀬さんは、東京都東部を舞台にした作品を発表されます。
        きっと土地鑑がおありなのでしょう。
        僕が永瀬さんの小説と相性がいいのは、ごく身近な地域が舞台という作品が多いからかもしれません。
        出てくる実在の駅、施設、河川など馴染みのある名ばかり。
        容易に、空気感や背景が頭に浮かびます。

        19年の歳月をこえて、誓いを守ろうとした男のストイック過ぎる半生と、人生の酸いも甘いも乗り越えてきた老刑事の哀愁漂う背中が、物語の主軸です。
        読んで損はない、そう人に勧められる本に、しばらくぶりに出会えました。
        いい一日になりました。
        >> 続きを読む

        2015/02/13 by 課長代理

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      ポリスマン
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 亜細亜プロレスの深見甚次郎は小柄で地味な中堅レスラー。
        いつもは前座に甘んじている彼の正体はポリスマン…リングの秩序を侵す者に人知れず制裁を加える仕事人だった。
        人気低迷が続く団体を救うため、ついに総合格闘技という表舞台に立つことになった深見。
        時を同じくして、彼の強さの秘密を知る伝説のロシア人格闘家が来日していた。

        永瀬隼介さんの第五作目の長編小説です。
        二〇〇三年、幻冬舎から書き下ろしで発刊されました。
        『ポリスマン』というタイトルから、「警官小説かな?」と手に取りましたが、意表を突いた格闘技を題材にとったクライムノベルでした。

        まずはプロレスの世界に知識が無い読者のために、著者は浮谷信吾という暴走族あがりの若者を登場させます。
        浮谷は、亜細亜プロレスに籍を置く練習生。
        並み居る先輩レスラー達には全く敵わない彼なのですが、夜の繁華街を練り歩くヤクザ者や、半端なボクサー崩れなどは敵ではなく、修行中の為リングに上がれない鬱屈をケンカで晴らすという不毛な毎日を送っていました。
        そんな投げやりな彼の日常を変えたのは、やはり同じ亜細亜プロレスに籍を置く、中堅レスラー深見甚次郎。
        常に地味な立ち位置にいる深見の素顔は、実はプロレス界の秩序を守る為に存在する「ポリスマン」というほんとうの実力派レスラーだったのです。
        ある日、興行の最中にギャランティに難癖をつけてきた外国人レスラーに対する報復措置として、深見はメインマッチのリングにあがります。
        難敵と思われたその外国人レスラーを難無くマットに沈め、再起不能にせしめたその圧倒的な強さに、瞬時にして浮谷は魅了されてしまい、自ら付き人を志願するのでした。
        他方、共産主義からハリボテ民主国家へ変貌を遂げていたロシア。
        その変遷の最中、モスクワだけでなくロシア各地で、汚職・殺人など官憲とマフィア双方を巻き込んだ欲望の暗闘が続いていました。
        そんなカオス・ロシアが産んだ史上最強の男・セルゲイ。
        実は、彼こそが深見の強さの源を知る唯一の男であり、深見にとっては生涯をかけて倒さねばならない敵でもあったのです。
        様々な死地を乗り越え、強さに、さらにたくましい精神力を兼ね備え怜悧非情なモンスターになっていたセルゲイは、ロシアンマフィアの大幹部として来日します。
        知らず知らずもつれ合うように絡まる深見とセルゲイの運命。
        守るものを持つ者と、強さを武器に欲望に突き進む者の対決は、目前に迫っていました。


        昨年から、永瀬さんの初期の作品を読みだしたのですが、デビュー作の『サイレント・ボーダー』から『灼夜』などスピード感たっぷりでページをたぐる手を止めさせない作品の質に、さすがと唸っていましたが、本作も同様にとてもおもしろく、最後まで中弛みもなく、濃密な読書時間を過ごさせてもらえました。
        格闘技界の常識を丁寧に、また浮谷という若者を通じた工夫で、僕のような素人にも分かりやすく解説してくださっているので、プロレス音痴・格闘技素人の方でも、小説世界にすぐに入り込めていけます。
        業界に通じていらっしゃる方なら、もっとおもしろく読めるのかもしれません。
        本作で永瀬さんらしさがみられるのは、単に格闘技小説に終えることなく、主人公の強さの背後に、ロシアの暗黒部があったというエピソードを入れ、ロシアンマフィアを巻き込んだ犯罪小説の一面もみせたこと。
        このことで命のやりとりのシーンまで説得力が上積みされ、本来の永瀬さんファンが求める、緊張感がピンと張りつめたノンフィクションのような犯罪小説としても仕上がっています。

        僕らのように平和な国家に生まれ暮らしていると、今なお繰り返されている世界の暗部の悲劇(人身売買やジェノサイド)は絵空事にしか感じられないです。
        そして、そんなニュースは表面化することが少なく、文字通り闇から闇へと葬られているようです。
        こういった作品から、世界の真実を知ろうという欲求が高まったとしたら、それはそれで良い事なのではないかと、おもしろさの反面で少し殊勝に考えてみました。
        >> 続きを読む

        2015/01/16 by 課長代理

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【永瀬隼介】(ナガセシュンスケ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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