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ヤモリ、カエル、シジミチョウ (朝日文庫)

4.0 4.0 (レビュー2件)
著者: 江國香織
いいね! KEMURINO

    「ヤモリ、カエル、シジミチョウ (朝日文庫)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      タイトルがイケすぎで読みたくなった作品。ネット、映像よりすごい小説パワーに酔う傑作に出会った読後感。

      言葉をまだ発せない幼稚園児の意識、思考をここまで具現化した創作力の妙。幼児の思考は、なんと全部ひらがなとカタカナ表記で進んでゆく。

      読みづらいことこの上ないのだが、言葉を使いこなせなかった幼児期の感覚に震えた。大人たちの言葉より、虫や植物たちの気配の方がリアルな感覚を見事に活字化!

      ダンナに浮気されて、心をコントロールできなくなった母をはじめ、周囲の大人たちの存在感がたまらなくリアルで日常的。ヤモリやカエルより狭い狭い社会に息しているような 大人たちの閉塞感。

      不倫を繰り返す父。母と父の交わす言葉の不成立こそ大人世界のほころびか?

      愛人との意味のない言葉のキャッチボールの方が本妻と交わす破綻した言葉のやりとりより、ほっとする切なさ。

      言葉に縛られて生きる大人と、まだ言葉に縛られていない子どもが見ている社会と愛の伝え方は虫と人間の差くらいかけ離れているのかもね? 素晴らしい!
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      2019/05/19 by

      ヤモリ、カエル、シジミチョウ (朝日文庫)」のレビュー

    • 評価: 4.0

      これは幼稚園児の拓人と、拓人を取りまく人々の物語。

      1ページ目を開いて、ちょっと戸惑う。文章がすべてひらがなで書かれているからだ。漢字交じりの文章になれてしまうと、ひらがなだけの文章は、一瞬、ただの文字の羅列にしか見えない。1文字ずつ追っていく。すると1文字ずつの速度で世界が立ち上がっていく。これは拓人から見た世界だ。人や、ヤモリやカエルなどの小さな生き物たちが発する、色や温度や気配で満ちている。拓人自身も、いつも満たされている。

      一方、漢字交じりの大人たちの世界には、少し不穏な空気が漂う。恋人がいることを隠しておけない父親と、そのせいで少し不安定になっている母親。婚約者に結婚を延期されてしまったピアノの先生。

      拓人の世界には、まだ言葉がない。小さな生き物とは会話ができるけれど、そこに言葉は必要とされない。心のなかで念じれば、彼らは答えてくれるから。でも、人とはうまくコミュニケーションが取れない。拓人にとって言葉は、ただの音にしか聞こえない。

      拓人はまだ、この世界に生まれていないように見える。言葉と音、人と虫たちの区別がない。自分と世界との区別もない。拓人のパートを読んでいると、きらきらした心地いい風に包まれているような、とても幸福な気持ちになる。ふわふわとしたものにくるまれて、外の世界とは切り離されているみたいに安心する。ずっとここにいたいと思ってしまう。

      ところが後半、拓人の世界に変化が生まれ、少し裏切られたような気持ちになる。でも、これは拓人が成長した証しなのだ。ひらがなだけの、ふわふわとした世界から、漢字交じりの不穏な空気も漂う大人の世界へと、いつのまにか歩き出している。そして、ふと思う。私自身もこうやって、居心地のよかった世界から、いつの間にかここまで歩いてきてしまったんだなと。この小説は、遠い昔の自分が見ていた世界に思いをはせる物語でもあった。それにしても、言葉にできない世界を、言葉だけで作り上げてしまう江國香織ってすごい人だ。
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      2018/05/06 by

      ヤモリ、カエル、シジミチョウ (朝日文庫)」のレビュー


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