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ある知人を理解する為に、サブタイトルに惹かれて手を伸ばした本。何故あの人がそんなことを!とか、絶対しないって言ったじゃない!!とか信じてたのに!!!とか。他人事だと、月並みな人間の一面だと皮肉な笑みを浮かべながら眺めていられるかもしれないが、身近に起こると茫然自失してみたり、ヒステリックな反応をしてみたり、ペシミスティックになってみたりしてしまう私(達)。この本を読み終えた今、そういうことは「人間」という存在の全体性を引き受けて生きていないから起こることなんだと思う。著者はユング系の心理学者だというので(「影」で気付くべきだけど)、昔一生懸命読んだ河合隼雄を思い浮かべながら読み進めた。河合さんのように日本人や日本システムを軸に据えた語りではないのでピンと来ない部分もあるが、見も蓋もない剥き出しの事例や解釈をしているので、徐々に背筋が伸ばして向き合わなくてはという感覚になっていった。「影」とは「自分自身を困惑させる傾向を持つ、自分自身のあらゆる側面」のことを指す。恐らく意識しなければこれらから目を逸らして暮らすことは苦痛のない生き方だと思えるだろうし、悪いことを考えるとそれを引き寄せてしまうというような考え方は巷の自己啓発書に腐るほど書いてある。そして、トラウマやコンプレックスのような敵は「処理」し「解決」するものなんだと。それは一面的には正しいかもしれないが、本質的な問題は様々あらわれる「影」的なものが何故出てくるかなのだ。自分や他人、物事に対する過剰な反応の原因は自分の中に潜んでいる。過剰なポジティブさは過剰な影を生む。多神教が身を持ってその存在を肯定している「矛盾」を一神教が背負う時、本来はヨブ記のように極限の相克が行なわれる。この相克を経ずにポジティブさだけを背負おうとすること自体が相応の影を生むのだということを忘れてはいけないのだろう。自分のより深いところで物事を感じたり考えたりできるようになる本だと思うし、今後も折に触れ読んで理解を深めたい。また、普遍的無意識とか中空構造ではなく、影を意識して河合隼雄を読み直すことで、また味わいが増えるだろうと予感させてくれる読んでよかった一冊だった。そういえば、近頃内田樹がさかんに訴えている、成熟した社会の構成員とは自分と敵対する考え方の人間と同じ世界で生きることに同意した人だという見方。これは社会の安定というより個人の安定に主眼を置いた考え方かもしれない。 >> 続きを読む
2011/08/26 by Pettonton
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