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呼人

3.5 3.5 (レビュー3件)
著者:
カテゴリー: 小説、物語
定価: 700 円

少年は12歳にして「永遠の命」に閉じ込められた!?僕はなぜ大人にならないのだろう。心も躰も成長を止め、純枠な子供のまま生きていくことは果たして幸せなのだろうか。出生の秘密を自ら探る呼人が辿り着いた驚くべき真実とは。感動のラスト、権力者の理想が引き起こす現代の恐怖をリアルに描いた傑作長編。

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    「呼人」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

       12歳で成長が止まった少年・呼人の物語。

       脚本家・推理作家であった著者の描くヒューマンドラマです。特にドラマの脚本で高い評価を受けていた方のようですが、経歴には「名探偵コナンーベイカー街の亡霊」の脚本なんてのもあります。個人的には劇場版コナンでは「ベイカー街」が一番です。

       まずは、あらすじから。

       1985年、呼人は親友の厚介・潤とともに、小学生最後の夏休みを過ごした。雑木林の中に作った秘密基地、のどを潤すコーラの味、自転車で疾走する坂道、そして行方不明になった幼馴染・小春を探した一晩の冒険……それらは大人になれば得られなくなる代わりに、かけがえのない思い出として、成長の糧となるはずだった。しかし、その夏を境に呼人の成長は止まった。
       時は容赦なく過ぎていき、やがて、厚介は自衛隊員に、潤はニューヨークの銀行マンになり、小春は若くして結婚していた。かつての幼馴染たちが大人の社会でもがき、傷つけられる姿を、呼人は見つめ続ける。そして、呼人自身も、自分の出生の謎を解き明かすために、失踪した母親の痕跡を追い始める。


      「12歳から成長しない」というなかなかインパクトのある設定を持っている主人公ですが、思ったよりも、その設定を生かした展開は抑え気味です。もちろん主人公は物語の中心ですが、物語の軸として、その周りを回る人々を見つめている、といった具合です。歳を取らない主人公を視点として、幼馴染たちとの対比することで、時間の流れを描いているのかもしれません。

       呼人の場合、あの「身体は子供、頭脳は大人」というのとは少し違います。勉強すれば知識は身に付きますが、心は12歳のままです。そのため、子供らしさが露呈することがままあります。

       ところで、子供・大人という区別はどこにあるんでしょうか。私は、「いつまでも子供の心を忘れないようにしたい」と青臭いことを思ってもいますし、同時に「もっと大人にならなければ」と、しょうもない決意を持ってもいます。しかし、何が子供で何が大人なのか、この部分はとても曖昧です。結局、都合の良いように子供と大人を使いわけたいだけなのかもしれませんねぇ……。

       もっと色々やってくれても良かったのになぁ、と思う部分もありましたが、様々なことを考えさせられる良い小説でした。

       読み終わってみると、まだ彼らが子供だった1章の物語が非常に輝きを放っているように思います。大人になるというのは、様々なことに慣れることなのかもしれません。経験の分だけ、多くのことに対処し、物事の取捨選択ができるようになりますが、反面、日々の煌めきに鈍感になり、諦めを覚えてしまうのではないでしょうか。

      「大人は夏に喘いでいる。夏だから、ぼくらは走る」(p.16)

       とりあえず、この夏に喘がず走ってみようかと思うのでした。
      >> 続きを読む

      2015/07/31 by

      呼人」のレビュー

    • >課長代理さん
      そうと知らず読んだ作品が面白くて、調べてみたら、すでに著者が亡くなっていたり、ハマったバンドがすでに解散していたり、ということは過去に経験しましたが、なんとも残念な気分になります。
      >> 続きを読む

      2015/08/01 by あさ・くら

    • >空耳よさん
      たしかに、呼人自身以上にサブキャラに焦点があてられているように感じました。
      そして、とても社会情勢に言及した作品だと思います。過去の事件がぽんぽんあげられていることも、時の流れを感じます。

      >夏、外は燃えるようです
      ほんとに猛暑が続きますね!
      「走る」のは、あくまで気の持ち方のつもりです。夏に負けない! という心意気で、クーラーをつけて本を読みます笑
      >> 続きを読む

      2015/08/01 by あさ・くら

    • 評価: 4.0

      12歳で成長が止まった男の子・呼人の心の歴史。
      時々、何のために生まれて来たのだろうと呼人は思う。確かに周りは彼を置いて年を重ね、いつかは消えて行く。

      私は何のためにと考えたこともないし、無理に考えても何の答えもない。何のためにというのは、他人に何かする役目なり生きる目標なりがあってのことかもしれない。平凡な日常で、人としてするべきことは大差なくて、社会人、家庭人になりその役目を果たしながら生きていくほかはない。という流れのまにまに苦楽を越えて生きることだと思っている。


