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レーン最後の事件

4.0 4.0 (レビュー2件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 780 円

私立探偵サム元警視を訪れた奇妙な七色の髭の男。何百万ドルもの価値がある秘密に繋がる手がかりの入った封筒を預かってほしいというその依頼が、一同をかつてない悲劇へと導いていく。消えた警備員の謎、シェイクスピアの貴重な稀覯本すりかえ事件、不審な愛書家、そしてサムの美貌の娘ペイシェンスに危機が迫る時、元俳優のレーンの推理は...?!いよいよクライマックスを迎えるドルリー・レーン四部作、新訳完結編。

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    「レーン最後の事件」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      【ミステリ史上に残る衝撃の結末】
       『X』、『Y』、『Z』の三悲劇に続く、名探偵ドルリー・レーンものの最後の作品です。
       三悲劇のレビューでも書いてきましたが、レーン・シリーズは必ず順番通りに読まなければなりません。
       このレビューもネタバレは回避しますが、まだ三悲劇を読んでいないという方は、決して本作に手を出してはいけませんよ。

       ドルリー・レーンは、引退した名シェークスピア俳優なのですが、耳が全く聞こえません。
       そのために引退を余儀なくされたのですが、引退後、読唇術を完璧にマスターしており、電話には出られないものの、日常生活は苦も無くこなしています。
       本作でのレーンは既に90歳を超え、健康も損ねていますが、莫大な資産をもとに、ハムレット荘と呼ばれる邸宅で悠々自適の生活を送っているという設定です。

       最後の事件は、既に警察官を引退して私立探偵事務所を開いているサム元警視のもとに奇妙な依頼が舞い込むところから始まります。
       青と緑に染めたけったいな顎鬚を生やし、青いサングラスをかけ、何枚も服を着こんでいる男性が、一通のマニラ封筒を持参し、その封筒を厳重に保管して欲しいと頼んできたのです。
       封筒の中身は明かせないけれど、毎月20日に電話をするので、その場合には何事も起きていないと判断し、保管を継続して欲しいと。
       万一、毎月20日の電話が無かった場合には、レーン立ち合いの下にその封筒を開けて
      中に入っているものを見て欲しいと言うのです。
       封筒の中に入っているものは、100万ドルの値打ちがあるものにつながるヒントが書かれているのだと。

       こんな奇妙な依頼は断ろうかとも思ったサムですが、レーンの名前を出されたことから引き受けてしまいます。
       しかし、この依頼者、絶対変装している。
       しかも、何というおかしな変装なのだ?

       その後、あるバス会社の運転手から、友人のドノヒューが行方不明になったので探して欲しいという依頼が舞い込みます。
       ドノヒューは、元警察官で、サムも知っている男でした。
       彼は、警察官を退職し、現在は稀覯本を保管、展示しているブリタニック博物館の守衛をしているのです。

       ブリタニック博物館は現在改装中で、一般客の見学はできないのですが、問題の日は教職員の団体が見学を申し込んだため、特例として見学が許されたというのです。
       バスの運転手は、教職員の団体を博物館まで連れて行き、そこで友人のドノヒューと立ち話をし、その日の夜、一緒にボクシングの試合を見に行く約束をしました。
       ところが、しばらく後、ドノヒューは突然博物館から走って出ていき、その後行方不明になったというのです。
       連絡が取れなくなってからまだそれほど時間が経っているわけでもないので、警察に届けるのもどうかと思い、サムに頼みに来たと言います。
       かつての警察官仲間の事件ですので、サムも引き受けないわけにはいきません。

       サムは、娘のペーシェンスと共に、さっそく博物館に出かけますが、やはりドノヒューは出勤しておらず、連絡は取れないといいます。
       その際、改修中の博物館の、展示ケースのガラスが破られていることに気付きます。
       何か事件でも?
       と尋ねますが、ただの事故だというのです。
       改修工事中に作業員がガラスを割ってしまったらしいということなのですが、ケースの中のものは無くなっていないので問題ないと。

       その後、例の封筒を預けて来た男からの連絡が途絶えます。
       サムは、男との約束どおり、レーンに連絡し、その立ち合いの下、封筒を開けてみました。
       封筒の中にはさらにもう一つの封筒が入っており、その封筒の中には、上方にレターヘッドが入った便せんに『3HS wM』とだけ書かれていたのです。
       なんだ、これは?

       その後、レーンも捜査に加わり、博物館の割れた展示ケースの中に入っていた稀覯本が一冊すり替えられていることが判明します。
       それもおかしな話で、もともと入っていた初版本がなくなり、その代わりに第二版が入れられていたのです。
       そして、第二版は現存していないと考えられていた本なので、実は初版本よりも価値が高い本だというのです。
       何故、より価値の高い本とすり替えたりしたのでしょう?

       そしてさらに奇妙なことには、盗まれたはずの初版本が博物館に送り返されてきたのです。
       しかも革装の表紙の一部が切り裂かれており、その修理代も添えられて。
       表紙の内側を覗くと、何かが隠されていた痕跡がありました。
       初版本を盗んだ者は、表紙の内側に隠された紙のようなものが欲しくて盗んだのではないか?

