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津村記久子

著者情報
著者名:津村記久子
つむらきくこ
ツムラキクコ

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このランキングは1日1回更新されます。
      ポトスライムの舟
      カテゴリー:小説、物語
      3.7
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      • 芥川賞受賞の表題作を含む中編二作品です。
        いずれも主人公が社会的な敗者であることを意識する独身女性である点が共通で、著者の世代的な点からも、「ロスジェネ」や「負け組」といった語句を想起させられます。カタルシスといえる要素とは縁遠く、リアルな観察が映す等身大の登場人物たちによる関係性や出来事が特色です。二作品とも主要人物は女性のみで、ほぼ負の象徴、または社会の既得権益者としてしか描かれない、男性たちへの諦観も基調にあるように思えます。
        以下では、それぞれについて述べます。

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        『ポトスライムの舟』
        第140回(2008年下半期)芥川賞受賞作

        母と二人で奈良市街に暮らす二十九歳の長瀬由紀子は、薄給の契約社員として化粧品工場に勤務するかたわら、友人が経営するカフェでの給仕、内職のデータ入力作業、パソコン教室の教師をこなす日々を送っていた。ある日、職場の掲示板に貼り出された、NGO組織が主催する世界一周クルージングの広告を見たナガセは、旅行に必要な金額が年間の工場勤務の年間手取りとほぼ同額であることに気がつく。「時間を金で売っているような気がする」と、人生に嫌気が差しつつあったナガセは、旅行資金のための貯金を心の拠り所とするようになる。

        ナガセがバイトで働くカフェを経営する友人を含む大学時代からの友人三人とその娘、ナガセの母親、勤務先の直属上司にあたるラインリーダー、と主要人物はすべて女性です。彼らの夫や息子など、わずかに触れられる数少ない男性は概ね、経済力もしくは疎ましい存在として扱われるにとどまります。奈良を主な舞台として大阪や神戸といった地名も登場し、会話は関西弁で綴られています。

        全体に、ナガセが仕事に忙殺される合間の旧友たちとの交流を中心に描くなかで、就職に失敗し結婚の機会も失った彼女の、社会における敗者としての屈託が端々でにじみます。世界一周クルージングはあくまで目標であって特別な出来事はなく、物語としての派手さは皆無です。それだけに希望をもちにくい状況にあるナガセの意識と彼女による他者への観察がリアルに描かれ、身につまされる読み手も少なくないでしょう。とはいえ、不幸一辺倒の単調な作品でもなく、平穏な空気感もうまく編み込まれています。書名のポトスライムはナガセが自宅で十数本育てている観葉植物です。

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        『十二月の窓辺』

        パワーハラスメントをテーマとした作品。印刷会社に入社して十カ月、年齢の違いから高卒の若い女性社員たちには馴染めず職場に溶け込めないツガワは、彼女に目を付けた直属の上司から云われないものも含めて叱責受ける暗い会社員生活を送る。そんななか職場では、近辺の路上に断続的に現れている通り魔が話題となっていた。

        主要人物はツガワ、毎日のように彼女を責め苛むV係長、そして会社で唯一ツガワの悩みを聞いてくれる別部署で役職をもつナガトの三人で、やはり表題作同様にいずれも女性です。

        会社組織を舞台に闇の部分を扱う作品は、表題作より暗さが明確です。ツガワが上司から受けるパワハラの様子はよく描かれているだけに、やりきれない気持ちにさせられます。全体のバランスとしては、パワハラと会社員生活の暗い側面が突出し、他の要素である通り魔やナガト、かつて就職を希望していた職場などが、うまく定着していない印象をもちました。人物名こそ違いますが、表題作とつながりのある作品としても読むことが可能です。
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        2020/09/28 by ikawaArise

    • 他3人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      ポトスライムの舟
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • どんな状況にある人物であっても、それが文章化されることでその人の生活や人生は、間違いなく価値のあるものに思えてくるなぁと感じられるお話で、私も、地味であっても良いじゃない、の元気をもらえました。生活しているだけで物語として成立する、それはナガセの心の中のつぶやきから感じるものでもあったし、文章のさらっと静かで楽観も悲観もしていない雰囲気から感じられるものでもありました。良かったです。
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        2014/12/29 by yuko1510

