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FfordeJasper

著者情報
著者名:FfordeJasper
生年~没年:1961~
      文学刑事サーズデイ・ネクスト
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 【今度は文学作品の中を渡り歩いちゃいますよ~】
         本作をお読みになる方は、もう第一作は読了されていますね?
         まだという方は、どうぞ第一作からお読みください。
         そうじゃないと話が分からなくなりますぞ。

         というわけで、サーズデイ・ネクスト・シリーズの第二弾です。
         彼女は特別捜査機関(スペックオプス、SOと略される)の特別捜査官です。
         彼女が所属するのはSO-27と呼ばれる文学刑事局。
         文学にまつわる奇怪な事件(当然警察は取り扱わないような)を専門に扱う部署です。

         第一作で、彼女は伯父のマイクロフトというほぼほぼマッド・サイエンティストが発明した『文の門』という装置を使い、『ジェーン・エア』の物語世界に入り込み、稀代の大悪党アシュロン・ヘイディーズによって物語が滅茶苦茶にされるのを防ぎ、アシュロンを倒すという大活躍をみせました。
         まぁ、その際に、(非常に不評な)『ジェーン・エア』の結末が書き換わってしまったんですけれどね。

         その後、サーズデイは、ランデンと結婚し、目出度くご懐妊されました。
         ところが、ランデンが『根絶』されてしまったのです。
         どういう仕組みなのかはよく分からないのですが、どうも時間を遡ってまだ2歳のランデンを殺されてしまったようなのです。
         そのため、この世界からランデンは消えてしまったのですね。

         通常は『根絶』されるとその者の記憶は誰にも残らなくなるはずなのですが、サーズデイはランデンのことをしっかり記憶していました。
         また、お腹の中の子供も健在だったのです。

         こんなひどいことをしたのは、世界中を支配しているゴライアス社です。
         あくどい超巨大企業で、人間生活に必要なほとんどすべての物を一手に製造、販売しているというとんでもない企業です。
         そして、自社の利益しか考えないというウルトラ・エゴな会社。

         なぜ、ゴライアス社がランデンを『根絶』したかと言えば、第一作で、下衆極まりないゴライアス社の幹部のジャック・シットを、サーズデイがポオの『大鴉』の中に閉じ込めてしまったから。
         ジャックを『大鴉』から連れ戻せ、そうすればランデンを復活させてやるという脅迫なのですね。

         とは言え、『文の門』をゴライアス社によって悪用されることを恐れたマイクロフト伯父は引退を宣言し、妻と共にどこかに消えてしまったので、もはや『文の門』はありません。
         ゴライアス社も独自に開発しようとはしているのですが、どうにも上手くできないのです。
         サーズデイだって、『文の門』が無ければ自由に文学作品の中に入ることなどできないのですが……。

         しかし、サーズデイはこれまでにも不可能だと思われていたことを可能にしてきたという実績があります。
         方法はどうでも良いので、ジャックを連れ戻せ、お前なら何とかできるだろうというわけなんです。
         なんともご無体な……。

         さらに、さらに、何者かが偶然を操っているようで、起きるはずが無いような事故が三度にわたりサーズデイを襲うという事態も出現してしまいます。
         どうやら、エントロピーが操作されているようなのですが。

         こんな四面楚歌的な状態で、サーズデイは独力で文学作品の中に入ることに成功します。
         そして、実は文学作品の内部には、SO-27とちょっと似たようなジュリスフィクションなる組織が存在していることを知ります。
         ジュリスフィクションは、文学作品の保全、維持を使命とする組織だったんですね~。 サーズデイは、ジュリスフィクションに所属するミス・ハヴィシャム(ディケンズの『大いなる遺産』の作中人物です)に弟子入りし、ブック・ジャンプ能力(文学作品の中を自由に行き来できる能力)を磨くことになります。
         そうした上で、『大鴉』の中に入り、ジャックを連れてきてランデンを助けようというわけです。

         ということで、本作でも文学ネタが満載ですし、サーズデイは様々な文学作品の中を行き来したり、あるいはSO-12の時間警備隊に所属していた父の力によりタイム・トラベルもすることになります。
         第一作からさらにパワー・アップした内容になっているんですね~。
         ユーモアたっぷりな作風も健在であり、小ネタで笑わせてもくれます。

         本作中でイジられる文学作品を挙げてみると……
        『大いなる遺産』/ディケンズ
        『大鴉』/エドガー・アラン・ポー
        『ドン・キホーテ』/セルバンテス
        『審判』/カフカ
        『不思議の国のアリス』/ルイス・キャロル
        『鏡の国のアリス』/ルイス・キャロル
        『スナーク狩り』/ルイス・キャロル
        『クマのプーさん』/A・A・ミルン
        『アッシャー家の崩壊』/エドガー・アラン・ポー
        『アモンティリャアドの酒樽』/エドガー・アラン・ポー
        『早まった埋葬』/エドガー・アラン・ポー
        『ハムレット』/シェイクスピア
        『ヘンリー六世』/シェークスピア
         まだまだその他沢山です。
         原典から引用されている部分は太字になっていますので、読んでいてすぐに分かります(私、『審判』のところで不覚にも笑ってしまいましたよぉ)。

         本好きな方だったら面白く読めること請け合いです。
         なお、物語は第二作だけでは完全に完結していないのです。
         これは、第三作も読まなきゃ~です。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
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        2020/12/18 by ef177