       その後、遂に殺人事件が発生します。
       ある小屋ごと爆破されてしまうのです。
       その小屋には、おそらく、初版本の表紙内側から抜き取られた紙が隠されていたと思われるのですが……。
       死体も損傷がひどく、誰なのかは分かりません。
       そして、死体には銃創が発見されましたので、銃撃された後、小屋ごと爆破されたものと考えられます。

       この過程で、ハムネット・セドラーというブリタニック博物館の新任館長と、エールズ博士という謎の人物の身元についての疑惑が持ち上がります。
       どうもこの2人は似ているんです。
       あるいは一人二役なのか?

       爆破された小屋は、エールズ博士が仮住まいとして利用していたもので、小屋の中から例の青と緑に染めたおかしな付け髭や青いサングラスが発見されていましたので、サムに奇妙な依頼をしてきた男はエールズ博士だと思われます。
       とすると、小屋で発見されたのはエールズ博士ということなのでしょうか?
       セドラー館長も行方不明になっていましたが、後に発見されます。
       そして、ある事実を語るのですが……。

       しかし、ただ一人、ペイシェンスだけはある事に気がついてしまうのです。
       それは……。

       こういったミステリなのですが、とにかくラストの衝撃がものすごく、最初に読んだ時には呆然とさせられました。
       私は、最初にこのラストを読んだ時、しばらく固まりましたよ。
       それと共に、深い感慨を感じたのです。

       今回は何度目かの再読でしたが、結構忘れており、初読と変わらない感覚で楽しむことができました。
       サムが預かった封筒に書かれていた暗号のようなものの謎もすっかり忘れていたのですが、どういうわけか今回はすぐにその意味に気がつきました。

       この作品、稀覯本にまつわるミステリになっており、作者の一人(エラリー・クイーンは、アルフレッド・ダネイとマンフレッド・リーの合作ペンネームであることはご存知のとおり)であるダネイもミステリ稀覯本のコレクターでしたので、その知識も使ってのミステリになっています。
       ですから、暗号に書かれていることの意味は分かったにせよ、それがどういう意味を持つものなのかはちょっと一般人には分かりにくいなぁ(まあそれは作中で解説されますし、問題ないんですけれどね)。

       こうしてレーン・シリーズを再度読み通してみると、クイーンはこの4部作を最初からその全体を構想して書き始めたと感じられます。
       そもそも、こういう決着をつけることを当初から意識して『X』から世に送り出したのでしょう。
       ですから、シリーズ中最も低調な『Z』もペイシェンスなどというキャラを突然持ち出し、その一人称で書いたのでしょう。
       なお、本作は通常通り三人称で書かれており、『Z』で見られたペイシェンス問題は緩和されています(それほど鼻につきません)。

       レーン・シリーズはミステリの黄金時代に書かれた傑作群であり、特に『X』と『Y』は、ミステリ好きなら外せない名作です(というか、レーン・シリーズ自体通読すべきでしょう)。
       本作を、純粋にミステリとして評価するならば、なかなか凝った構成にしていて評価はできるものの、クイーンらしい緻密な推理というにはやや欠ける点がないとは言えません。
       クイーンの一流作品に比べてしまうと、やはりやや劣る点は見受けられます。
       しかし、それを補って余りあるシリーズ全体の構成、本作の衝撃度という点から必読の作品であるという評価は揺らがないと思います。

       何度も書きますが、このシリーズ、ミステリ好きならマストで読むべき作品であり、また、必ず『X』から順番に読んでください。
       まだ未読であるという幸せなあなた、あなたはこれからこの名作を手付かずで楽しめる大変ラッキーなポジションにあります。
       どうか、虚心坦懐に、『X』から読み始めてください。


      読了時間メーター
      □□□     普通(1~2日あれば読める)
      >> 続きを読む

      2019/06/18 by

      レーン最後の事件」のレビュー

    • 評価: 4.0

      エラリー・クイーンによるドルリー・レーン4部作最後の作品。
      X,Y,Zの悲劇は既読だったが、この作品だけは未読だった。
      必ず前3作を読んだ後に、本作を読んでほしい。
      この作品の仕掛けは、法月綸太郎の某作品と全く同一だが、もちろん法月が後追いである。
      この4部作はどれも出来栄えがいいが、中でも「Xの悲劇」は不朽の名作である。
      巷のランキングなどでは「Yの悲劇」が上位に挙がることが多いが、僕は客観的に見て「Xの悲劇」こそがレーンシリーズの最高傑作と思っている。
      「Yの悲劇」も傑作なのだが、「Xの悲劇」はそれこそ本格ミステリのお手本ともいうべき作品で、そのロジックの密度・美しさは比類ない。
      森博嗣は初めて読んだ本格ミステリが「Xの悲劇」らしいが、彼は大変に好運である(僕が初めて読んだ本格ミステリはアガサ・クリスティ「オリエント急行の殺人」で、これはかなり運が悪い)。
      >> 続きを読む

      2019/05/27 by

      レーン最後の事件」のレビュー


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