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柳広司

著者情報
著者名:柳広司
やなぎこうじ
ヤナギコウジ
生年~没年:1967~

この著者の本を読んでいる会員ランキング

このランキングは1日1回更新されます。
      ジョーカー・ゲーム
      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね! niwashi Jackman
      • 戦争モノの映画や小説は一切見ない読まないのだけれど、評判を聞いて読んでみたくなり。結果として、聞いていた通り戦争小説ではなかったので良かったです。
        戦時下の設定はあくまでスパイを活かす為のディテールで、本質はエンターテイメント。
        ここ迄ラノベ的に振り切ってくれると、潔くて読み易い。
        >> 続きを読む

        2019/03/05 by 朱 音

      • コメント 2件
    • 他4人がレビュー登録、 44人が本棚登録しています
      パラダイス・ロスト
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • D機関を描くシリーズ第3弾。

        明らかに前2作と違うことをやろうとしていることが分かる5作。

        「誤算」
        スパイが事故で記憶を失ってしまい、本来の任務を忘れてしまうという冒頭。
        いかにして任務をこなしていくのか。

        「失楽園」
        騙される立場から描く話で、いかにそこにスパイが絡むのか。
        ラストで失楽園の意味が分かる。

        「暗号名ケルベロス」
        初の前後編。
        観光船に乗った標的とスパイ。お互いの素性が分かるのだがそこで標的にアクシデントが。
        そのあとは犯人探しへと向かう。
        >> 続きを読む

        2019/12/12 by オーウェン

    • 他3人がレビュー登録、 22人が本棚登録しています
      ジョーカー・ゲーム
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!

      • 柳広司の第62回日本推理作家協会賞、第30回吉川英治文学新人賞を受賞した「ジョーカー・ゲーム」を読了。

        スパイ小説が冬の時代を迎えて久しいと言われています。
        ベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦の氷が溶けて、スパイたちの存立基盤が失われてしまったからだ。

        とはいえ、スパイ小説という形式自体が消滅したわけではないんですね。
        それは、やがて新しい「時代小説」として甦ることになるのだと思う。

        この作品は、その第二ステージの開幕を告げるにふさわしい、清新な連作短編集だ。

        昭和十二年秋、大日本帝国陸軍の内部に「情報勤務要員養成所設立準備事務室」が設置された。
        このスパイ養成学校、別名「D機関」を率いるのは「魔王」と呼ばれる元諜報員、結城中佐。
        集められたのは、一般の大学を出た頭脳明晰な学生たちだ。

        諜報は、武士道にもとるという硬直した精神主義が支配する中で、結城中佐は「死ぬな、殺すな、物事にとらわれるな」という冷徹なスパイの戒律を訓練生にたたき込む。
        そして、そこでは天皇制の合法性さえ議論の対象となる。

        こうして過酷な訓練を終えた卒業生たちは、「魔王」の命じるままに東京、横浜、上海、ロンドンなど国際諜報戦争の最前線に潜入し、敵だけでなく味方をも出し抜く、痛烈にして鮮やかな頭脳ゲームを展開していく。

        この連作短編集に収録されている五作品のイントロを兼ねる表題作では、参謀本部からD機関に派遣されたあとも、軍人気質の抜けない陸軍中尉が、民間出身の訓練生たちに馬鹿にされながら、外国人スパイ容疑者の家宅捜索を指揮し、結果的には自分に命令を下した上官の不正を暴くことになるんですね。

        スパイ小説には、物語の背景となる時代状況や国際情勢の描写が欠かせないと思う。
        そのために、どうしても重厚長大な作品になりがちだが、著者は背景の説明を大胆に省略し、もっぱら登場人物の意識と行動に焦点を絞って話を進行させていくんですね。

