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タタール人の砂漠

3.4 3.4 (レビュー3件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 882 円
いいね! Tukiwami

    「タタール人の砂漠」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      【時に絡め取られる】
       主人公ジョヴァンニ・ドローゴは、士官学校を卒業してすぐにヴァツティアーニ砦への赴任を命ぜられました。
       この砦は国境を守備する砦ということで、(以前は)この砦で勤務するということは大変名誉なこととされていたということもあり、勇んで赴任したものの、砦の周囲には何もなく、至って淋しい場所でした。

       着任早々音を上げてしまい、上官にさっそく転任を申し出たのですが、4ヶ月後に軍医の健康診断があるので、その際に軍医に頼んで病気だということにしてもらうのが一番良いと言われ、そうして欲しいと願い出たのでした。

       ところで、この砦の北方には広大な砂漠が広がっており、その砂漠にはタタール人がいて、いつか砦を攻めてくるという話がまことしやかに囁かれているのですが、それにしては何も起こりませんし、過去にも何も起きてはいないようなのです。

       ドローゴは、こんなさびれたところで任期の2年間を過ごすなんてとても耐えられないと考えるのですが、すでに何十年もこの砦に勤務し続けている上官もいるのですね。
       そして、ドローゴも、いつしか変わり映えのしない砦の生活に埋もれていくのでした。

       待ちに待ったはずの4ヶ月目の健康診断の日が来ました。医師は上官から話を聞いているようで、事情を承知しており、すぐに病気の診断書を書いてくれました。
       ところが……ドローゴは何故か砦を去りがたい気持ちに襲われてしまい、その診断書を破棄してくれと軍医に頼んでしまったのです。ええ、まだしばらくは砦にいようと決意してしまったのです。

       しかし、その後も砦に攻め込んでくるというタタール人などまるで見あたらない毎日が続きます。
       しかし、ドローゴは、「俺はまだ若いんだ。この砦にあとしばらくいたところでまだまだ先はある。」などと考え、まるで時間に絡め取られるように砦での生活にしがみつくようになっていくのです。
       たまに休暇で生まれ故郷に戻ることがあっても、そこではすでにドローゴは浮いた存在になってしまっており、そそくさと砦に戻ってくるようになってしまいました。
       そして、いつか必ずタタール人が攻めて来るに違いないので、その時は軍人として活躍するのだと固く信じるようにもなっていくのでした。

       出だしの粗筋はこんな感じの物語なのですが、日々繰り返される砦での単調な生活に時間の感覚がどんどん麻痺していき、自分にはまだまだ先があると思い込んでいるものの、その思いよりも速く時は流れ去っていくのでした。
       また、いるのかどうかすら分からないタタール人との戦闘を固く信じるようになっていく経緯にはうすら寒いものすら覚えます。
       確かに、「すわ!攻撃か?」と思われるような事態も、この後起きないではないのですが……

       この「タタール人の砂漠」が刊行されたのは、イタリアが終戦を迎えて間もない時期だったそうですが、当時のイタリア人達は、記憶に生々しい戦争を描いたような作品を好み、この「タタール人の砂漠」のようにいつまで経っても何も起こらないような小説は「現実不参加」の小説だとしてあまり評価はしなかったのだそうです。
       しかし、その後徐々に評価が高まり、今では世界的に著名な作品になっていることはご承知のとおり。

       ある面では、カフカの不条理な小説のようでもあります。
       あるいは、非常に寓意的な作品とも言えますし、幻想的な作品と言うこともできるでしょう(その意味では、同じイタリアのイタロ・カルヴィーノを彷彿とさせるところもあるかもしれません)。
       また、私が一つ思い浮かべたのは、ジュリアン・グラックの「シルトの岸辺」という作品でした。この作品も戦争なんて起こり得ないような海辺の基地を舞台にしているのですね(その後の展開は本作とはまた違うのですが)。

       大変不思議な魅力をたたえた作品ではないでしょうか。
      >> 続きを読む

      2019/06/08 by

      タタール人の砂漠」のレビュー

    • 評価: 4.0

       幻想・不条理。イタリアのカフカ。

      「自分の人生は特別だ。いつかドラマティックな出来事が起こる。きっと自分は何かを手に入れ、何者かになることができる」
       そんな思いをバッサリと斬り払う一冊です。

       何かが起こるかもしれない、という微かな期待は誰しも心の奥に秘めていると思います。誰の中にも「タタール人の砂漠」は存在しているのです。何かを求めて「砂漠」へ向かうのも、無視して街で楽しく暮らすのも、あるいは「砂漠」を前にして考え続けるのも、一つの人生です。でも、一度は自分の中の「砂漠」について考えてみることが必要です。少しでも満足の行く人生を過ごすために。

       年代によって大きく感想が異なる本だと思います。そして同じ年代でも、どのような人生観を持っているかで、思うことは全く違うでしょう。「伝わるメッセージは同じでも、十人十色の感想を生む」これこそ良い小説だと思います。

      「この世の中において、私は決して主人公ではない」と私は思っています。でも同時に、「私の人生というちっぽけな物語の中では、きっと主人公になれる」とも思っています。
       まだ考えが若いでしょうか。

       容赦なく人生に影響する一冊です。人によってはかなりの殺傷能力があるので覚悟の上。
      >> 続きを読む

      2016/03/20 by

      タタール人の砂漠」のレビュー

    • >アテナイエさん
      シェイクスピア・ニーチェを使いこなしたコメントありがとうございます。
      少し元気が湧きました。ぜひ、読んでみてください。
      >> 続きを読む

      2016/03/24 by あさ・くら

    • 未来への期待が、希み、希まれることで、今の時点での期待が望みと望まれること?なんでしょうか。
      他人との関わりあいの中で自分から本能的に希みや望みをつくり出しているものなんでしょうか。

      自分に合わないことを妄想する、未来に対する希みは持てなくなりそうですが、自分の個体差の肯定と生きてていいという望みは持ち続けないと・・・。

      それすら持てなくなるとしたら嫌ですねʅ(´⊙⊙`)ʃ

      でも読みたいです(*ˊ˘ˋ*)。♪


      恥ずかしいアホなコメントばかりしてしまって申し訳ないですm(_ _)m
      >> 続きを読む

      2019/01/15 by 月岩水

    • 評価: 3.0

      著者の短編集が面白かったので、長編を手にとってみた。

      最初から最後まで実際には何も起こらないのに、運命的な出来事が起こるのではないかという期待を持ちながら、孤独で単調な日々を積み重ねていき、そのまま人生を終えてしまう。

      ここまで極端ではなくても、大多数の人々の人生は、ずっと同じ仕事に従事し、閉鎖的で単調な日々を過ごさざるを得ない。
      そうした日々に耐えるために、何か価値ある出来事が起こるのではないかという期待を捨てきれずに大半の時間を過ごしてしまう。

      怖いけどよくある話なんだよなぁ...
      >> 続きを読む

      2013/12/12 by

      タタール人の砂漠」のレビュー

    • 一回きりの人生、あるかわからない運命的な出来事に期待を持ちながら終えるのはちょっといやですが、来世にかけてみるのもありかなぁ >> 続きを読む

      2013/12/13 by hikaru1121

    • 毎日のほんの小さな幸せを見過ごさずに
      楽しんでいきたいなーって思います♪

      2013/12/13 by アスラン


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