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仁木めぐみ

著者情報
著者名:仁木めぐみ
にきめぐみ
ニキメグミ
生年~没年:1969~

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      ドリアン・グレイの肖像
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 〈あらすじ〉
        美しい青年ドリアンに魅了された画家バジル・ホールワードは彼の肖像画を描く。ある日、ドリアンの肖像画を描いているバジルの元へ友人ヘンリー・ウォットンが訪ねてくる。ドリアンは快楽主義者のヘンリーの影響を受けて堕落してゆく。
         
        そして、ドリアン・グレイの肖像が完成し、それを鑑賞することでドリアンは自分の美しさを自覚することになる。老いにより己の美貌が失われてゆくことに恐怖したドリアンは自分は美貌と若さを保ったまま、代わりに肖像画のほうが老いてゆけばいいのにと口に出して願う。その願いは現実のものとなり、老いも罪も引き受けて、その絵は醜く変貌していくのだった……



        僕は老いについてそれほど頻繁に考えたことはない。ただ、腰がまがり手押し車を押す老人を見るとたまに考えてしまう。彼らは今まで当然持ちあわせていたものを、時間という波に不当に奪われてどんな気持ちなのだろうかと。そんな時僕は絶対奪われたくない、しかし時間の不可逆性に抗うことは不可能であると絶望する。僕のような小市民ですら老いについて考えれば恐怖を覚えるのだ。優れた美貌を持ちそれを賛美されたドリアン・グレイが老いに対して感じた恐怖はいかほどのものだったのだろうか。

        物語が進むとドリアンはシビル・ヴェインという女優に魅了され交際することとなる。しかし、シビルが女優として優れていたのは、舞台の上に本物のロマンスを見出していたからであり、ドリアンとの間にロマンスが生まれてしまった以上、彼女の演技力は失われてしまう。そんな彼女に愛想を尽かし、散々罵ったあとにドリアンは彼女の元を去る。

        シビルに罵言を浴びせてしまったことを反省し、義務感からシビルと結婚しようとするドリアン。そしてラスト付近で再び改心しようとするドリアン。これは彼が持ち合わせる、あるいは捨てきれなかった道徳心によるものだろう。おそらく多くの人間が持っているであろう義務感から生じる、低俗であるが故に実用的な道徳心だ。

        ところで、僕がこの本を手にとったきっかけは「(500)日のサマー」という恋愛映画でヒロインのサマーがこの本を読んでいたという話がでてきたからだ。若く美しい真実の愛を信じないサマー。彼女はあの時どんな気持ちでこの本を読んでいたのか。そんなことを考えながら映画を観直すのも面白いかもしれない。

        僕はヴィクトリア朝時代の思想がどういったものであるかわからない。だから、ヘンリーが批判していたものがなんなのかが分からなかった。しかし既存の「道徳」を批判する姿には惹かれるものがあった。僕は正義という言葉があまり好きではないからだ。というのもその言葉はある種免罪符的な意味を持っていて、時に人殺しすら正当化される言葉であるから。身近なところではネット上でもそういう現象は散見される。正義だとか善だとか道徳だとか表現はその時々で変わるが、こういったものを盾に他人を攻撃する現象は枚挙に暇がない。僕は他人を攻撃することそのものにではなく、それを正当化する行為を欺瞞であると感じる。

        同性愛者として有名なワイルドだが、彼は今よりも同性愛に理解のなかった時代、それどころか同性愛が「罪」として定義され犯罪者扱いされた時代に彼がどれほど苦しめられたかは想像を絶するものだ。あとがきによるとそういった時代であるため小説でも同性愛のシーンを明確に描くことはできなかったようだ。なるほど、だからドリアンとバジルとヘンリーの関係はそういった匂いを漂わせながらも、どこか掴みどころのないものだなと納得した。



        好きな文章

        「周りの者たちと違うところなどないほうがいい。醜い者や愚かな者がこの世でもっとも幸せなのだ。彼らはゆっくりと腰を落ち着け、舞台を眺めていればいい。勝利の味を知ることはないが、敗北の苦しみも知らずにすむ。彼らは我々みなが臨むように、穏やかに無頓着に、平静を乱されることなく生きていく(後略)」p15

        「自然体でいるのも一つのポーズだ。しかも知る限りではもっとも苛立たしいポーズだね」p17

        「良心と臆病は同じものさ、バジル。良心の方を看板にしているだけだ。それだけのことさ」p21

        「いいことをするというのは、自分自身と調和することだ。(中略)不調和でいることは他人との調和を強いられる。自分自身の人生――それが重要なんだ。(中略)現代の道徳はその時代の基準を受け入れることで成り立っている。文化的な人間にとって、その時代の基準を受け入れることは、はなはだしい不道徳の一手段だと思う」p155

        (ドリアンの年老いてしわだらけになったら、どうなってしまうのか?という質問に対して)
        「そうしたら君は勝利のために戦わねばならなくなる。今は君の手に黙って運ばれてくるもののためにね(後略)」p203

        「感覚を偏重することはしばしば、そして十分な理由をもって、非難される(中略)感覚は、その本質がいまだ理解されたことがなく、未開で動物的だ。それは世の人々が感覚を、美を求める繊細な本能を主軸にする新しい精神主義の一部にしようとせず、それどころか感覚そのものを飢えさせて服従させようとしたり、苦痛によって死に追い込もうとしているからだ」p249
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        2016/06/14 by けやきー

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