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Yの悲劇

5.0 5.0 (レビュー2件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 740 円
いいね! dreamer Tukiwami

    「Yの悲劇」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      【ミステリの古典超名作は再読に耐えられるか?】
       本書は、海外ミステリの古典であり、かつ超名作と評価されている作品です。
       バーナビー・ロス名義(これがエラリー・クィーンの別名ペンネームであることはご承知のとおり)で書かれた4つの作品(『X』、『Y』、『Z』の各悲劇と『レーン最後の事件』)の中でも最も評価が高い作品であるばかりではなく、これまでに書かれたミステリの中でもトップクラスの名作との評価は揺るがない作品でしょう。

       私も中学生の頃この作品を読み、他の同時期に読んだミステリの中には結構忘れてしまった作品も多い中で、さすがにこの作品だけは犯人もトリックもはっきりと記憶している作品でした。
       この度、本当に久し振りに再読してみたわけですが、内容を忘れてしまっている作品であればいざ知らず、犯人もトリックもはっきり記憶している作品だと、いかに名作と言えどもミステリは再読に馴染まない、再読してもあまり面白くないのではないかと危惧しつつ読み直してみました。

       結論から言えば、全くの杞憂に終わりました。
       犯人もトリックも分かっていても、やはり面白く読むことができました。
       それだけではなく、犯人等が分かって読んでいるだけに、初読時には気付かなかった(というか無意識に読み飛ばしていた)伏線にも気が付き、結構気を遣って書いているんだなあということが分かったり、あるいは、記憶は確かだと思っていたのに実は正確ではなかったという点もあったりで、結構新鮮に読めたんですね。

       それではどんな作品なのかをご紹介しましょう。
       事件の舞台となるのは、世間から『Mad hatter』(気ちがいハッター)と揶揄されているハッター一族の屋敷です。
       発端は、当主であるヨーク・ハッターと思われる者の自殺死体が発見されたことでした。
       毒をあおって海に転落したようで、死体はひどく損傷していたのですが、検死の結果、ヨークに間違いないだろうということになりました。
       何故自殺したのか、その理由ははっきりしないのですけれど。

       ハッター一族は大富豪なのですが、その一族には忌まわしい血が流れていました。
       作中、はっきりとは書かれていないのですが、一族のカルテには『ワッセルマン反応』という項目が記載されていることが書かれていますので、おそらく梅毒という設定なのでしょう。
       とにかく、ハッター家の多くの者は、暴君であったり、異常に短気であったり、粗暴であったり、残酷であったりと、奇矯な行動が目立ち、到底まともではないのです。
       なので、世間からはアリスに登場する帽子屋をもじって『Mad hatter』(気ちがいハッター)と呼ばれていたのですね。

       さて、このハッター一族、当主が自殺しただけでは済まず、今度は自殺したヨークの孫に当たるまだ幼い少年のジャッキーが誤って毒を飲むという事件が起きます。
       ヨークの娘のバーバラは、盲聾唖という三重苦を抱えている女性なのですが、母親のエミリーはバーバラを溺愛しており、健康のためということで、毎日決まった時間に必ず卵酒を飲ませていました。
       ジャッキーはとんでもない悪ガキなのですが、バーバラが飲む卵酒と知りながら、それを盗み飲みしたところ、卵酒には猛毒のストリキニーネが仕込まれていたため、ジャッキーは中毒を起こして倒れてしまいます(一命は取り留めるのですが)。
       何者かがバーバラの殺害を企てた?
       確かに、バーバラはその障害のために一族から疎まれていたことは事実でした。

       そして、第二の事件が発生します。
       バーバラは、母親のエミリーと同じ寝室で、ベッドを並べて寝ていたのですが、ある夜、何者かが二人の寝室に侵入し、エミリーの頭部をマンドリンで殴打するという事件が起きたのです。
       エミリーは殴られたショックで心臓麻痺を起こして死んでしまいます。
       しかし、何故、マンドリンなどという凶器を使ったのでしょう?
       寝室には果物好きなバーバラのためにいつも果物が用意されていたのですが、その中の梨の一つだけから毒物が検出されました。
       エミリーは、果物はあまり好きではなく、特に梨が嫌いで絶対に食べないということは一族の者みんなが知っていることでした。
       ということは、犯人はバーバラを殺害しようとして梨に毒物を仕込んだのだけれど、それをエミリーに見とがめられたためとっさに持っていたマンドリンでエミリーを殴り、その結果エミリーは死んでしまったということなのでしょうか?
       しかし、それにしても何でマンドリンなんて用意して毒を仕込みに行ったのでしょう?