        その結果、物語のぜい肉がとれて、さながら良質のハードボイルドのようにスタイリッシュで格調の高いスパイ小説に仕上がっていると思う。

        連作短編という、この斬新な小説作法は、スパイ小説の新時代を予感させるに十分な手応えを感じさせてくれましたね。

        >> 続きを読む

        2018/11/08 by dreamer

      • コメント 1件
    • 他3人がレビュー登録、 20人が本棚登録しています
      ダブル・ジョーカー
      カテゴリー:小説、物語
      3.9
      いいね!
      • 1作目ではD機関の誕生から、養成されたスパイの各人の活躍を描いていた。
        2作目は逆で騙される側から描いていき、いかにしてそこにD機関が関わっていたかのやり取り。

        1作目よりは心なしか情報量が多く込み入っているのが特徴。
        またD機関に驚かされる役割のためか、それが分かっているのは少し物足りない。

        それでも手を変え品を変えており、結城中佐のスパイ時代を描く「柩」や、スパイの視点から描くも潜入捜査の穴を突く「ブラックバード」なども楽しめる。
        >> 続きを読む

        2019/11/25 by オーウェン

    • 他2人がレビュー登録、 27人が本棚登録しています
      トーキョー・プリズン
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!
      • ニュージーランド人の私立探偵フェアフィールドは、太平洋戦域で消息を絶った知人の情報を求め、スガモプリズンを訪れる。

        副所長のジョンソン中佐から、捕虜虐待の容疑で収監されている記憶喪失の戦犯キジマを回復させ、看守が密室で毒殺された事件を推理させれば、調査の手助けをすると言われたフェアフィールドは、不可解な謎を追うことになる。

        ハードボイルド探偵に近いフェアフィールドと、本格の安楽椅子探偵そのもののキジマが相棒になるので、どちらのジャンルが好きでも満足できるだろう。

        物語が進むと、プリズン内の密室殺人だけでなく、本当にキジマは捕虜を虐待したのかも重要になってくる。

        戦中と戦後に起きた事件の真相が明らかになるにつれ、先の大戦とは、戦後日本とは何かを問うテーマも浮かび上がるだけに、重厚な物語が楽しめる。

        戦勝国の人間とはいえ、さほど日本に悪い感情を持っていない、現実の東京裁判の裁判長でオーストラリア人のウィリアム・ウェブがモデルと思われるフェアフィールドの一人称で物語を進めることで、事件と日本及び日本人を客観的かつ論理的に分析する手法は、後の「ジョーカー・ゲーム」に通じるものがあると思いますね。

        >> 続きを読む

        2020/04/01 by dreamer

    • 他2人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      贋作『坊っちゃん』殺人事件
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね! MissTerry
      • 夏目漱石の『坊っちゃん』から3年後のおはなし。
        東京に戻って街鉄の技手となった「坊ちゃん」は、元同僚の「山嵐」と再会し、
        教頭「赤シャツ」が自殺したと聞く。「赤シャツ」の自殺に不自然さを感じた2人は、
        再び四国を訪れ…。

        小説『坊ちゃん』を読んだのはずいぶん昔でよく覚えていないけれど、
        定期的に映画化やドラマ化されるので、オリジナルはだいたいわかっていると思う。
        「坊ちゃん」ってこんなに頭の固い、いや一本気な頑固者だったっけ(笑)
        オリジナルは、古きニッポンの田舎たる田舎ルールの町に
        鼻っ柱の強い江戸っ子の若造がやって来て一騒動的な、
        どこかしらのどかな雰囲気の話しだけど、こちらは
        実は3年前の出来事の裏側では、きな臭い思想や暴力、裏工作が絡んだ、
        目線を変えたら全然違う物語でした・・・になっている。
        空気感はそのまま同じだからちょっと不思議で、これはこれですごいかも。
        薄くて読みやすいミステリー小説。旅行や通勤途中に読むのにオススメ。
        >> 続きを読む

        2016/09/28 by achiko

    • 他2人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      キング&クイーン
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!

