こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


伊坂幸太郎

著者情報
著者名:伊坂幸太郎
いさかこうたろう
イサカコウタロウ
生年~没年:1971~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      重力ピエロ
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! ooitee minase86
      • 重力にも遺伝子にも逆らえないのがこの世。そんな当たり前の常識をくつがえすことができたら、どんな未来が待っているんだろう?

        人を形成する生い立ちと血の因果はどう結びつくのか?洒脱て巧妙な語り口でリズミカルに進展していくミステリー仕立ての物語にぐいぐい引き込まれてしまう。

        やがて小刻みなシークエンスの連なりは、ドストエフスキーが分厚い作品群に刻んだ人生の不条理と普遍性に通じる重厚なテーマを浮かばせる。

        遺伝子情報の組み合わせによるDNAが人格を左右し、病気や犯罪にもリンクすしているとしたら…。

        人は心身をつかさどるデータを塗り替えるために、目の前に立ちはだかる壁(血の連鎖)に立ち向かうようにプログラムされているのかも?
        >> 続きを読む

        2019/06/02 by まきたろう

    • 他24人がレビュー登録、 173人が本棚登録しています
      陽気なギャングが地球を回す 長編サスペンス
      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! tadahiko
      • 明るくて軽快なサスペンス。
        映画『スティング』を観てるような気持ち良さがあって、
        読んでる最中も読後も清々しかった。

        とにかく設定からしてユニーク。
        作戦を練るのが人間ウソ発見機の男、
        表舞台に立つのが演説の達人の男、
        細かく立ち回るのが天才スリの大学生、
        車を運転するのが体内時計を持つ女、
        この4人で陽気に銀行強盗をやってのける。

        逃走中、現金輸送車襲撃犯に横取りされてしまうコトから
        物語は大きく変わっていく。

        誘拐、殺人、裏切り…暗くなる要素がいっぱいあるのに
        まったく感じさせないのは、
        登場人物の会話にシリアスさがないからだろう。

        やはりこのストーリーのキーになる台詞は
        「ロマンはどこだ」
        演説の達人、響野が犯罪のスタートラインに立った時に呟く。
        個人的には彼が一番好きだ。
        >> 続きを読む

        2019/01/28 by NOSE

    • 他24人がレビュー登録、 125人が本棚登録しています
      死神の精度
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! ooitee
      • 気軽に読めるエンタメ小説としておススメの一冊。
        『死神の精度』なんていうお堅めのタイトルでハードな内容を想像してしまうが、どっこい、読後感はちょっとホンワカとする短編6作品。
        大泣きするほどの感動があるわけではないけれど、ユーモアあり、爽快感あり、ファンタジーあり…と、ぐっとくる人生観が垣間見れるセリフやシーンが適度にちりばめられているところが善き。
        各短編のなかにこの作家らしさが詰まっているので、<伊坂幸太郎はじめてさん>にもおススメできる一冊になっている。

        ===データベース===
        1、CDショップに入りびたり、 2、苗字が町や市の名前であり、 3、受け答えが微妙にずれていて、 4、素手で他人に触ろうとしない。
        ――そんな人物が身近に現れたら、それは死神かもしれません。
        1週間の調査ののち、その人間の死に〈可〉の判断をくだせば、翌8日目には死が実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う6つの人生。 日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した表題作ほか、「死神と藤田」「吹雪に死神」「恋愛で死神」「恋路を死神」「死神対老女」を収録。

        ==========
        どの短編も読みどころがあるが、やはり最後に「なるほど、そうきたか」と声をあげてしまった最終話「死神対老女」は、描かれている死生観といい、うならされた。

        またクローズドサークル、本格もの設定になっている「吹雪に死神」も、最後のトリックに妙に納得。そうか、これは死神だからこそのトリックなんだ。
        いや~、私には思いつかなかったし、私だってそういう行動をとってしまうよな~、とこんなに短いストーリーできれいに回収されているのに脱帽。
        途中アガサクリスティー作品の蘊蓄にちらりと触れてくれているのが、ミステリ好きにはにやりとする場面でしょうか。

        そんななか、もっとも熱く読んだのが任侠ものの「死神と藤田」。
        <弱きを助け、強きをくじく>を地で行くストーリーに、をを~っ!となった。
        話はここで終わっているけれど、この後の場面を想像するとまちがいなく胸温だ。
        全部を書ききらず、そういう想像の余地を残してくれているところが、またよい。


