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逃亡くそたわけ

3.4 3.4 (レビュー4件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 420 円

「どうしようどうしよう夏が終わってしまう」軽い気持ちの自殺未遂がばれ、入院させられた「あたし」は、退屈な精神病院からの脱走を決意。名古屋出身の「なごやん」を誘い出し、彼のぼろぼろの車での逃亡が始まった。道中、幻聴に悩まされ、なごやんと衝突しながらも、車は福岡から、阿蘇、さらに南へ疾走する。

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    「逃亡くそたわけ」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      博多発、花ちゃん(21)と、なごやん(24)の逃避行。リュックに睡眠剤ぶちこんで、オンボロルーチェに乗って、高速使わず、国道走って、ひたすら九州を南下。BGMは「Theピーズ」のカセット。あてもなく逃げて逃げまくる男と女の珍道中!

      眼前にそびえる雄大な薩摩富士(開門岳)に向かって「くそたわけ!」と毒づくアナーキーな逃亡の旅路。標準語のなごやん&ネイティブ博多弁の花ちゃんのいまいちかみ合わない会話のテンポがめちゃくちゃおもしろく、ロードムービー観ている感覚で一気読み!

      で、二人はなにから逃げているのか? 犯罪者ボニー&クラウドでも、ロックなシド&ナンシーではありません。花ちゃん&なごやんは精神病院の脱走者なのだぁ⁉︎

      躁と幻聴を繰り返す花ちゃん。鬱で入院中のなごやん。強烈な薬の投与が嫌で、脱走を思い立った花ちゃんにそそのかされる形でなごやんも巻き込まれた無計画の逃避行。

      ファンキーでちょつぴり切ない二人の旅路を通して、病気に限らず、人生や恋愛も躁と鬱のバランス性で成り立つているのかも…と思った。

      それにしてもネイティブな九州弁をこんなにポップに使いこなし、各地域の気質を描き出せる著者の経験値とアウトプット力はすごいぜ!
      >> 続きを読む

      2020/05/04 by

      逃亡くそたわけ」のレビュー

    • 評価: 評価なし

       絲山作品の中ではこの『逃亡くそたわけ』が一番好きです。

       躁鬱病の「あたし」こと花ちゃんは入院している九州の病院を脱走する。名古屋出身を否定する鬱病の「なごやん」を道連れに。

       九州という私が行った事ない所の地図が載っていて、花ちゃんと3歳上の「なごやん」の九州南下の逃避行。

       若い男女の逃避行なのに恋愛感情というより、友情が強いというのが逆に新鮮。
      読み終わった直後より後からじわじわ来るものが大きいのです。

       何かから逃げる、というと「いつかは戻らなければならない」刹那的なものと考えられるし、実際、「あたし」はいつこの逃避行が終わるのか、逃げて何がしたいというわけでもない事に不安を持っています。そしていつも2人には、薬がなくなるのでは、という不安があります。

      「あたし」は幻聴や幻覚に悩まされるけれど端から見てもわからない病気。

       精神病は、第三者がいたずらに語るのは危険ですが、躁鬱の場合、躁状態だと万能感や多動、虚言など周りに迷惑をかける事が多く、鬱になるととことん闇に引きずり込まれるのだそう。

       そういう病気は周りの理解が得られなくて(目に見えないから)苦しむ、その様子が甘ったれではなく、突き放すように描かれていて、読んでいてつらくならない。

       なごやんが好青年で、病を描きながら妙にさわやかです。いくらでも悲惨にできる物語なのですが、からっと仕上げています。

      「あたし」こと花ちゃんはかたくなに博多弁を使うし、「なごやん」が名古屋弁を嫌がり、標準語に固執するのが切ない言葉の物語でもあります。
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      2018/06/14 by

      逃亡くそたわけ」のレビュー

    • 評価: 4.0

      生粋の福岡育ちって大学生でもこんなに言葉きつかったっけ?
      福岡・大分・宮崎・鹿児島の見どころが書かれているので、旅行しながらに最もオススメ。九州を舞台にした小説はなかなか数少なくて、現在探し中なので☆+1しました。
      でもNTTって東西別会社だから、福岡ってことは西日本だよね…?
      一生東京転勤の目はないような。これはわざとなんかな??
      又吉推薦本。

      2017/03/05 by

      逃亡くそたわけ」のレビュー

    • 評価: 3.0

      「どうしようどうしよう、夏が終わってしまう」
      軽い気持ちの自殺未遂がばれて、入院させられた「あたし」は、退屈な精神病院からの脱走を決意。
      名古屋出身の「なごやん」を誘い出し、彼のおんぼろ車での逃避行が始まる。
      道中、幻聴に悩まされ、なごやんと衝突しながらも、車は福岡から阿蘇、さらに南へ疾走する。