      • 今回読了した柳広司の「キング&クイーン」は、それまで歴史ミステリや古典文学のパスティーシュを得意としてきた著者にとって、現代日本を舞台にした初めての長篇ミステリであるにもかかわらず、往年の良質な翻訳ミステリをどこか彷彿とさせる小説のような感じを受けました。

        ある出来事がきっかけで警察を退職し、今は六本木のバーで店員兼用心棒として働いている元SPの冬木安奈のもとに、天才チェスプレーヤー、アンディ・ウォーカーの警護の依頼が持ち込まれた。

        依頼人によると、彼は米国大統領から命を狙われているというのだが-------。

        書き方次第ではいくらでも波瀾万丈の大長篇に仕立て上げられそうな物語だけれども、著者は逆に、無駄な要素をストイックなまでに削ぎ落としていると思う。

        頭脳明晰でタフなヒロインの魅力、その彼女さえも翻弄するアンディ・ウォーカーの一筋縄ではいかない変人ぶり---といったキャラクターの造型は印象的だし、彼らが繰り広げる頭脳戦は、「ジョーカー・ゲーム」で日本推理作家協会賞と吉川英治文学新人賞をダブル受賞した著者ならではの、緊迫感と知的スリルに満ち溢れている。

        その頭脳戦の展開が、チェスの試合と重ね合わせてある趣向も洒脱で、特に、タイトルの真の意味が明らかになる終盤のどんでん返しは、実に鮮やかだ。

        9.11テロ以後の世界情勢を織り込むなどの現代性もある作品ですが、そこに必要以上に重きが置かれているわけではなく、全てのエピソードがミステリとしての骨格に有機的に結びついていると思うんですね。

        贅肉だらけの大作が増えてきている現代のミステリとは異なる、粋でスマートな作品世界は、ミステリの面白さとは、そもそもどこにあったのか---という本質的な問いを、我々読み手側に突きつけているんですね。

        >> 続きを読む

        2018/08/29 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      はじまりの島
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 柳さんお得意の歴史上の人物を使った、たらればのミステリ。

        チャールズ・ダーウィンがいかにして「種の起源」を唱えたのか。
        その部分をガラパゴス諸島で起きる連続殺人事件に絡ませる。

        ダーウィンが探偵役となり捜査するのだが、そこは孤島であり逃げ場はなし。
        島内に入ったのは11名だけなので、当然その中に犯人はいる。

        ダーウィンがしきりに言う動機の有無。
        これがラストに明かされる強烈な犯人像に繋がっていくのは関心する。

        正直犯人は当てやすいが、見せたいのはそこではないというのが充分伝わる。
        >> 続きを読む

        2018/10/22 by オーウェン

    • 3人が本棚登録しています
      漱石先生の事件簿 猫の巻
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!

      • この柳広司の「漱石先生の事件簿 猫の巻」は、文字通り、夏目漱石の「吾輩は猫である」の「猫」をもじった連作ミステリで、語り手は猫を飼っている先生の家の書生。

        漱石の作品に登場したエピローグを猫ではなく、書生の目線で描き、それを謎解きミステリに仕立て上げるという趣向だ。

        柳広司という作家はまったくどこまで器用な作家だと思うくらいに、文体模写が素晴らしく、しかも、そこかしこに込められたセンスのいい風刺と、本家に勝るとも劣らないユーモアに、読みながらくすくす笑いが止まらない。

        この本を読めば、「吾輩は猫である」を再読したくなること請け合いだ。
        ネタにするだけでなく、本家に手を伸ばさせるパスティーシュとは即ち、本家に対する著者・柳広司の愛の証だと思う。
        >> 続きを読む

        2019/03/21 by dreamer

    • 7人が本棚登録しています
      聖フランシスコ・ザビエルの首
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 鹿児島で発掘されたというザビエルの首。
        修平は雑誌の取材のため見学するが、そこで意識を失うと目の前にはなんとザビエル本人が!

