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風の歌を聴け

4.0 4.0 (レビュー2件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 1,260 円

一九七〇年の夏、海辺の街に帰省した“僕”は、友人の“鼠”とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。二人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、“僕”の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。群像新人賞受賞。

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    「風の歌を聴け」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

       大学1年生の頃に読んだ本です。
       こういってしまうと身も蓋もないけれど、これが村上春樹の最高傑作だと思っている村上ファンも多いのでは。

      「ひとつ質問していいかい?」
      「喜んで。」
      「君は何を学んだ?」
       大気がかすかに揺れ、風が笑った。そして再び永遠の静寂が火星の地表を被った。若者はポケットから拳銃を取り出し、銃口をこめかみにつけ、そっと引き金を引いた。

       長いこと、デレク・ハートフィールドを実在の作家と思い込んでいました。どうやら、ハードフィールド=庄司薫説もあるようですね。「赤頭巾ちゃん気をつけて」のレビューに月うさぎさんがコメントをつけていらっしゃいますが、村上春樹に対する庄司薫の影響みたいな話はけっこう有力説なんでしょうか。
      >> 続きを読む

      2013/05/16 by

      風の歌を聴け」のレビュー

    • >弁護士Kさんの引用はここですか~(´▽`)

       ここなんですね〜。
       いや、もちろん彼女と歩く夏の夕暮れとか、ごく何気ない場面でも、村上春樹は抜群の文章力を発揮していると思います。それだけでも群像新人文学賞の価値は十分にあったかもしれませんね。
       しかし、数億年単位で火星の大地をわたる風に対して、「君は何を学んだ?」と問いかけるその世界との関わり方、あるいは世界との距離感に、彼の本質的な資質をぼくは感じます。
       時代は1970年、主人公はノンポリのようでいて、それでも機動隊から前歯を叩き折られるような経験をさりげなく持っている。しかも、半年以上つきあった彼女が春に自殺した、その年の夏休み。さまざまなエピソードが語られるけれども、語り手はそのどれにも深入りしない。小指がない女の子の物語にも、ビーチボーイズの曲をリクエストした女の子の物語にも、そして自殺した彼女の物語にも。
       ヴォネガットと村上春樹は結局のところかなり異なる作家だと思うのですが、その世界との距離感はとても似ています。特に「タイタンの妖女」や「猫のゆりかご」のラストに感じられる爽やかな寂寞感といったものが、「風の歌を聴け」のこの場面にも漂っているようです。
       
      >> 続きを読む

      2013/07/25 by 弁護士K

    • カート・ヴォネガットは大好きな作家なんです。
      おっしゃる通り本質はかなり違いますね
      彼は物語を意図して書く作家ですから。
      〉爽やかな寂寞感
        でも、その空気感はとてもよくわかります。本当にそうですね。

      引用部分については、私はもうこの作品に井戸が出てきていることに驚きました。
      それとこの火星人はブラッドベリの「火星年代記」を思い出させました。
      >> 続きを読む

      2013/07/26 by 月うさぎ

    • 評価: 4.0

      村上春樹のデビュー作。「彼にもデビュー作が存在するんだ・・・」なんてことを思いながら読んだ。

      私が村上春樹の作品を読む時にはよくあることだけど、読んでわかりきれていない感じがした。だからこの本も例に漏れず何度も読んでいる。

      全てがここから始まったのかと思うと感慨深い。

      2012/11/07 by

      風の歌を聴け」のレビュー

    • わからなかったらそのまま放置しちゃうタイプなので、わからないから何度も読むというmahaloさんてスゴイなーと思っちゃいます! >> 続きを読む

      2012/11/07 by sunflower

    • 私の場合、幸運なことに、春樹さんを最初に知ったのがこの作品で、
      それからしばらくは、発表された順番に読んでいました。
      当時は田中康夫だとか片岡義男だとか村上龍だとかが文壇の話題の作家で、
      これも似たようなものだろうと、期待しないで読んだんですよ。

      すごく新鮮でした。

      今となっては春樹ワールドが出来てしまっていますが、当時は斬新だったと思います。

      彼はすごく自分にフィットした作家でした。
      翻訳文学を読んでいるような感覚でしたが、あれがアメリカ文学の影響の色濃い作品と言われても、
      当時はそれほどアメリカンには感じませんでした。

