読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)
1クリック登録
本を閉じた時に胸に生じた熱い気持ちをどうしたらよいのだろうか。これは大人のファンタジーだと思う。感動も当然したがそれ以上に高揚感のある作品だった。読み終わった今余韻が残っていてそのまま次の読書にシフト出来ない。所謂ハゲタカと呼ばれる外資系のファンドに勤務する野上妙子は、地熱発電の会社を買収再生する任務に当たる。採算ベースに乗せ、会社を売却し利益を得る。リストラをし会社を立て直そうとする妙子と、地熱発電への熱い想いを持つ研究者と衝突する。研究者と衝突しレクチャーを受ける度に深まる疑問。事故のリスクを伴う原子力発電と比して、地熱発電は夢のエネルギーとも言える。何故エネルギーの選択肢として狭間へ追いやられているのか。研究者達と解りあうごとに深まっていく地熱発電への希望。妙子は次第に彼らに惹かれていく。しかし彼らの純粋な志は、否応無しに憎悪渦巻くパワーゲームに巻き込まれ翻弄されていく。果たして地熱発電はこの国に根付くのか。鬼子として葬り去られるのか。経済小説は旬の物であり、時間が経つと陳腐化し過去の遺物として忘れ去られていく。この作品も現実に追い越され、夢物語の残滓のように感じられてしまうかもしれない。しかし、これは世の中の理想の形を追い求める小説という形態の中では傑出した作品だと思う。何よりもこれだけの情報量をまとめて一つの物語を作り上げ、その中にこれだけの人数の登場人物を登場させながら薄っぺらにしない、一本筋の通った作品に仕上げる。これは中々出来る事ではないと思う。地熱発電で現実に全てまかなえるなどという事は全く思わないし、原子力発電を即刻止めろなど思わないが、希望や目標を持たない所に成功は訪れないと思う。政治家やエネルギー産業に携わる人に読ませてどんな感想を持つか聞いて見たい本だと思った。 >> 続きを読む
2015/05/13 by ありんこ
経済のグローバル化が驚異的に進んだ1990年代以降、外資系企業が日本に大挙して押し寄せ、多くの企業が買収されるという状況になる。外資は、日本を食い物にする「ハゲタカ」か、それとも新しいビジネスモデルを導入する救世主なのか?そうした疑問に真っ向から挑んだ小説が、この真山仁の「ハゲタカ」(上・下巻)なんですね。ニューヨークの投資ファンド「ホライズン・キャピタル」に入社した鷲津政彦は、わずか1年で「イーグル」と呼ばれるハゲタカ投資家として頭角を現わしていく。日本法人代表として日本に戻った鷲津が最初に手掛けたのは、三葉銀行が抱える不良債権のバルクセールと呼ばれる一括処理だった。簿価総額約723億円の不良債権を7億円余りで買い取り、3日後には234億円で転売。数字だけをみれば、まさに"ぼったくり"。ハゲタカと非難されても仕方がないかもしれないんですね。しかし、バルクセールなどは、実は駆け出しの仕事なのだ。鷲津が本当にやりたいのは、あくまでも企業再生ビジネスであった。本物のハゲタカは、潰れかけた会社の債券や株式を安く買い集め、その会社をバリューアップして、成功報酬を得るというわけだ。世間の偏見や避難にも屈せず、鷲津は企業再生ビジネスを進めていくのだった。そうした中で、鷲津は二人の人物と接触する。一人は、日本屈指のターンアラウンド・マネージャー(企業再生家)を目指す、元三葉銀行員の芝野健夫。もう一人は、日光ミカドホテルの後継者としてホテルの再生に取り組む松平貴子。こうして、三者三様の人生は、やがて一本の糸で結ばれ、波瀾万丈の物語となって展開されていく-------。この作品の最大の読みどころは、外資に翻弄されるのではなく、それを利用して再生を遂げようとする逞しさが、見事に描かれているところだと思う。松平貴子が、作中で言います。「今の日本には、リスクをとって資金を貸してくれるところは、ほとんどない。ならばハゲタカのお金を利用して、自分達の危機を救えばいい。お金に色はない。大切なのは、きっちり結果を出すことです。そうすれば、私達はハゲタカに食い荒らされたのではなく、ハゲタカを利用した勝利者になれる------」と。それを受けて、芝野がこう答えます。「これからの日本で必要なのは、そうした逞しさです」と。すなわち、外資をうまく活用していくという発想の転換であり、したたかさなんですね。 >> 続きを読む
2018/05/17 by dreamer