        柳さんの歴史の偉人を基にしたミステリーの一つ。
        過去にとんだ修平がザビエルのお付きだったり、別の人間となって事件に曹遇。
        そこから探偵となって事件を解決していく。

        1章から3章は上記の方法なのだが、最後の章は様相が違う。
        これまで傍観者だったザビエルが実は事件にという考え。
        それを現実の事件と被せていく構成。

        事件もそうだし、ザビエルの生い立ちも含めて知れる作品。
        >> 続きを読む

        2019/03/21 by オーウェン

    • 3人が本棚登録しています
      吾輩はシャーロック・ホームズである
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • ワトスン博士のもとを訪ねたのは日本人のナツメ。
        自身をシャーロック・ホームズと呼ぶことで、ワトスンは名探偵として扱う。

        タイトルからも「吾輩は猫である」を下敷きにして、ホームズと組み合わせたミステリ。

        交霊会で起こった殺人事件。
        これがお互いの指をつないだ中で起こるという殺人。
        過去にも例がある中で、ホームズがいた時代ならではの解決法を導く。

        驚きのトリックというほどではないが、終盤の意外な解決などは充分に楽しめる。
        >> 続きを読む

        2019/01/04 by オーウェン

      • コメント 3件
    • 4人が本棚登録しています
      新世界
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 原爆を開発した男たちの狂気の物語。
        「ジョーカーゲーム」の柳広司の著作ということで読んでみましたが面白かったです。

        オッペンハイマーという実在の主任開発者をモデルにしたフィクションですが、その好奇心や良心、倫理観、出世欲を巡った苦悩や狂気がなんとも生臭いです。
        時系列が入れ替わり立ち替わりするので、章ごとに登場人物の心境にかなり落差がありました。

        歴史物のフィクションなのにミステリーというのも新鮮だとおもいました。
        この手の作品にしては敷居が低く、読み進めるのは苦にならなかったです。
        文庫版も出ているので是非。
        >> 続きを読む

        2014/04/22 by オオスカシ

      • コメント 2件
    • 4人が本棚登録しています
      ロマンス
      カテゴリー:小説、物語
      2.5
      いいね!
      • 昭和8年の東京で起きた刺殺事件。
        そこはカフェーであり、家督の高い子爵はいるはずがない。
        そんな状況下で起きた事件の中で、後の戦争への影響が。

        昭和のミステリなのにロマンスというタイトル。
        多少ネタバレではあるが、女性が意見を言う時代ではない。
        だからこそ最後の決断が感慨深いものに。

        事件の経緯も犯人の検討も隠そうとはしていない。
        選択こそが昭和という時代を表している。
        >> 続きを読む

        2018/08/02 by オーウェン

    • 7人が本棚登録しています
      ロマンス
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 後半が失速した感がありました。

        2014/12/16 by gas4476

    • 2人が本棚登録しています
      虎と月
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!
      • かなり軽い文体です。

        大人に間違われる見た目の14歳の少年が旅に出るという設定から、村上春樹さんの「海辺のカフカ」を思い出しましたが、こちらは父親を探しに行くお話。

        表紙の緊迫感のあまり感じられない虎同様、あまりハラハラはせず、児童書を読んでいるような気軽さで読み終わりました。
        キモとなっているミステリーも花を添える程度で、どんでん返しというよりは「あ、(やっぱり)そういうことかー」とアハ体験を主人公と共有する感じでしょうか。

        微笑ましい気分になる本で、数年後にまた読み返したくなりそうです。
        >> 続きを読む

        2016/11/15 by MaNaSo

    • 5人が本棚登録しています
      シートン(探偵)動物記
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 『シートン動物記』の著書である、アーネスト・トンプソン・シートン氏の晩年。
        取材に来た記者に対し、過去の動物が絡んだ事件を話す探偵もの。

