こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)

ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)

4.0 4.0 (レビュー2件)
著者: クレア・ノース
定価: 1,253 円
いいね!

    「ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)」 の読書レビュー (最新順)

    最新のレビュー順 | 人気のレビュー順
    すべてのレビューとコメントを開く
    • 評価: 4.0

      【記憶を保ったまま何度も生まれ変わる人生って……】
       主人公のハリーは『死なない男』でした。
       いえ、死にはするのです。
       するのですが、多くの場合は(若い内に事故に遭うなどしなければ)、毎回同じように、同じくらい老齢になると癌にかかって死んでしまうのです。
      しかし、また、前回生まれたのと同じ年月日、同じ場所で、同じ状況下で生まれ直してしまうのです。
       しかも、これまでの人生の記憶を保ったままで。

       本作を読む以前、今の人生の記憶を保ったままもう一度生まれ変わって人生をやり直すことができたら、それは良いかもしれないなぁと考えたことがありました。
       でも、本作を読んだら、果たしてそれは良い人生と言えるのだろうか?と考えてしまいましたよ。

       2度目の生まれ変わりの時、1度目の人生の記憶を持ってはいるのですが、それが本当に自分の1度目の人生のことなのか納得するのは難しいことなのだろうと思います。
       確かに、将来起きることは分かるのです。
       しかし、自分が前の人生の記憶を保ったまま生まれ変わったのだということはにわかには信じることは困難でしょう。
       それが、3度、4度と繰り返される内に、どうやら自分は記憶を保ったまま何度も生まれ変わる運命にあるのだということをようやく納得できるのだろうと思います。

       細かい記憶もよく保たれているのです。
       ですから、賭の結果や株の値動きなども前世で関心を持っていさえすれば、次の人生でも記憶に残されていますので、金を儲けることは容易いことでした。
       あるいは、手痛い失恋を繰り返すようなことは避けられるでしょうし、裕福な良い人生を送ることもできるようになるでしょう。
       しかし、やはり年老いると(数年の違いはあるにしても)癌にかかって死んでいくのです。

       でもまた同じように生まれ直してしまいますので、その意味では、ハリーは決して死ぬことができないのです。
       死ぬこと自体に対する恐怖は薄れていきました(だって、また生まれ直すのですから)。
       むしろ恐ろしいのは、自分の考えで自由に生きることができない幼少期でした。
       親等に言われるに従って生きなければならず、自分の判断で選べることは限られてしまいます。
       賭や株取引をして金を稼ごうにも幼少期にはそんなことはさせてもらえません。
       生まれた時代や環境によっては、結構辛い幼少期を耐えなければならないでしょう。
       前世の記憶を持っているだけにそれは辛い数年間になります。

       ハリーは、何度目かの人生を繰り返しているうちに、自分と同じように生まれ変わる人間が、この世界には少数ながら存在することを知ります(彼らはカーラチャクラと呼ばれていました)。
       また、カーラチャクラらにハリーの存在が知られて以降は、ハリーの苦しい幼少期に親元から引き離し、必要な経済的援助を与え、自立できるようにしてくれるという支援を受けられるようになりました。

       このように何度も生まれ変わる者たちは、同様の運命にある者を助けるために、長い年月を費やして『クロノス・クラブ』という組織を作り、極秘裏に世界中にその組織を広げていました。
       その目的は、同様の運命にある者をなるべく早く自立できるように支援することと、この世界を変えてしまおうとする者を阻止することにありました。

       クロノス・クラブの者たちは、リレー方式を使って過去の知識を未来に送り、未来の先端知識や技術を過去に伝えることができました。
      例えば、Aがあともうわずかで亡くなるという時期に、自分より後に生まれたまだ若いBに、Bが生まれていなかった頃の知識を伝えたとします。
       この過去の知識は、Bが亡くなる時にBよりさらに若いCに伝えられ……これを繰り返すことにより、時間はかかりますが、過去の正しい知識が、未来においては失われてしまったような知識が、確実に未来に送られるのです。

       この逆も可能ですよね。
       Aが死を迎える時、Aよりも若く、既に1度は生まれ変わっているBがAの死後に経験した知識や技術をAに伝えることができます。
       生まれ変わったAは、Bからもたらされた未知の知識や技術を、自分より年上のCに伝えれば、Cが自分の時代に生まれ変わった時に未来の知識を持って生まれ変わることが可能になるわけです。

       これを悪用する者が過去にいました。
       未来の知識を利用して歴史を変えようとしたのです。
       劇的に歴史が変わってしまえば、将来生まれるはずのカーラチャクラが生まれなくなるおそれがありますので、クロノス・クラブの者たちはそのような歴史改変を阻止しようとするのです。
       歴史は決して変えてはならないというのがクロノス・クラブの掟でした。
       そのために、クロノス・クラブは、歴史を変えようとするカーラチャクラに死を与えたのです。

       カーラチャクラは実質的には死ぬことができないのではないのか?
       一応はそうなのですが、それなりの死、そして絶対的な死を与える方法はありました。
       一つは、死ぬ前に様々な方法(電気ショックや薬物を使用します)によって記憶を破壊してしまうことです。
       そうしてしまえば、次の生まれ変わりの時にはそれより前に生きた記憶を持たずに生まれ変わることになりますので、カーラチャクラの記憶をリセットすることができます。
       もう一つの方法は根絶してしまうことです。
       つまり、カーラチャクラが生まれ出る前、まだ母親の胎内にいる間に殺害してしまうのです。
       そうすれば、そのカーラチャクラは二度とこの世界に生まれ出ることはできなくなります。
       歴史を変えようとしたカーラチャクラに対して、クロノス・クラブはこのような死を与えることにより歴史を守ってきたのでした。

