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事故調

3.5 3.5 (レビュー2件)
著者: 伊兼 源太郎
定価: 1,728 円
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    「事故調」 の読書レビュー (最新順)

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    すべてのレビューとコメントを開く
    • 評価: 3.0

      志村市の人工海岸で、幼い男児が砂に埋まり意識不明の重体となるという痛ましい事故が起きた。
      回避できない事故と主張しようとする市に対し、世論は管理責任を問う。
      刑事から市役所への転職を経て広報課に勤める黒木は、経験と人脈をかわれて市長からの特命を帯び、被害者の家族や事故調査委員会の窓口役を任される。
      穏便に仕事を終わらせようと粛々と物事を進めていた黒木だが、届いた告発文から、事故には重大な見落としがあると気づいて―。
      静かに熱を帯びた男が、人工海岸陥没事故の真相究明に立ち上がる。

      角川書店さん主催の第33回横溝正史ミステリ大賞を『見えざる網』という作品で受賞された著者の、受賞後第一作となる書下ろし長編です。

      志村市という海岸線を保有する架空の街が舞台です。
      せっかくの景観を観光資源化すべしと、市が十数年前に推し進めた人工海岸工事。
      おかげで毎夏の花火大会や、市民の憩いの砂浜として、すっかり定着した志村海浜公園で悲劇が起こります。
      散歩をしていた親子のうち、小学生の男子が陥没した砂浜に落ち、生き埋めになってしまったのです。
      幸いにも一命を取り留めた児童でしたが、意識は戻らず、予断を許さぬ状況が続いていました。
      世論、マスコミから管理責任を問われた市側は、広報課に勤務する黒木を、その経歴(警察官から市職員への転身)から、密かに事件の真相を探るべく密命を下します。
      自分の責任で敬愛していた先輩刑事を亡くした事件を引き摺ったまま、刑事を辞め、人生を変え、ただ流されるままに生きていこうと決めていた黒木。
      今回の事案も、事の正義云々には目をつぶり、ただ歯車のひとつになり粛々と業務をこなしてゆこうと心を殺していました。
      しかし、人ひとりの命というものに直面し、真正面から腐った体制を変えてゆこうと腐心する部下や若い後輩職員たち、黒木の刑事時代の人間味を知る元同僚らが、ほんとうの黒木の、正義を強く望むはずの黒木の背中を強く押しつづけます。
      悲嘆にくれる被害者家族と、腐りきった市役所上層部との間に挟まれた格好の黒木。
      真実に近づくにつれ、明らかになる当時の市職員の責任転嫁の数々、また暴力による調査妨害。
      黒木の心中の正義の種火は、まだ燃え尽きてはいませんでした。
      様々な障害を前に本来の心を取り戻した、元・刑事が、少年の命を奪った、杜撰な管理と、無責任な行政の体質を暴き立てるため、立ち上がります。


      本作のように、過去に傷を持っていて、現在を投げやりに生きている…という主人公設定というのはありがちですが、ハードボイルド調のエンタメでは鉄板の設定です。
      ほんとうはもっとまっすぐで、悪を憎み、人生を信じている男。
      ただ、何かのきっかけで自暴自棄になって、自殺したり、世間と隔絶するほど馬鹿でもないので、流されるままに無味乾燥な人生を生きている。
      こういう設定の場合、この「過去の傷」というものがどれほどのものなのかで、読み手の感情移入の度合いが決まってきます。
      不自然でない世捨て感が感じられれば及第で、その上に驚きまで乗せられれば、すごく魅力的な主人公を創り上げることができます。
      本作における黒木、そしてもうひとり事件を追うキーパーソンになる男の過去はどうであったか、と考える時、ぎりぎり及第点といったところが正直な感想で、深みが感じられません。
      こういった問題は、著者の人生経験に比例してくると思うんです。
      1995年、乱歩賞と直木賞を同時受賞という快挙を成し遂げた大傑作『テロリストのパラソル』を上梓されたとき、著者の藤原伊織さんは40代後半でした。
      やはり、過去に傷を持もつ、渋みを含んだ主人公を描くには、40代後半から50代後半くらいまでのごく短い間に、ちょうど円熟期を迎えた作家さんがいちばんうまいと、改めて思わせてくれた読書になりました。

      タイトルがいただけません。
      『事故調』ときけば、砂浜での事故にまつわる事故調査委員会が物語の主軸となる舞台と思ってしまいます。
      ですが、本作中で事故調査委員会は刺身のつま程度の扱いです。
      官が何か不正を隠すような雰囲気を醸したかったがためのタイトルかもしれませんが、もっと相応しいものがあったはずです。

      横溝ミステリ大賞受賞者の方々も、2作目、3作目と後が続きませんね。
      僕は河合莞爾さんという方の作品に絶望した記憶があり、あまりいい思い出がありません。
      伊兼さんも、もう一作、読ませていただいて、今後、長いお付き合いをさせていただく作家さんかどうか判断しようと思っています。
      >> 続きを読む

      2016/02/18 by

      事故調」のレビュー

    • 評価: 4.0

      志村市の人工海岸で、幼い男児が砂に埋まり意識不明の重体になる事故が起きた。
      世論は管理責任を問うが、市は回避できない事故と主張する。
      刑事から転職して市の広報課に勤める黒木は、被害者の家族や事故調査委員会の窓口役を任される。
      黒木の元へ告発文が届いて…。

      ◆イヤな大人の姿にウンザリします。
      子供が巻き込まれた事故に対し、予見できなかった事として保身に回る市、警察も事故か事件か判らないため動かない。
      話題としてしか追いかけないマスコミは事故にあったのが男児か女児かも調べもせず、市の謝罪する姿を求めます。
      そしてTVの向こうの事件は自分とは関係ない、自分はこんなことにならないと心ない発言を被害者の家族へ向ける人々…。
      特に隠蔽体質の市の態度に、現実もこんなものではないかと思う部分が多すぎます。
      給料以上の仕事はしたくないのは判らなくはないし、役人だって普通の人なのも判ってはいますけど…でも、って言いたくなるのよね。自分の事は棚に上げている自覚があっても…。
      想定外の事態だったとよく言い訳されますが、実際想定外な出来事もあるとは思います。でも想定しなかっただけとか、考えが足りなかっただけでなにもしない事も多いのではないですか?
      自分の範囲以外は感知しないというような事から、防げるはずの事故もあるように思います。
      そんなこともあってフラストレーションがたまる…。
      期待の主人公もなかなか望む方向へ動き出してくれないし。
      でもちゃんと市のためと立ち上がる若手もいるし、未来を信じられそうなラストで、少しは良かったなぁと思います。
      それにミステリの謎解きとしては、なるほどという所もあって、面白さはありました。
      >> 続きを読む

      2014/06/28 by

      事故調」のレビュー

    • 社会派ミステリと言う感じですね。

      男の子がいるので感情移入もスゴそうだし、読んでみようかなぁ。 >> 続きを読む

      2014/06/29 by ice

    • iceさん>
      社会派ミステリと言えるのかもしれません。
      読み応えはあると思いますよ~ >> 続きを読む

      2014/06/30 by むつぞー


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