こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)

バウドリーノ

5.0 5.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 1,995 円
いいね!

    「バウドリーノ」 の読書レビュー (最新順)

    最新のレビュー順 | 人気のレビュー順
    すべてのレビューとコメントを開く
    • 評価: 5.0


      記号論の世界的な権威であり、「薔薇の名前」で広く知られる小説家でもあるウンベルト・エーコの長編小説「バウドリーノ」(上・下巻)を時間をかけて読了しました。

      この作品は、中世ヨーロッパを舞台にした歴史小説であり、密室殺人の謎を解き明かしていく推理小説であり、様々な怪物たちが跳梁する「驚異の東洋」をめぐる冒険小説でもあり、はたまた幻想小説の味わいをも持っていると思う。

      1204年4月。ビザンチン帝国の首都コンスタンチノープルは、第四回十字軍によって蹂躙されていた。
      その混乱の中、歴史家ニケタスの命を救ったバウドリーノという人物は、ニケタスに己の数奇な半生を語り始めるのだった。

      北イタリアの農民の子として生まれたバウドリーノは、気に入られて神聖ローマ帝国のフリードリヒ皇帝の養子となり、諸国をめぐり、様々な経験をしたというのだが-------。

      この作品は、複雑怪奇な政治が論じられ、神学が論じられ、宇宙の生滅が論じられる。
      笑劇であるとともに、無数の死体が無意味に積み重ねられていく、文字通りの悲劇でもあるのだ。

      つまり、著者のウンベルト・エーコは、一冊の書物の中に、近代が可能にした小説というメディアが持つに至った、あらゆるジャンルを取り入れ、あらためて一つに統合しようと試み、小説という枠組みを、表現の新たな次元に解放しようとしているのだと思う。

      そして、物語の中核に据えられるのは、「聖杯」の探求であり、「司祭ヨハネの手紙」に代表される、もう一つ別の世界、地上の楽園の探求なのだと思う。

      しかも、それらのテーマは、いずれも書き直され、解体し再構築されてしまうのだ。
      世界を活性化し更新する「聖杯」は、誰もが手の届くところにあり、その価値は謎の探索にあって、物自体にあるわけではない。

      中世ヨーロッパに「東方の驚異」をもたらした「司祭ヨハネの手紙」は、先行する無数の聖なるテクストの断片を糊で貼り合わせることによって作り上げられたものだと思う。

      主人公のバウドリーノがつき続ける嘘が、次々と実現されていくように、虚構と現実、時間と空間といったあらゆる差異が無化されてしまう。

      言葉をゼロから学び、その言葉によって世界を再創造していくことが、読むことによって追体験されるのだ。
      そして、追体験することによって、小説という精緻な作り物を純粋に楽しむことができるのだと思う。

      >> 続きを読む

      2018/08/07 by

      バウドリーノ」のレビュー


    最近この本を本棚に追加した会員

    この本に関連したオススメの本

    取得中です。しばらくお待ちください。

    バウドリーノ
    ばうどりーの

    バウドリーノ | 読書ログ

    会員登録(無料)

    今月の課題図書
    読書ログってこんなサービス
    映画ログはこちら
    読書ログさんの本棚

    レビューのある本

    最近チェックした本