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三戸祐子

著者情報
著者名:三戸祐子
みとゆうこ
ミトユウコ
生年~没年:1956~

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      定刻発車 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?
      カテゴリー:鉄道
      5.0
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      • まあ~

        ステキな車掌の手袋!!

        そんな感じで手に取った本ですが、丁寧な記述で日本の定刻発着文化について書かれており、感銘を受けました。

        本書にもあるように、日本の鉄道は「1分違わず」正確に運行することで知られています。それをなしとげることも、当然のように追求し続けることも、世界では稀だということです。では、そのような現象がなぜどのように起こったのか、ということを綿密に記した本です。やや古い本ですが、歴史にまつわる部分などは感銘を受けました。

        まず、鉄道はその開始から、人々に前向きに受け入れられたこと。その背景には、近代化の礎となった土木技術の向上や市民意識の芽生えもあったということ。江戸時代から時報の管理がなされていたこと。庶民が旅をする習慣があったこと。日本の都市は人が歩ける間隔で並んでおり、1駅間の距離が短いことできめ細かい運転調整が出来たこと。このような条件が、定刻運転の元になったのではないかと述べられています。

        1945年8月15日の終戦時にも鉄道員が当たり前のように電車を動かしていたということから、正常運転を目指す文化がいかに強いかがうかがえます。

        印象的だったのは、日本でもっとも乗降客が多い駅・新宿で、朝8時の混雑をさばくために、「押し屋」「はぎとり部隊」「切り屋」駅員が秒単位のプロセスを行っている様子。そのどれが遅れてもならない、ぎりぎりのリズム。乗客も整列乗車などに従うことで、暗黙のうちに秒単位の管理に「息を合わせて」いるのですね。そして、新宿のような駅があり、全国の線路につながっている以上、日本のすべての列車は正確に発着しなければならないということ。それを当たり前のようにやっている鉄道文化。乗客としては世界に誇るべき、素晴らしいものだと思います。ですが、今の時代だから思うことですが、それに何やら危うさも感じなくはありません。そのギリギリのバランスに頼ってわたしたちの生活は成り立っていることが、当然と思ってはいけないのかもしれません。

        本書でも、定刻発車を賛美するだけでなく、果たしてその先は何が待っているのかという視点を述べてあり、それが本書を深みのあるものにしています。

        >われを顧みずに懸命に”限界”への挑戦を続け、秒単位の正確さを実現させようとする

        >鉄道員たちの努力には感慨深いものがある。しかし他方では

        >「やはりそこまでしなければならないものなのか?」(中略)という思いは拭いきれない。

        >わずか10分や20分の列車の遅れによって、新宿駅では乗客だけでなく、

        >駅員も恐怖を感じるようになるのは、やはり何かがおかしい。(中略)

        >日本の定時運転は、鉄道員や乗客の犠牲の下に成立してきた側面は否定できない。

        そして、秒単位で発展してきた日本の鉄道が、これからはシステムによって強制される時間ではなく、乗客それぞれの時間というものを提供する可能性も示唆しています。現在発展を続ける「エキナカ文化」というのも、その一環といえるかもしれません。思えば自分自身も、ここ数年は途中駅で寄り道をしたり、各駅停車を選んだり、ずいぶんゆとりをもって鉄道と接するようになりました。それにより、鉄道に対し、「いつもラッシュで苦しめるもの」ではなく、「いつも運んでくれてありがとう」という、暖かな感謝の気持ちが芽生えました。

        運転士は、運転席についたときが一番「ほっとする」といいます。お客様に望みたいことで上位を占めたのはなんと、「自殺しないでほしい」とのこと。これだけは乗客として守りたいと心に誓いました。
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        2016/07/18 by みやま

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