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五十万年の死角

5.0 5.0 (レビュー1件)
著者: 伴野 朗
カテゴリー: 小説、物語
定価: 469 円
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    「五十万年の死角」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      私はミステリー小説の中でも、とりわけ"歴史ミステリー"というジャンルが大好きです。

      もともと日本史・世界史といった歴史が大好きな事もあり、歴史書を読むのと同じくらいに、歴史を散策する楽しみと小説を読む悦びを併せて堪能出来る、この"歴史ミステリー"が大好きなんです。

      その中でも特に、歴史の闇の中に埋もれた真実を探求していくというような内容のものに魅了され、奥深い歴史の森の中を彷徨っていく、このひと時が非常にいいんですね。

      高木彬光の「成吉思汗の秘密」、井沢元彦の「猿丸幻視行」、高橋克彦の「写楽殺人事件」、中津文彦の「黄金流砂」等々、数え上げたらきりがない程、この"歴史ミステリー"というジャンルにはまっていて、毎回寝るのも忘れて読みふけっています。

      ハワイの真珠湾の米軍基地を、日本軍の航空機部隊が襲い、日米両国が遂に開戦した昭和16年12月8日。この同じ日の北京では、北支派遣軍・那須野中将の命を受けた日本軍の部隊が、北京協和大学を急襲します。

      そこには歴史的に名高い周口店で発見された北京原人の化石骨が保管されていたからなのです。しかし、この化石骨は、厳重に管理されていたはずの金庫の中から忽然と消え失せていたのです----。

      五十万年前にこの地球上に棲息した人類の祖先----。戦争の拡大により、貴重な人類の遺産の消失の発覚を恐れた那須野中将は、軍属通訳の戸田駿に化石骨の探索を命じるのです。

      戸田が北京原人の化石骨の行方を調査してしていくうち、この消失事件の直後にアメリカ人の大学事務総長とドイツ人の女性秘書が姿を消している事を突きとめます。また同じ頃、日本人の骨董商が散乱した化石骨のレプリカと共に、射殺死体で発見されます。

      こうして、二つの事件を手がかりに戸田は化石骨の行方を追い始める事になるのです。中国国民党と繋がる謀略組織の藍衣社や、日本の特務機関、更には中国共産党などが絡んで来て、戸田の前に立ち塞がり、謀略渦巻く三つどもえの争奪戦に巻き込まれていくのです。

      果たして戸田は、北京原人の化石骨の行方を突きとめる事が出来るのか? ----。

      朝日新聞の外報部記者として、東南アジア各地の特派員を歴任した作者の伴野朗にとって、この中国を舞台にした"歴史ミステリー"は、まさにうってつけの題材であり、この作品で第22回の江戸川乱歩賞を受賞して、推理文壇に颯爽とデビューしたのです。

      北京原人の化石骨の消失という"歴史上の謎"に、事件当時の大陸情勢を背景に複雑な中国の政治状況を絡め、様々な秘密組織が入り乱れる状況の中、主人公・戸田駿のみずみずしい探求心とヒューマニズムを謳い上げたサスペンス・ミステリーに仕上げた腕前は、このデビュー作以降も一貫して発揮されていると思います。

      とにかく、この物語の前半の手がかりを求める地道な探索から一転して、後半の連続するアクションシーンまで、間然とするところがありません。

      そして伴野朗の何よりもいい点は、ジャーナリスト出身の作家らしく、豊富な歴史の知識と丁寧な取材に裏打ちされたリアルな風俗描写が実に素晴らしいのです。"歴史的な謎の解釈"の面白さの背後に、"堅牢な作品世界"があってこそ、私のような歴史好きを狂喜させ、安心して読める"歴史ミステリー"が出来上がったのだと思います。

      また、伴野朗の憎らしいところは、後に名を成す人物をチラリと登場させるなど、歴史好きの私をニヤリとさせるようなサービスも用意されていて、全く申し分のない"歴史ミステリー"の傑作だと思います。

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      2016/11/05 by

      五十万年の死角」のレビュー


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