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明暗

4.0 4.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 735 円

勤め先の社長夫人の仲立ちで現在の妻お延と結婚し、平凡な毎日を送る津田には、お延と知り合う前に将来を誓い合った清子という女性がいた。ある日突然津田を捨て、自分の友人に嫁いでいった清子が、一人温泉場に滞在していることを知った津田は、秘かに彼女の元へと向かった...。濃密な人間ドラマの中にエゴイズムのゆくすえを描いて、日本近代小説の最高峰となった漱石未完の絶筆。

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    「明暗」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      漱石の未完の大作、『明暗』です。私が読んで思ったのは、『こころ』で漱石の小説はできることをし尽くしたのだなという感じです。『道草』は自伝的な小説で、それまでの作品とは作風が異なります。『明暗』は『道草』に近い、文体のいい意味でのゆるさというか、堅苦しい感じがありません。『明暗』のそれまでの作品と違うなと感じるのは、「お延」という女性の心中表現が詳しく描かれていることです。『こころ』までの女性は、男性に観察され、解釈されている女性で、自分で何か考えを表明して行動する女性ではありませんでした。『三四郎』の美禰子にしても「お延」ほど自立して動いていません。

       また、『こころ』までの作中人物はみんな真面目で、真剣に語っています。特に『こころ』はその傾向が顕著です。それに比べて『道草』の細君は主人の言葉をほとんど理解しないし、まともに取り合っていません。『明暗』ではそれがもう一歩先に出て、真面目に語っている相手をすかしたり、不真面目なようで、真面目だったり、『こころ』ほど率直に語ったり、真面目に隠したりしません。「倫理」の枠組みがはめられているからでしょうか。『明暗』はそうした道徳や倫理の破壊者が出てきて、主人公の津田を翻弄します。津田とお延の「すもう」などはまだ『こころ』的で、技巧もそんなに込み入っていません。小林や吉川夫人、叔父などのくせ者が出てきて、不真面目なような真面目なような何ともいえない角度から入ってきます。この自在な筆運びは、本当に登場人物が生きている感じが表現されていて、ため息が出ます。それまでのわりに主張や考えがはっきりしていた漱石の小説が良くできた作り物に見えてきます。

       『明暗』があんなところで終わっているのは本当に残念です。岩波文庫版のあとがきに大江健三郎がこの先を予想する文章を書いていますが、これが面白いです。あの温泉郷が黄泉の国だというのはなるほど、その通りです。東京で+であった価値が、温泉郷では-に転じる。小林がきっとこの温泉郷にもやってきて、+の価値を帯びる活躍をするという。面白い。断絶していても、ここまで楽しめる『明暗』はやはり普通の小説ではありません。
      >> 続きを読む

      2012/09/26 by

      明暗」のレビュー

    • この作品は最後に読むという気分だったので未読です。

      nekotakaさんのレビュー、とても参考になりました。
      「明暗」で、漱石さんは初めて、女性の描き方を変えているのですね。
      とても興味深い指摘だと思います。
      最後にしないでもっと早く読まないと。

      漱石さんは本当に早世だったと思います。「明暗」も未完作品なんて惜しいですね。
      まだまだ深い作品がたくさんかけた人だったと思うし、シュールな感覚も出始めだった気がします。
      円熟の域はこれからだったでしょうに。
      >> 続きを読む

      2012/09/27 by 月うさぎ

    • 読みました!
      (マンガですけど...)

      レビューにも書いたのですが、未完と知った上、マンガで概要も把握したのに原作を読みたくなる魅力を感じました。

      ただ、「こころ」もそうですが、どうやらダメな男が登場するとイライラしてしまうらしく、読んでいる間は若干不快(笑)なんですよね...
      >> 続きを読む

      2013/04/20 by ice

    関連したレビュー

      イースト・プレス (2008/05)

      著者: バラエティアートワークス

      • 評価: 4.0

        著者の夏目漱石が、執筆中に亡くなったため未完となった作品のマンガ版。

        原作が未完だと知らなかったので、マンガ版は途中で終わりかよ!と憤った自分が恥ずかしい...

