読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)
その他のネット書店はこちら
老人 日も沈んだゆえ、少し休むがよかろう、わしのようにな。行人 でも、あの前方の声が行けといいます。 ――「行人」+++どの海外文学にもいえることですが訳者との相性は本当に大切で、魯迅文学といえば私は、漢文のリズムを活かした詩的な竹内好氏の訳が大好きです。「沈黙しているとき私は充実を覚える。口を開こうとするとたちまち空虚を感じる。」という題辞からして詩的な文体をとっぷり味わえる、魯迅文学の精髄。引用した「行人」は好みの収録短編のひとつで「過客」とも訳されますが、修行人や旅人といった意味。ほぼ会話だけの戯曲形式で展開する10ページほどの散文詩です。ある日のたそがれ、老人と少女のもとに、ぼろをまとった若き旅人が通りかかる。旅人は疲れきっているのに、休もうともせずに西へ向かおうとする。老人が尋ねても、旅人は生まれたときから一人なので、自分が何という名前か知らず、物心ついたときから歩いているので、どこへ向かっているのかもしらないという。ただ前方からせき立て、呼びかける声の方に従い、足を引きずりながらも旅人は歩きつづけ……何故、自分が歩きつづけているのかわからず、それでも歩きつづけなければならないことに苦悶する旅人の心理が短い会話の中で見事に描かれている気がします。ちなみに……紹介した「行人」の雰囲気によく似た大好きな物語で、アゴタ・クリストフ氏の「道路」という戯曲があります。遠い未来、全人類がただひたすら、コンクリートの道路を歩きつづける物語。道路に出口はあるのか? 何故歩くのか? やがて疑問を持つ者が現れて……「道路では、どんなことも起こらないとはいえないがね、たいていのことは起こらないし、確実なことなんて一つもないよ。」 ――「道路」『怪物――アゴタ・クリストフ戯曲集』(堀茂樹訳)収録に収録されていて、作者は『悪童日記』など双子三部作で有名ですが、戯曲もすごくおもしろいです。こういった読後感のささやかなリンクが読書の醍醐味でもあるのかなぁと思います。 >> 続きを読む
2016/07/30 by ロダン
「野草 (岩波文庫 赤 25-1)」のレビュー
amazonでレビューを見る
野草 (岩波文庫 赤 25-1) | 読書ログ
ページの先頭に戻る
会員登録(無料)
レビューのある本
最近チェックした本