私の好きな作家である真山仁氏の本である。農薬と遺伝子組み換え食品の問題から派生して日本の農事行政、政治、国際関係、環境問題、産業として農業など色々テーマに幅があり面白かった。真山氏の小説では多数の主人公の視点の切り替えによって話が進むのだが、今回も同様に展開する。私の中で一番響いた問題意識は、食料争奪戦争だ。世界的に見て、人口は増えているが農用地が干魃で減っている。資力のある国や人が安心で美味しい食料、農用地、農業の技術を買っていくのは当然で、日本も危機感が余り無いけどもう既に巻き込まれているというものだ。私や子供も生きるために美味しい安全性の高い食べ物を食べたいところだが、買うには高価になりすぎるという未来が予想されるのであれば、自家消費のできる作物を日曜百姓で栽培しようかと思った。また食糧難で飢餓に苦しんだり亡くなったりしている人を非常に悲しく思う。豊かに皆が食事できる世界を切に願う。 >> 続きを読む
2015/08/22 by harubou
ハゲタカシリーズ。今回はリーマンショックをベースにした経済小説。とても楽しく、一気読みしました。上下を2日で読破。オススメです。どこまでが本当か、など想像しながら、そして登場人物のキャラにワクワクしながら読みました。フィクサーと言われている人物、そして飯島さんなど、個性的な人物がたくさん登場し、現実世界でも、このような人たちはたくさんいるのだろうな、FBIをも動かせるなど、ホントに?現実もあるの?という印象です。政財界の大物をベースにした小説をもっと読んでみたいと思ったのでした。 >> 続きを読む
2018/12/24 by みんみん
企業買収を題材としたシリーズ第四弾でありますサブプライム問題から発するリーマンショック、そして、世界同時不況時強欲(グリード)に塗れたアメリカにお仕置きをということでゴールデンイーグルこと、鷲津政彦が金融不安のどさくさに紛れて、アメリカの象徴を買っちゃうよってお話人も企業も初心を忘れてはいけません志を忘れてはいけませんお給料は、幸せを与える対価であります過多なお金儲けは、手段であって、目的になってはいけません鷲津の買収劇には、裏の事情がある訳で・・・・・・これは、最後の最後のお楽しみ!!前作までのライバルたちがチョコチョコっと登場するのも良かったです経済のお勉強にもどうぞさてさて騙されるのは、誰だ!! >> 続きを読む
2014/01/22 by momokeita
TVドラマを見てから読みました。自分が社会に出始めた年代が舞台となっており、その時代の閉塞感とか日本が沈んでいた雰囲気が感じられます。その中で日本人でありながら外資企業として様々な策を擁して日本企業を手に入れる鷲津。そして、同時に進行する銀行員出身経営者と老舗ホテル後継者の2人の登場人物。そして、冒頭の大蔵省での事件。上巻ではそれらが伏線となっているようで、下巻が楽しみです。 >> 続きを読む
2019/07/04 by ryoji
鷲津VS芝野とか考えや生き方は違うけど2人がいつか対峙するっていう展開を予想していました。予想は全然違ってました。そして、様々なことを連想させる終わらせ方も素晴らしかったです。真山さんの作品は「マグマ」以来2作目でしたが、やっぱり面白いです。作中の時代にちょうど社会に出たてだったので、当時の世間の閉塞感とかも感じられました。ますますファンになりました。 >> 続きを読む
2019/07/31 by ryoji
面白い本はあっという間に読み終わってしまう。この本で私が一番気になるところは、強烈な太陽製菓の経営陣だ。贅沢の極み、わがままなところ等、小説の登場人物も読者である私も腹立つ感じが堪らない。小説内で盛んに言われるのは、責任感が欠如しているところ。一度吸った甘い蜜、既得権の味が忘れられない様子が描かれる。その醜さが面白いところだ。 >> 続きを読む
2014/11/23 by harubou
