こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)

杜子春 (角川文庫)

5.0 5.0 (レビュー1件)
著者: 芥川 龍之介
いいね!

    「杜子春 (角川文庫)」 の読書レビュー (最新順)

    最新のレビュー順 | 人気のレビュー順
    すべてのレビューとコメントを開く
    • 評価: 5.0

      杜子春という名の若者が主人公の短編。
      短い時間で読めて、古い作品だが文体もやさしいので、読書をあまりしない人にこそ読んでもらいたい。
      短時間でカタルシスを得ること間違いない。

      彼はその日の暮らしにも困る位の貧苦を味わっており、死を考えていた。そこへ謎の老人が通りかかり、彼の言うとおりにしてみたら一夜にして車いっぱいの黄金を手に入れる。
      それから贅沢三昧の日々を送り、その噂を聞いた人々が彼に集まって来るのだが、お金が無くなるとまた元の通り、誰も相手にしなくなる。

      そんな人間の薄情さに嫌気が差した杜子春は、お金を持っていても仕方がないと、今度は老人(老人は仙人だった)の弟子にしてくれと頼む。
      そこで仙人は、杜子春に試練を与える。
      「たといどんなことが起ころうとも、決して声を出すのではない。もし一言でも口を利いたら、お前はとうてい仙人にはなれないものだと覚悟しろ」と言いつけて、空へ消えていく。

      そこで様々な恐怖に襲われ、口を利かずに黙って耐える杜子春。しまいには神将に一突きに殺され、地獄でも散々な目に遭う。
      自分の身がずたずたになろうと口を開かない杜子春に、業を煮やした閻魔様は彼の死んだ父母を連れてくる。
      畜生道に落ちていた父母は馬の姿になっており、鬼どもの手にした鉄の鞭で二頭をずたずたに打ちのめしていく。
      そんな時、杜子春の耳に母親の声が伝わってくる。
      「心配をおしでない。私たちはどうなっても、お前さえ仕合せになれるのなら、それより結構なことはないのだからね。大王がなんとおっしゃっても、言いたくないことは黙っておいで」
      母親はこんな苦しみの中にも、息子の心を思いやって、鬼どもの鞭に打たれたことを、うらむ気色さえも見せないのです。
      大金持ちになればお世辞を言い、貧乏人になれば口も利かない世間の人たちに比べると、なんというありがたい志でしょう。
      杜子春は老人の戒めも忘れて、転ぶようにそのそばへ走りよると、両手に半死の馬の頸を抱いて、はらはらと涙を落としながら、「お母さん」と一声叫びました。……
      この箇所は何度読んでも目が潤んだ。

      結局仙人にはなれなかった杜子春だが、「なれなかったことも、かえってうれしい気がする。人間らしい、正直な暮らしをするつもりです」と話す。
      人間の薄情さに嫌気がさした杜子春だったが、結局人間らしい心を捨て去ることができなかった。
      人を愛おしむ心。
      目には見えないが、本当に大事なものは何か教えてくれた作品。
      >> 続きを読む

      2018/09/14 by

      杜子春 (角川文庫)」のレビュー


    最近この本を本棚に追加した会員

    この本に関連したオススメの本

    取得中です。しばらくお待ちください。

    杜子春 (角川文庫) | 読書ログ

    会員登録(無料)

    今月の課題図書
    読書ログってこんなサービス
    映画ログはこちら
    読書ログさんの本棚

    最近チェックした本