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カラスの親指

by rule of CROW's thumb
3.8 3.8 (レビュー10件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 780 円

人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは?息もつかせぬ驚愕の逆転劇、そして感動の結末。「このミス」常連、各文学賞総なめの文学界の若きトップランナー、最初の直木賞ノミネート作品。第62回日本推理作家協会賞受賞作。

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    「カラスの親指」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      【騙されることの快感】

       本作の主人公は、サラ金や債務整理屋に食い物にされた挙げ句、妻子を亡くし、あろうことか自分もそのサラ金一味の片棒を担がざるを得なくなり、『ぬき屋』と呼ばれる債務者の最後の最後の金をむしり取る役(はらわたまで抜くことから『ぬき屋』と呼ばれるのだそうです)をやっていた武沢という中年男です。

       武沢は、ぬき屋をやったために、その債務者の女性を2人の子供を残して自殺させるところまで追い込んだという過去がありました。
       武沢はそれですっかり嫌気がさし、組織の拠点などを記載した書類を事務所から盗み出して警察に出頭し、それによって組織を壊滅に追い込んだのです。

       ただ、そんなことをやった以上、もう普通に暮らしていくことはできなくなり、以後は偽名を使って逃げ回り、金も詐欺をして稼いでいたのです。
       自分はもう悪になったのだと自分自身に言い聞かせながら。

       そんな武沢の相棒は入川という中年男でした。
       入川もやはりサラ金に手を出して借金を抱えた男で、錠前屋を営む傍ら、わざと他人の家の玄関の鍵に接着剤を流し込むなどして壊し、その修理に駆けつけては金を取ることを繰り返しているような男でした。
       入川には愛する妻がいたのですが、彼女は浮気に走り、相手の男からシャブ漬けにされ、男と別れて入川のところに戻ってきたもののシャブを断てず、シャブを買うためにサラ金に手を出し、身体を壊して亡くなったのでした。
       入川は武沢のアパートの鍵を壊していつものように金を取ろうとしたところ、武沢に見破られてしまい、以後、武沢の相棒となり、二人でちんまい詐欺を働いていたのです。

       そんな人生をドロップアウトしてしまったような2人は、ひょんなことからまひろというスリ常習犯の若い女の子と知り合います。
       まひろは金が無くてアパートから追い出されそうだというので、武沢は渋る入川を押し切って自分たちのアパートに住まわせてやることにしました。
       そうしたところ、まひろの姉のやひろとその彼氏だという太った貫太郎までアパートに転がり込んでくる始末。
       こうして5人は奇妙な共同生活を始めたのでした。

       武沢が入川の反対を押し切ってまひろ達をアパートに住まわせてやったのには理由がありました。
       それは、このまひろとやひろという姉妹は、武沢がぬき屋をやって自殺に追い込んだ女性の子供達だと気付いたからでした。
       武沢はこれまでずっと責任を感じていたのです。

      さて、この作品を読んでいて、作者は至る所で読者を騙しにかかっていることにすぐに気が付きました。
       筆先三寸でミスリードし、その少し後で読者の勝手読みだったことに気付かせるわけですね。
       「この作者、こういうことをやるんだ」と思いながら読み進めていったのですが、前半は気が滅入って仕方がありませんでした。
       というのは、武沢や入川、まひろ姉妹の話がウェット過ぎて辛気くさく、あまり好きなタイプの話ではなかったからでした。
       貧困、借金苦、自殺、病死、ヤクザの報復……ずっとこんな悲惨な話が続きますが、私はこういう話はあまり好きじゃないんですよね。
       まあ、いくらネットでお勧めしている作品でも、全部が全部自分の好みに合うわけじゃありませんから、こういう場合もあるよねと思いながら読み進めました。

