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津軽 (角川文庫)

5.0 5.0 (レビュー1件)
著者: 太宰 治
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    「津軽 (角川文庫)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      かなり時間をかけて、じっくりと読みました。
      太宰作品はどの作品も文体的にも、また、内容的にも消化するのに時間がかかる作品だと感じます。
      それが作品に対しての愛着に繋がっているのかもしれませんが、読むのに疲れて時折読了を諦めそうになるときがあります、笑

      本作は小説ではなく紀行文。私は紀行文というのを初めて読みました。
      あまり触れたことのないジャンルでしたが、太宰治本人と一緒に津軽を旅するような感覚で読むことができました。
      太宰が生まれ故郷である津軽のことを、とても好きなのが伝わってきて特にP24などでは
      「いわば、純血種の津軽人である、だから少しも遠慮なく、このように津軽の悪口を言うのである。他国の人が、もし私のこのような悪口を聞いて、そうして安易に津軽を見くびったら、私はやっぱり不愉快に思うだろう。なんと言っても、私は津軽を愛しているのだから。」
      と書かれています。地元のことを愛している、と素直に言い放てるってとても素敵だなと思います。根っからの津軽人である太宰と旅する津軽は、面白く、常にお酒に酔っていて、とても幸せな気持ちにさせてくれました。

      太宰といえば「人間失格」や「斜陽」など人間が没落していく姿を描いた作品が目立つように感じますが、本作は全く逆を行っているように感じました。
      友人との会話、父親の生家に訪れたり、幼い頃に子守をしてくれていたたけさんと三十年ぶりの再会を果たしたり。どれも没落ではなく、生きる喜びみたいなものを感じさせてくれるように思います。
      「太宰治暗いからきら〜い」みたいな方でしたら、こんな一面もあるのか、と驚かれるかもしれません。

      私は太宰作品が好きなのですが、その理由の一つに新しい表現や言葉を見つけることができる、というのがあります。私には絶対にないような語彙で伝えてくれるので、「こんな表現があるのか」と発見の気持ちで読むことが多くあります。
      今回も二つ、素敵だなと思った言葉があったので書いておきます。
      まずP10の
      「靴底を浪になめられつつ溜息ついて歩いた」というところです。
      私の表現力が稚拙なだけかもしれませんが、浪になめられる、という表現に初めて出会った気がします。頭のなかでイメージしやすいけれど、今までにない表現の形だなと感じました。
      次にP17の
      「やはり浅虫のように都会の残杯冷炙に宿酔してあれている感じがするであろうか」というところです。
      残杯令炙(ざんぱいれいしゃ)、という言葉、初めて聞いたので調べてみると
      【ひどい待遇や冷たい扱いをされること。恥辱や屈辱を受けるたとえ。貧しい食事や食べ残しで接待されるような屈辱を受けること。】という意味だと知りました。意味としてはあまりよくないかもしれませんが、漢字の並び的にもなんだか少しかっこよく見えました。
      日常生活での使い所はないけれど、こうして新しい表現や言葉遣いに出会えるのはとても素敵だなと感じます。

      それでは、私も太宰と同じようにこのレビューを締めくくりたいと思います。
      さらば読者よ、命あらばまた他日。元気で行こう。絶望するな。では、失敬。
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      2020/03/26 by

      津軽 (角川文庫)」のレビュー


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