        本書の魅力、つまりは伊坂幸太郎という作家の魅力になるんだろうけれど、人間と死神の微妙なズレからくるセリフや考え方、行動がおもしろみを生み出している。
        たとえば死神は「雨男」だ。自分でもうんざりするくらいの「雨男」で、”仕事”をするときにはつねに天気は雨。
        そんな死神が「雪男」という言葉を耳にした。すると、死神の反応は「”雪男”も”雨男”みたいなものか」という。雪男が仕事をするときにはつねに天気は雪、そんなふうに考えるのだ。
        死神といえど全知全能ではない設定にしているので、人間の常識的なことがことごとく通じない。そこにちんぷんかんぷんのズレたやり取りがあって、それが素直に面白いとおもえるし、ときになにやら”真理”をついているようで含蓄がある。考えさせられる。
        だって、レストランで牛のステーキをうまそうにほおばる人間に死神が放った一言は、「死んだ牛はうまいか」なんだから。おい! たしかに”死んだ牛”だけどな。

        非日常的な視点からモノを見ることで、ふつうのことを見慣れない奇妙なものにしてしまう手法を「異化」効果というそうだ。
        本書のあとがきで解説してくれている。

        全知全能でない設定の死神だからこそ人間がやることなすことにいちいち不思議がり、その微妙なズレがおかしいし”真理”を生み出すことに成功している。

        そういえば知念実希人の『優しい死神の飼い方』のレオもそういうタイプだった。
        ものすごく上から目線なのに、人間からするとどこかすっとぼけていて、その差が絶妙に愛らしかったんだなあ。

        閑話休題。
        P78で死神はこんなことをいう。
        「人間は不思議なことに、金に執着する。音楽のほうがよほど貴重であるにもかかわらず、金のためであれば、たいがいのことはやってのける」。

        金や欲や出世などにまみれて生きざるを得ない現世だけれど、こういうものから少しだけでも解放されたら、もっと自由に楽に生きられるんだろうな。

        こういう発想がふだんの日常にちょっとでも取り入れられたらなあ~。

        と思ったら、最近読んだ伊坂幸太郎の『逆ソクラテス』の「ぼくはそうは思わない!」という一言に思い至った。

        <伊坂ワールド>ちょっとずつ制覇していきますか。



        >> 続きを読む

        2021/06/28 by まみー

    • 他22人がレビュー登録、 152人が本棚登録しています
      オーデュボンの祈り
      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね!
      • 『オーデュボンの祈り』(伊坂幸太郎)〈新潮文庫〉読了。

        個性的で魅力的な人たちが、それぞれに何かしらの役割を持っているのがおもしろい。
        役割には軽重があって、ルールとして存在している人すらいる。
        特殊な世界線だが、リアリティもあり、もっとこの世界のことを知りたいと思った。

        ただ、いろいろ説明がくどいようにも感じられるし、細かい説明がうまく働いていないようにも思った。
        その点が私の好みではなかったのが残念。
        この先、この作者の作品を読むかどうか悩ましい。
        >> 続きを読む

        2021/11/01 by IKUNO

    • 他20人がレビュー登録、 153人が本棚登録しています
      グラスホッパー
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね! loon ooitee
      • おもに東京都心部を舞台に、妻の復讐を誓う男と二人の殺し屋の一日あまりを描いた作品。タイトルの由来は、通常の孤独相から群生相に変化した際に凶暴化するバッタの生態を、都会にくらす人間になぞらえたもの。

        【鈴木】元教師。妻を轢き殺した男の父が経営する違法取引を扱う会社に潜入し、復讐の機会を窺っている。
        【鯨】「自殺屋」とされる殺し屋で、依頼に応じて対象を自殺に追い込む大男。依頼人は政治家や官僚が多い。
        【蝉】零細組織に属する二十代前半の殺し屋。上司にあたる岩西に反抗心をもつ。短絡的な性格。

        上記の三人が順繰りに語り手となる多視点の一人称小説。鈴木が復讐するはずだったフロイラインという会社の御曹司が「押し屋」によって唐突に殺害され、鈴木を含めた三人がその渦中に巻き込まれていく。三人のうち唯一殺し屋ではない鈴木が真の主人公にあたり、作中もっとも無防備な人物ともいえる。各パートが10ページ程度で切り替わり、作品のテンポの良さの源となっている。カバーの裏表紙には「疾走感溢れる筆致」とあるが、多視点で同じシーンを描く必要性からリプレイのような箇所もあり、物語全体の流れはそこまで軽快でもなく、中盤はやや中だるみする。