       そうしたところ、後半に入って俄然雰囲気が変わってきました。
       武沢は、自分が壊滅させた組織から逃げ回っていたのですが、連中は決してあきらめようとせず、転居しても名前を変えても必ず見つけ出されてしまい、今また5人で暮らし始めたアパートにも奴らの手が伸びてきたのです。
       またどこかに逃げなければならないのか……と絶望的な気持ちになりかけたところ、この際復讐してやろうという話になっていきます。
       自分たちだって詐欺師だ、いつまでもやられっぱなしじゃ終わらない。
       あいつらの鼻をあかせてやるんだというわけですね。

       「おぉ、これはあれだ。ジェフリー・アーチャーなどの作品みたいに、詐欺によって痛快に仕返しを果たす物語なのだな。」と思い、ようやく自分の好きなタイプの展開になってきたと気を取り直して読み続けました。
       彼らが仕掛けた詐欺は……ちょっと幼稚じゃないのという気はしましたが、まぁ、その点は置いておいて……と思っていたら……。

       え゛~!
       こういう結末にしちゃったの?
       と、この作品に対する評価が一気に急落してしまいました。
       せっかく後半盛り上がってきたと思ったのに……。

       残り少ないページはおそらく人情話的に泣かせにでもかかるのかななどと思い、消化試合的に読み進めていったところ……。
       何? そうくるの?!

       そうなんです。
       この作品は最後の最後まで気を抜いてはいけません。
       途中、どんなにツマラナイと思ったとしても、決して途中で投げ出してはいけません。
       だって、一番のお楽しみはラストのラストに仕込まれているのですから。
       あー。なるほど。
       私は最後まで作者に騙されていたというわけですね。
       いや、こういう騙され方なら大歓迎です。
       というわけで思わぬカタルシスを味わうことができました。
       なるほど、お勧めするだけのことはある良い作品でした。


      読了時間メーター
      □□□     普通(1~2日あれば読める)
      >> 続きを読む

      2020/04/12 by

      カラスの親指」のレビュー

    • 評価: 4.0

      1度目見た時にはその仕掛けに驚き、久々に再読してみると細部にまで精巧に凝らされた構成が冴えわたる出来。

      お互い詐欺師に落ちていったタケさんとテツさんのコンビ。
      自身を今の地位に落としたヤクザの男に復讐するため、後に加わった3人と合わせてコンゲームを仕掛ける。

      詐欺師の類いなので、自ずとどんでん返しが来ることは予測できる。
      事件に返してはなるほどぐらいだが、その裏に計画されていた仕掛けはよめなかった。

      キャラも秀逸で、まひろや貫太郎なども脇で良い味を出しているし、仕掛けの中心となるあの人の存在感も見事なもの。
      道尾さんの作品でも上位に来る面白さ。
      >> 続きを読む

      2019/12/15 by

      カラスの親指」のレビュー

    • 評価: 1.0

      『カラスの親指』(道尾秀介)<講談社文庫> 読了。

      前回『向日葵の咲かない夏』を読んでその暗さに辟易した。
      しかし、「そんな人にも『カラスの親指』はオススメ」という情報もあり、二冊まとめて買っていたということもあって、読んでみた。

      うーん、やっぱり暗い……。
      コミカルなキャラクタや表現は全体に満ちていて、決して暗い作品ではないのだが、事件の発端になるエピソードがまず暗い。
      それに、表現される明るさもとってつけられたようで、根底にはずっと暗さが漂っている印象を受ける。

      作風が暗いんだろうな、と思うが、どうだろうか。



      ※ 以下、この作品の感想です。
      ※ 内容に触れますので、読みたくない方は読まないでください。



      登場人物がかなり特殊で、まったくリアリティが感じられず、入り込むことができなかった。
      「そんなやつおらんやろ」という思いばかりが先行してしまう。

      全体を覆うトリックも、もちろんすべてを把握できていたわけではないが、ヒントが随所にちりばめられており、大きな驚きはなかった。
      一方で、「この表現はこういう展開になるのかも」と思っていたものがスルーされ、そういう方向で意図的にミスリードされていた面も多かったように思う。