       警察は上記のような推理から、犯人のターゲットはバーバラなのだから、バーバラに対して殺意を持っている者が犯人だという線で捜査を進めるのですが行き詰まってしまいます。
      探偵役のドルリー・レーンは、耳が聞こえない引退したシェークスピア俳優なのですが、彼はもちろん真相にたどり着きます。
       しかし、これがとんでもない真相で、レーンもただ犯人を指摘して警察に検挙させれば済むという話ではないと考え、悩みに悩んでしまうんですね。
       結局、レーンは、ある出来事を機にこの事件から一切手を引くと宣言し、真相を説明しないままハッター家から去って行ってしまうのです。

       もちろん、その後、レーンによって真相が語られるのですが、これは……。
       実は、ラストの本当にラストの部分は、どうやら私は勘違いして記憶していたようです。
       このラスト、はっきりと説明されずに終わるため、どう解釈するかはもしかしたら読者によって見解を異にするかもしれません。
       私は、レーンが……ここは書けないなぁ。

       実は、このレーン4部作は、個々の事件ごとにそれなりの結末が用意されているのですが、シリーズ全体の結末として『レーン最後の事件』が書かれているという構成になっているんですね。
       そのシリーズ全体の構成もかなりショッキングなものなのですが、でも、実は既に『Y』でも……。
       おっと、もうこれ以上は書けません。

       いずれにしても本作はミステリ史上に残る超名作であることは間違いなく、海外ミステリを読んでみたいけれど何を読めば良いのか分からないと迷っている方がいたら、本作は絶対に外せない作品です(本作を読むなら、『X』から順を追って『最後の事件』まで読み通すことをお勧めします)。
       また、既に読んだという方も、本作は十分再読に耐えるミステリであると思いますので、機会を見て読み直してみるのも面白いと思います。


      読了時間メーター
      ■■■     普通(1~2日あれば読める)
      >> 続きを読む

      2019/06/16 by

      Yの悲劇」のレビュー

    • 評価: 5.0


      エラリー・クイーンの「Yの悲劇」は、アメリカ本国よりも日本で絶賛されることの多い作品だと言われています。

      その理由は色々考えられますが、かつて日本の推理文壇の主導者だった江戸川乱歩が、この作品を非常に高く評価していた影響が大きいことは、まず間違いないだろう。

      一時期は、海外ミステリのオールタイム・ベスト10投票などの企画では、この「Yの悲劇」がいつも1位に選ばれていたのではないかと思います。

      ただ、最近ではさしもの「Yの悲劇」神話も翳りを見せ、色褪せた感がありますね。
      というのも、同じ「悲劇四部作」でも「Xの悲劇」の方を高く評価する読者が増えているんですね。

      だが、オールタイム・ベストの1位に値するかどうかはともかく、この作品がエラリー・クイーンの作品中でも上位にランクインされるべきものであり、ミステリの歴史に残るだけの傑作であるという事実は動かし難いと思います。

      従来、犯人の意外性において語られることの多かった作品ではあるが、同じような犯人像が繰り返し描かれるようになってしまった現代の視点からは、むしろ他の美点こそが「Yの悲劇」を傑作たらしめていると言えるかもしれません。

      呪われた一族ハッター家の歴史が紹介される冒頭から、物語は息づまるほどの物々しい空気を漂わせている。
      これは、初期のエラリー・クイーンとしては極めて異例であり、他の作品にはない不思議な魅力を感じさせてくれます。

      ルイザの卵酒を飲んだジャッキーが悶絶するシーンなど、登場人物それぞれが現場である食堂に集まってくるさまが、まるで舞台上の役者の動きであるかのように描写されており、この事件が、人間の力では止められない宿命的な悲劇であるという印象を、我々読者に刻み込むのだ。

      全篇にばらまかれた事件の手掛かりもまた、実に魅力的だ。
      マンドリンという奇妙な凶器、毒を注射された梨、床の上の足跡、ルイザが触れた犯人の頬の感触、ヴァニラの香り-----と、ひとつひとつは犯人に到達するための有力な手掛かりのようでありながら、それらが組み合わされると、かえって事件の全体像が不透明になってしまうのだ。

      さしもの名探偵ドルリー・レーンが苦戦を強いられる所以だが、そこから思いもかけぬ真相を浮かび上がらせる論理の筋道は、流石はエラリー・クイーンだと唸らされましたね。

      そして、問題のラストは、ある意味、かなり掟破りだが、「悲劇四部作」全体を通しての伏線であると見なすことも可能だろう。

      >> 続きを読む

      2019/04/07 by

      Yの悲劇」のレビュー

    • 「ローマの帽子の謎」を皮切りにこれが面白かったら、その他の国の名前をタイトルに持つ本を読むつもりでした。
      では、まずはこの四部作から始めたほうが良さそうですね。
      アドバイスありがとうございます!
      四部作はXYZ‥なので、まずはXの悲劇を読んでみたいと思います。
      >> 続きを読む

      2019/04/08 by taiaka45

    • バーナビー・ロス名義の『X』、『Y』……から始められても、クイーン名義の国名シリーズから始められてもどちらもアリだと思いますよ。
      『X』から始める場合は、dreamerさんが書かれているとおりに順番遵守は絶対条件ですが(そうしないとこのシリーズのキモをダメにしてしまうことになります)。

      なお、おせっかいですが、一般には『ニッポン樫鳥』は国名シリーズではないというのが現在の共通理解だと思います(私もしばらく誤解していました)。
      原題にも『日本』という言葉は含まれていませんし(あれは日本が出てくる作品なので、出版社が強引に国名シリーズに入れたというのが通説的見解だと思います)。
      >> 続きを読む

      2019/04/08 by ef177


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