      最近作より以前の作品のほうが、どうしても好きなんですよね…。
      自分でレビューを書く前にまた読み直してみます。
      >> 続きを読む

      2012/11/08 by 月うさぎ

    関連したレビュー

      講談社 (1982/06)

      著者: 村上春樹

      他のレビューもみる (全3件)

      • 評価: 3.0

        村上春樹のデビュー作。鼠3部部作の1作目。
        読んでいると1970年代の風景が蘇ってくるようです。
        バーでギムレットを飲む女がいたり、主人公の友達の鼠はフィアット600に乗っていたり、ボブ・ディランの曲が流れたり、サム・ペキンパーの映画について語ったり。
        そしてデビュー作から音楽に造詣の深い村上さんの片鱗がそこかしこに見られます。

        ブローディガンの影響を受けているらしく、何気ない日常の断片を切り取って集めたような形の作品です。
        小説の形って(いい意味で)あいまいだなぁと感じます。だからこそ色々で面白いんだけれど。

        以前高橋源一郎さんが「詩人は詩を書かなくても詩人で、小説を書いた人が小説家になる」みたいなことを言っていたのを思い出しました。

        この作品も当時からすれば、小説とみなされなかった面もあったんだろうなと思います。

        >> 続きを読む

        2017/11/12 by

        風の歌を聴け」のレビュー

      • > ブローディガンの影響を受けているらしく、何気ない日常の断片を切り取って集めたような形の作品です。

         なるほど、そうかもしれません。
         ぼくは、村上春樹→ヴォネガット→ブローティガンの順で読んだからか、ヴォネガットを読んだ時の、「なんと! 村上春樹のスタイルの原型はこれであったか!」と驚いた印象は鮮明なのですが、ブローティガンを読んだ時には、さほど村上春樹との類似を感じませんでした。一般的には、ブローティガンそのものよりも、その藤本和子による翻訳の文体が、村上春樹以降の日本文学に大きな影響を与えているということが言われているように思います。
         しかし、考えてみると、短い断章を重ねて一篇の小説にするという手法は、ヴォネガットにもブローティガンにも共通するものですね。

        > この作品も当時からすれば、小説とみなされなかった面もあったんだろうなと思います。

         いやあ、当時から、ものすごく評価は高かったと思いますよ。
         それにしても、今ほどの名声を予測した人はいなかったでしょうけれどね。
        >> 続きを読む

        2017/11/18 by 弁護士K

      講談社 (2004/08)

      著者: 村上春樹

      他のレビューもみる (全18件)

      • 評価: 5.0

        なぜ私がその場にいないのだろう?ジェイズ・バーに…。

        時代も違う、人物、シチュエーションに自分を重ねたりも全くなかったのに、
        そこでおこるできごとが懐かしくすら思えるのはなぜだ?

        村上春樹のデビュー作、「風の歌を聴け」が書かれたのは昭和54年(1979)。

        村上龍は「限りなく透明に近いブルー」で1976年デビュー作からベストセラー作家だったし、
        映画化され、タイトルは流行語にもなった。
        私は「ブルー」は手にとってみたものの冒頭を読んだだけでだめで投げ捨てた。
        そして村上春樹という作家に興味をもった女の子は私の周りにはまったくいなかった。

        私が20歳位の頃、片岡 義男を代表に、新進の流行作家がいっぱい溢れていて、
        その作風に反感をもっていた私。
        村上春樹を私に紹介したのは大学の年上の友人。
        この本をくれたのがちょっと気取った男だったせいもあり、反抗的な気分で読み始めた。

        なのに、そのまま、すっと入っていけた。
        次々に春樹さんの本を読み漁ることになるほど彼の文章に惹かれた。

        こちらの存在をあやうくするような、現実と虚構の壁を薄くするような、そんな力があった。
        自分とは全く縁のない世界なのに、感じるノスタルジー。
        なんなんだ?これは?


