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密やかな結晶

カテゴリー: 小説、物語
定価: 1,733 円

記憶狩りによって消滅が静かにすすむ島の生活。人は何をなくしたのかさえ思い出せない。何かをなくした小説ばかり書いているわたしも、言葉を、自分自身を確実に失っていった。有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、現代の消滅、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。

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    「密やかな結晶」 の読書レビュー

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      講談社 (1999/08)

      著者: 小川洋子

      • 評価: 5.0

        「わたし」の暮らす島では、時折《消滅》が訪れる。
        リボン、エメラルド、鈴、切手、香水、鳥・・・

        身近なものにも、そうでないものにも《消滅》は唐突に、そして容赦なく訪れ、それが訪れたものはもはや誰の心をも揺らすことはなく、人々の心に空洞だけを残していく。

        島に暮らす人々は《消滅》を何の抵抗もなく当然のものとして受け入れる。
        フェリーの整備士だったおじいさんは、フェリーの《消滅》にあって港の倉庫番になり、帽子職人は帽子の《消滅》にあって元帽子職人になった。
        バラが消えれば、島中のバラの花びらを川に流すだけ。数日経てば何が消えたのかも思い出せなくなる。
        それが、島の生活だ。

        けれど時折、《消滅》が訪れても記憶を失くさない人々がいる。
        彼らは秘密警察の「記憶狩り」から逃れるため、記憶を失くしたふりをしたり、隠れ家に逃げ込んで、息をひそめて暮らす。

        そうした中で、「わたし」も静かに、そして確実に自分自身の何かを失っていく。空洞だらけで衰弱していく心に、いったい何をとどめておくことができるのだろうか。
        《消滅》の導く先には、はたして何が待っているのか―――。


        物語の中で、《消滅》という現実では想像しがたい現象が何度も起こっていきます。
        そしてそれに係る「記憶狩り」と「隠れ家で息をひそめる人々」のさまは、否応なしにナチスドイツにおけるユダヤ人迫害を思い起こさせます。作中の《消滅》とはそれほどに理不尽で、抗いがたいことなのです。
        けれど物語はあくまでも淡々と進んでいきます。《消滅》は強大な質量をもってそこにありながら、あくまでも島の日常の中にあるのです。

        ただし、中盤に島から本が消えてしまうあたりから、ざらざらとした不穏な空気が流れだし、読む側にも「わたし」の言い知れない不安が感染します。

        文章は幻想的であり、現実的でもあり。
        ワクワクするわけでもハラハラするわけでもないのですが、物語の中に引き込まれてしまいます。
        夢の中にいるようなこの言葉の紡ぎ方は、やはり著者ならではといったところでしょうか。

        ラストは、切ないのだけれどそれだけではなく、どうにも言葉にするのは難しいです。喜怒哀楽以外にこんな感情もあるのか、と自分でも驚く読後感でした。

        『密やかな結晶』って、これのことなのかな。
        なんて、勝手に想像した一冊でした。
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        2015/11/06 by

        密やかな結晶」のレビュー


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