        エンタメ作品とはいえ、あまりに死を軽く扱いすぎるなら抵抗があると考えていたが、殺した人間たちの亡霊によって常に悩まされている鯨だけでなく、蝉の終盤の展開にも殺人への咎めが描かれており、要らぬ心配だった。ポップな作品を予想していたが、現代社会に対するネガティブな視点も交え、思っていたよりシックな作風だった。かといって過剰に重くもなく、サスペンスとして楽しめた。
        >> 続きを読む

        2021/06/11 by ikawaArise

    • 他19人がレビュー登録、 148人が本棚登録しています
      ラッシュライフ
      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! tadahiko ooitee
      • 「陽気なギャングが地球を回す」を読んで伊坂作品を他にも読んでみたいと思っていながら後回しになってしまい、ようやく2作目。「陽気な~」のレビューを見返してみたら、なんと2012年でした。。時間が経つのが早くて恐ろしくなります。。

        ラッシュライフ。

        単行本の表紙がエッシャーのだまし絵になっていることと、他の方のレビューで気になっていましたが、まさにエッシャーのだまし絵のような印象の作品でした。読んでいくとパズルが1つ、また1つとはまっていくような感覚でした。

        お金で全てを買えると思っている画商と、若い画家の話。
        プロフェッショナルの泥棒の話。
        不倫をしていてお互いに相手を殺そうと企むカップル。
        失業して途方に暮れているおじさん。
        そして、新興宗教の幹部と若者。

        全く関係ない話が段々と交錯していく様子は読んでいて楽しかった。

        良い意味で、難しいこと抜きにして楽しめるエンタメ作品です。
        >> 続きを読む

        2019/09/09 by chao

      • コメント 2件
    • 他17人がレビュー登録、 121人が本棚登録しています
      砂漠
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね! ybook ooitee
      • 4月。仙台の国立大学に入学した北村は、法学部の同じクラスの学生が80人ほど集まっていた居酒屋で、鳥井と出会う。

        そのコンパで目立っていたのは、詰まらなさそうに、無表情なまま言い寄る男たちを無視している美女・東堂と、遅れて来て、いきなり演説のような自己紹介をして、その場をしらけさせた西嶋。

        そして、コンパの数日後、「中国語と確率の勉強」ということで、西嶋に麻雀に誘われた北村。
        麻雀のメンバーは、西嶋と東堂、鳥井の中学時代の同級生で、超能力を持つ大人しい女の子・南。
        麻雀を知らない北村は、まず鳥井に習うことになり、その後、鳥井の家での麻雀が始まる------。

        大学の4年間が春夏秋冬、そして、最後の春という5章に分けて描かれていく。
        大学生活の良さというものは、もちろん大学在学中も楽しいと思うのですが、卒業して就職し、社会という"砂漠"に出て初めて、本当の意味で、実感できるものなのではないかと思う。

        その時々のくだらなかったことや辛かったこと、後悔してしまうようなことも全部含めて、全てが懐かしく思い出されるのではないでしょうか。

        伊坂幸太郎の「砂漠」は、そんな大学時代の日々が、鮮やかに切り取られている作品だ。

        中心となる5人が、とても魅力的なんですね。
        特に、最初はただの変な人物だった西嶋が、読み進めるうちに、妙に力強く魅力的になっていくのが面白いですし、なぜ東堂が、そんな彼に惹かれたのか、なぜ北村や鳥井が、友達であり続けたのかが、とてもよく分かります。

        中学高校時代に随分いじめられて、「俺の今までは全部つらいですよ」という西嶋。
        しかし、北村たちが言うように、「西嶋は臆さない」んですね。

        その潔さが、とても素敵です。
        そして、最後の最後に、「幹事役の莞爾」が言うセリフもいいですね。
        それまでのあれやこれやも、みなそのためだったのでしょうか。