買ってあったのに読むのが遅くなった。表題の「プライド」は2008年初出。フィクションだが日本の現実を踏まえた貴重な取材がデータになっている。だが現状は殆どが変化がなく続いていることに考えさせられた。 「プライド」は人を高めもするが崩壊もさせる。7編の主人公たちの前向きの矜持に励まされる部分が大いにあった。 自分は余り関わりのないと思っているところが、知らない、気づかないだけで大きな影響を受けていることを知る。 真山さんの本を読むのは、こういったまっすぐな、直球ど真ん中という作品に触れることが出来るから。長く読んでなかったその後の作品を辿ってみたい。 一俵の重み現在の農政について。食料自給率、農産物輸出支援基金、農業者個別所得保障制度などの言葉が飛び交う。 冒頭は当時拍手喝采で迎えられた”必殺仕分け人”が農水省の出した三件の基金を切り捨てるかどうかの場面から始まる。「却下!!」と叫ぶ美人議員を、純正ジュースで篭絡しようとすることの、あの手この手。 米博士の米野が日本の米を巡って開陳する理論は、米を主食にし、米好きの私には胸に応えた。 「食料自給率が40%を割り込みそうな今、輸出と言う発想が理解できませんか」 「食料自給率はカロリーベースなんです」 「輸入をやめると、食料自給率は100%になるわけです。にもかかわらず多くの国民は飢えるでしょうね」 「小麦の世界標準の価格は、トン当たり約200ドルです。それが、日本は1200ドル以上します。名物の讃岐うどんの原料の大半は輸入品です。地元産の小麦より上質だからです」 「なぜ米を輸出するための基金が必要かと言うことです」 「本当の意味で、この国の食料がなくなるかも知れないという時に備えるためですよ」 「輸出できるほどの良質な米を大量生産すれば、不測の事態にも備えることが出来ます。つまり、食料安全保障問題も解決するわけです。たとえ輸入がとまったとしても、輸出用の米を国内に回せばいいわけですから。しかも供給過剰問題も一挙解決することになる」 「日本の農業とは何を指すのです」 「日本の農業就業人口は260万人です。しかも、実質農業だけで生計を立てている主業農家は諸説ありますがそのうちせいぜい2割、58万人農家です」 「戸別保障は、買い取り価格の下落で赤字に悩む農家を救う制度なんですよ」 「大臣、なぜ兼業農家にまで赤字分を支払うのです。しかも、現状では減反している農家にも支給を予定されているとか。これはコメを作らない連中を奨励する。こんなことをしていたら、真面目にコメを作る者なんてあっという間にいなくなってしまいます」 農水省は、年間予算三兆円を守り続けている。省内には予算死守こそ農水官僚の使命だというものまでいる。 「大臣は、米一俵の重さがいくらかご存知ですか」 「60キロです。その値段がどんどん安くなっている。何故なら供給過剰だからです。だから減反しろという。それは間違っている。片手間で米を作っている農家への保護をやめるべきなんです」そういう意気で米村は処世術などどこ吹く風、怖いものなしの意見をぶつけ、研究中に生み出した最高級の米をのびのびと育てることを楽しみにしている。 医は……脳外科を学んだかつての同僚は順調に昇進し、脳外科センター長に就任した。教授が買って出た派手な手術パフォーマンスが失敗した、助手だった私は左遷され退職してアメリカに留学した。そこで先進手術を学びトップクラスに数えられるようになった。センター入所を条件に呼び戻され、教授の椅子も約束された、しかしそれは裏があるのではないか、徐々に現れる医学者の真実。 絹の道(ドウ) 絶滅の危機に瀕した養蚕業を政府が保護する動きがある。養蚕・絹産業連携の事業には補助金が出るという。そこに養蚕研究者の女性が現れる。放置されている桑畑の葉に惹かれたのだという。地主の青年は役所で、地元産業の発展を担当していた。彼は一途な女性や、昔を懐かしんで手伝おうという人たちとともに、養蚕業に手を貸し、美しい日本の絹を作り出そうとする。 原種に近い蚕をふやして、深い美しい絹を作ろうという道(どう)と呼ぶにふさわしい工程が描かれている。 「500頭よ。蚕は家畜だから、匹じゃなくて頭で数えるの」 養蚕の歴史、蚕の成長、野球少年だった主人公が次第に養蚕にめざめ村おこしにも役立てる仕事に生きがいを見出す、二人の再生物語にもなっている。プライド プディングで起業し今では食品企業の第一線を走る工場で、問題が起きた。 材料の牛乳に問題があるという内部告発があった。 柳沢は以前コスト削減のために、賞味期限ぎりぎりの牛乳を安い値で仕入れている事実の改善を求めたことがある、お前ではないのか「潔白を証明する根拠を出せ」 「告発文には誤った表現があります。そこには、”消費期限切れの牛乳”とあります。消費期限とは生物や劣化の早い食品にだけ定められて期限であり、わが社の超高温殺菌牛乳は、その対象外です」 本来は”賞味期限切れ”と書かなくてはならないのだ。