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闇に香る嘘

4.0 4.0 (レビュー3件)
著者: 下村 敦史
定価: 1,674 円
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第60回 江戸川乱歩賞
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    「闇に香る嘘」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果、適さないことが分かる。
      和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。
      中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。
      28年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか――。
      全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う。

      第60回江戸川乱歩賞受賞作。

      江戸川乱歩賞は新人賞ですので、それなりの読み方をしなければいけないと、常々考えています。
      しかし選評を読んだところ、本作の著者、下村さんは実にこれまで乱歩賞の最終選考に5度も残ったという歴戦の強者とのこと。 
      その経歴に違わぬ新人らしからぬ安定した筆致、物語の展開にもぶれがなく安心して読み進めることができました。

      この年の乱歩賞選考委員は、有栖川有栖さん、今野敏さん、桐野夏生さん、石田衣良さん、京極夏彦さんの5名。
      いずれの方も選評で本作を絶賛されており、満場一致での受賞が窺えますが、その選評をストレートに受け取るのはミステリ読者としては片手落ち。
      どの好評も“新人だというのに”とか、“編集者の力も借りずに”とかの目に見えぬ枕ことばがあることを忘れてはいけませんね。
      新人作家の作品としては格好はついているものの、一本のミステリ長編小説としては、未だ粗さが目立ち、削ぎ落とせるところもたくさんあるな、というのが印象です。

      しかしながら、全盲で、70を目前にした男性という、なかなか主人公にするにはハードルの高い設定に果敢に挑戦している点といい、中国残留孤児にまつわる終戦当時の悲惨な末路、現在でも社会的に不安定な地位にいるという問題を、物語の背景として読者に不自然な説明文朝にならずスムーズに提供できている技量といった点などは、さすがに幾度も最終選考に残るほどの実力者だな、と唸らされるものではありました。

      ただ主人公が、28年も過ぎて、たとえ孫への腎臓提供のための検査を頑なに拒んだだけで、いきなり「この男はほんとうに兄なのか?別人のなりすましではないのか?」という疑問を抱いたことには、些か唐突すぎる感が否めません。
      この疑問が、物語の展開の核となる部分で、なりすまし疑惑が、本作の底無しの闇を、具体的な形の恐怖として読者に感じさせているという非常に重要な部分なので、余計にここに引っ掛からずに先を読み進めることはできませんでした。

      主人公のもとへ、意味不明で、まがまがしい内容の5・7・5の点字文が送りつけられてくる趣向も、スリリングな暗号解読へと繋がっていくのか…という期待感を膨らませるのですが、主人公が「季語」がないというだけで中国人が書いたものであろうと断定するあたりで興ざめです。

      また主人公や、その兄、いずれも老爺といってもおかしくない年齢設定にも関わらず会話の内容やテンションが若々しい。
      この点も、読んでいる間じゅう、ずっと違和感を持ち続けなければいけなかったストレスです。

      あとは、主人公が全盲にも関わらず臭気や気配に無頓着過ぎることや、失明する以前はカメラマンであったというエピソードは必要だったのかの疑問、兄のなりすましに疑問を持ちつつ行動する割には全く兄について知識がなかったり、肝心なところは精神安定剤を酒で服用するため記憶障害が起きるというご都合主義をとってみたり、と、つつけばいくらでも粗がでてくる重箱の隅です。

      ただ、これだけ粗い点が列挙できたからといって、本作の新人賞受賞を揺るがすほどのたいした瑕疵ではありません。
      終盤まで読者を引っ張れる筆力、何といっても新人離れした構成力、謎解き要素をふんだんに盛り込んだ内容は、乱歩賞受賞も肯ける優れた者と思いました。

      ただ、どうしても“新人”という冠は外せませんでしたが…。
      今後の作品に期待です。
      >> 続きを読む

      2016/02/09 by

      闇に香る嘘」のレビュー

    • 評価: 評価なし

      江戸川乱歩賞受賞作。身近に視覚障害者を抱えているので、全盲の主人公という点に個人的に興味が湧いて手に取りました。孫の腎臓移植をきっかけに、長らく音信不通であった実の兄と母に接触することから、顔の見えない兄の存在に疑惑を抱き、真相を突き止めようとするミステリーです。

      年齢からしても実体験はしていないであろう著者による緻密な戦争体験の描写、中国残留孤児問題や全盲者にとって支障が多い日常生活の様子など、とてもハードルの高い題材を扱っていることに感嘆しましたが、障害を持っていることを差し引いても過剰に屈折した主人公の性格や、自らの意思で肉親と音信を絶っていた彼が、久しぶりに対面した途端に兄に疑いを抱き実母を気遣う唐突さなど、主人公に共感し難い部分が多く、同調出来ないまま読み終えました。

      こういうものは相性もあるのだと思いますが、残念ながら私には少々合わなかったようです。
      >> 続きを読む

      2015/09/07 by

      闇に香る嘘」のレビュー

    • 評価: 5.0

      腎臓移植が必要な孫娘、しかし村上和久は検査によって適さないとされた。
      故郷で母と暮らす兄・竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶され、その態度に違和感を覚えた。
      中国残留孤児であった兄は、本当に自分の兄なのだろうか?
      帰国当時、既に失明していた和久は兄の顔を確認していなかった…。
      第60回江戸川乱歩賞受賞。

      ◆主人公は視覚障害があり、兄は中国残留孤児、孫娘は腎移植待ち、更には不法入国の問題もからめて、設定だけでも重そう…と、思ったのだけど意外とグイグイと読ませる力のある作品でした。
      そして視覚障害や中国残留孤児の方々の抱える問題、特に中途失明の困難さ、世間の偏見とか、いろんなモノを社会勉強させて頂きました。
      その上で何が真実で何が嘘なのか…というミステリも見事です。
      ここの所、乱歩賞もう~ん?と思う作品もあったけど、これは久しぶりに納得の作品でした。
      次の作品、今後の活躍に期待してます。
      >> 続きを読む

      2014/09/25 by

      闇に香る嘘」のレビュー

    • 内容は重そうですが、面白そうです!レビューを見て読んでみたくなりました!

      2014/09/26 by coji

    • cojiさん>
      レビューで興味をもって嬉しいです。是非!

      2014/09/26 by むつぞー

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