        しかし、それもまた青春。
        夏の鳥井のエピソードの痛さは、少々きつかったですが、青春群像劇と言いたくなるような、若々しい作品だと思う。

        >> 続きを読む

        2021/04/21 by dreamer

    • 他17人がレビュー登録、 105人が本棚登録しています
      アヒルと鴨のコインロッカー
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! ryoh3 shoko44n ooitee
      •  いろいろなところで評価が高かったので読んでみましたが、
        個人的には「ん~…」という感じでした。
         
         読者は小説に描かれている内容を頭の中で映像化する
        ということを利用した著者のトリックはすごいと思います。
        こんな方法をかつて取った小説家はいなかったのではないでしょうか。
        (不勉強なので、いらっしゃったらすみません)
         
         しかし、話自体がスッキリしないのです。
        一番 私的に受け入れがたいのは琴美という女性です。
        一見、ハツラツとしていて行動的で正義感のある女性が、
        自分のこととなると臆病者だったというのは
        あり得る話ですし、実際に 自分は臆病だったんだ と
        理解するこうした事例はあるのでしょうが、
        読み進めている間 非常にイライラします。
        勝手な意見で申し訳ありません。
         
         それでも、小説としては
        かなり挑戦的な作品でありながら 
        一定の成功を納めているようですので、
        私が云々 言うまでもなく良い作品なのでしょう。 

         映像化もされているようですが、
        先にも述べたトリックは映画やドラマでは通用しないと思うため
        どのように表現しているのか非常に気になります。
        機会があったら見てみようと思います。
        >> 続きを読む

        2019/10/30 by kengo

    • 他17人がレビュー登録、 130人が本棚登録しています
      チルドレン
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! ooitee
      • 連作ふうでいて時間軸系。収拾がついてスッキリなやつ。陣内のカリスマ性はなかなか痛快。 >> 続きを読む

        2018/07/06 by motti

    • 他16人がレビュー登録、 99人が本棚登録しています
      終末のフール
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!
      • 会社の若手から薦められた作品。
        短編8編からなるチェーンストーリー、
        最近の作品でいうと「アイネクライネナハトムジーク」と似ているかなと印象。
        ストーリーは8年後に小惑星が地球に衝突して人類が滅亡するという情報が発表され、そのうち5年後の世界。舞台は、仙台北部にある団地「ヒルズタウン」の住人が1話ごとに登場する。
        「人生をいかに生きるか」がテーマである。
        個人の感想は「冬眠のガール」と「鋼鉄のウール」が面白かった。鋼鉄のウールにあった「おい俺、俺は、こんな俺を許すのか?」の言葉が印象的であった。
        「演劇のオール」で終わりだったらと思ったのは私だけでしょうか?
        期待した読後感が得られず・・・
        >> 続きを読む

        2021/07/31 by わくさん

    • 他16人がレビュー登録、 109人が本棚登録しています
      ゴールデンスランバー
      カテゴリー:小説、物語
      4.1
      いいね! ooitee
      • 基本のプロットは首相暗殺を起こしたとされて濡れ衣を着せられた男の逃亡劇である。
        がその中に込められている伊坂節は見事としか言いようがない。

        事件が起こるまでの過程と、そこから始まる逃亡。
        それまでには多くの友人や家族との関係。

        また仕込まれている伏線の細かさ。
        それらを回収していく構成がまあ上手くて、青柳が英雄から堕ちていく中でも繋がりがあるし、ちょっとした会話であった連続殺人犯も意外な形で登場させるなど隙がない。

        ラストの落としどころも見事で、たいへんよくできました。
        >> 続きを読む

        2020/08/24 by オーウェン

    • 他15人がレビュー登録、 126人が本棚登録しています
      マリアビートル
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
      いいね! ooitee
      • 殺し屋シリーズ第2弾は、全編新幹線の車内でのみ展開する。

        子供が重傷を負いその復讐のため乗る木村。
        その木村を束縛する中学生の王子。
        そして任務を請け負うため乗り込む双子のような檸檬と蜜柑。
        更にはツキがまるでない七尾。

        この5人を主軸に殺し屋たちが社内を行き交う。
        普通に考えれば一方通行なので逃げる場所などないのだが、そこはアイデアによってユーモラスな殺し合戦が始まる。

        檸檬と蜜柑の強烈な個性は、まさかのトーマス機関車。
        そしてサイコパスの権化のような王子もまた強烈。

        序盤から張られた伏線も最後にはきれいに回収。
        3作目も楽しみだ。
        >> 続きを読む

        2018/09/30 by オーウェン

    • 他10人がレビュー登録、 38人が本棚登録しています
      フィッシュストーリー
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!
      • 伊坂作品特有の浮遊感が味わえる4つの短編集。

