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O'NeillJoseph

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著者名:O'NeillJoseph

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      ネザーランド
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 「人生には余波がつきものだ」。

        まさに、その通りで、何かが起きる⇒一見、事は収まったかのように思える⇒ところが、その後、時には数年もたった後に、"何か"が及ぼした影響によって波が立つ。

        そして、そうした出来事に伴う記憶は、波紋となって広がっていく。
        いくつもの余波と、数え切れない波紋を内に抱えて、私たちの人生はあるのかもしれません。

        今回読了したジョセフ・オニールの「ネザーランド」は、家族や故郷を、そして自分すら喪失しかけていた一人の男が、余波と波紋をたどるインナートリップによって、人生を再構築していく様を描いていて、静かな感動を与えてくれた、とても内省的な小説です。

        語り手は、オランダ人のハンス。2006年のある春の夕刻、ロンドンで暮らしている彼に、ニューヨーク・タイムズ紙の記者から電話がかかって来ます。
        かつての知人であるチャック・ラムキッスーンが、他殺体となってニューヨークのゴワナス運河で発見された、と。

        ここからハンスのインナートリップが始まるんですね。

        息子の誕生という喜びがもたらされた一方で、9月11日の同時多発テロをきっかけに、妻の気持ちが自分から離れかけているという事実に直面させられた街。

        "生まれて初めて惨めな思いを抱えて過ごした場所"
        ハンスの思いは、一本の電話をきっかけに、1999年から2003年11月まで滞在したニューヨークへと飛んでいくんですね。

        9.11以降、滞在し続けたチェルシー・ホテルで知り合った人々。
        9.11後に、幼い息子を連れてロンドンに帰ってしまった妻。
        ひとりぼっちの寂しさに耐え兼ねて再開した、子供の頃から親しんでいるスポーツ、クリケット。
        クリケットを通じて知り合った、「ファンタスティックなことを考えろ」がモットーのビューティフル・ドリーマーのチャック。

        ニューヨーク時代の回想は、生まれ育ったオランダの街ハーグや、ニューヨークへの渡航前のロンドンの思い出を誘発し、三都市間をめぐる記憶の時差の中で、愛する母やチャックという死者が息を吹き返すのです。

        そんな"余波"を体験することで、ハンスは自分がニューヨークで味わった喪失感が何だったのかを知るんですね。

        ひとつの思い出が、別の思い出を引き出し、いくつもの記憶の"波紋"が、空っぽだった心を満たしていき、やがてハンスは、失いかけていた人生を回復させていく-------。

        現在と過去、生者と死者の境界を横断するハンスの内省的な語りが、読んでいる私の記憶も引き出すという、これは"思い出の呼び水"とでも言うべき小説だと思う。

        派手さは少しもないけれど、読後の余韻がとびっきり深い、素晴らしい作品だと思いますね。

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        2018/08/29 by dreamer

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