      呼人はMITで薬学研究をしていた日本人が 遺伝子操作で密かに作り出した成長を止める薬を、たまたま出合った妊婦に注射をして生まれた子供だった。女はテロの首謀者として世界を転々としていた。生まれた子を妹に預けてまた世界に出て行った。呼人は子供を預かったのが今の母だと知る。
      彼は12歳まで普通に成長した。友達と山に基地を作って遊んでいた。話はまるで「スタンド・バイ・ミー」のように始まる。
      12年後呼人の成長が止まった。見かけは子供のまま、友達と進路がわかれた。

      14年後、呼人26歳。小春は家出して逢えないまま。秀才の潤はアメリカの大学を出て銀行に就職、金融先物取引で損失補てんに失敗、刑務所にいた。厚介は数学者の父から逃げて自衛官になり、北朝鮮の捕虜を救いに派遣され、地雷原で片足を失った。

      呼人32歳。教師になるために免許を取ったが採用されず、自宅で通信講座の添削をしている。
      6年前に母を訪ねてアメリカにわたった。母は研究者の父と、短期間夫婦として過ごしたという、後を訪ね、真実に直面して、死のうと思った。だが生まれてきたことを考え直しに帰国した。

      思い出の山に、ごみ処理場が出来ると言う。谷にシートを敷き有害物質を捨てる計画が実行される。まだ手のはいってない最後に風景を見ておこう。
      呼人はむかし辿った道で小春に会う。彼女も最後の日を知り訪ねてきていた。
      小春は運命について話す。

      ―― 人間はだれしも、何かの意味を持ってこの世に生まれてくると信じたい。メーテルリンクの「青い鳥」ふうにいうと、子供が生まれてくる時に「時のおじいさんが」から持たされる、「「お土産」という名の「宿命」だ。
      この奇妙な人生は必然で、12歳のまま生きているのは、誰かの悪戯とか、単なる事故とか、そんな風に思いたくなかった――

      手ががりを追って母を訪ねる旅に出る。導かれているように旅立ちの決心をする。



      人の手でつくりだされた成長が止まる運命にもだえ苦しむ話かと思っていた。だが、次第に呼人の心がわかってくる。
      友達の境遇も織り交ぜ、考えさせられた。

      北朝鮮問題。米国の熾烈な先物買い、為替取引の現状。ごみ処理問題、作者の知識が熱すぎるくらい語られている。

      最後が2010年で幕を閉じる、発行が1999年なので近未来という設定だが、今読んで、過ぎた時代が近未来として読んでいる、と言うギャップがあるにもかかわらず、余りにも現実に近くて、作者の慧眼に驚いた。
      >> 続きを読む

      2015/07/03 by

      呼人」のレビュー

    • 自分が呼人だったら自分だけ取り残されてしまう恐怖に耐えられるかなあ、と思いながら読みました。とても好きな本です。また読もう(*^。^*)
      この本が野沢さんとの出会いでした。自殺はつくづく残念でした。
      >> 続きを読む

      2015/07/06 by ありんこ

    • ありんこさん

      いつでも死ぬことは出来るんですが、その前にどうして生まれたのか、訳を知りたくなってしまうんですね。私もなんだか分かる気がしました。
      育ててくれたおばさん夫婦や友達が救いですね。
      厚介さんの命を思うと生きてみんなを見送ろうと思うところなど、ミステリ作家だとおもっていた野沢さんらしくない、いい作品だと思いました。
      若かったのに本当に残念ですね。
      >> 続きを読む

      2015/07/06 by 空耳よ

    • 評価: 4.0

      この作品のテーマは恐らく「大人になった子供達へ」なんだとおもう。呼人が歳を重ねるに連れて、彼が漏らす心情とその不安に心が苦しくなった。
      私達は成長するその変化を楽しまなければならない。
      『呼人』はサスペンスだけではなく、ヒューマンドラマでもあって野沢尚作品の中では少し趣が異なる作品。

      2015/05/12 by

      呼人」のレビュー

    • > 空耳よさん
      『破線のマリス』、実は小学生の頃に読んだので記憶が曖昧なんです。10年以上前…
      ですのでまた読み返してみようと購入しました!
      >> 続きを読む

      2015/05/13 by yuria

    • >loopさん
      どうしても「あの時はできたこと」「あの時しか楽しめないこと」を感じてしまいます。
      でも成長しなければ得られない何かもたくさんあるはずですので、前向きに捉えていきたいですね。
      >> 続きを読む

      2015/05/13 by yuria


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