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Carey, Edward, 1970-

著者情報
著者名:Carey, Edward, 1970-
      望楼館追想
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
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      • 【何と奇矯で、何と毒に満ちた小説なんだ】
         『アイアマンガー三部作』で話題をさらったエドワード・ケアリーの処女小説です。
         しかし、何ととんでもない作品を書いたものでしょうか。
         タイトルの『望楼館』とは、この物語の舞台となる古い五階建ての朽ち果てて行くような共同住宅です。
         表紙絵の通り、この建物の屋上にはドーム形の天文台が設えられているのですが、今はもう使われておらず、鳩の糞や鳩の死骸にまみれています。

         主人公は、この家の持ち主であるオーム一家の息子のフランシス・オーム。
         彼は37歳で、いつも木綿の白手袋をはめており、下唇が腫れあがった男です。
         彼の父親のフランシス・オーム(オーム家では代々長男にはフランシスの名をつける習わしになっているのです)は、痴呆老人であり、家の中の赤い椅子に座ったまま身動きもしません。
         母親のアリスは、寝室として使っている6号室から滅多なことでは出てこようとはしないのです。

         フランシスは、最初は蝋人形館で働いていました。
         蝋人形に交じって、不動の姿勢で立ち続ける仕事です。
         観客が、「これは人形なのか、人間なのか。」と訝るために存在する役割です。
         その後、蝋人形館をクビになり、今では像が無くなった台座の上で不動の姿勢を取り続け、足元におかれた空き缶にコインを投げ入れてもらう大道芸のようなことをして生活をしています。

         望楼館にはすこぶるつきの変わり者ばかりが暮らしています。
         一日中テレビばかりを見続けていて、現実とテレビの中のこととの区別がつかなくなっている女性のクレア・ヒッグ。
        かつて教師であり、また二人のフランシスの家庭教師でもあった、身体中から汗を流し続け、涙を流し続けるピーター・バック。
         勝手に20号室に住み着いた、犬とだけ交流を持つ不潔な「トゥエンティ」と呼ばれる正体不明の女性。
         「シッ」としか言わない潔癖な門番。

         この望楼館の住人は、少しずつ減り続けています。
         何らかの理由で出て行く者。
         そこで死ぬ者。
         残された者たちも、自分が最後の住人になってしまうのではないかと恐れつつも、ここから出て行くことができず、望楼館にこびりついているのです。

         そんな望楼館に新しい住人がやって来ます。
         18号室に入居する新たな人物。
         それがどういう人物なのかは門番以外は知りません。

         住人達は、当初は困惑し、また不快に思います。
         新しい住人などいらないのだと。
         その新しい住人は、目がほとんど見えなくなっているアンナ・タップという女性でした。
         フランシスらは、アンナを追い出そうとし、様々な嫌がらせをするのですが、アンナには一向に堪える様子はなく、それどころか、少しずつフランシス以外の住人を懐柔していくのです。
         あの、言葉すらしゃべれない犬女トゥエンティさえ手なづけてしまうのです。

         この物語は、このような実に奇矯な望楼館の住人たちのこと、望楼館自体の歴史、フランシスの過去などが次から次へと語られる、何とも奇妙な物語です。
         そこにはいやらしさや毒が満載で、時に読んでいて不快になることすらあります。
         作者は、まさに、そのような物語を書こうとしたのではないでしょうか?
         また、本書にも作者自身の手による不気味な挿絵が挿入されていますが、その絵もやはり気味の悪い絵ではないですか。

         後に書かれることになる『アイアマンガー三部作』の萌芽のような描写も出てきます。
         アンナが、フランシスの誕生日にフランシスを街はずれに連れ出し、ゴミの山とそこで働く人々を見せるというシーンが出てくるのです。
         これは、まさに『アイアマンガー』ではないですか。

         蝋人形館のくだりも、作者自身がマダム・タッソーの蝋人形館で仕事をしていた経歴があるということなので、その際の経験から生まれた描写なのでしょう。

         とにかく、どう評すれば良いのか手に余ります。
         これは読んでいただくしかないというのが、私の感想です。


        読了時間メーター
        □□□□    むむっ(数日必要、概ね3~4日位)
        >> 続きを読む

        2020/09/12 by ef177

    • 1人が本棚登録しています
      望楼館追想
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!

      • エドワード・ケアリーの「望桜館追想」は、いびつだけど、美しい佇まいを持った小説です。

        この小説は、まさに奇人・変人見本市といっても過言ではない作品です。

        舞台は、ヨーロッパのとある国の、小さな町に建つ古い館。
        白い手袋を決してはずさず、他人が愛したものを盗み、蒐集している語り手のフランシスをはじめ、この館の住人たちの奇矯な個性を、まずは堪能できるんですね。

        部屋から一歩も出ず、テレビを見続け、虚構の中に生きる老女。
        全身から汗と涙を流し続ける、体毛のない元教師。人語を一切、解さない犬女。
        「シッ」「あっちへいってろ」しか話さない門番。生ける屍のような、フランシスの父。

        そんな面々が、外界とはほとんど交わらず、時間が停止したような崩壊寸前の館で、幸せに暮らしているのです。

        ところが、新しい住人アンナの登場によって、死んでいた館の時間が動き始めてしまうのです。

        老女はテレビを消し、犬女は言葉を思い出す。寝たきりだったフランシスの母が目覚め、父が立ち上がり、望桜館の歴史を語り出すのです。

        そうしたこと全てが、気にくわないフランシスだけは、最後まで抵抗するのだが-------。

        ギュンター・グラスの「ブリキの太鼓」に出てくる、三歳の誕生日に自らの意志で成長を止めてしまう永遠の子供、オスカルを彷彿とさせる、反社会的な性格を持つ奇人、フランシスの語りがまとうグロテスクなユーモア。

        彼が蒐集する品々に関する寓話的なエピソードの妙。
        その中でも、とりわけ気味の悪いコレクションにまつわる謎。

        館を舞台にしていながら、ゴシックというよりはバロック。
        この「望桜館追想」は、そんな歪んだ感性が魅力の一冊なのです。

        >> 続きを読む

        2019/05/24 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています

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