      トリックでは前回読んだ『向日葵の咲かない夏』のほうがずっと良かった。
      しかし、とにかく暗い作風に閉口してしまう。

      たぶん、道尾秀介の作品はもう読まないだろう。
      >> 続きを読む

      2019/09/16 by

      カラスの親指」のレビュー

    • 評価: 4.0

      ミステリーでクライムサスペンスなホームドラマ。

      楽しく読めました。
      ホームコメディっぽいタッチで伏線をはったサスペンスフルなバックボーンが同時進行していく。
      騙し騙されてしまう軽妙な展開も「なんじゃそりゃ」ってなるかと思いきや、なかなかスッキリした後味だから良い。

      2018/07/18 by

      カラスの親指」のレビュー

    • 評価: 3.0

      闇金に手を出してしまい、大切な人を失った様々な事情を抱える5人が詐欺で闇金業者に復讐をしようとするストーリー。500ページ超えのボリュームながら、読みやすい文体なのでどんどん読める。

      みなさんの「騙された~!」というレビューやコメントを読んでとても楽しみにしていたのだけど、たしかに私も騙されたけど、あまりにもご都合主義な感じがしてしまって、あんまり楽しめなかった。映画の「オーシャンズイレブン」とか、伊坂幸太郎の「陽気なギャングが~」みたいに完全にエンタメなら楽しめるのだけど、おそらくどっちつかずに感じてしまったんだと思う。闇金に追い詰められていく人たちの人生の切なさを描いていながら、現実味がないほどのできすぎな展開。うーむ。面白くないことはないんだけど、あまり印象に残らず、数ヶ月後には内容を思い出せなくなりそう。

      けど、多分私は少数派なのだと思う。
      きっと素直に楽しむのが正解。

      数年間、積読状態でやっと読んだけども、、
      この著者さんは初だったけど、私はあんまり合わないのかもなぁ。
      >> 続きを読む

      2015/07/09 by

      カラスの親指」のレビュー

    • ほぼ同様の感想を持ちました。伏線を回収しようという意識が強すぎて出来すぎた話になっている感じがしました。
      そして、大体半年ほど前に読了したのですが、ほとんど筋を忘れてます。しかも読み返そうとも思ってないです。
      とても人気のある作家さんの人気のある作品なのですが、人によって合う合わないがあるのでしょうね。あとは、映画化に伴う盛大な煽り文を見ないで読めば良かったのかな、と思います。
      >> 続きを読む

      2015/07/09 by pechaca

    • pechacaさん
      私は少数派だと思っていましたがお仲間が♪pechacaさんもコメントされているように、作家さんとの相性や期待しすぎたという問題も大いにありそうです。でも、私も読み返すことはないですね。。 >> 続きを読む

      2015/07/10 by chao

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      講談社 (2008/07)

      著者: 道尾秀介

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      • 評価: 5.0

        素晴らしい!! メチャクチャ面白い!!
        全てが美しく、キチンと落ち着き、なんて
        楽しい気分で終わるストーリーなんだろう。凄い!

        タイトルにもなっている「指」のエピソードには
        泣かさせるし、会話のいたるところではニヤニヤ
        させらるし...。最高の一冊。

        コンゲームものになくてはならい最後の
        ドンでん返しがここまで切れ味よく、爽快なものって
        滅多にないよね。
        >> 続きを読む

        2013/04/06 by

        カラスの親指」のレビュー

      • カラスってアタマいいみたいですねー
        負けそうなので挑まれたらミステリアスな微笑を浮かべて避けるようにしまーすw >> 続きを読む

        2013/04/07 by makoto

      • 普通の家庭で育ち、普通に仕事をして生活できている
        自分の今の状況に感謝しました(涙 >> 続きを読む

        2013/09/19 by アスラン


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