        名作と言われる作品を読んで来なかったことも有って、概要を知る意味で重宝している「まんがで読破シリーズ」

        今回は、未完に終わった夏目漱石作品である。

        他に愛する女性がいたのだが、理由の説明もなく、違う男性と結婚されてしまった失意の主人公。
        裕福な家柄の女性を嫁に貰い、元々裕福な実家との両方にすがりながら、身分不相応な豪勢な生活を送っている。

        そんな中、病気で入院することになり、訪ねて来た親戚にズバリと指摘されたのが、過去の女性への未練を隠し、また良心の呵責から、嫁に贅沢を許しているのだと言うこと。

        自転車操業のようでも、裕福な両家からお金は出て来るので破綻は免れているが、本質的には過去の女性に対しての未練を断ち切らない限り、生活は改善しないことを諭し、彼女に会いにいくことを勧められる。

        そのアドバイスを受け、温泉に湯治に来ていた彼女の元へ向かい、対面を果たす。

        そして...未完。

        こっからだろー!と正直ワナワナ...するのだが、逆に読者それぞれに思い描く余地を残してくれたような気もしないでもない。

        自分でも不思議なのだが、未完と知り、まんがで概要まで知ったにも関わらず、是非原作を読みたいと言う気持ちになっている。
        >> 続きを読む

        2013/04/20 by

        明暗」のレビュー

      • 夏目漱石なんて聞くと難しい印象がありますが、マンガならアリかもですねー。

        ワナワナ...(笑) >> 続きを読む

        2013/04/20 by yutaka

      • >過去の女性への未練を隠し、また良心の呵責から、嫁に贅沢を許しているのだと言うこと。

        男性の方が、ロマンチストだから未練を引きずるっていいますよね。
        勝手に好きなら、ずっと好きでもいいじゃんかー
        >> 続きを読む

        2013/04/21 by makoto

      新潮社 (2010/01)

      著者: 夏目漱石

      他のレビューもみる (全2件)

      • 評価: 4.0

        痔・・・だったのか・・・ 

        ま、それはどうでもいいんだけど、津田って男は親の金を当てにしてるし(甘いなあ)、突然逃げられた清子のことも自分の中できっちりすっきり消化できてない。妻お延に対して表面上は大事にしているが本気で向き合うことが出来ていないみたいだし、何だかどうも・・・しっかりしようやって感じ。妻のお延も、そういう夫の空気を敏感に感じ、自分は愛されていないという感じをもっているが、外向きには幸せを装っている(・・・疑心暗鬼)。

        「自分のこうと思いこんだ人を飽くまで愛する事によって、その人に飽くまで自分を愛させなければやまない」という信念のお延。なんだかしんどいねえ。

        津田と津田の妹との関係(兄妹)、津田の妹(小姑)とお延との関係、お延とお延の叔父の妻との関係、津田と吉川夫人との関係、小林、、、、あ~、めんどくさい。何だかみんな自分が大事で、自分の考えを押しつけたいのに、表向きはあなたのため誰々のためなんて言ったりしてお説教したり・・・。(叔母さんとか妹とか)

        い~ あ~ もう少し正直にできないかなぁっ?
        (慈悲喜捨で正直に・・・・ これで解決!)

        ぐだぐだ考えたり、裏表見栄はったりいい格好したり疑心暗鬼になったりしてないで、
        シンプルにシンプルに。(・・・がなかなかできない?)

        お延も愛されたい(自分を愛させなければならない)なんて、子どもが思うようなことをいつまでも考えてないで、愛されるような人間になればいいし、そうでなければ自分が人を愛することで喜びを感じながら、独り(精神的に)でしっかり生きればいいじゃん。


        こういうめんどくさい(本音と建て前の)人間関係は苦手。い~ってなるね。(みんな我が強いから建前で付き合うしかないのかもね・・・)

        慈悲喜捨の心でもって、シンプルに正直に生きていきたいものだす。う~~


        未完の作品。(お延に内緒で)清子に会った後、どうなったんだろう・・・続きが読みたい


        い~ってなるけど、面白かった さすが夏目漱石です。
        それぞれの悩ましい心理描写がすごい。深い。昔の日本語は美しい。
        >> 続きを読む

        2014/10/10 by

        明暗」のレビュー

      • 〉い~ってなるけど、面白かった さすが夏目漱石です。
        〉それぞれの悩ましい心理描写がすごい。深い。昔の日本語は美しい。
        漱石さんの文って魅力的なんですよね。どこが?って言われると難しいけど。
        「昔」っていっても、言文一致運動って明治時代だから、実は文章にした場合の日本語の歴史は非常に浅いんですよね。
        漱石さん以前の文学ってみんな「文語」なんですよ。漢文みたいなやつ。
        漱石さんの文章が現代の日本語を作ったという説もあるようです。
        それを成し得たのは彼が英語をマスターしていたという理由によるようです。
        >> 続きを読む

        2014/10/10 by 月うさぎ

      • >ぐだぐだ考えたり、裏表見栄はったりいい格好したり疑心暗鬼になったりしてないで、
        シンプルにシンプルに。(・・・がなかなかできない?)

        これがなかなか難しいですよね~…
        人生シンプルに生きれたら、もっと楽なんでしょうね~!!
        >> 続きを読む

        2014/10/10 by RAY-ROCK


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