こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


東郷えりか

著者情報
著者名:東郷えりか
とうごうえりか
トウゴウエリカ

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      人間の安全保障
      カテゴリー:外交、国際問題
      4.0
      いいね!
      •  本書は、1998年にノーベル平和賞を受賞したアマルティア・セン氏によって書かれたものである。受賞から数年経った今日、「人間の安全保障」という言葉は、かなり一般化しつつあると思う今日この頃。

         同名の著書は多々あるけれど、本書がその基本であり、最もわかりやすい本であると筆者は思う。

         改めて人間の安全保障とは何かを考えると、セン氏は識字率の向上や民主主義の発展、それに公共の論理、人権の尊重など今日の社会では当たり前のことを大事にすることを主張する。決して難しいことではない。恵まれた先進国に生きている人には感じ辛いかもしれないけれど、当たり前のことが何より重要なのだ。

         日本では長らく戦争をしないことが平和だと教えられてきたけれども、世界では戦争をしていなくても人間の安全が脅かされる事態が少なくない。女性や子供の人権が蹂躙されるような社会がはたして平和と呼べるだろうか。

         権威主義で不満分子を抑え込み、見た目は平穏を保っていても、その不満の種は少しずつ育っていくものである。現在も進行している一部の国々での混乱も、そんな抑え込みが上手くいかなくなった例ではないだろうか。

         国内外の混乱を避けるためには、暴力以外での権利の主張を浸透させることが重要であることは言うまでもない。暴力に訴えることは、最も簡単な権利主張ではあるけれども、暴力が蔓延する社会が平和と言えるわけがないだろう。

         本書の注目点はいくつかあるけれど、筆者が注目したのは民主主義についてである。元来民主主義は西洋の発明品であり、アジアや中東、アフリカなど別地域ではなかなか根付かない、という主張がなされる場合がある。これは非民主的で権威主義的な政治体制を正当化する場合に用いられる論法だが、氏は南アフリカやインド、それに日本の例などを引き、伝統的な社会においても人々の意見を平等に聞いて物事を決定する、民主主義に近い政治も存在すると主張する。

         確かに政治体制は文化に大きく依存するものである。権威主義的な体制というものを伝統的な文化と結びつけることは可能であろう。しかし、民主的でリベラルな思想も伝統的な文化の中には見出すことができる。例えば日本で言えば、聖徳太子の十七条憲法などは、権威主義的ではあるけれど、一方で「人と仲良くしなさい」とか「仕事は真面目にやりなさい」とか「賄賂はいけません」など、現代でも十分通用する当たり前の考え方が書かれている。

         そういった考え方を浸透させるためには、何よりも教育が必要である。誰もが読み書きや計算ができ、複雑で抽象的な思考ができるようになれば、平和的な手段で自らの権利を訴える社会も実現できる。その結果、政権担当者は政権の座から引きずり降ろされるかもしれないけれど、それが選挙など平和的な手段であるならば、むしろそれは国のためになると素直に受け入れる必要があるだろう。それが何より人間の安全保障であると、筆者は思うのである。
        >> 続きを読む

        2015/05/05 by ぽんぽん

      • コメント 1件
    • 2人が本棚登録しています
      100のモノが語る世界の歴史
      カテゴリー:世界史、文化史
      5.0
      いいね!
      • ・最高の書
        ・大英博物館館長によるラジオ番組(流石BBC)の書籍化で、「100のモノ」それぞれのカラー写真も掲載され楽しい >> 続きを読む

        2018/02/11 by michi2011

    • 1人が本棚登録しています

【東郷えりか】(トウゴウエリカ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