        翻訳物の外国の小説を読んでいるような印象だった。

        後に、アメリカ小説の影響を強く受けた作家だということを知ったのだが、
        最初の印象はむしろ、私にとっては馴染みのあるカフカやカミュのような
        「ヨーロッパの作家」に近い作風だった。

        アメリカ小説の写実主義よりも、存在をテーマにする作家のような、そんなイメージを持ったのだ。
        一人称小説でありながら、これは決して「私小説」ではない。
        描かれるのはピュアな魂である。
        その評価は私の中で今も変わらない。

        「昼の光に、夜の闇の深さがわかるものか。」――ニーチェ


        今では村上スタイルの後を受ける作家が大量にいるので
        その斬新さの衝撃は薄れてしまったかもしれない。
        彼のように描ける作家はやはり他には出ていない。
        彼らの作品のベースが悪いけれど外国文学を読み込んでいないためだ。
        形だけまねしても、スピリットが違うのだ。

        最近、村上春樹の文学を最も認めて推奨していた作家・丸谷才一氏の「翻訳本」を
        数冊読んで、春樹さんと「同じもの」を感じてしまった。

        ああ。この文章なんだよなあ。私が好きなのは。

        絵画のように、文章にもタッチや色彩や選ばれた素材などがある。

        絵を好きになるときに、そこに何が書かれているかだけで、
        その絵を判断する人はいない。
        個々に好みがあり、そこに芸術の幅が生まれる。
        それと同じことだと思う。

        「風の歌を聴け」には、ストーリーよりも、その空気感、人物へのシンパシー、
        そのような肌触りを楽しむべき小説ではないか。
        大げさに言えば、『魂の交感』ってこと。

        この作品には村上春樹のエッセンスが香っている。そんな気がする。


        【おまけ】
        作中に出てくるデレク・ハートフィールドは架空の作家です。
        後日、彼の本の註文がいって某洋書店が迷惑し、出版社でも問題になったそうです。
        「あとがき」に嘘を書いちゃいけない!って。
        でも、あれ、作品の一部なのに…。

        一方ジェイズ・バーは、実在の店をモデルにして書かれているようです。
        >> 続きを読む

        2013/07/22 by

        風の歌を聴け」のレビュー

      • >私が20歳位の頃、片岡 義男を代表に、新進の流行作家がいっぱい溢れていて、
        その作風に反感をもっていた私。

         なるほど。片岡義男がこの頃でしたか。
         ぼくは中学時代にこの人の「ビートルズ詩集」にガッカリさせられて以来、この人の本を読もうと思ったことはありません。よく角川で映画化されていたみたいですね。
         村上春樹と同時代にデビューした作家として印象に残っているのは田中康夫です。若い人は知らないかもしれませんが、あのヘンな政治家(まだやってたっけ)は、作家としてデビューしたのですよ。しかもまあ売れた売れた、「なんとなくクリスタル」をぼくは高校時代に読みましたものね。1年前に出版されていたはずの「風の歌を聴け」を読んだのは大学生になってからだというのに。
         田中康夫ファンがいたらもうしわけないのですが、一度たりとも読み返そうと思ったことがありません。あれほどばかばかしい本は他にちょっと思いつかない。

         ジャーナリズムがちやほやするものの中で、時を経て残るのは、ほんとうに僅かなものですね。村上文学がどれくらいのタイムスパンでこの世界に残っていくのか分かりませんが、この時代の激流の中で、30年以上古びていないというだけでも凄いことだと思います。
        >> 続きを読む

        2013/07/25 by 弁護士K

      • 弁護士Kさん
        片岡 義男、もてはやされていましたよね。
        「ビートルズ詩集」私も読んだ気がします。何も残っていないけれど。
        今、彼の本を読む人なんているんでしょうか?

        田中康夫なんか作家として認めません。(`・ω・´)
        「なんクリ」は商業主義と連動したカタログです。

        学生時代に流行ったこれらの作家が私を日本の文学から遠ざけた原因でした。
        内容的に読む価値のない、文字面のきれいなオシャレな文章ばかり。
        結局は日本文学の「写実主義」がたどり着いた先があれです。
        あたらしい「私小説」には写生だけがあり、物語が欠けていました。
        そこに村上春樹が出てきたんですよね。

        私にとっては新鮮に感じました。
        この感性好き。って。純粋に。

        文壇は異分子の登場に驚き、一部の文学者を除き、彼を潰そうとしました。
        彼が認められると、それまでの私小説派の小説がことごとく価値を失うことがわかっていたからです。
        当時の論評を読むと笑えますよ。
        「ちっとも私小説じゃない」というのが批判の根拠なんですから。

        〉この時代の激流の中で、30年以上古びていないというだけでも凄いことだと思います。
        芸術というものは、時間のみが証明者になりうるものなのですね。
        >> 続きを読む

        2013/07/26 by 月うさぎ


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