      2005年に中央公論新社から出版されたものを、講談社さんが文庫化したもの。
      出版当時、直木賞候補にもあげられたようで、話題の本だったみたいです(因みに受賞は逃しています※受賞作「花まんま」朱川湊人)。
      しかし絲山さんは、いつも期待を裏切ることなく、衝撃的な小説をぶつけてきてくれます。
      全編を流じて描かれる滑稽、狂気、痛痒といったものは、僕ら読者に本作をはたしてユーモア小説と呼んでいいものか、はたして純文学なのか、戸惑わせるような不思議なシロモノではありますが、心地良いものでもあります。
      ひょっとするとそうしたくくりから、もう逸脱して、ひとつの新世界に到達している何人かの作家さんのひとりかもしれません。

      まずは、タイトルの衝撃。
      『逃亡くそたわけ』。
      タイトルというものは、小説一行目を彩る肝要なものといったのは、誰でありましたか。
      それが、“くそ”と“たわけ”で、おまけに逃げるという。
      絲山著作の既読のファンなら舌なめずりをしてとりかかれるというものですが、初見の読者の方はさっぱりピンとこない、しかしながら型破り感ありありのタイトルに興味津津となるはずです。

      躁状態が続き、密かにおこなっていた“貯め薬”で、おなかいっぱいになるほどの薬物を摂取し、自殺をはかったあたし(花田という女性)21歳。
      両親に強制的に入院させられた博多の精神病院で、去りゆく夏に焦燥感を募らせています。
      21歳の夏は一生にいちど、それをこんな退屈なところで終えたくない!
      病院脱出を企てたあたしは旅は道連れとばかり、出口付近にいた、名古屋出身の24歳・独身サラリーマン「なごやん」(男性)を誘い、逃亡。
      あたしは、なごやんとすぐさま銀行へダッシュ。
      ATMでまとまった現金を下ろすと、なごやん所有の車マツダ・ルーチェ(父親のおふるで名古屋ナンバー)に飛び乗り、一路、南へと進路をとります。
      とめどなく脳内に響く幻聴と格闘しつつ、ただただ閉鎖された空間の窮屈からの逃亡。
      名古屋出身なのに東京かぶれのなごやんと、福岡訛りまるだしの不安定なあたしの珍道中が始まりました。

      躁状態が続くと、ひたすら元気で、やかましくて、それだからこそ消耗が激しいらしいですね。
      そこからくる早朝覚醒と、自殺願望は鬱といっしょ。
      人間の心というものはとかく脆く、弱いものです。
      小説の題材として採るには、いささか勇気がいるテーマです。
      抗鬱剤や、睡眠薬の名前を羅列されても、読んでいる方としては引くだけ。
      痛々しいそんな設定を和らげるのは、「あたし」が機関銃のように放つ福岡訛りのしゃべり言葉です。

      「十時半か」
      なごやんが呟いた。
      「いつも九時消灯やったもんね」
      「みんな寝てるかな」
      「あたし達の脱走したこと、なんて言いよっとかいな」
      「やめよう。考えてもしかたないや」
      「なごやん、明日運転教えて」
      「え、だめだよ。だめに決まってるだろ。無免許だろ」
      「捕まったらどうせ病院送りたい。捕まらん道ば走ったらよか。こげな田舎やったらあたしでもしきるやろ」

      訛っているだけなのに、このほんわかさ、滑稽味。

      絲山作品はどれもこれも、登場人物たちが身を削るような痛々しいものが多いです。
      それはむやみに触れると、こちらが傷ついてしまう位の厄介さで。
      それを中和させるアイテムは作中に散りばめられているので、読んでいて苦しいとは思わないのですが、一筋縄ではいかない難しさもはらんでいます。

      思い通りにいかない人生は、登場人物たちの造形にも見え隠れ。
      名古屋コンプレックスが強く、福岡転勤という都落ちに耐え兼ね心を病んでしまったなごやん、慶應出身のNTTマン。
      およそ常人には思いもつかないキャラクターです。

      まぁ、この内容では直木賞はとれないでしょう。
      どちらかといえば芥川賞(絲山さんは「沖で待つ」で既にとっているので無理ですが)。
      タイトルの突拍子もなさで間違ってノミネートされたものかと。
      そのようなことを選者の林真理子さんは指摘なさっています。
      曰く、

      …今どき、純文学が、エンターテイメントがと言うつもりはないが、こういう作品がどうして直木賞候補にラインアップされたのかわからない。違う場所で評価を受ける作品であると思う。

      正にそのとおり、万人受けは絶対にしない小説です。
      >> 続きを読む

      2015/11/07 by

      逃亡くそたわけ」のレビュー


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