こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)

Zの悲劇

3.0 3.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 700 円

黒い噂がつきまとう州上院議員の刺殺事件。アルゴンキン刑務所を出所したばかりの元受刑者が逮捕され、死刑判決が下された。サム元警視の魅力的な娘で鋭い推理の冴えを見せるペイシェンスと、元シェイクスピア俳優ドルリー・レーンは、無実を訴える男を救い、真犯人をあげることができるのか?刑執行へのカウントダウンが始まった!最高の新訳が名作の隠れた魅力に光をあてる疾走感溢れる傑作ミステリ。

いいね!

    「Zの悲劇」 の読書レビュー (最新順)

    最新のレビュー順 | 人気のレビュー順
    すべてのレビューとコメントを開く
    • 評価: 3.0

      【ドルリイ・レーンものの中では最も低調な作品。その原因は?】
       名探偵ドルリイ・レーンが登場する作品は、『X』、『Y』、『Z』の三悲劇に加えて『最後の事件』の全部で4作あります。
       その中で最も出来が悪いのが『Zの悲劇』ではないかと思うのですが、おそらくこの評価には多くの方も異論が無いのではないかと思います。

       本作は、典型的なフーダニットもので、悪辣な2人の兄弟のもとに、次々と「秘密をバラされたくなければ金を払え」という恐喝の手紙と共に、切断されたらしき箱の一部が送りつけられ、兄弟はいずれもこの恐喝に屈して金を用意するものの、結局殺されてしまうという事件の謎を追います。

       本作は、レーンものの最初の事件である『Xの悲劇』から11年後という設定になっており、ブルーノ検事はニューヨーク州の知事になっており、サム警部は警察官を退職して私立探偵事務所を開いています。
       レーンは相変わらずシェイクスピア荘で生活しているのですが、老いには勝てず、すっかり病のためにやつれてしまっています。
       こんな面々の中で(特に前半で)探偵役をつとめるのがサムの娘であるペイシェンスということになります。

       第一の殺人事件は、その恐喝の手紙の送り主として名前が書かれているドウが刑務所から出所したばかりだったということもあり、ドウが犯人に間違いないと思われます。
       しかし、ペイシェンスは、『右利き、左利きの推理』を展開し、ドウは犯人ではないと主張し、サムもこれに同調するのです。
       とはいえ、ドウが犯人ではないことを立証できる証拠は皆無であることから、結局ドウは殺人罪で起訴されてしまうのでした。

       ペイシェンスとサムは、レーンに助けを求め、レーンもペイシェンスの推理を是認して諦め切っているドウの弁護士を説得し、無罪主張をさせるのですが陪審員の判断は、有罪、無期懲役というものでした。

       その後、ドウが脱獄し、その間に第二の殺人が起きてしまうのです。
       こうなるとドウが二つの殺人を犯したという疑いがますます強まり、しかもドウは第二の殺人現場から被害者の拳銃を持ち去っていたこともあり、容疑は決定的になってしまいます。

       ドウは再び逮捕され、第二の殺人事件でも起訴され、今度は死刑判決を受けてしまうのです。
       レーンは、ドウはいずれの殺人事件の犯人でもないと主張するのですが、やはり証拠があるわけではなく、また、真犯人も絞り切れずにいるのです。
       ドウの死刑執行の日は一日、一日と迫ってきます。
       ドウはこのまま死刑を執行されてしまうのか?という緊張感溢れる展開になっています。

       さて、このような作品なのですが、どこが問題であまり高くは評価できないのでしょうか?
       私がそう考える原因はいくつかあるように思えます。

       第一に、ペイシェンスを探偵役に持ってきてしまったことが問題だと思うのです。
       最終的にはレーンの推理によって決着がつけられるのですが、作品の半分位まではレーンはほとんど登場せず、もっぱらペイシェンスが捜査、推理を担当するのです。
       しかも、このペイシェンスが魅力に乏しい。
       この時代の活発な現代女性を描いているのでしょうけれど、私には鼻持ちならない高慢ちきな生意気女としか見えませんでした。
       こんなキャラが前面に出て、しかも本作は彼女の一人称で語られるので、レーンが登場した後もペイシェンス色が強く残り続け、彼女を気に入ることができない読者にとっては本作全体が何となくイヤ~な感じに思えてしまうのです。
       なんともレーンの影が薄すぎるのです。

       まあ、ペイシェンスを探偵役に持って来ざるを得なかったのは、次作への布石としてやむを得ないところもあるのですが、それにしてもペイシェンスのキャラは私には魅力が感じられなかったのです。

       第二に、レーンが是認するペイシェンスの推理も含め、本作の推理は全般に脆弱であると思います。
       ちょっと書いた『右利き、左利きの推理』だって、「本当にそうなの?」、「いつもいつもそうなるとは限らないのではないか?」という素朴な疑問がぬぐい切れないのです。
       また、第二の殺人に関し、恐喝の手紙と共に送り付けられた箱の一部を誰が送ったのかという点についても、レーンは、一応こういうことだろうという説明はするものの、それは余りにも都合が良過ぎるもので、しかもそう考える根拠は何も示されず、単なる思い付きにとどまってしまっているのです(その検証もされません。言いっぱなし)。
       さらに、真犯人を名指しする推理も、消去法には一応基づいてはいるものの、クイーンの他の作品のような論理必然性、説得力に乏しく、まったくクイーンらしからぬ杜撰な推理と思えてならなかったのです。

       第三に、本作にはトリックらしいトリックがありません。
       殺人自体、何の工夫もない単純なものなのです。
       『X』では満員電車内の殺人(しかも犯人はその電車内にいるはずなのに分からない)やダイイング・メッセージという仕掛けがありました。
      『Y』では(詳しくは書けませんが)何故マンドリンなどというおかしな物が凶器に使われたのかという大きな謎がありました。
       ところが本作にはそういう謎がまったくないのです。
       かろうじてあるとすれば犯人の意外性ということなのかもしれませんが、今の読者にはこの程度は意外とも何とも感じないと思います。

       他にもあまり高く評価できない原因はあると思うのですが、私には特にこの三点が致命的とも思われ、クイーン作品としては残念な出来と評せざるを得ないのです。
       いや、これが他のミステリ作家の作品なら、迫る死刑執行、スパイもどきの調査、銃撃戦などのサスペンスも織り込んだ及第作程度には評価できるのですが、あくまでもクイーンの作品ですからねえ。
       クイーン作品としては、本来の水準に達していないと厳しく評価せざるを得ません。

       というわけで、色々残念な点がある作品ではありますが、『最後の事件』を読むためには本作は絶対に読了しておかなければならないのです。
       その理由は、『最後の事件』を読了されれば納得していただけると思いますよ。


      読了時間メーター
      ■■■     普通(1~2日あれば読める)
      >> 続きを読む

      2019/06/17 by

      Zの悲劇」のレビュー


    最近この本を本棚に追加した会員

    この本に関連したオススメの本

    取得中です。しばらくお待ちください。

    Zノヒゲキ
    Zのひげき

    Zの悲劇 | 読書ログ

    会員登録(無料)

    今月の課題図書
    読書ログってこんなサービス
    映画ログはこちら
    読書ログさんの本棚

    レビューのある本

    最近チェックした本