       しかし、再び、ヴィンセントという男が未来技術をどんどん前倒しにして過去に実現させることを始めてしまったのです。
       ヴィンセントの目的は、自分が生きられる時代に、この世界の過去から未来までを理解できる量子ミラーという技術を確立することでした。
       そのために、ヴィンセントはどんどん未来の技術や知識を過去に送り続けていたのです。

       ヴィンセントは、自分の目的がクロノス・クラブに知られれば目的を阻止されてしまうと理解しましたので、逆にクロノス・クラブを壊滅させる行動に出ました。
       ヴィンセントの何度もの生まれ直しを通じて、クロノス・クラブの主要メンバーに次々と攻撃をしかけ、その記憶を失わせあるいは根絶してしまったのです。
       それを繰り返すことにより、世界中のクロノス・クラブはすっかり衰退し、地下に潜ってしまったのです。

       何度目かの人生を生きていたハリーは、ある時、まだ若いカーラチャクラから、「未来において人類は滅亡する。それは避けられないけれど、その滅亡が早まっている。」というメッセージを、例のリレー方式により受け取りました。
       これがきっかけで、ヴィンセントが未来技術や知識をどんどん過去に送り、爆発的に技術革新を進めていることを知り、その野望を阻止することを決意します。
       果たして、ハリーはヴィンセントの野望を阻止することができるのか?というのが本作の物語になります。

       ところで、歴史を変えるようなことをした場合、この世界はどうなるのでしょう?
       この作品では、パラレル・ワールドを使って説明しています。
       例えば、ヴィンセントが未来技術や知識を前倒しして過去に実現させた場合、ヴィンセントが生きている世界はもとの世界から分岐しパラレルワールドに進み、その世界で歴史が変わるとされます。
       そして、ヴィンセントが死ぬと、ヴィンセントはもとの世界に生まれ直すので、大本の世界だけは歴史は変わらないということになるのですが、ヴィンセントが生まれ変わる度に歴史を変え続ければ(しかも、過去の何度もの人生の知識を全て持って生まれ変わりますのでその改変速度は加速度的に速まっていきます)、毎回歴史が書き換えられたパラレルワールドに分岐してしまうということになるわけですね。

       非常に巧妙な設定を使ったSFだと思います。
       何度も同じ人生を繰り返さなければならないという『リセット』物の作品はいくつも書かれていますが、本作はそういう中でもかなり凝った作品になっていると思います。
       上手いこと書いたなぁと感心した作品でした。
      >> 続きを読む

      2019/09/17 by

      ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)」のレビュー

    • 評価: 評価なし

      時間ループ物の傑作です!

      一度目の人生を終え初めて生まれ変わったハリーは記憶が蘇ってくると、
      混乱し最後には投身自殺してしまう。
      三度目で生まれ変わりを受け入れ、四度目のとき妻に打ち明け
      これから何が起きるか告げてその通りになると妻は家をでて、
      ハリーは精神病院に…。そこにスパイが接触してきて未来の出来事を
      知ろうとする。拷問を受けていたハリーを救ったのは同じ体質の人だった。
      生まれ変わりの人たちは「クロノスクラブ」という互助会みたいな
      組織を作っていて、まだ年端もいかない生まれ変わりした人を助けたり
      未来からメッセージを受けたり過去にメッセージを送ったりしている。
      そんななか、世界は終わりが早くなってるとメッセージが…

      ハリー・オーガストとヴィンセント・ランキスという
      二人の生まれ変わり体質の長い長い戦いの物語です。

      生まれ変わりの設定がいいです。
      記憶を持って生まれ変わるけど、頭のある部位に電気を流すと
      全ての記憶が消えてしまうというのや、
      生まれる前に母親などが死んでしまうとこの世に誕生することがない。
      だから、生誕の情報は絶対に教えてはいけないなど。

      ヴィンセントはハリーのことが憎いけどどうにも好きなんだろう。
      拷問して殺してと…まぁ殺しても生まれ変わるけど。
      自分の敵ではなくなったと思っても手元に置くし。
      ハリーも何度も生まれ変わり長く生きてきてるから
      どこか心が死んだようになって、それがわかる場面が悲しく。。。

      現在進行の話と過去を振り返る話が交互に語られるので
      最初はなかなか物語に入っていけなかったけど
      二人の対決からは一気にラストまで。
      良い読書ができました!


      解説にもでてきた時間ループ物の傑作
      ケン・グリムウッドの「リプレイ」、内容忘れてるし再読しようか…

      訳者の方、ヒュー・ハウイーの「ウール」三部作の人でした!
      これは閉鎖環境ディストピアで最高のエンタメ。まだ覚えてるぞw
      >> 続きを読む

      2016/09/06 by

      ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)」のレビュー

    • 澄美空さん

      こんにちは〜
      今期アニメでもおおいですか〜
      今期はベルセルク、ジョジョ、モブ、あまんちゅ!しか見てないですー
      面白いけど最初読みにくいかもー拷問シーンとかもあるし…
      記憶の片隅にメモっておいてくださいな☆
      >> 続きを読む

      2016/09/06 by 降りる人

    • 多いですね~。多すぎますね~。みんなやり直したいんですかね~(笑)

      うおー!!
      大人~!!いやあ、観てる作品みんないいですね~。玄人感が半端ないです!!

      そうなんですねー!・・・
      ・・・って、まじっすか・・・はい、記憶の片隅に置かせて頂きますv(´∀`*v)ピース
      >> 続きを読む

      2016/09/06 by 澄美空


    最近この本を本棚に追加した会員

    この本に関連したオススメの本

    取得中です。しばらくお待ちください。

    ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫) | 読書ログ

    会員登録(無料)

    今月の課題図書
    読書ログってこんなサービス
    映画ログはこちら
    読書ログさんの本棚

    レビューのある本