    • 1人が本棚登録しています
      文学刑事サーズデイ・ネクスト
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 【文学ネタ満載のこのシリーズ、こりゃあ、まだまだ続きますよ~】
         さて、上巻のレビューで、どうも第三巻はサーズデイが住む現実世界の事柄ではなく、サーズデイが『戦略的撤退』をした文学の世界(ブックワールド)のことばかり描かれていて、第二巻から持ち越しになっている問題の解決がなかなか進まないと書きました。
         また、その辺りがバランスを欠いていて、第三巻の評価を落としているとも。

         しかし、第三巻上下を通読して分かりました。
         このシリーズ、まだまだ続くようです!
         第二巻から続いている問題は、第三巻では解決されません。
         むしろ、作者は、第三巻は主にブックワールドでの出来事を中心に据えた構成にしていたようなのです。
         ですから、上巻で感じた不満も致し方ないところであり、第三巻をこれから読まれる方は、物語はまだまだ続くのであり、第三巻はブックワールドを中心に描いている巻なのだと承知して読まれることをお勧めします。

         さて、ではブックワールドで色々起きた事件はどういうことなのでしょうか。
         実は、これはブックワールドの枢要システムである小説OSのアップグレードと密接に関係しているということが徐々に分かってきます。
         詳しい仕組みはイマイチ分からないのですが、ブックワールド全体を統括しているオペレーティング・システムがあり、これまでにも何度もアップグレードされてきたと言います。
         それはまるでPCのOSみたいなんです。

         例えば、Windowsでも、「あのヴァージョンは良かったけれど、あれはクソだ」、「アップグレードしたら不具合が起きた」なんていうことはこれまでにもありましたよね。
         あれとそっくりな話になっているんです。
         例えば、過去のアップグレードがクソだったために、アレキサンドリア図書館を消失させてしまったとか……。

         で、今度は遂に通称『ウルトラワード』と呼ばれるOSにアップグレードが行われることになりそうなんですね。
         この『ウルトラワード』は画期的なOSで、処理能力も格段に向上するばかりか、これまでにないインタラクティヴな読書体験ができるなどなどの機能を備えていると言います。
         ただ、過去に痛い目にあったブックワールドのキャラの中には懐疑的な目で見ている者もいたのです。
         そして、詳しくは伏せますが、このアップグレードに関連して、これまで描かれてきた事件も起きていた疑いが浮上してくるという展開になります。

         そうか。
         最初は、サイドストーリー程度に考えていた『ウルトラワード』のエピソードが主筋だったのか!

         また、下巻に入っても文学ネタは猛烈にちりばめられています。
         大体、このシリーズのウリの一つは文学ネタなのですから、ここは外せないところですよね。
         これまでの巻でも、文学作品自体をネタにしたジョークは満載なのですが、作者や言語という視点からのジョークもあるんですよ。

         例えば、下巻で出てくるネタの一つに、「だったのだった」(had had)と「ことのこと」(that that)問題というのがおちょくられています。
         私、英文作品の原典を読んだことがないので分からないのですが、どうやらこの二つの表現は結構出てくるらしいのですが、これがあまりよろしくない表現だということがジュリスフィクションの会議で論じられていたりします。
         例えば、『デイヴィッド・コパフィールド』には「だったのだった」が63回も使われているんだそうですよ。
         その後、頭が痛くなるようなややこしい議論が展開されて笑いを誘うということになっております。

         また、文学賞ネタもあります。
         ブックワールドでも各種文学賞が表彰されるのですが、これが結構笑えます。
         『英語作品・最優秀章頭文』賞にノミネートされたのは、『アッシャー家の崩壊』/ポー、『ブライズヘッド再び』/イーヴリン・ウォー、『二都物語』/ディケンズで、最優秀賞に選ばれたのは『ブライズヘッド再び』なんです。
         なるほど、あの書き出しかぁ……(原文が太字で引用されているので思い出せますよ~)。

         また、『最優秀死人賞』に輝いたのは(これは作中のキャラに贈られます)、ドラキュラ伯爵(伯爵は昨年も受賞しているそうなのですが、毎回泣いてしまうそうです)。
         どんどんご紹介すると、『最優秀ロマンティック男性』賞は、『高慢と偏見』のフィッツウィリアム・ダーシィ(そうかなぁ?)、そしてそして、これまで77回連続で『狂乱ロマンティック主人公(男性)賞』を受賞しているのは……『嵐が丘』のヒースクリフ(爆!)。 もちろん、今年も受賞を狙っているそうです。

         そんなこんなの文学ネタ満載の作品なんですが、まだまだシリーズが続くとは予想していませんでした。
         第三巻が発刊されたのは2007年1月30日となっていますが、第四巻は出たのかしら?
         図書館にはどうも第三巻までしか無いようなんですけれど……。
        ネットで検索しても第四巻は見当たらないようなので、まだ出ていないのかな?
         これは早く出してくれないと困るですよ。

         おっと、そうそう。サブタイトルの意味も書いておきましょうか。
         本作では、ゴドーもジュリスフィクションの一員なんですが、ゴドーは会議にいつも現れないのです(そういう風に使うか!)。
         みんなゴドーを待っているというのに……というネタなんです。
         でも、最後にゴドーはとんでもない形で姿を現すことになりますよ。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
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        2021/01/07 by ef177

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