この告発文の一語から、会社の起源当時から創業者が伝えてきた理念、精神など、利益の前で忘れそうになるアメリカ式受益産業経営の実態にまで話は及び、個人のプライド、魂が輝く感動的な話になっている。 暴言大臣 言いたい放題の質疑応答で、顰蹙を買った大臣には、それを言い放つ根拠があった。結婚五十年、できる妻を持った大臣のいまだに甘甘な夫婦生活が微笑ましい。病身を返り見ずに、夫を助けるために中国外交に出かける妻の覚悟。それは……。ミツバチが消えた日 報道写真家は養蜂家になった。戦場を写すことに無力感を覚えたからだった。ある日近隣の養蜂仲間から緊急連絡が来た。「ミツバチが疾走してもどらない」セイヨウミツバチが主流なのだが、ニホンミツバチを育てているうちのは大丈夫だろうか。 欧米でも同じ例が出ているという。 原因は何か。すに近くまで戻って見た。死んでいくミツバチに悲しみが増幅される。ーー働き蜂のミッションは卵を産み続ける女王蜂を、命をなげうって守ることだ。その女王蜂を見捨てて、ほぼすべての働き蜂が消えるなどと言うのはどう考えても異常だ。ーー いないいない病と名づけたこの現象は農薬の「バツグン」のせいではないのか。 豪農の力の前でことなかれで済ますのか。 結論が出ないまま話は終わるが、言えない現状が良くわかる、危機感が募る。なおこの話は長編「黙示」でも取り上げているそうで、読みたいと思う。 歴史的瞬間だれでも、一度は閣僚に名を連ね出来ればトップになって名を残したい。彼はついに総理大臣になった、北から絶え間なく飛んでくるミサイル、着地点がだんだん本土に近くなる。「迎撃せよ」と叫ぼうとして死んだ。 在職中に脳卒中でなくなった総理は。 300ページちょっとの短編集はすぐに読めるが、内容は豊かで鋭い、勉強になった。 関心があれば一読を強くお勧めします。薄い本ですぐ読めます。 >> 続きを読む
2015/03/22 by 空耳よ
この作者の評判はよく聞いており、この本も期待したのだが短編の為か評価はし辛い。いくつかの短編のうち興味をそそられるものもあったのだが・・・。 >> 続きを読む
2013/11/15 by あっ!いち
この著者の作品は今回2冊目。前回は短編だったこともあってか期待外れの感があったが、この作品は読み応えがあり十分楽しめた。強いリーダーシップを発揮する総理が名相から独裁者に、そして最後はまさかの展開・・・愚相に。最後のオチ(!)は非常に残念。国益と正義、職務の狭間で揺れ動く登場人物の異なる心理にひとつひとつ共感でき、矛盾の中で解を見つける楽しさがある。この著者の他の作品も気になります。 >> 続きを読む
2014/01/06 by あっ!いち
真山仁の「ベイジン」(上・下巻)は、北京オリンピック開会に合わせて、世界最大の原発を大連郊外で運転開始するという、長編エンターテインメント小説だ。エンジニアが原発を作る、それだけで小説になるのか?と、最初は思ったけれども、これが実に面白い。原発事故の現場に、日本人の田嶋が技術顧問として呼ばれる。前任者は「おまえ、あの国に殺されるぞ」、「あいつらは、俺を殺して食べるんだ!」と病床で叫ぶ。田嶋が赴任してみると、作業員の技術は低く、モラルも最低。だが、もっと問題なのは、行政や中国共産党の腐敗だった。しかも、原発のスタートは北京オリンピックの開会式、2008年8月8日、午後8時でなければならないという至上命令が-------。この小説は、日本人の田嶋の視点と、汚職摘発の密命を帯びた中国人側の責任者・鄧の視点とが交互に描かれる。さらに、北京オリンピック公式記録映画を撮る女性監督、楊の視点も加わる。この小説の魅力は、詳細に書き込まれた、中国の権力構造と、腐敗の構造、あるいは一般大衆の意識だ。とにかく、中国という国は複雑---というよりも混沌としている。前近代と近代が混在し、共産主義と資本主義が混在し、多数の民族や言語が混在している。だが、混沌はパワーの源泉だ。混沌のパワーを著者の真山仁は、企業小説、スパイ小説、エンジニアリング小説、そしてパニック小説とさまざまな要素を詰め込むことで描き切っていると思う。 >> 続きを読む
2018/12/24 by dreamer
【真山仁】(マヤマジン) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト(著者,作家,作者)
ページの先頭に戻る
会員登録(無料)
レビューのある本