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谷知子

著者情報
著者名:谷知子
たにともこ
タニトモコ
生年~没年:1959~

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      百人一首 ビギナーズ・クラシックス日本の古典
      カテゴリー:詩歌
      5.0
      いいね! Fragment
      •  さて、最近の僕は日本文学集中特訓期間(?)でして、『竹取物語』の次は『百人一首』を読みました。本書は正式には『ビギナーズ・クラシックス 百人一首』であり、和歌の原文、現代語訳、解説、和歌や歴史に関する背景知識などをコンパクトな一冊にまとめたものです。

         解説によれば、『百人一首』は藤原定家(1162-1241)が編纂したもの。定家の日記である『明月記』の記述には、親類から山荘の障子(襖)に貼る色紙形の和歌の執筆が依頼されたとの記述があります。その依頼を受けた1235年頃に、定家は『百人一首』の編纂に着手したのではないかと推測されているそうです。ただし、同じころには定家が『百人秀歌』というのも編纂しており、依頼のために編纂したのが『百人一首』なのか、『百人秀歌』なのかについては意見が分かれているようです。

         和歌の選択には、定家自身の心情、鎌倉時代(武士の時代)における過去の時代(天皇と貴族たちの時代)へのノスタルジー、依頼主の好みへの配慮などが影響しているそうです。すると、百首それぞれは強い個性を発揮していながら、緩やかに結びついているようにも感じられてきますね。

         そもそも和歌とは何なのかについて、解説者は、和歌とはハレのとき(非日常の瞬間)に読まれ、事物や自然の理想の型を詠うもの。そして、自然と人との融合を促し、他者と世界や心を共有するものとしています。 

         ここまで僕なりの言葉で、『百人一首』の成立背景、和歌の選択から見える百首の共通分母、和歌の定義についての解説者の説明を要約してきました。解説者は他にも、歌枕、古代や中世における恋愛、『百人一首』のパロディ作品、独詠歌と贈答歌、演劇・マンガ・ドラマ・ゲームに残る『百人一首』の伝統、定数歌、屏風歌、歌合、歌会、歌仙絵、当時の人々にとっての呪い、序詞と掛詞、本歌取り、歌題、縁語、見立て、かるた遊び、和歌における「私」とは何か、『百人一首』と食べ物などをミニコラムで簡潔に説明してくれています。興味のある方は、本書を手に取るなり、グーグル先生に質問するなりしてみてください。

         最後に、百首の中で僕の気に入った和歌のみ紹介しておきたいと思います。歌の冒頭の数字は、収録番号を示しています。

        6「鵲の渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける」(中納言家持)

        10「これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関」(蝉丸)

        15「君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ」(光孝天皇)

        29「心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花」(凡河内躬恒)

        31「朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪」(坂上是則)

        32「山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり」(春道列樹)

        57「めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に雲隠れにし夜半の月かげ」(紫式部)

        70「さびしさに宿を立ち出でてながむればいづくも同じ秋の夕暮れ」(良暹法師)

        76「わたの原漕ぎ出でて見ればひさかたの雲居にまがふ沖つ白波」(法性寺入道)

        79「秋風にたなびく雲のたえ間より漏れ出づる月の影のさやけさ」(左京大夫顕輔)

        84「ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき」(藤原清輔朝臣)

        83「世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる」(皇太后宮大夫俊成)

        87「村雨のまだ干ぬまきの葉に霧立ちのぼる秋の夕暮れ」(寂蓮法師)

        93「世の中は常にもがもな渚漕ぐ海人の小舟の綱手かなしも」(鎌倉右大臣)

         これくらいが僕の特に気に入った和歌でしょうか。恋歌は入っておらず、自然を題材にしたものが多いです。

         『百人一首』を読んで僕が感じたのは、和歌をはじめとした詩は、何かを忘れないために詠むものだということです。一瞬の感動や心の揺れを、自らの機知、知識、感性を基に1つの結晶体として「いまここに」留める。本当の「詩」は、安っぽい現実逃避のなんちゃってポエムではありません。むしろ、自らが経験する現実と真摯に向き合うことで紡がれる想いと祈りこそが、真の「詩」なのではないでしょうか。
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        2015/02/03 by ゆうぁ

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