        シートン動物記を基にしており、オオカミから始まり熊で締める全7作。
        1章ごとに1匹の動物がミステリに関わってくる。

        冒頭の「カランポーの悪魔」が印象的で、オオカミによって死んだと思われる遺体が発見されるが、それをシートンが絶妙の解決を。
        さらに「シートン動物記」の感想に対する見解が意外な真実を導き出す。

        企画としては面白いがそこまでミステリではなく、シートンの動物に対する愛情が見え隠れする作品だと思う。
        >> 続きを読む

        2018/12/16 by オーウェン

    • 3人が本棚登録しています
      最初の哲学者
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 13編からなる短編集にして柳氏流の新説ギリシア神話
        と言えそうな作品。元の話を何となく知ってるものも
        あったんですが基本的にはギリシア神話の予備知識は
        ない自分が読んでも充分楽しんで読めるくらいに、
        各ストーリーが凝縮されて書かれていて、読み易いです。
        ちなみに自分のギリシア神話の予備知識は
        「リングにかけろ」で得た程度ですw。

        どの人物も相当に人間臭く描かれており、ある意味
        現代に生きる我々よりも相当に生々しい感情が
        剥き出しで、人が持つ様々な感情の原点の様に
        思えて興味深い。そして剥き出しな分、より
        残酷な結末が多いのも興味深いですね。

        こうした物語の原点とも言える作品達の焼き直しに
        ラストの「ヒストリエ」を加える事で、世の中に
        対して「語られる」という事で意味のあるものに
        なるという...テーマで締められるまさに「物語」。
        予想外に面白かったです。

        が...幻冬舎さん...この価格は高くないっスかw?!
        >> 続きを読む

        2013/06/05 by za_zo_ya

      • コメント 3件
    • 3人が本棚登録しています
      はじまりの島
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!

      • 柳広司の本格ミステリ「はじまりの島」を読みましたが、実に面白い本でしたね。

        歴史上の偉人を謎の解明に当たらせるという、それまでの著者の作品に見られたお馴染みのスタイルが、この作品でも踏襲されている。

        今回、ガラパゴス島で起きた連続殺人に挑むのは、後に進化論を提唱する、若き日のチャールズ・ダーウィンなんですね。

        ダーウィンが、ガラパゴス島に上陸した1835年は、エドガー・アラン・ポオの「モルグ街の殺人」に先立つ6年前のこと。

        「モルグ街の殺人」の登場を促す機運が醸成されていた時代を背景として、医学から博物学に転向した若い科学者が、殺人事件の謎解きに挑むのだから、本格ミステリとしての面白さは約束されたも同然なんですね。

        シャーロック・ホームズやブラウン神父風の言動を示す名探偵の活躍、連続殺人のミッシング・リンク探しとも関係する動機の考察、アリバイを構成する数々のトリック、解決の場面における伏線の照応などなど。

        この作品は、「どうだ、これで文句はないだろう」と言わんばかりに、端正なまとまりを示す本格ミステリに仕上がっていると思う。

        それまでの著者・柳広司の作品の中でも、ミステリとしての完成度は1,2を争うほどの出来だと言えるだろう。

        さらに、この作品は、様々な先行のテクストを踏まえながら、いかにも本格ミステリらしい本格ミステリを演出しているのと同時に、近代の相対化をモチーフとする現代小説にもなっているところが、凄いと思う。

        神が死んだ世界を生きる力を得るのも良し、もちろん単に本格ミステリとして楽しんでも良し、ペダンティックな現代小説として楽しんでも良しの小説なんですね。

        つまり、この作品は、一冊で何通りもの読み方が可能な、そんな小説なんですね。

        >> 続きを読む

        2018/09/26 by dreamer

    • 4人が本棚登録しています
      饗宴 ソクラテス最後の事件
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!

