こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)

死者の都市 (海外ベストセラー・シリーズ)

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: ハーバート・リーバーマン
定価: 1,325 円
いいね!

    「死者の都市 (海外ベストセラー・シリーズ)」 の読書レビュー (最新順)

    最新のレビュー順 | 人気のレビュー順
    すべてのレビューとコメントを開く
    • 評価: 4.0

      このハーバート・リーバーマン原作の「死者の都会」は、医学ミステリーというよりは、実録小説風の雰囲気を漂わせている小説です。

      ニューヨーク市検視局局長コーニグが主人公で、バラバラ死体事件、局内不正の発覚、娘の誘拐と、三つの事件が並行して起こり、なおかつ日常業務としての変死体の解剖、大学の講義、様々な事務処理、世界各国の法医学者や病理学者への学術的な返信などに囲まれる"孤独な老法医学者"を通して、"猥雑なニューヨークという大都会"そのものが描かれていきます。

      「救急車やバンが横の入り口や裏口に次々に止まる。パトカーは到る所に止まっている。死体運搬車が外に出され、キャンバスの袋が運び込まれる。〈肉の配達〉----と警官たちはこれを呼んでいる。建物内では、グリーンの廊下に沿って騒音の渦である----開閉するスチール・ドア、行き交う人や運搬車、接触不良の声の割れる拡声装置でがなりたてる呼び出しアナウンス」と、検視局はこのように描写されていますが、この簡潔で的確な描写の背後から、"ニューヨークという大都会の縮図"が鮮やかに浮かんできます。

      死体置き場に次々に運び込まれる元娼婦、元店員などを手早く解剖していくさまは、「左冠状動脈に塞栓」とか「大動脈弁閉鎖不全」という専門語が何の説明もなく、リズミカルにポンポン飛び交うだけに、いっそう不気味でゾッとするような戦慄を覚えてしまいます。

      検視官というものの実態を知らないこちらには、非常に興味深く、特にメチャメチャに分断された肉の切片から復元していくところは圧巻です。

      その不愛想なまでの小説のリズムが、最後まで一貫していて、この小説全篇を実録風な味わいの小説にしているように思います。

      しかし、そうかと言って、ドラマティックな盛り上がりがないわけではなく、ラストシーンは心憎いほどの結末になっていて、このさりげないラストは、"猥雑なニューヨークに生きる検視官のドラマ"を静かに凝縮していて実に見事です。

      ただ主人公のコーニグが法廷で医者だけが偽証しうる、と思うシーンがあり、その点では他の医学ミステリーに登場するような医者たちと同様の"誇りと悩み"が、この小説にも漂っているように思いますが、死体横流し事件を含め、そういう"医学"の縦糸が、誘拐サスペンスという"横糸"と密接な関連を持たず、縦糸同士でもつれていくのをみると、やはりこの小説は医学ミステリーとは別のジャンルの小説ではないかと思います。

      以前、何かで医学ミステリーの定義について読んだことがあります。「医学ミステリーは普段、紙の上で死体を捏造するミステリー全体の贖罪を、一身に負っているジャンルである」と----。



      >> 続きを読む

      2016/09/02 by

      死者の都市 (海外ベストセラー・シリーズ)」のレビュー


    最近この本を本棚に追加した会員

    この本に関連したオススメの本

    取得中です。しばらくお待ちください。

    死者の都市 (海外ベストセラー・シリーズ) | 読書ログ

    会員登録(無料)

    今月の課題図書
    読書ログってこんなサービス
    映画ログはこちら
    読書ログさんの本棚

    レビューのある本

    月影の雫 (リンクスロマンス)