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MillsMagnus

著者情報
著者名:MillsMagnus
生年~没年:1954~

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      オリエント急行戦線異状なし
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • マグナス・ミルズの「オリエント急行戦線異状なし」----アガサ・クリスティのミステリとレマルクの反戦小説のタイトルを合体させたような、奇妙なタイトルに惹かれて読み始めましたが、なんとも、一筋縄ではいかない不条理小説でしたね。

        物語の舞台はイギリスの湖畔地帯で、避暑地として人気のある村。
        夏も終わりにさしかかり、キャンプ地からは一斉にバカンス客が帰ってしまっている。

        ここにあと一週間ほど滞在した後、インドをはじめとする東洋の旅へ出るつもりの語り手の〈ぼく〉。
        ところが、日中は自然の景観を楽しみ、夜はパブで地ビールを飲むぐらいしかすることがなくて、少々退屈気味。

        そんなある日、キャンプ地の所有者パーカー氏から、これから一週間の滞在費をチャラにするという条件で、ゲートのペンキ塗りを頼まれる。
        朝飯前だとばかりに引き受けた〈ぼく〉だったのだが-------。

        この小説の語り手である〈ぼく〉は、田舎の日常という終わりなき悪夢の中に取り込まれていく。
        次から次へと片手間仕事を頼んでくるパーカー氏。
        その仕事内容に応じて、キャンプ地からトレーラーハウス、使用人用の小屋へとグレードアップされていく〈ぼく〉の居場所。

        顔なじみとなったパブでは、ダーツチームのレギュラーメンバーにまで加えられ、旅立つことが一向にできないでいるというのに、我らがお人好しの語り手ときたら、厭な顔をするどころか、どんどん地元民に同化していってしまうのだ。

        柔らかな物腰の中に、キレると手がつけられなさそうな不穏な空気をまとうパーカー氏、いつもボール紙の王冠をかぶっているブライアン、時間に遅れてばかりの牛乳配達人ディーキン、よそ者には心を開かない雑貨店主のホッジ、ワーカホリックの頑固な老人ピックサル氏など、脇を固める地元民サイドは個性的な面々ばかり。

        それで、そういった地元民ジモティたちが、何だかんだと理由をつけては〈ぼく〉を村に引きとめようとするのだ。

        都市生活者よりも濃密、かつ、蜘蛛の巣のごとき緻密な人間関係を作り上げていきがちな田舎の人間。
        彼らは巣に"外部"という裂け目ができるのを嫌う。
        東洋という外の世界に憧れていたはずの〈ぼく〉が、その対極にある閉鎖的な村社会に、蜘蛛に捕食される虫ケラのごとく取り込まれていくのだ、しかも嬉々として。

        ところが、著者のマグナス・ミルズは、その不気味な物語を、ごく気軽な、ユーモアすら込めた文体でさらりと活写していくのだ。
        それは、実際には砲弾や毒ガス、疫病によって地獄の苦しみが戦場を覆う中にあって「西部戦線異状なし」と報告された"戦争の欺瞞"を、やはり淡々とした筆致で告発したレマルクの小説を、私に思い起こさせてくれる。

        どう考えても異常な事態が「異状なし」と伝えられる不条理。
        そして、それは内容だけではなく、それを描くマグナス・ミルズの創作手法も含めて不条理だという、非常に剣呑な小説なのだ。

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        2018/06/12 by dreamer

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