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      ミュージック・ブレス・ユー!!
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね! KEMURINO
      • 聴いている楽曲こそ違うが、主人公アズミのようにロックばかり聴いていた高校時代を思い出した。

        進路ややりたいことが見つからないまま訪れる3年間の節目に実態の薄さを感じながら、まるで酸欠をおぎなうように本、音楽、映画に自分に合った呼吸のリズムを求めていた気がする。

        主人公がまだ外すことができないヘッドフォンと歯の矯正器に青春の普遍性を感じつつ、おっさんになってもまだヘッドフォンをつけたときの風景に安らぎを覚えている己に?
        >> 続きを読む

        2018/06/10 by まきたろう

    • 4人が本棚登録しています
      ダメをみがく "女子"の呪いを解く方法
      4.0
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      • 津村記久子さんと、深澤真紀さんの対談集。

        面白そうな題だったので、どんな人たちなんだろうと著者紹介を読んでみたら…津村さんは芥川賞作家、深澤さんは「草食男子」の名付け親のコラムニスト・編集者って書いてありました。全然ダメじゃないじゃないか…とも思ったのですが、この二人のダメトークってのはどんな内容なのか興味がわいたので読んでみました。

        前半は仕事編、後半は生活編です。どちらも面白かったです。対談なのでサクサク読みやすいです。この二人、全く同じタイプの人達ってわけではなさそうで、それだからか「二人だけで盛り上がっちゃって読んでる人おいてけぼり」状態にはならずに読めました。

        変わり者って思われるくらいがちょうどいいとか、幼児性は大事とか、しんどいときは逃げちゃってもいいんだとかそういう話を読みながら、なるほどなーって思いました。上手に生きなくてもいいんだよって感じでしょうか。人それぞれ自分のペースってのがありますからね。周りとひどい摩擦がおきない程度に、自分との折り合いをつけてやっていけばいいのでしょうね。
        >> 続きを読む

        2013/08/04 by kuroyagi

      • コメント 5件
    • 2人が本棚登録しています
      アレグリアとは仕事はできない
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 主役は複合機。しかもその複合機が命ある女性のごとく物語が進む。
        ごくありふれたオフィスの日常を描写しているだけの内容なのに、
        飽きさせない著者のテクニックに感嘆。
        個人的には女性視点で話が進むのがとても興味深い。
        >> 続きを読む

        2011/07/11 by taitoshuu

    • 2人が本棚登録しています
      まともな家の子供はいない
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 働かない父親、不倫してる母親、夫婦仲が上手くいってない等、まあ多かれ少なかれ皆何かしらの事情はあるでしょう。
        父親が働いていない(リストラとかじゃなく、父親の子供っぽさで)家の子供の人生詰んだ感は分からないでもない。昼間からゲームとかされてたら、イラッとするだろうし、家に居場所が無いのはしんどいだろう。でもネグレクトとかではないし、宿題とか、やるべき事をやらないで家族のせいにできる、子供時代特有の甘えもあるのかなと。本当に嫌だったら、勉強して遠くの全寮制の学校に行くとか、逃げ方も色々あるだろうけど、当事者でダメ人間を目の当たりにしてたら、そういうガッツもないのかも。その先で自分の居場所が作れるっていう保証もないけれども。
        諦める、期待しない、スルーする、割り切る、折り合いをつける事ができれば、わざわざ事を荒げて余計な軋轢を生む事も無く、もう少し疲れないやり方もあるよーとしか言えない。それが成熟とか洗練とか、大人ってものなのか?という疑問もあるが、親の問題は子供がどうこうできる事も少ないし、相性もあるから、ババ引いたと思って、その上で自分はどうするか?感情ではなく現実問題として試行錯誤していくしかないのかも。まともな家庭っていうのも定義が難しいし、正解は無いように思う。
        自分はこんなに可哀そう!っていう話ならイラっとして読めないけど、淡々としてるので、何となく読めてしまう。
        >> 続きを読む

        2018/02/19 by チルカル

    • 4人が本棚登録しています

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