      • お気に入りの作家のひとり柳広司の「饗宴 ソクラテス最後の事件」を読み終えました。

        この作品の舞台は、古代ギリシャの都市国家アテナイ、探偵はソクラテス。
        アガトンが主催する祝宴に招かれたソクラテスは、そこで異教ピュタゴラス教団の噂を耳にする。

        翌朝、祝宴の招待客の一人が、衆人環視の中で不可解な死を遂げる。
        次いで、何者かに引きちぎられた死体が発見され、さらに二体のバラバラ死体も見つかる。

        事件は、ピュタゴラス教団が作ったホムンクルスの仕業なのか。
        アテナイ全体が浮き足立つなか、ソクラテスが論理(ロゴス)を用いて解き明かした真相とは?-------。

        広い意味で、ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」の影響下に置かれた作品であることは窺えるが、その中でも、ソクラテスの探偵譚を記したクリトンの手記にリアリティを与えるため、発見までのプロセスを克明に描いた部分が実に見事だ。

        小枝ではあるが、こうした部分に目配りをすることで、作品世界に迫真性が付与されたことは間違いないと思う。
        したがって、クリトンの一人称で書かれているため、随所に現代的な価値観や視点も見受けられるが、それほど気になることもない。

        言葉=論理を"感覚や経験を離れることで、はじめて立ち現われてくる別の世界の可能性"と位置付け、ソクラテスの捜査と推理、何より論理を構築するプロセスを通して、ミステリにおける、叙述や論理とは何かを追求したところは、ミステリという小説のジャンルの根幹に関わる重要な思索だと言えよう。

        また、作中にカルトとして登場するピュタゴラス教団や、事件の真相を通して明らかになるアテナイの現状は、明らかに現代日本を映し出していると思う。

        過去を一つの装置として、現代を照射するという、歴史もののミステリでしか成し得ないテーマを導き出したことも、実に見事だったと思いますね。

        >> 続きを読む

        2018/06/09 by dreamer

    • 4人が本棚登録しています
      黄金の灰
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 「ジョーカー・ゲーム」で大ファンになった柳広司の長編第一作「黄金の灰」を読了。

        ハインリッヒ・シュリーマンといえば、伝説の都トロイアを発見した人物として有名だが、この作品は、トロイア発見の際に殺人事件が起きていたという設定のもとに展開される、不思議な歴史ミステリだ。

        1873年5月、トルコのヒッサルリクの丘で、シュリーマン率いる調査隊は、伝説の「プリアモスの黄金」をついに発掘した。
        しかし、その直後、不審火とともに黄金は盗まれ、発掘現場では司祭の惨死体が発見される。

        司祭が、黄金を盗もうとして事故死を遂げたかに思えたが、今度は教会で毒殺事件が起きた。
        現場は、密室状態で被害者が遺したダイイング・メッセージは「猿」だった。

        果たして、犯人はいったい誰なのか? そしてその目的は何なのだろうか?-------。

        アガサ・クリスティーの作品を連想させる遺跡発掘現場という舞台で、前半は正統派の本格ミステリとしての興味で、我々読む者をぐいぐい引っ張っていく。

        登場人物が互いを犯人だと告発し合う、中盤の推理合戦においてそれは頂点に達するが、そこから後は、シュリーマン自身や、語り手である彼の妻のアイデンティティが、思いがけない角度から問い直され、次第に不条理な様相を呈してゆく。

        トルコという西洋と東洋の蝶番に当たる地で、古代と現代、政治と宗教、現世の欲望と形而上的情熱が互いに切り結んで、余すところがない。

        この物語が問いかけているのは、世界という混沌を、人間はいかにして論理で把握しようとするかという問題なのであり、各登場人物の世界の解釈方法が謎とその解決を構成していると思う。

        しかし、小賢しい人間の思惑を嗤うかの如く、いかなる解釈をも拒む「神秘」が一瞬だけ現われて、事件は閉幕する。

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        2018/10/29 by dreamer

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【柳広司】(ヤナギコウジ) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)

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