        「動物園のエンジン」
        閉園後のオオカミの檻に居座る男の目的とは。

        「サクリファイス」
        探し人を求め過疎化が進む村に来た泥棒の黒澤。
        生贄を捧げる村の風習に関わる謎。

        表題作は解散したバンドと、飛行機ジャックの顛末。
        正義の味方になりたいという思いとは。

        「ポテチ」
        泥棒コンビが野球の補欠の尾崎に寄せる話。
        ここでも出る泥棒の黒澤がいい助演ぶり。
        >> 続きを読む

        2019/04/10 by オーウェン

    • 他10人がレビュー登録、 89人が本棚登録しています
      魔王
      カテゴリー:小説、物語
      3.6
      いいね!
      • 伊坂幸太郎の「魔王」は、奇妙な超能力を与えられた兄弟の物語だ。

        背景には、軍事力をめぐる改憲と、漠として広がるファシズム的な空気がある。

        他人に思い通りのことを喋らせる念力が、突然、兄に備わり、彼がその力により、日本中を覆う不穏な流れに逆らおうとする、というのが第一篇の「魔王」だ。

        まるでドラえもんの「腹話ロボット」みたいだが、相手の内側に入り込むさまを、イメージすることで力を発揮するのだ。

        例えば、リルケが豹になりきって、あの「豹」という詩を書くには、自分と相手の境を見失うほどの共鳴状態に、自らを置く必要があったろう。

        つまり、この作品の兄の超能力には、一瞬ながら敵と一体化するほどのシンパシーが存在するということで、それがこの作品の一番の不気味さにもなっていると思う。

        「呼吸」という篇では、不思議な確率に魅入られた弟が描かれる。
        シューベルトの「魔王」が引用されているが、人の心は時として思わぬところへ赴く。

        しかし、あの歌曲の幼子のように、無理やり魔にさらわれていくのではない。
        では、なぜ? この作品は政治よりも、人間の意思のそうした"得体の知れなさ"を描き出しているのだと思う。

        >> 続きを読む

        2021/01/29 by dreamer

    • 他9人がレビュー登録、 101人が本棚登録しています
      首折り男のための協奏曲
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね! Tukiwami
      • 首を折る男の物語と、泥棒の黒澤の話。
        この2つがサンドウィッチのように挟まれている中編集だが、前半の方が面白かった印象。

        「首折り男の周辺」
        首折り男ではなく、それに似ている男だったり、隣の部屋から疑われたり。
        そうすることで首折り男の実像が見えてくる。
        苛められていた少年から幽霊話が最後に出てくるのがよく出来ている。

        「月曜日から逃げろ」
        泥棒の黒澤が盗みの際に逆にハメられてしまう。
        そこでいかにして自身の犯罪をもみ消すのかだが、チャップリンをはじめとする小ネタが楽しい。

        他にも化学式を用いる会話も含めて、やっぱり黒澤は伊坂作品に欠かせない。
        >> 続きを読む

        2020/01/17 by オーウェン

    • 他9人がレビュー登録、 39人が本棚登録しています
      バイバイ、ブラックバード
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね!
      • 星野は別れを告げるため現在の彼女と共に、相手の所へ向かう。
        それは自身が5股をしていた彼女たち。

        どう考えてもあり得なさそうな状況だが、思わず笑える描写で伊坂さん節が炸裂。
        紅葉狩りに違和感だとか、ジーンハックマンがきっかけという変てこさ。

        また結婚予定の彼女という繭美の、大柄で思ったことは口に出さないでおけない性格が大いに賑やかに。

        バスに乗っていくという部分がファンタジーの様相を醸し出し、辞書の件でラストはニヤリとした。
        >> 続きを読む

        2019/11/23 by オーウェン

      • コメント 1件
    • 他9人がレビュー登録、 58人が本棚登録しています
      オー!ファーザー A family
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
      いいね!
      • 由紀夫の家庭はとても困惑する構成。
        なぜなら父親が4人いる6人家族だから。

