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海輪由香子

著者情報
著者名:海輪由香子
かいわゆかこ
カイワユカコ
生年~没年:1952~

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      プラスチックスープの海 北太平洋巨大ごみベルトは警告する
      カテゴリー:公害、環境工学
      4.0
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      •  人によって違うかもしれないけれど、読む本を選ぶ際、筆者はそのタイトル(題名)を重視している。その点でいえばこの「プラスチックスープの海~北太平洋巨大ごみベルトは警告する」は秀逸なものである。

         海におけるごみ、中でもプラスチックに注目した本書は、たくさんの海洋研究者や環境研究者、それに化学者、環境活動家、そして海を愛する多くの人たちによって作られたと言っても過言ではないだろう。

        「海のごみ」と言えばあなたは何を思い浮かべるだろう。流木やビニール袋、ペットボトルだろうか。数年前、横須賀に行ったとき、巨大な自衛艦や米軍潜水艦を背景に、横須賀公園から見える海の水面にはたくさんのごみが浮かんでいたことを思い出す。

         筆者が高校生だった頃は、地元山口県の沿岸(瀬戸内海)でもよく赤潮が発生していた。赤潮とは、プランクトンの異常発生によって海が赤く変色する事態のことだ。環境汚染によって過剰に垂れ流された栄養素がプランクトンを増殖させ、そしてその死骸が赤潮となった。現在は、赤潮も発生しなくなり、多少沿岸の海もきれいになったのかと思ったけれど、どうやらそうでもないらしい。

         本書で問題としているのは、「プラスチック」である。プラスチックは木材や紙などと違って、人が石油から人工的に作り出した素材であり、その分解は非常に困難ときている。つまり、埋めたり海に捨てたりしても、なかなか自然に帰ってはくれないのだ。プラスチックは、その姿のまま、最悪の場合は毒素を含んだ状態に変化して海の中を漂う。

         とうぜん、魚や海洋動物(鯨やアザラシなど)、それに海鳥たちが食べるエサの中にもプラスチックが混ざってしまう。さすがに大きなプラスチックはそのままだが、微細なプラスチックは知らず知らずの間に食べてしまう。ウミガメやクジラがクラゲと間違えて、ビニール袋を食べてしまう、という話は有名ではないだろうか。

         プラスチックは中々自然に還らず、そこに留まってしまうという意味では、水銀にも似ているだろう。チッソという企業が垂れ流した有機水銀が水俣病を引き起こしたことは日本人なら知っていることだろう。プラスチックは、水銀ほど劇的な症状をすぐには表さない分、水銀よりも更に厄介である。しかもその影響は、汚染源よりもはるか数千キロ離れた海上にも影響を及ぼす。なかなか分解されないので、何年もかけて海流に乗り、流されていくのだ。

         東日本大震災の津波で流されたがれきが未だに、アメリカやカナダの海岸に漂着していることでもわかるように、海は広く、そしてその時間は人間の生きるスピードよりもはるかにゆっくりしている。だがそのスピードに甘えて、対応が後手に回っていては話にならない。

         海のごみで最も多いのは漁具だというが、その漁具も多くはプラスチック製である。理由は言うまでもなく安いからだ。海が汚れてしまうと最も困るはずの産業である漁業が、海を汚しているとすれば、これほどの皮肉はない。

         プラスチック産業(石油化学産業)は、筆者の兄弟や同級生もかかわっており、他人事ではない。それに漁業もそうだ。今日、誰もがプラスチックと無縁では暮らしていけない。今、筆者が叩いているパソコンもスマートフォンも、それに食器、電化製品にもプラスチックが使われている。人はプラスチック無しには暮らしていけないくらい、プラスチック(石油化学製品全般も含む)が溢れている。

         それがごみとなって海を漂う。プラスチックの中には、劣化や燃焼を防ぐため、人体に有害な物質を混ぜているものもあるという。だが多くの石油化学製品メーカーは、企業秘密を盾にその物質の詳細を明かさない。塩化ビニールなど、後になって問題になる物質もある。それが海に流れ出すのだ。

         我々の生活に深く結びつく海。その汚染、それもプラスチックによる汚染は、他人事ではない。先にも言った通り、我々の生活にプラスチックは多く関わっている。少しでもプラスチックを使わないようにすること。それが一番なのだが、現状では難しいだろう。なぜなら、ガラスや金属よりもプラスチックは安価だからだ。企業も自治体も、コストのかからない選択をしたがるものだ。だが、安易な選択が地球を汚し、さらには我々の生活を真綿で首を絞めるように少しずつ苦しめていくことを忘れないようにしたい。
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        2015/02/14 by ぽんぽん

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