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プラハからの道化たち

3.0 3.0 (レビュー1件)
著者: 高柳芳夫
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    「プラハからの道化たち」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      江戸川乱歩賞史上初の国際スパイ・ミステリである、高柳芳夫の「プラハからの道化たち」を読了しました。

      著者の高柳芳夫は、外務省に20年間務めたベテラン外交官であり、国際政治の裏を知り尽くした異色の経歴の持ち主なんですね。

      このスパイ・ミステリは、そうした著者の経歴と知識を十二分に生かした作品になっていると思う。

      物語は、1968年8月、自由改革への道を歩んでいたチェコ国内へ、ソ連・東独軍を主力とするワルシャワ条約軍の戦車が侵入するという、歴史に残る"プラハの春"-----チェコ事件によって幕が開く。

      この侵入事件のあおりを食って死んだ義兄の死の謎を、主人公が追っていくうちに、自由派地下グループと秘密警察との水面下での闘い、スパイたちの非情さが、次第に浮き彫りにされていくのであった-------。

      このチェコ事件が勃発した時、著者は実際に西ベルリンにいたという。
      「共産圏のなかに浮ぶ孤島のような西ベルリンは、明日はここにもソ連軍がという不安と緊張に包まれ、市民のなかには食糧を買い溜めする者もいた。日本総領事館で政務を担当していたわたしは、刻々変わるチェコ情勢の情報収集とその東京への報告にほとんど徹夜の毎日だったが、このときほど、国際政治の厳しさと自由の尊さについて深く考えさせられたことはない」という、江戸川乱歩賞受賞時の「作者の言葉」には、当時の思い出が生々しく記されている。

      思うに、こうした真の危機感は、島国である日本人には希薄なものではなかったか。
      そのことを、そうした危機感を訴える意味でも、著者は実際に味わった経験者の立場から、当時、インベーダー・ゲームに興じていた日本人に警告を発するつもりで、日本の政治家の政治姿勢、安穏とした暮らしに慣らされた日本国民に、一石を投じたのかもしれません。

      この作品の自由派地下グループは、学生や女性といった、それまでにない"革命家"たちが主役となっている。
      直接の現場近くにいた著者だからこそ、的確に当時の自由化運動の根底にあるものを捉えていたのだと思う。

      ただ、スパイ・ミステリとしての小説の質ということで言えば、残念ながら著者の言いたいことを語る熱気とは裏腹に、序章と終章はいいんですが、肝心の物語は、それほどいい出来栄えだとは感じられないんですね。

      スパイ・ミステリとしては、あまりに図式的であり、登場人物の性格、行動などの描き方も、どうも類型的で陳腐なんですね。

      ことに残念なのは、スパイ・ミステリであるにもかかわらず、作中で意味もなく密室を作り上げ、その部分だけが完全に浮き上がっていると思うんですね。

      プロのスパイが、病院に入院している人間を殺そうとする時に、わざわざ密室状態にして不可能犯罪を構成しようとするものだろうか?

      それならば、医者に化け、看護婦に化け、なんらかの事故に見せかけて殺すという方が、よほどリアリティがあると思う。

      このあたりが、お堅い役所勤めを長年経験した人間の、ミステリとはかくあらねばならないといった、固定観念に囚われた思考経路なのかもしれません。

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      2018/07/21 by

      プラハからの道化たち」のレビュー


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