        普通に考えればあり得ないのだが、伊坂作品ではそれは常道。
        そんな4人の父親と由紀夫が出会った騒動を描くドラマ。

        4人のキャラ付けがしっかりしているので、違和感があった部分が全く気にならない。

        ギャンブル好きな鷹に、女好きの葵。
        頭がよくクイズ番組好きな悟に、中学教師の勲。
        これらの伏線が、最後の由紀夫の監禁を手助けしていく形。

        これだけ特徴があるので、最後の奥さんは登場させなくてよかったかな。
        >> 続きを読む

        2019/12/14 by オーウェン

    • 他8人がレビュー登録、 34人が本棚登録しています
      死神の浮力 = BUOYANCY OF DEATH
      カテゴリー:小説、物語
      3.6
      いいね! kissy1986
      • 死神の千葉が人間に判定を下す第2弾。

        長編の今作は娘を殺された山野辺夫妻に千葉が接近。
        逆転無罪で釈放された犯人である本城へ直接出向こうとする。

        千葉のスタンスはまるで変わりがない。
        ひたすらにミュージックを求め、危機感あるときも平常心で一切変わらず。

        いかにして本城と蹴りをつけるのか。
        また千葉は山野辺にどうやって判定するのか。

        還元キャンペーンだとか、名言っぽい言葉が次々出て来たり。
        シリアスな現状なのに、コミカルな件で進んでいく辺りは1作目と変わらずな伊坂さん。
        このキャラはいつ再登場させても面白いかも。
        >> 続きを読む

        2020/02/21 by オーウェン

    • 他8人がレビュー登録、 43人が本棚登録しています
      陽気なギャングの日常と襲撃 長編サスペンス
      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね!
      • 再読。
        愉快なギャング達と再会!

        『陽気なギャングが地球を回す』の続編。
        まぁ前作を読んでた方が楽しめるかな。読んでる方が無難無難。
        ギャング達4人の日常に描かれた短編がいつのまにか1つの長編につながっていく。

        第3者視線から語られるギャング達の日常がすごく面白い。
        各々のパートを経て、4人が集結する場面はなんかちょっと感動的でもあって、自分はホントこのギャングたちが大好きなんだなぁと実感。
        特にギャングメンバーの響野が愛すべきいじられキャラで最高。
        なんとなく伊坂先生も響野のシーンを書いてるときが一番楽しそうな気がする。

        あ、それと本編とは直接関係のないボーナストラックが巻末に収録されてるんだけど、そっちも秀逸。
        4人それぞれがさりげない登場の仕方で人助けをするのが、微笑ましくてニヤニヤしちゃう。

        あぁいつか僕もこんな陽気なギャングたちの仲間に入れてほしい。
        >> 続きを読む

        2018/08/05 by ねごと

    • 他7人がレビュー登録、 78人が本棚登録しています
      ガソリン生活
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね! ooitee
      • 伊坂幸太郎の「ガソリン生活」は、車(緑のデミオ)の一人称でお話が進んでいきます。

        望月家の兄弟、良夫と亨がドライブ中、突然デミオに乗り込んできた女優、荒木翠。
        その数時間後、パパラッチに追いかけられ、彼女は恋人と一緒に事故死してしまう--------。

        なにしろ車の一人称なので、車自身の意思では行動できない。
        情報は、車の中で話されたことと、他の車から聞く、噂話に限られる。
        車と人間とは、言葉のコミュニケーション(会話)ができない。

        これらの制約があり、その中でデミオが考え、体験し、見聞きしたことが綴られていきます。

        人間の事件が、車目線で語られるため、少々まどろっこしく感じる一方、車の考えることが、どことはなしに面白かったりします。

        荒木翠の事件には、ダイアナ元妃の事件が重ねられていて、一瞬、あの後味の悪さが頭をよぎりますが、そこは伊坂作品らしく、人間の良心と絡めて、現代のお伽話に仕立てられています。

        作者の言葉によれば、「いつまでもこの世界にいたいと思える話が目標だった」ということです。
        子供の頃には、車にも心があったらなどと空想したものだし、もしかすると、将来テクノロジーの発達によって、車が喋りかけてくるぐらいのことは実現しそうです。

        そしてまた、自分達の日常の世界のどこかに、こんな話があったら面白いよね、と思わせてくれます。

        >> 続きを読む

        2021/05/04 by dreamer

    • 他6人がレビュー登録、 32人が本棚登録しています

【伊坂幸太郎】(イサカコウタロウ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本